カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

瞼の裏の永遠ーIZONE日本カムバック曲「Buenos Aires(ブエノスアイレス)」MV他考察(感想)

「シブヤノオト」で初見の時、こんな記事を書いた。

 

kimotokanata.hatenablog.com

 


その後Mステを見て、うたコンを見て(produce48でもみんなを繋いだヘビーローテーションのIZONEバージョンは感慨深いものがあったしやはりジャケット衣装は素晴らしい)、MVを見て、YouTubemusicでフルバージョンも聴いた。
改めて感想を述べたいと思う。


IZ*ONE (아이즈원) - 'Buenos Aires' MV

まあまずはちょっと、この圧倒的な美を摂取していただきたい。サファリモードでは目を見開き、他の衣装の時はちょっと薄目で鑑賞することがより堪能するコツである。

この曲はMVで完成するタイプなのかなと感じた。歌詞だけではチープだった世界観がMVのアイズワン諸賢の美しさによって補強されたように思う。

ブエノスアイレスの「歌詞」と「MV」を重ね合わせて筆者が至った結論は「あ、こいつら日本から出てないし多分無理心中しているな」であった。

ハエトリグサがまず、画面に現れる。英語では「Venus Flytrap」というから「女神」を冠する辺りアイズワン諸賢に相応しいセレクトであると言えるだろう。序盤複数回、彼女たちが万華鏡を通して見たような見え方になる。これは複眼を表現している(実際はこんな見え方はしないらしいが)のではなかろうか。即ち視点人物はハエ=補食対象者である、と考えることが出来る。

そうするといかにも秋元康的テンプレートな日本語歌詞の入りも不気味な側面を帯びてくる。アイズワン=問いかけ相手=食虫植物に生殺与奪権を握られている状況で「どこかへ連れていきたいのか?」と提案していたことが判明するからだ。

植物は、自ら動くことができない。ハエは、我々がいつも煩わしいと感じるほど好き放題に飛び回る。これがそのままフットワークの軽い男と一途な女性の比喩だとするなら、そしてこの対峙した状態であるなら、すでに不穏さに満ちている。

ますます悪女っぽさに磨きがかかるキム・チェウォンさん、ただそこにある美、カン・ヘウォンさん、ホグたちの囚人生活で新たな一面を見せたチェ・イェナさん、三者三様の不穏さのまとい方はさすが美少女のデパートである。しかしみんな日本語がうまい。

二人はなにか、退っ引きならない状態である。道ならぬ恋であるのかもしれない。そこから一人は逃げ出したがり、一人は怖じ気づいているように感じられる。

しかし提案は、恐らく実行されることはなかった。だから想像であるし、羨望であるし、願望だ。逃避行も、添い遂げることも、「しようか?」や「みようか」など提案はされるけれど、受け入れられた様子はない。
決定的なのは矢吹奈子さんのシーン。まるで童話のように鮮やかな赤い花飛沫。ビビッドな色が美少女によく似合うが、見方を変えれば惨劇の現場にも思え...これ、つまり、そういうことだと思うのである。
交渉は決裂した。だから二人だけのパラダイスは、「瞳を閉じ」なければ出現しない。想像の航路を辿らなければ辿り着けない。もはやこの世には存在しないのだから。もうこの世には、一人しかいないのだから、そもそも。

「愛だけが真実の地図」というのはとても美しいフレーズだが、逆説的に考えれば愛がなければ真実には永遠に辿り着けないという残酷さをはらんでいるのだ。

だから、ラジオは古いのである。誰が踊っているかわからないのである。歌は始め未来を歌っていたけれど、二人の未来はもう存在しないのだから。

IZONEの誇る二人のダンサーが(本田仁美さんも是非参加してほしかったが...ますます美しさに磨きがかかっているがダンサーとしてのチョイスは少なく感じるのが残念。)躍動するダンスブースト、クォン・ウンビさんがばっと現れるシーンはまさに「補食」のその瞬間であるように思えるし、イ・チェヨンさんの動きは衝動そのもののようだ。
キム・ミンジュさんの普段の穏やかな表情からは想像もつかない「女帝」感漂う締めも素晴らしい。個人的には髪色はMVの時の方が好きである。

メインボーカル、チョ・ユリさんが最後に「ブエノスアイレス」をたっぷりと歌い上げる。今のユリさんであれば山手線の駅名を歌うだけでも人々を感動させることができそうである。

その前の逆光、丸穴の向こうに覗くごくせんジャージというハンデを背負わされてもなお美しいチャン・ウォニョンさん。これは同じく代表的な食虫植物ウツボカズラを隠喩しているようにも見えた。そうなると、どう見ても「ルーモアポーズ」(ところでこのひざまずく動き、MVではほとんど映らずうたコンでは大人しかったのだが規制が入ったのだろうか)が16歳なのにめちゃくちゃサマになっているアン・ユジンさんの「愛してる」に合わせた指の振りもハエトリグサの補食シーンに見えてしまうではないか。
残念な点はうたコンではポニーテールがあまりにも似合いすぎ可愛すぎであった宮脇咲良さんの今回個人的には最大の見せ場だと思っている最後の決めポーズがMVだと拝見できない点くらいである。

最後に、瞼が閉じられる。ハエトリグサが、閉まる。補食行動は非常にエネルギーを使い、(むやみに指でつついたりするとすぐに枯れてしまう)ハエトリグサにとっても命がけの行動である。そうしてMV冒頭のシーンに戻る。

じつは冒頭のシーンこそが、時間軸的には最後なのではないか、と考えている。満身創痍の彼女は目を閉じ、そして開くことはもうなかったのではなかろうか、と。

以上、とりとめもない感想であった。ただの妄想ではあるのだが、個人の妄言としてご容赦願いたい。

今回歌詞で一番納得したのは「地名の響きだけで決めた」という部分である。やすす、あんたマジで曲名そういうスタンスで決めただろ(誉め言葉)。

なんだかんだで中毒性があるのは間違いなく、それだけに本当に一部の衣装が悔やまれる。オサレカンパニー早く来て。

Buenos Aires(Type A)(DVD付)