カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

大河ドラマ「西郷どん」第二回 「立派なお侍」感想


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余談

昨日オープンした大河ドラマ館に行ってきた。西郷どんの威光がまぶしい(逆光)

 
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因みにここ(加治屋町)、安藤照の生誕地であったりする。(やはり逆光で見づらくてすみません)上野のハチ公、そして西郷どんの銅像で著名である。司馬遼太郎氏は加治屋町をして「明治維新を一町内でやったようなものである」と評されたというが、今大河を考えるとき、そのエピローグにおいてまで一町内でやってしまったと考えると改めて恐ろしいところである。

館内にあった「ドンドン紙相撲」ボタン連打で対戦が出来るのだが、プレイアブルキャラクターが西郷、大久保はありとして斉彬公、篤姫(!)、ツン(!!)など平等な世の中を実現したセレクトになっており大変良い。
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斉彬公「理想を語るには……それに見合う力が必要だ!」とは多分言っていない。

鹿児島ロケの風景の撮影風景紹介シアターではシーンごとに何度もかごんま弁のアクセントを指導役の迫田さんに確認する鈴木良平さんの姿が印象的だ。劇中では聞き取りやすいかごんま弁という絶妙な塩梅になっているわけがわかる。

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西郷どんクイズ、セットの再現コーナー、衣装紹介コーナーもあり今大河の雰囲気に存分に浸ることが出来た。出口には充実したお土産屋さんも。(こちらは無料で外から入ることが出来る)試食できた安納芋あんロールがおいしくてつい買ってしまう。

大河ドラマ館がある場所はもともと鹿児島市立病院があった場所であり、市の中心部にほど近く、維新関係の史跡も数多い。有料駐車場も備え付けの場所以外にも豊富な場所で、目の前にバスや電車の停留所もあるので、ここを拠点に色々と見て回るのもよいだろう。(大河ドラマ館の入場券を見せると他の施設の割引を受けられるサービスあり。また、おすすめコースをMAPつきで案内してくれるパンフレットももらえる)

是非一度、おじゃったもんせ。

本題

余談が、ながくなった。

第二回「立派なお侍」……見終わってみるとこれほど皮肉なタイトルもそうはあるまい。かつてフィリップ・マーロゥはいった。「優しいだけでは生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」と。(原文はIf I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive. ということであるので、翻訳者の先生方は「タフでなければ」「しっかりしていなければ」「強くなければ」などと訳されているようであるが、筆者はいつかどこかで覚えたこの意訳が好きである)

今回の吉之助はどうであったか。今回、吉之助が見せたそれは、正助に喝破されたように「優しさ」に達してすらいない「甘さ」であった。「エゴ」といってもいい。

筆者の中で、「風立ちぬ(宮崎駿監督の映画の方)」にて堀越二郎が子どもにシベリアを分け与えようとしたシーンと今回の吉之助がダブった。自分がいいことをした、しようとしたという満足感を得るために無意識のうちに相手を下に見て、侮っていなかったか。そのことが結局相手をどのような状況へ向かわせるのか。「地獄への道は善意で舗装されている」とはよく言ったものである。

前回あんなにアンロックしてもらったはずなのに視野がまた狭まってしまっている。お前はバブル時代あんなに暴れまわっていたのにム所暮らしで超絶弱体化した桐生一馬かよというところだが、(そもそも三つ下の正助の城勤めが決まったということなら吉之助は勤め出してから二、三年は経過しているはずであるのに何故今頃急に)この辺りは作劇の都合上仕方がないのだろうか。十八歳ならそんなものかもしれない、とも思う。

吉之助は今回、斉彬公に会い思いを伝えるという一発逆転のチャンスがあったにもかかわらず、目の前にいる少女を助けることを選び、チャンスを逃す(そして少女を助けることも失敗する)後年、目の前で訴える士族たちに担ぎ上げられる西郷どんへ通じる描写であるが、やっせんぼから次回以降ぼっけもんになっていっても、その甘さは変わらないままなのだろうか。

「子役からクラスチェンジするとなぜかスキルもリセットされる」

「登場人物同士が何故かいる場所を把握している」

など「大河のお約束」がどこか懐かしい。

全てを包み込むかのような西田敏行さんのナレーションで二話目が幕を閉じる。

迫田利済の不在

役人時代の吉之助に多大な影響を与えたとされる迫田利済(吉之助の直接の上司。村役人の不正の摘発など多くの逸話を持つ。史実で年貢の軽減を訴えたのはこの人。そのせいでクビになる)を出さず、恐らく架空の人物である「井上」を登場させたのは赤山靱負に序盤の「理解ある割と近い位置にいる上司」というポジションを一任させたいということだと思うのだが、是非登場してほしかった人物だけに残念である(もしかしたら次回以降出てくるかもしれないけれど)

調所広郷の重厚

竜雷太さんが「ゴールデンスランバー」で演じた警視総監がとても好きだ。言葉少なながら、説得力のある演技をされていた。今回の調所広郷役についても同じ重みを感じた。調所にとっては自分の物語がようやく一度大団円を見た時に訳知り顔で文字通りの青二才がやってきたのだからたまらないだろう。そこで自分も叩き上げの人間らしく、やらせてみせるあたりが小憎らしい。調所以上に農民の(そして商人の)したたかさを知っている薩摩藩士はそうおるまい。今回斉彬が江戸に戻ったことで、彼のEDは大幅に変更されることになる。それがどう描写されるかが楽しみだ。

 

大久保正助の就職

ほほえましさ、くすぐったさを感じたのが正助が城勤めを始めたばかりなのに藩の内情をさも熟知しているかのように語るところである。い(し)ませんでしたか、内定が出た瞬間「うちの商品はさ~」とか話したりまだ三年目くらいなのに「うちの会社ってさ~」みたいなことを言っちゃったり。そういう意味では正助もまだまだ視野が狭い。まあ、少なくとも正助よりはキャリアが上なのにそういった事情を切々と説かれる吉之助って本当にあの後学問を志したのかという気分にもなるが。

 
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小さな日本の小さなカゴシマのことに、まだまだ振り回される日々が続きそうな大河である。ぼっけもんへの道は遠い。