カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

鳩羽つぐは偏在するのか、遍在するのか

余談

お蔭様で四か月目を迎えた。ソシャゲのログインボーナスもろくにこなせず、PS+のフリープレイも落とし忘れる体たらくですが何とか細々と継続できている。先月は旅行に行ったり余韻に浸ったり年度末だったりとせわしなく、じっくり記事を練られなかったのが残念である。一方でもっと端的に書かなくては、とも思う。

グーグルアナリティクスと連動させてみたところ、先月は大阪エリアからのアクセスが多かったとのことで、京阪旅行がブログにも良い影響をもたらしてくれているようでうれしい。

落第阿房列車その一 - カナタガタリ

ただ読者登録してくださる方はだいぶ落ち着いてきているし、最近は自分でも「お、この記事を書いているやつを追いかけたいぞ」という記事は書けていないなあと思うので精進したいところである。

人気記事も顕著であって、「へうげもの」最終回(最終巻)感想記事、封神演義感想記事がアクセスがいまだに安定して多く、検索流入の力を思い知る。ためしに「へうげもの 最終巻」でGoogleで検索してみたら一ページ目に出てきてこれまた望外の喜びであった。が、それ以上に耳目を集める記事が書けていないということなのでやはり研鑽あるのみである。

kimotokanata.hatenablog.com

 

kimotokanata.hatenablog.com

四月は診療報酬改正について思うことだったり、いい加減懸案の「天才柳沢教授の生活」11巻についてを書くこと、後は文章力をつけたいので週一回くらいお題スロットを使ってそれについて書く、という試みをやってみたい。どうしても週末に更新が集中してしまうのを改善したいところである。ともあれ今月もよろしくお願いいたします。

本題

鳩羽つぐを読者諸賢はご存知であろうか。アンテナの高い諸賢のことであるから先刻ご承知鴨、いやかもしれないが(今のは鳩と鴨をかけた高度なジョークです)恥ずかしながら筆者は四月一日に知った。Twitterリツイートされたファンアートで、それを見た時は名前の語感的に「ああ、初音ミク派生みたいな感じなのかな」程度に考えて気にも留めなかった。

筆者の悪癖に眠れぬ夜に「未解決事件」や「都市伝説」などで検索してますます眠れなくなってしまう、というものがあるのだが、ちょうど昨日は久々にそんな感じであった。そこで、「鳩羽つぐ」と「都市伝説」「未解決事件」をリンクさせる記事があり、そこでようやく筆者は「鳩羽つぐ」の一端を知り、また呑まれてしまったのである。

結論から言ってしまうと「鳩羽つぐ」とは今ナウなヤングの間で話題のバーチャルYoutuber(Vtuber)である。

あああれか、とVtuberを食わず嫌いして回れ右しようとする貴方、きっと貴方にこそ刺さるVtuberなのです。筆者もそうだったのだから。

鳩羽つぐの軌跡


#0 鳩羽つぐです

上記の動画が2018/2/28に投稿されたことから、彼女はそのキャリアをスタートさせる。同時にTwitterも開始している。

モノトーンでどこかノスタルジックな雰囲気の可愛らしいモデルで、見た目通りのたどたどしさが「その年ごろの女の子がユーチューバーデビューしたらこんな感じなのかもなあ」という気分にさせる。

が、動画終盤、雰囲気が変容する。彼女が手をふり、終了を宣する中、カメラは引き続け、ついにはスタジオのような場所で撮影されていたことが明らかになる。そしてそのまま動画は終了する。そこに彼女以外の人物は登場しない。撮影場所はなかなか本格的で、子煩悩な親が子どもを「ユーチューバーごっこ」をちょっとカメラに収めてみました~といった感じではない。モノトーンも相まって、非常に無機質な印象を受ける。

少なくとも、「これからこのかわいい女の子がたくさん動画を投稿しますから皆さん応援よろしくね!」というメッセージは全く感じられない。初めにこれは虚構なんですよ、と念押ししているような、かなたとこなたをしっかり線引きをしたような印象すら受ける。

筆者は椎名林檎女史の「本能」を連想した。


椎名林檎 - 本能

その後、Twitterで鳩羽つぐは2本動画を投稿する。(3/2と3/9)

 

 

どちらも10秒に満たない短い動画で、素人撮影らしく画面がぶれたり、ノイズが入ったりして彼女の声はいたく聞き取りづらいが、初めの動画では動画のチャンネル登録やツイッターのフォローのお礼、次の動画ではお仕事の事情により投稿が余りできなかったことのお詫びが述べられているようである。

 


#03 Morning Routine

そして3/26上記の動画が投稿される。ツイッターでは「宿題で撮りました」とコメント付きで投稿された。ここにおいていよいよ、様々な憶測が飛び交い始め、膨れ上がり、拡散し、筆者のような末端の人間に届くに至ったのである。

鳩羽つぐの不穏

読者諸賢は動画をご覧いただけただろうか。何とも言えない違和感を覚えなかっただろうか。

筆者はそもそも、「朝の準備を淡々と映すってのがなんか不気味」と思っていたのだが、女の子ユーチューバーを鑑賞する界隈(世の中にはいろいろな玄人がいらっしゃるものです)によれば「朝のルーティンは女の子ユーチューバー業界では鉄板、あるあるである」ということらしく、そこについてはおいておく(作者さんの素晴らしい取材力に感嘆するばかりである)として、問題は鏡の前で歯磨きをする30秒前後のシーン。

ポットの取っ手の向きが鏡に映ったものと明らかに違うのである。

他にも利き手など色々とおかしな点があるが、筆者は違和感を覚え、巻き戻して見た時布団をちょっと強めに握りなおすほど恐ろしかった。

ポットの向きが違うということは即ち、彼女が向かっているものは単なる鏡ではなく、マジックミラーのようなもので、この動画はマジックミラーの向こう側から第三者が撮影している可能性がある(しかもパッと見では分からないようにポットなどの配置を似せて)ということである。その人物は何者なのか。目的は何なのか。彼女はそれを承知しているのか。勿論そんな台詞は一切なく、今回も「おわりでーす」と彼女の柔らかな声に動画は締めくくられる。

3Dで鏡の表現が難しいのでミスではないか、という指摘もあるようだが、この作者さんがそんなミスをするだろうか、と思うのである。これはメッセージなのではないか、と。

例えば。鳩羽つぐはジュニアアイドルである。(お仕事)ユーチューバーとしての活動を始めることになった。(#0は事務所のスタジオで撮影した)その後、事務所の管理するマンションで暮らすこととなった。そこで自分の動画を撮るように言われた(宿題)ものが#3である。しかしそこで第三者の監視が感じられるような1シーンを挟み込むことによって、ただのおぼつかない女の子ユーチューバーのシミュレートではない、と言いたいのではないか、とついつい脳みそが不穏に働いてしまうのである。

その不穏さにはネットも敏感なようで、「行方不明の子どもの情報提供を呼びかけるときにTVで流れるホームビデオの様に心をざわつかせる」「誘拐犯が生存のサインとして送ってきているのではないか」「実はもうずっと前に亡くなった子が突如電子上に表れたのではないか」など筆者の貧困な想像力では到底追いつけない。作者さん、もし不穏にするおつもりが一切なかったのなら誠に申し訳ありません。

全体的なモノトーンと相まって、鳩羽つぐは現れたばかりであるのに、何故か我々に過ぎ去ってしまった誰かを、何かを思い起こさせる。本当は忘れてはいけなかった何かを忘れてしまっていたような、思い出さなければいけないような気分にさせる。

筆者はVtuberというものに全く門外漢だが、イメージとして原色きらびやかでサムネから全力投球、ツイッターSNSも有効活用、横のつながりも強く交流が盛ん、というイメージがあったので、鳩羽つぐのようなそのイメージの正しく対極に位置する存在がいると知ることが出来ただけでも収穫だった。本当に、食わず嫌いは良くない。

ただ、彼女及びその周辺はVtuberというより、モキュメンタリー「Vtuber 鳩羽つぐ」のようなパッケージがより正確なのかな、とは思う。

鳩羽つぐはそのはかない曖昧さを持って、YoutubeTwitterという大きなメディアを通して多くの人々のもとへ遍在し、また考察好きをはじめ物語を求める人間たちの心の少し湿った部分により深く、色濃くなって偏在する両義性を持つのである。