カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

チェヨン、一緒にデビューしてくれてありがとう。―PRODUCE48からMステまで

余談

IZONE、日本デビューおめでとう。韓国で見る、いつもの君たち。筆者にとって新鮮味のないことが、成功の証だと思う……というようなおふざけはやめよう。

日本でのIZONEはまた少し色を変えて来た。判り易くは外見が日本向けメイクになり、筆者個人としてはますます親しみを感じやすくなった。高嶺の花ではあり続けるものの、社長令嬢から学校一の美女くらいにまでオーラを抑えてくれた感じである。

楽曲も日本のアイドル的なものを持って来たなあと言う感じ。表題曲である「好きと言わせたい」はあからさまに最終順位順に展開される譜割り、サビのユニゾンは正直ちょっと食傷気味ではあったけれど、いい意味での90年代感があって良い。


IZ*ONE (아이즈원) - '好きと言わせたい (Suki to Iwasetai)' MV

「好きになっちゃうだろう?」と対になっている曲だと思うのだが、「好きになっちゃうだろう?」が筆者的に大名曲だったのがちょっと評価が厳しくなってしまっている理由かもしれない。関連番組でお気軽にイントロが使われているとちょっとイラッとするぐらい好きである。


IZ*ONE CHU 반해버리잖아?(IZ*ONE Ver.) - IZ*ONE(아이즈원) 181029 EP.5

日本デビュー曲の中ではMV含め「ご機嫌サヨナラ」が抜群にいい。これだよ!アイドルってのは!と快哉を叫びたい。この三曲に共通することだが、90年代アニメのED曲のようなノスタルジーがどこか感じられるのが筆者にはたまらない。あと最後に「ご・き・げ~ん☆」というファンシーさ大爆発なフリを最年長のウンビさん…いや、かわいいかわいいウンビちゃんが引き受けるのが個人的にとてもツボである。


[MV] IZ*ONE 아이즈눤 - Gokigen Sayonara (ご機嫌サヨナラ)

 また、メンバーの内面も日本メンバーはやはり少し羽が伸びており、韓国メンバーは新境地を楽しんでいるようで、わずかの間に日本語がどんどんと上達していて驚かされる。

本題

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 PRODUCE48から気が付けば終了から数えても半年ほどが経とうとしており、月日の早さにおののくばかりである。日本デビューの一つのクライマックスともいえるミュージックステーションオープニングアクトを見事成し遂げたこの日に、改めてIZONEの徒然を考えるに、筆者は結局のところ、表題に至る。

チェヨン、一緒にデビューしてくれてありがとう、と。

PRODUCE48は群像劇である。それぞれの練習生の物語があった。それらは固有の輝きを我々にジャジャーン!と突きつけていってくれた。

けれど。その始まりから終わりを通貫しうる極太の物語を求めた時、筆者はどうしても宮脇咲良さんとイ・チェヨンさんの物語を軸に考えてしまわざるを得ない。

第一話。チェヨンさんは「これが韓国練習生の実力だ」ということを叩きつけてくれ、筆者のような無知な視聴者に強烈なインパクトを与えた。すさまじいまでのダンステクニック、シャープなルックス、安定した歌声……。画面越しの筆者ですらそうだったのだから、目の当たりにした48G諸賢の驚愕はいかほどのものだったことか。


PRODUCE48 [단독/풀버전] WM_이채연, 이승현, 조영인 ♬Shower @기획사별 퍼포먼스 180622 EP.2

一方で宮脇咲良さんは可愛い系ではなくかっこいい系の楽曲をあえてチョイスし、ソロで果敢に挑戦するものの、韓国練習生の練習生離れしたパフォーマンス、48Gのエースという膨れ上がった期待値が足かせとなり、現場での雰囲気は芳しくなかった。それでもA評価をもらうことがまた波乱を生んでいくのだが……


PRODUCE48 [단독/풀버전] HKT48_미야와키 사쿠라 ♬검은 천사 @기획사별 퍼포먼스 180622 EP.2

日本と韓国。デビュー済みと未デビュー。(あえて分けるなら)ビジュアルメンとダンスメン。選ばれたものと、選ばれなかったもの(チェヨンさんは番組中にも言及があるが、かつて2回、オーディション番組にて落選している)――あまりに対照的な2人は、しかし2人ともが、Aクラスであった。そのことが2人の運命を大きく左右する。

続いての課題はグループバトル。かつて筆者も宣伝したように、「アイドルグループ」としての適性が本格的に試され始めるこのテストにおいて、メンバー選びが最重要であるのは言うまでもない。宮脇さんは直前に暫定センターに選出され、一番最初に好きなメンバーを選出する権利を得た。宮脇さんが率いるチームであれば当然注目度も高まる。誰もが選んでほしかったに違いない。

いの一番に宮脇さんが選んだのは、チェヨンさんだった。そのほとんどがアイズワンとなった名前通りのアベンジャーズであった宮脇さんチームはしかし、宮脇さんの独特の運動神経により目指す楽曲が獲得できなかったことも手伝ってか、(ここでその目当ての曲を獲得した松井さんが宮脇さんチームを指名してくれたら最高だったのだが……)敗北を喫する。

しかしグループバトルチームでの伝言ゲームでじゃチェヨンさんと宮脇さんのお茶目な交流はそれぞれの今までにない側面を映し出し、その友情の片鱗を我々に垣間見せてくれた。

その後のチェヨンさんの道のりは、順位こそある程度の水準を保っていたものの、平坦であったとは言い難い。長所と自負するダンスでも一位は獲得できず、コンセプト評価ではリーダーとして献身的に務めながらも、まさかの投票による放出。この時の自分を分析する言葉が悲しすぎる。流浪の先でも受け入れられず、辿り着いた「1000%」でも自信のなさを露呈してしまう。

一方の宮脇さんは人気は常にトップクラスにありながら、チーム自体は不思議と勝利を掴めず、コンセプト評価では国外にいる間に放出されるなど、自分の意志が介在しないところで翻弄されていた。

最終回直前の順位発表。宮脇さんはついに一位を獲得し、チェヨンさんもその姿勢が多くの人の胸を打ったのか、今までにない三位と言う高順位を獲得した。

最終回。チェヨンさんはついに、PRODUCE48内で最初で最後のセンターを獲得する。そして宮脇さんは候補になるも、惜しくも落選した。チェヨンさんは最後の最後でセンターを務め、宮脇さんは初めのセンター以外は候補にはことごとく上がるもののついにはセンターとなることはなかった(最終話のネッコヤを除いて)という対称性もまた、面白い偶然であると言える。

宮脇さんは、二位になった。日本人一位。述べられるスピーチは、総選挙の時のような焦燥にかられたものではなく、全てを出し切った後の爽やかなスピーチであった。お手本の様であったと言っていい。

イ・スンギ国民プロデューサー代表は、メフィストフェレスは囁く。「今、思い浮かぶ……気持ちを伝えたい人がいますか?」それは例えば一般的にはスピーチで一度伝えはしたけれど家族であったり、メンバーであったり、スタッフ、ファンであったりするはずである。普通はそうだ。アイドル的模範解答はそうだ。ついさっき、宮脇さん自身も出来たことだ。簡単なことだ。過去、宮脇さんは幾度もそうしてきた。優等生アイドルだ。今回もその一つのルーティンに過ぎない……。

 

チェヨン、いつも支えてくれてありがとう。一緒にデビューしたいです」

 

それはアイドルの言葉ではなかった。一人の、100日間異国で戦い抜いた女の子の、これからも2年半戦い続けなくてはいけない女の子の、等身大の本音だった。

自分がかつて、いの一番に選んだ女の子への意志表明だった。ある意味では国民プロデューサーへの宣戦布告だったとさえ言えるかもしれない。

「私の1Pickはずっと、あなただったよ」と。

優等生アイドルから脱皮できるのは、優等生アイドルだったものだけである。この期に及んで更に一段ギアを上げ、自らのアップデートを続ける宮脇咲良というアイドル――「等身大の少女・宮脇咲良」というパッケージングすらも意識的なのか無意識的なのか直ぐに行ってしまうその恐ろしさ(とはいえこれはやはり無作為の結果であることこそが美しいと思うが)――に大きく心を揺らされたのが懐かしい。

そして果たして、最終十二位、IZONE最後のメンバーはイ・チェヨンさんであった。

PRODUCE48を通貫する物語。それは選ばれ続けなかった少女を初めて選んだ少女が、その少女を信じ続けた結果、最後の最後で国民プロデューサーにも選ばれる、というものであった。

 

そしてIZONEではチェヨンさんはメインダンサーとして不可欠の存在となっている。韓国デビュー曲2番サビのセンターでの彼女の輝きと言ったらない。ビジュアル的にも個人的には練習生時代から最も「覚醒」したのは彼女だと考えており、特に韓国デビュー曲の縦縞衣装は選んだスタッフは表彰すべき案件であるとすら思える。Mカウントダウンでの一位獲得時、自分はなることが出来なかったTWICEのメンバーと喜びを分かち合うシーンを見て思わずグッときてしまった。

また、宮脇さんとの初期からの交流も手伝ってか、日本語が達者なため、メンバーのコミュニケーションの潤滑油ともなっている。IZONECHUでのドッキリでリーダーに宮脇さんがチェヨンさんを推薦したのは半ば本気であったろう。料理が出来るのもポイントが高い。

デビュー後に一番変わったのは、表情が柔らかくなり、軽口もよく聞けるようになったことだろうか。「宮脇チェヨンです」にはじまり、「胸キュン!」と叫んで倒れ伏すなど、意外なバラエティへの適性を見るに、そういった部分でも宮脇さんとの化学反応がいいように起こっているようで微笑ましい。

本日のMステもチェヨンさんど真ん中のフォーメーションから始まった。メインダンサーはもはや彼女以外に考えられない。その軽やかさで「羽」に例えられるチェヨンさん。その軽やかさでもって、IZONEをまだまだ高いステージへ導いてくれるはずである。

蛇足

そんな初回は勿論面白く、何度見ても新たな発見がある「PRODUCE48」及びIZONEデビュー特番が今ならアベマTVで全て無料で視聴できてしまう。2/17までと言うから期限は迫っている。是非一度、見ていただきたい。貴方の少女を応援しよう。

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