カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

大河ドラマ「西郷どん」特別編感想

余談

エイプリルフールにつきたい嘘がないというのは幸せなことなのかもしれないし、エンターをテイメントしようとする気概や器量が足りないのかもしれない。少なくとも企業のあれやこれやは、「これのために年度末でただでさえ忙しいのにガンガン残業したりしてる人とかいるのかな……」とか思うようになってしまって我ながら駄目だなあと思う。楽しむにもエネルギーが必要で、そこに回す余裕がないのかも知れなかった。

個人的には、円谷プロが馬鹿やってた頃が好きです。

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昨日は山間部のさくらまつりに行ってきた。昨年は土砂降りだったそうであるが本年は快晴で、しいて言えばその影響で筆者の鼻水が滝のようにズビズバした程度であった。暖かく、汗ばみさえした。勇壮な太鼓に始まり伝統芸能が我々をもてなしてくれた。

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目当ての一つはジビエ料理である。鹿肉の焼肉と、猪鍋。ジビエというと臭いだったり味だったり固さだったり不安要素は尽きなかったのであるが、いずれも感じなかった。鹿肉の焼肉は赤身肉で「肉を食べている」という満足感を噛み締めるたびにうまみもにじみ出るという素晴らしい構造になっており、猪鍋の猪肉はほろほろと口の中で甘くくずれた。

会場のすぐそばには小学校があり、特認校である。近隣児童が少ないので、市全域から通えるようになっている学校だ。実に半分以上が麓から通ってきているという。それでも全校生徒は三十人に満たない。(彼ら彼女らが伝統芸能の太鼓を披露してくれたのである)定住促進住宅という家賃が割安の子育て世代を受け入れる住宅を新たに建てることでそこまで回復したが、あわや閉校の危機であったという。一方で、麓では保育園難民が発生している。まさしく日本の縮図がこの地でも起こっている。

夜は麓の町での会合にも参加した。「珍しいものがある」と喜々として先輩が持ってきてくださった鹿肉と猪肉を「ジビエを食べたことがない最近の軟弱な若者」を演じて(ほぼそのままなのだが)食べるくらいには社会人になることが出来た。こちらは昼に食べたものよりやや野性味が強かったがそれは塩コショウというシンプルな味付けであったからかもしれない。おいしかった。

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相反する双方の話を聞いて思うのはやはり、隣の芝生は青く見えるということである。今年は雨が少なく暖かい日が続き、山も麓もほぼ同時に桜が咲いた。桜が出来て人間に志を合わせることが出来ぬこともあるまい。先人たちの様々を「よかふうに」してみたいものである。

本日は朝からセンバツ。今年のセンバツは劇的な結末が多い。見る方としては面白いが、やる側としては大変だろうなと思う。明徳義塾が敗れ、航空も敗れ、長崎勢も敗れてしまったのでなんだか応援している学校がことごとく敗れていくのだが、ここでそういえば弟弐号機が東海大の末席にいることを思い出したので、東海大相撲、いやさ東海大相模を応援することとする。その結果は…君自身の目で確かめてくれ!

昼前に髪を切りに市内へ。妻は毎度いい感じにしてもらっているのだが、筆者は美容師さんがどう頑張っても三枚目韓流スターみたいなスタイルにしかならないので美容師さんには本当に申し訳なく思っている。顔でかいからや! 顔でかいからお洒落な髪形が似合わんのや!

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折角妻の髪がいい感じになったこともあり、天文館アフターモールへと向かった。天文館アフターモールは鹿児島のハチ公前ことタカプラが惜しまれつつ閉店したのち、再開発までの間販売スペースとして使おう、という取り組みであり、もともと入っていた店舗の在庫処分という側面もあるのかどの品もやたら安い。上下をそれぞれ一着ずつ買って三千円もしなかった。良いものを安く買えると気分がいい。前回はまだ改装中だった二階にも店舗が入っており、「生きている施設」という感じでシャッターが閉まりっぱなしよりこっちのほうがずっといいな、と嬉しくなる。またちょくちょくのぞいてみたい。

妻が「今日の花丸十三話楽しみだなー」と禁断症状を発症していたのでおよそひと月ぶりにアニメイトに向かう。以前は最も目立つところにディスプレイされていた刀剣乱舞グッズは新しいアニメに取って代わられており、この世界の目まぐるしさを改めて突き付けられる格好となった。妻はついていけるだろうか、続・刀剣乱舞花丸のない世界のスピードに。目当てのラバスト(ラバーストラップ)はなかったようで、歌詠集(キャラクターソング集)の最終巻を購入していた。曲は勿論EDイラスト集が決め手であったらしい。確かにあのED絵の美麗さには舌を巻いた。得点として粟田口ポスターを入手できたようでホクホクしていた。

が、仮にも夫である筆者にはその心の空虚はまだ埋まり切っていないことが分かっていたのでパンドラの匣を開けに行くことにした。マンガ倉庫である。そう…お金さえ出せばこの南の果てでもたくさんのグッズが手に入れられる地……妻は逡巡の後、自分への誕生日プレゼントという錦の御旗を掲げ、推しを「お迎え」していたようであった。筆者は二階のクレーンゲームコーナーで五百円投入して取れなければ取れるまでいくらでもプレイできる、という画期的なクレーンゲームに興じていた。五百円を投入しきってから少しして急激にクレーンの力が底上げされたように感じたが、恐らく筆者の練度が上がったためであろう。

心の空虚が無事埋まるとよい塩梅で胃袋の空虚を埋めるタイミングがやってきた。満を持してマックナゲットを摂取するつもりであったのだが、その手前のアイアイラーメンに我々の車は吸い込まれてしまった。以前も述べたが、とんこつにまだ馴染んでいる途中、ジョジョ三部で言えばまだ十五巻くらいのDIOである妻にとってとんこつ以外の鹿児島ラーメンというのはとても貴重なのである。

ということで妻は梅塩ラーメンを食べ、

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筆者は店舗限定の黒担々麺にチーズをトッピングして食べた。山椒が効いており、ひき肉も沢山入れてくれている。スープは辛いがすするのをやめられない後ひく辛さである。

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アルバイトさんも募集されていた。ラーメンブームです! の力強い断言ぶりにハッとさせられる。まったく、ラーメンブームだというのにラーメン屋で働きもしていないなんて……一体俺は何をしているんだ? という気付きを与えてくれた。

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サーカステントは早めの眠りについていた。サーカスの象にも、筆者にも、正直者にも、嘘つきにも、義なるものの上にも、不義なるものの上にも、静かに、皆に夜は降るのである。f:id:kimotokanata:20180402001432j:plain

本題

余談が、ながくなった。さて、西郷どん特別編である。働き方改革の一環で大河ドラマの話数が削減され、その穴埋めとしての企画であるという。そもそも論として、話数が削減されることでスタッフさんたちが楽になるのか(尺の関係でぎちぎちになる部分があったりするんじゃないのか)と思ったりもするし、話の途中で同じ時間帯に演者が演者として出てしまうのは、着ぐるみからアクターさんが顔を出してしまうようなものではないか、と思ったりもするが、内容はおおむね面白く、興味深いものであった。個人的には、美術をもっと詳しく見たかったな、とも思ったが。

今回衝撃で、一方で納得もしたのは斉彬の「命は一つじゃ、大切にしろ」や「君主キック(ゲージ消費技)」が渡辺謙さん発案だったということ。「西郷どん」の斉彬を成り立たせる上で欠かせない場面であったと思うので、もともと脚本に織り込まれていなかったのは衝撃であったし、やはり斉彬という「未来人のように英明で性急な君主」は「現代人である渡辺謙」の視点を落とし込まれていったからあのようなキャラクターになっているのだな、と合点がいった。より言えば、「独眼竜正宗で勝新太郎にあのような薫陶を受けた渡辺謙だからこそ、吉之助に対する斉彬はあのような感じなのだな」と腑に落ちた、ということになるやも知れぬ。

とにもかくにも、「斉彬ロス」が改めて不安になる特別編であった。

他方希望を見出したのは鈴木亮平さんの西郷どん観。

一直線の部分は魅力ですし持ち続けるんですけど(中略)大局を見て相手の立場になって「もう自分は別に死んでもいい」って思えてる人間はおそらく他の幕末のギラギラした若者たちとは全然違う余裕を持ってた気がするんですよ 。

 ――西郷どんスペシャルより引用。

筆者としてはまさに我が意を得たりという思いであった。そうなったきっかけ、斉彬の死と月照との入水、島流しを是非、鈴木さんの思いを貫いて演じてほしい。