カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

僕の精神も封神されそうです、あるいは覇穹 封神演義五話目までの感想

覇穹 封神演義及び原作のネタバレがあります。


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余談

桜島、冠雪。南国の誇りを忘れてしまったのか。どうしたんだ、地球温暖化。筆者の住む平野部でも積雪が2回あった。どちらの日も小学生諸君は半ズボンで駆け回っていた。こどもらは風の子だな。むしろもう風だな。「ら」だから風たちだな。Windowsだな、という世界中のiPhoneユーザーから石を投げられそうなことを考えているうちに少し寒さが落ち着いてきたようである。この調子で順調に春になってほしい。

本題

余談が、とってつけたようになった。

「構成が美しいジャンプ漫画」を考えるとき、筆者の中ですぐに浮かぶのが「封神演義」と「魔人探偵脳噛ネウロ」である。あとはムヒョが……エンチュー編で終わっていれば……(続編? はどうなるんでしょうね)

構成を考えるのはむつかしい。特に週刊漫画連載はそうであろう。様々な外的要因によって構想通りにいくとは限らない。(外的要因といえばゲームでは特にメタルギアシリーズが顕著なように思う。もし9.11がなければ、声優さんの逝去がなければ、今とは全く異なったサーガが提示されていただろう。9.11で煽りを食ったゲームは他に「ビルバク」もそうであるという。昔そう言った経緯を全く知らず1000円で購入したが、あのプレイの虚無感はなるほど爆破解体後のそれに似ているのかもしれない。おすすめしない)打ち切り漫画の最終話で本来本編中でやるはずであったエピソードが台詞で語られたり、ダイジェストで描写されたり、後々登場させる予定だったライバルキャラが一斉登場したりするのを見るのはとてもとても悲しいものだ。だからこそ、構成が美しいジャンプ漫画は一際輝く。それはさながら青い薔薇のように。

ジャンプ(に限らず)漫画のアニメ化をするとき、やはり構成を考えるのはむつかしい。多くの場合は人気を受けて連載中にアニメ化される。そのため話が連載に追いついてしまいアニメオリジナルを挟んで間延びしたり、強引に話を畳むことになったりする。

どちらにせよゴールが自分で思うように決められない状態、というのがその難易度を上げている。ということは逆説的に、「構成が美しいジャンプ漫画」を「完結した状態でアニメ化」すれば、素晴らしいものが出来るのではないか!?

でもそうはならなかった、ならなかったんだよロック。だからこの記事はここから覇穹 封神演義の感想なんだ。

誰が為に先を出す

一話の時点ではまだ、不安も多かったものの、擁護も多かったように思う。

いきなり太公望と聞仲が雌雄を決するシーンである。このシーンから始まることで「仙界異聞録 準提大戦」を思い出した方が全国に3人くらいはいたと思われるが、ともあれいきなりのネタバレシーンも「今回のアニメは仙界大戦がメイン」ということは既にアナウンスされており、その為の布石であると理解を示していた人が多かった。巻きの展開も序盤である故仕方がない……と。(回想で出るかもしれないし、という希望的観測もあった)

tsutaya.tsite.jp

しかしこれが2話のアバンとなると既に筆者の精神は大きく動揺する。3話はまだ伏せるべきところは伏せていたように思うが、4話に至ると「もしかして原作のことがあまり好きではないのでは……」と思ってしまうレベルである。

アウトレイジ漫才でおなじみ(筆者の中で)セルライトスパというお笑いコンビがいる。彼らがM-1グランプリ2017敗者復活戦でやっていたネタが急激に脳内で喚起された。以下引用。

「大型トラックが荷台切り離して前の部分だけで走ってたんですよ。僕あれ大好きで。大きいロケットパンチみたいじゃないですか? ……僕あれ見るといつも思うんですよ……大きいロケットパンチや~んって」

「話ヘッタクソですねえ~」

 引用終わり。「展開の先出し」を出来るのは作品が完結しているからこそできる手法で、うまく活用すれば非常に効果的である。事実、1話アバン時点では筆者はいいじゃないか、と思った。こいつがメインの立ちはだかる壁なんだな、ということが初見視聴者にも印象付けられたことと思う。

一方で「それまで積み上げてきたからこそ生きる描写」というものもある。2話アバンがそうである。聞仲の仮面が剥がれ落ち、文字通り「殷の太師」というペルソナが剥がされ素の自分が覗く。今まで主人公サイドを圧倒してきた強大な敵が見せる弱さ……がこのタイミングで出てしまっては台無しなのである。今後、聞仲が何しようがどんだけ威厳をふりまこうが、「でもこの人なんかよくわからん場所で友達に殴られてメンタルブレイクするんだよね」という風に見られてしまう。

楊戩においても仙界大戦序盤で明かされる衝撃の真実がさらっと明かされるし、天化に至ってはアバンで散々説明された後に「黄飛虎と最も縁の深いあの男を助っ人に行かせましょう」(意味ありげな後ろ姿)なんてされてもいや、アバンで出てた人でしょとしか思わない。普賢がやたらよく出てくるのもよく分からない。釣り針のシーンはともかく、第5話のアバンに出す意味があったのだろうか。(あと提供シーンで作画に気合の入ったゴマ団子がかっこいいBGMを侍らせてどんと鎮座しているのはちょっと面白かった。)要するにただの突然のネタバレであって、時系列に追いついた時にただ新規視聴者がカタルシスを得られないだけの展開の先出しとなっているようにしか思えないのが残念である。

策士? 太公望

本誌連載の時、読者は「今度の主人公はちょっとタイプが違うな」と思ったはずである。正攻法ではなく手練手管で戦い、しかし内には熱いものを秘めている――今なお封神演義が人気を保っている理由の一つが主人公太公望をはじめとしたキャラクターの造形に寄ることは疑いようもないだろう。

しかるに今回のアニメ化において策士・太公望という感じはあまりしない。ちょっと振り返ってみるだけでも、

姜族が殷に攻められる→道士になる→同じような奴隷狩りを指揮する妲己配下でも実力者・陳桐(ちなみに原典では黄飛虎を殺していたりする)を策略を用い封神し奴隷にされそうだった人々を救う→まき占い・いわし占いを開発する→妲己の妹である王貴人を倒す→王貴人をダシに使い(王貴人は石琵琶が本体である)宮廷音楽家として潜り込む→妲己の怒りを買い姜族もろとも蠆盆に落とされる→生還後、楊戩のテストにおいて策略を用いて民たちを助ける(これによりいくらか民を救えなかったトラウマが和らいだように思う)

太字が今のところアニメで描写されていないシーンなのだが、「わざとか?」というくらい策略シーンが省略されている。(まあ、テストのところは策略と言えなくはないんだけれども、ここで仙桃が出てこないせいで四聖のシーンで登場しても唐突感が拭えなくなってしまった)これでは太公望の魅力は半減してしまう。こんなやつを軍師にしていいのだろうか。

強敵? 聞仲

恐らく裏主人公格といってもいいくらいの聞仲は登場シーンこそやたら多いものの、2話にして後のメンタルブレイクが示唆され、超高速で親友に裏切られ、かつて原作でベラのイメージが強すぎた「鞭」という武器を「カッコいいもの」とした禁鞭のシーンはいまいち迫力がなく、宝具使いである部下は秘湯混浴刑事エバラと叫ぶどころか存在が抹消され、腹心の部下であるかつて妲己を共に遠ざけた(そういやその説明はあっただろうか)九竜島の四聖は1話でろくな活躍もないまま戦闘が終了するなど、原作のこいつ相手にどうすればいいんだ感が非常に薄くなってしまっているように思う。大体、なぜそこまで殷に対して忠誠を誓っているかがダイジェストで流されて終わりなのである。聞仲をメインの敵として語るにあたりそれだけはやってはいけないだろう。聞仲はかつて大切なものを姜族によって失っている。即ち殷に奪われた主人公・太公望とはくしくも正反対の立場にある。その対比がアニメを見ているだけでは全く分からない。聞仲がなぜそこまで力を追い求めるのかも。こんな状態で殷、殷といわれても「思い出の中でじっとしていてくれ」という風にしか思えない。

聞仲の回想シーンを聞いた後の申公豹とのやりとりはとても好きであっただけに「聞仲を一方のメインで描く」前提と思われるこの構成で省かれたのは残念である。

「そして皆あなたより先に死んでいったのですね?」
「……下らん話をした」
「いいえ、確かにあなたは殷の親ですよ、聞仲」

集英社藤崎竜先生の封神演義第51回 それぞれの現在・過去・未来シリーズ⑥―継がれし血脈たちとの絆―より引用。

言いたいことはたくさんあるけれど

4000字を超えようとしているのでこの辺りで。姫昌周りに特に言いたいことが集中しており、次回で幕が下りようとしているらしいので機会があればその際にまた書いておきたい。しかし原作を知らない人は置いてけぼりだろうし、原作既読組は大多数が放心しているしで、ターゲット層をどこに想定して作ったのかというのは気になる。

蛇足:今回のアニメ化で初めて封神演義に触れた妻の感想まとめ

妲己ちゃんがかわいすぎる。傾国の説得力がすごい

・全体的に駆け足なのに紂王の不貞シーンの熱量がすごい

・この声刀剣乱舞の声優さんかな? と思ってEDで答え合わせするのが楽しい

・皆決断が早い。さすが中国(留学経験者)

・この間の続きだよね? 間を飛ばしてないよね?

 

仙界大戦が最高の出来になり平伏す用意は出来ているのでよろしくお願いします。