カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

そういうことだろ?―キングオブコント2019感想

 お笑い、好きである。

kimotokanata.hatenablog.com

 

でも別に詳しいとかでは全然なくて、単なるミーハーなのであるが、それにしても今回のキングオブコントは歴代で見てもかなりレベルが高かったと思う。

 今回全然情報が入ってこないな、と思ったらそれもそのはずファイナリストは当日発表なのだった。

10組の内訳としては、

吉本興業:6組(うるとらブギーズネルソンズ空気階段ビスケットブラザーズジャルジャル、GAG)

グレープカンパニー:2組(ゾフィーわらふぢなるお

浅井企画(どぶろっく)

マセキ芸能社かが屋

となっていてさすがに吉本興業が強いが、規模から考えるとグレープカンパニーがすごい。

タイミングが合わず呟けなかった出場者もいるが、本当に全組面白かった。

個人的には空気階段の最後の怒涛の畳みかけが特に好きだった。

GAGも前回より更に磨きがかかっていたが、それだけに決選投票となってしまったのは残念だった。尺の問題もあるのだろうが、ファイナル4組見てみたかったものだ。

そのファイナル。ジャルジャルは、まさかの不条理ホラーのような落ち。ような、という3文字に凝縮されたすっきりしなさ。審査員の面々が言っていたように、場面が暗転した後なにも言わなくてもいいから福徳さんが隅で体育座りでもしていればまた違ったのではないかと思う。直後CMだったので、CM明けにスタジオががらんどうだったらどうしようというメタ的な気分になれたのは良かったが。

聞けば、足を怪我されていたということで実際はもっと動きのあるネタをするはずだったのかもしれない。無念だろう。

しかしこの「キングオブコントらしくなさ」「賞レースらしくなさ」あふれるネタをかけるというのが良くも悪くもジャルジャルらしいなあ、と感じた。

続いてトップバッターのプレッシャーをはねのけてファイナルへ進んだうるとらブギーズは初出場、初ファイナルとは思えないのびのびとしたネタで、正月にこたつに入りながら見るのに最高なタイプのコントだった。ただ決勝に比べて動きが少なく、場面が単調だったのが個人的には残念だった。

そしてラスト。決勝では最高得点を叩きだしたどぶろっく。伸びやかな歌声で紡がれるとんでもない歌詞で男性の根源的な欲求を訴えたその時、観客は自然に拍手が起こった。

かつて、M-1グランプリにテツ&トモが出場した時、故・立川談志は「こんなところに出てくるべきではない」という言葉を贈った。これは「もうしっかり営業で根を張っているのだから賞レースに出るような段階はもう過ぎているだろう?」という彼なりのエールだったというが、どぶろっくの参戦が分かったとき、筆者も同じような気持ちを抱いた。もうそんな段階ではないのではないかと。

それをいつも通りの2人、天使の歌声に悪魔の歌詞をのせるパターンでしかし確かに新しさを感じさせつつ、ねじ伏せて見せた。

だが、それはキングオブコントという場で、どぶろっくがセメントマッチを挑んできた、という驚きも含んだ笑いであって、ファイナルでは果たしてどのようなアプローチで来るのか……駄々滑りして伝説を作ってしまうのではないか……。そんな予感を筆者は持ったりもしていた。

ファイナル最終組、どぶろっくは、同じパターンで勝負してきた。

シチュエーションを踏襲して、人間と神の役割を変えて、

しかし、やはり話の焦点は大きな一物だったのである。

ガッツリスケベの江口さん扮する神が授けようとした時、筆者は不覚にも感動してしまった。

画面越しに声が聞こえた気がした。これが俺達なんだと。

コントというのは、何かを演じることで成立する笑いだ。

だからこそ彼らの裸の叫びが、いやそういう意味じゃなくて素と言うかそういう感じの、とにかくむきだしの「自分たちのスタイル」を全力で投げつけてくるスタイルに清々しさを感じた。

「俺達これしかないんで」

という江口さんの言葉がずっしりと響いた。

観客のリアクションは雄弁であり、そのまま、かれらがキングオブコント第12回王者に輝いた。

 

江口さんの涙に筆者もまた、こみ上げてくるものがあった。

芸歴16年。これはジャルジャルの17年に次ぐ今回出場者の中では長いキャリアである。

自分たちの「らしさ」を貫いたという意味では2組のベテランどちらもそうだった。

ジャルジャルが決勝戦のネタのように我々一般人にもっと寄せてきてくれたら、結果は違ったかもしれない。

ともあれあらびき団の頃から好きだったのでうれしい。どぶろっくおめでとう!

もしかしてだけど