カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

ハラキリショー! あるいはゴールデンカムイ16巻感想

ゴールデンカムイ 16 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

余談

妻は最近鯉登少尉にお熱である。筆者も薩摩人のはしくれ、それは悪い気はしないのだが、ピンナップが収録されているアニメ雑誌を買うというムーブを妻がするのをはじめてみたので(IZONEのノンノ特集は我慢したのに)こやつ……本気じゃな……と思う。

月島軍曹表紙の15巻が出た時から「次は絶対鯉登少尉」とうわごとのように繰り返していてどうしてこんなになるまで(以下略)←懐かしいですね(この矢印もね)という心境であったが、果たしてその通りであった。妻の喜びようはひとしおであった。

それは特典版がないことの悲しさにも繋がったのであるが。

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本日からこちらのイベントが始まり、今週末行く予定であったのだが鯉登少尉のポストカードが12/30からであったので急遽日程を変更するほどのお熱ぶりであった。忘年会の次の日なので頑張って起きたい。

ということで勿論ここから下はゴールデンカムイ16巻までのネタバレ満載です

 

 

 

 

 

 

本題

アシリパさん組で土方、杉元組をサンドイッチしたような内容であった。相変わらず振れ幅がすごい。

ホホチリの交錯

ジャコウジカ狩りに乗せてまつろわぬものであったウイルクやキロランケの悲哀、アシリパとの思い出が語られる。しかしその一つ一つからも金塊の手がかりを探り出そうとするキロランケと尾形の(尾形は何を考えているのか分からんが)視線は暗い。全身麝香だからといって油断は禁物である。

侍になりきれなかったもの達の決斗

まずは土方組が人斬り用一郎と対峙する。かつて永倉新八は言った。年寄りを見たら「生き残り」と思えと。その通り生きているのか死んでいるかもわからないジャック・クリスピンが嫌悪しそうな老人は自らへの殺気を感じ取るや「あの時代」を纏い始める。しかしそれは彼にとって紛れもない悪夢。彼自身をむしばんでいることに気がついた土方はその生き方を否定はしないが、受け入れもしない。

志士という流行病に浮かされた用一郎は完治せぬまま、侍になりきれず切って捨てられ、「アイヌ」――人になろうとし、そして死んでいった。

新撰組もまた歪な侍になりきれなかったもの達の集合体である。彼らは今なんになろうとし、死んでいくのか。筆者はかつてゴールデンカムイの主要人物達を死すべき時に死にきれなかったもの達と書いたし、今でもそう思っているが、土方の北海道独立が思想として提示された今、そこを目指してまだ生きて欲しいと思ってしまうあたりやはりこの作品の土方は魅力的である。

 

とざいとお~ざい樺太島大サーカス

侍とは、明治政府とは何なのかと感傷に浸っていたら明治政府の北面の武士たる陸軍兵士達が(元もいるけど)軽業に目覚めたり少女団のお荷物になっていたりハラキリショーを始めたりそれらをさめざめとした目線で見たりしている(枕はしません)から恐ろしいマンガである。乳輪がでかい! 水が冷たい!

ほれぼれするほど鯉登音之進大活躍であった。誰か薩摩揚げでも大量に送りつけたのだろうか? 今までの失点を取り戻せて……はいないのだが。本筋に関しては邪魔ばかりしているし。

鶴見中尉殿に叱られてしまう……!!(ジャアアァーーーン)

ヤマダ曲馬団のモデルはそのままヤマダ・サーカスだと思うがこの後スパイ容疑で団員が処刑されたりもする。

ハラキリショーも実際に人気演目だったようだが、いわゆる切腹ではなく子どもを切りつけるように見せるバイオレンスなもので、最後は布にくるんで引き上げさせ、その死体を埋めているんでは無いかということで警察のガサ入れが入ったりもしたらしい。

いかにも意味ありげな引きで気になる紅子先輩であるが、恐らくモデルは山根はる子さんであろう。上記のヤマダ・サーカスに所属し、結婚するもロシア革命の混乱の中夫に先立たれ、義母に捨てられ、旅券も切れた中で遠く離れた日本大使館へどうにかたどり着き、必死に「かっぽれ」を踊って日本人だと信じてもらったというエピソードがある。


かっぽれ

果たして紅子先輩もモデルのような人生をこの先辿るとして、滑稽みのあるかっぽれを踊ったときに少女団の大きな後輩のことをふと思い出したりするのだろうか、それは出来れば微笑ともにであって欲しい、と思った。

再びアシリパ組・オロチックウラー(化け馴鹿)と化けウイルタ

すぐ尾形が彼氏面してくるので真意を測りかねる(どちらかというと母性を求めているのではという指摘もあるようだ)。アシリパさんは尾形がアチャと杉元の脳漿ぶちまけた張本人であることを知ったらどうするのだろうか。

キロランケに関しても物騒な前歴が語られた。工兵だったから爆薬に精通しているわけではなくその逆だったのだろうなと類推が働く。

しかし気持ちの悪い生き物であるところの情報将校・鶴見中尉が本領発揮して一枚上をいかれたところで次巻。さっそく待ち遠しい。