カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

空(くう)になりたい、自由な空へ――九年間使い続けたTwitterアイコンからの卒業

余談

十年前、筆者はプロデューサーであった。いや平々凡々な大学生であったのだが。

アイドルマスターのファンであった。今考えてみると、もちろんコンテンツとしての「アイマス」はもちろん、この頃のコミュニティとしての「ニコマス」界隈が特にとても好きだったのだな、と思うのだが――。

ともあれ間もなく十年選手となるTwitterも、ニコマスPと交流が出来る、(というかP同士ががやいのやいのしているのを見ることが出来る)更新情報がいち早く手に入る、という理由で始めた。

その過程で、同世代ながらエッジの効いた作風で魅了されていたPにアイコンを――今回変更にあたって「プロフィール画像」とUIから言われたが本記事では呼称を「アイコン」に統一する――描いていただくという幸運を得た。とても好きなキャラクターが、とても好きなPの絵柄で描かれ、それが自分の分身となるのである。こんな嬉しいことはなかった。

彼女の名前がまた、Twitterというツールにとてもマッチしていたのも運命的に感じた――小鳥はさえずるものだから。

以来昨日まで、そのアイコンを使用してきた。それは自分の帰属意識の確認であったかもしれない。交流の途絶えてしまったPに「私はここにいます」というサインであったかもしれない。落ち込んだ時、全てを消去して片眉を剃り落として山に籠りたいと思った時、自らのアイコンを見ることで「あっカワいっ」となって踏みとどまったこともある。

このアイコンが可愛いからリフォローしてくださった方もいることだろう。同じキャラクターのアイコンを集めたリストに入れてくださった方もいらした。

いわば筆者のTwitterライフはアイコンによって支えられていたと言っても過言ではない。

そのアイコンを変えることにした。

本題

どうして変えるのか。

それは筆者が三十路に突入したからである。三十である。アラウンドなんて生ぬるい、どこに出しても恥ずかしくないサーティである。サーである。女王陛下の三十路である。

アイコンに使用していたキャラクターは年齢が2×(チョメチョメ)才であり、即ち生まれ年がアイドルマスターが長寿コンテンツとなった結果昭和から平成にスライドしたわけであるがそれは置いておいて、読者諸賢が繰り上がりという算数の秘奥義を修めていた場合、

三十路=2×

とするとき、Xに入る正の整数は存在しないことが理解できるはずである。

ここに至って筆者はこのアイコンからの卒業を決意したのだった。(一応言っておくが三十路以上の方が同キャラクターのアイコンを使用されることについて筆者は一切の感情を持たない。これはただ筆者個人においての契機である。本当に念のためだが注記しておく)

さてアイコンをどうするか。

自撮りにしてしまえばフォロワーの大量減少、やもすればアカウントの凍結が懸念される。

ブログ、LINEなど他ツールのアイコンとは別にしたい(特にブログについては統一した方が何かと便利だとは思うのだが、今回はこのようにした)。

版権キャラクターの画像の利用では何か舌禍を引き起こした場合、界隈に迷惑がかかる。

折角であるからなにか妻を喚起させるものを用いて、今まで同様辛い時のセーフティネットとして活用したい。

これらの件を総合し、手元にあるものということで、筆者はキーケースを使おうと思った。妻が以前、筆者への誕生日プレゼントとして下賜したものである。数年たち、今やとても手に馴染んでくれている。

これをただ撮るのも味気ないので、「Paper Camera」を使って漫画チックに加工する。これをセール10円で買った時の愛機、初代メディアス君ではカックカックだったなあ……ていうか最初Twitterガラケーでやってたな……と一瞬この10年の諸々が濁流のように押し寄せかけたが、何とか辛抱し、写真を撮る。設定する。

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鍵アカウントでもないのに鍵アイコン、というのもいいじゃないか、と思っていたが、やはり履き立ての革靴のように窮屈な感じは否めない。

深夜、誕生日を過ぎ筆者は再びアイコンの試行錯誤を始めた。妻は筆者の体のパーツで手が好きだという。それをアイコンにしてはどうか。

が、よくよく考えれば「手がアイコン」の有名ツイッタラ―の方は今すぐ思いつくだけでも2人はいらっしゃり、別にそこに並ぼうとかは全然思ってはいないものの、しかしわざわざかぶりに行く必要もなかろうと却下になった。不敵なキツネ・サイン!

煮詰まった筆者に、妻が一枚の紙を差し入れた。何だろうか。

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……何だろうか?

えっホントにマジで何?これ?

妻「肉塊だよ」

筆者「えっこれはなんか私の似顔絵とかなんかそういうたぐいのやつ?」

妻「いや、それは肉塊だよ」

筆者「そう……」

とはいえ筆者の中ではサイコジェニー以来の眼力に衝撃は冷めやらず、もうこれをアイコンにしよう、と思った。この短絡さが深夜である。寝ろ。

が、深夜筆者は止まらない。待ってろよ肉塊……お前を最高に格好良くしてやるからな!

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駄目だ……なかなか格好良くならない……何だこの地獄みたいなカメラロールは……。

やればやるほど正解が分からなくなり、そもそもこの中に正解があるということを疑うべきであったのかもしれないが、ともあれ妻の託宣を得ることにした。

妻「4つ並んでるやつの右下が良い。令和っぽい」

令和っぽさとは……?という疑問は一度胸にしまい、トリミングをする。

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完全に悪夢のカラーリングである。ガロとか好きそうである。

が、ここでアクシデントが発生した。スマホプロフィール画像を設定しようとすると、この状態では上手く範囲に入らない。「肉塊」部分が切れてしまうのである。

毒を食らわば皿まで。もはや妥協は許されなかった。まってろ「肉塊」の文字部分……お前も絶対にツイッタランドに連れて行くからな……!

結局「スマホを横画面にし、その状態のスクショを撮る」という荒業によって横の辺が長い画像を錬成することに成功し、無事に枠内にすべてが収まった。

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ただし、やはり元が長方形であるので左右に黒枠となってしまったのは遺憾であった。

何かの間違いでツイッターを経由してインタビューを受けた場合、この画像が使われることになると考えるとちょっと面白い。

ともあれ久しぶりにアイコンを変えて、まるで下駄で歩き回った後の裸足みたいに頼りない感覚でまたツイッターを継続していくことになった。

暫くは、アイコン変更前のツイートとアイコンのギャップを楽しみたい。

めっちゃ目を見開いとるのに。