カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

ツイステッド・ワンダーランド5章「美貌の圧制者」感想・予想・妄想・考察

本題

 

kimotokanata.hatenablog.com

 前章の感想のようなものを書きなぐってから100日以上が過ぎた。

その後開催されたイベントも味わい深いものであったけれど、やはりメインストーリーはゲームの華。待ち望んだ5章がいよいよ実装された。

「前編その1」という謙虚に言ってはいるものの、既に怒涛のボリュームとなっている「美貌の圧制者」について、いつもの通り戯言を吐いていきたい。

ということで以下はツイステッド・ワンダーランド(以下ツイステ)について一切の躊躇ないネタバレが繰り広げられます。

 

焦る王妃、恐れる毒林檎、飄然とした狩人

ポムフィオーレ寮。正直、筆者はまだまだ理解できていない寮である。ガチャを引いていても、オクタヴィネル、ポムフィオーレ、イグニハイドあたりは棺が開いた時にすぐどの寮だ! とわからないのである。というか同系色が多すぎる。お前はアイズワンのパーソナルカラーかと言いたくなる。

彼らの理解の入り口に立たせてくれたのは先だってのイベント「ゴースト・マリッジ」であった。ヴィル様の気高さ、エペル君のギャップ、ルーク君の洒脱な中に隠しきれない狩猟本能など、なかなかそれぞれのパーソナルストーリーを進められない(どれだけ錬金術をしても教科書が足りない……)筆者にとってありがたい描写であった。

しかして5章に入ってみると、何やら不穏である。タイトル「美貌の圧制者」を踏まえればそれまでの法則からしてオーバーブロットするのはヴィル様になるのであろうが、(今日配信されたスカラビアCMはすごく良かったけど「熱砂の策謀家」が「どっち」なのか? ということも4章の鍵の一つだと思っていたので、今までのCMの傾向的にわかっていたことであったがオッ普通にばらしちゃうんだなとちょっと思ったりもした)早速「1オバブロポイント」が溜まったようであった。

ヴィル様の鬱憤をためる相手はネージュ君。「雪」を名に持つ彼が何をモチーフとしているかは、その服装を見ても明らかである。白雪姫。ヴィル様が「ウィックド・クィーン」をモチーフとするならば文字通り天敵となる相手だ。

「Mira,Mira(鏡よ鏡)」。彼がそうつぶやいた時、その結果が自分ではないとき、世界は少しずつねじれ始める。(この「Mira」が実はヴィルのユニーク魔法により具現化したものなのでは? と思ったりもするのだがどうだろう)

障害は除かなければならない。その為に必要なのは道具である。「毒林檎」たるエペル君……ネージュ君と同じ「タイプ」と見たヴィル様は同じようにエペル君を指導しようとするが、それこそはエペル君が最も避けたい行為であった。しかしその「圧制」に今のところエペル君はただ、恐れるしかない……。果たしてこの後反逆するのか、打ちひしがれてしまうのか……。

二人に比べれば「ボーテ! 100点!」をトレンドに叩き込んだルーク君はまるで一服の清涼剤……にしては癖が強すぎるが、その「ほめて伸ばす」スタイルには敬意を表したい。しかし我々はすでに、彼が「血が出るなら殺せるな」みたいな思考回路で動いている狩人であることを知ってしまっている。原典の「白雪姫」において、狩人は魔女と化した王妃を裏切った。ルーク君は果たしてどうなるのか。「オーバーブロットしたヴィル君もまた美しい。そしてそれ以上に――戦ってみたい」という理屈でもって、ヴィル様に最後の「ダメ押し」をするのは彼であるような気もするのである。

スカラビア寮長・副寮長の現在地

前回の記事で指摘したところではあるが、やっぱり指定暴力団オクタヴィネルは全国に配信なんてしていなかった。カモは生かさず殺さずが鉄則じゃけえのう……。とはいえ副寮長リコールの嵐が吹き荒れていたが、それをなだめたのは寮長・カリムのあくまで論理的な、「だーいじょぶだって! ジャミルだからな!」ではないジャミルの実績をもとにした説得であった。遠慮深謀を持って鳴るスカラビアを率いるに相応しいその姿勢が見られたのはスカラビア推しの筆者としては嬉しいものであった。

それでジャミルもほだされるのではなく、あくまで野心を燃やすその姿勢もまた筆者の好きな「ジャミル・ヴァイパー」の姿であったので今こそ「熱砂の策謀家・完」の文字を煌めかせたいところであった。しかしスカラビア寮生諸君は結構いい性格してますね。クラッカー食べる?

「前章の寮が味方サイドで活躍する」「カリム君の特技は毒の鑑定」ということで全国8千万人の監督生諸賢は「毒林檎」に関する何かをカリム君が解決する……! と思ったことだろうが(むろん筆者も)なんということでしょう、まさかジャミル君のダンスの方がフィーチャーされるとは……いやいや、まだまだ後編で何かが炸裂すると信じているが……(ネージュ君のリンゴ飲料にヴィル様がなんか仕込んでそれをカリムが見破るとか)

前章でバリバリ寮内合宿をやってた2人が合宿に力いっぱい驚くという渾身のギャグを見せてくれたが、スカラビアはともかくオンボロ寮でダンスレッスンしたら床が抜けないだろうか。そもそも片付いているんだろうか。原典オマージュでお掃除をするリズミックがあったりするのかもしれない。

「鏡」はどこまで物語に関わるのか

鏡の間に配置された鏡自体、「白雪姫」の鏡がモチーフなのは一目瞭然である。そして5章冒頭では再び三木さん(著作権に配慮したぎりぎりの表現)が鏡に現れたことが描写される。加えてヴィル様が呼びかける「Mira」といつにもまして鏡がフィーチャーされている。

また、鏡が見出す「資質」が話題にもなった。それぞれの寮のカラーも。流用だから仕方がないとはいえ完全にオラオラ系なポムフィオーレ寮生たちは、倒すとしかし謎の芝居がかった武士道口調の者達である。そうすると、「キャラを演じている」「二面性がある」のがポムフィオーレ寮生として見出される「資質」なのだろうか。まるで鏡の向こう側の自分のように。

寮巡りも折り返し、話もいよいよ核心に近づきつつある中で鏡の存在がどこまで大きくなるのかを注目していきたい。

気が早い6章予想

「星に願いを」に引き続き、麗しい師弟愛を見せるシュラウド兄弟。コメディタッチな合成音声シーンだが、オルト君のVDCチャレンジにつなげておしまい、にするスタッフとは筆者は思えないのである。

まあなんやかんやあってメインステージで「美貌の圧制者」が大団円を迎えた後……。毎回ある次章予告のシーンで最悪の終息を見せるのではないか、と。

流暢な合成音声で発表を行うイデア氏。無事に終わったと思った時、「今からお前を殺す」と同義語である「この分野には詳しくないのですが」から始まる質問。それはイデア氏のプライド、ひいては現在のオルト君の存在意義すら脅かすビシバシ情け容赦ない質問だった。相手は4年生か、ロイヤルソードアカデミー生か……ともかくしどろもどろ早口涙目敗走するイデア氏は果たしてどうなってしまうのか……で6章に続く、になるのではないかと。

または全国放送でオルト君が見つかってしまい、倫理問題で叩かれるとかだろうか。ともあれシュラウド家は受難を抱えて終わりそうではある。

更に気が早い最終章予想

来年の鬼が笑い死にそうなことを続けてしまえば、まず今回冒頭のバトルの相手がクルーウェル先生だというのには驚かされた。(そういえば今筆者の年齢はクルーウェル先生と独歩君に挟まれている。)勝負がついた時にクーン……みたいな感じになる可愛さはさておき、「ということはモデルがある先生は全員こういうことできちゃうんですね!?」と思った監督生諸賢は多かったことであろう。とすればやがて訪れる最終章は、教師陣相手のボスラッシュ&ラスボスは学園長……ということになっていくのだろうか……。逆に言えばガチャでお迎えできる可能性も広がったわけで、教師陣ピックアップガチャ、楽しみにしています。

 

ということで相変わらずの妄想垂れ流しとなってしまったが、続きを楽しみに待ちたい。ネージュ君がカットかかったらADを蹴り飛ばしたりロケバスでストロングゼロがぶ飲みするタイプでありますように。

 

 

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』カウントダウン ポストカードブック (その他)

半沢・ヒプマイ・ツイステ・とうらぶ・アイドル・同人etc――雑食家庭持ちオタクの一週間

余談

と、いうか、今回は余談のみというか。

書きたい記事はたくさんあるのである。

ざっと列挙してみよう。

・ツイステ記事

・ヒプマイ記事

・アイズワン記事

刀剣乱舞記事

・同人イベント記事

・Nijiproject記事

金田一耕助語辞典記事

半沢直樹記事

・引っ越し記事

台風10号直撃記事

・ダイエット記事

森博嗣先生の「次作以降の予定」並みにあるのである。

それぞれへの情熱も原稿用紙十枚以上は確実にあるのである。

ただこのところの筆者は上記のダイエットに精を出したりしていることもあり、なかなか帰宅してからPCに向かう時間が取れないでいた。

何回か書いたが、ブログというのは自分のペースで好き勝手やれて最高……と思いきや、筆者の場合は今までの余暇が、ブログを始めてから「ブログを書いた日」「ブログを書かなかった日」に明確に分かたれてしまったということがあった。

何をしていても頭の片隅に「ブログ」がある。非常に充実した一日を過ごしたとしても、記事を書かなかったとき、「あ、でも記事書けなかったな……」とちょっとモヤっとして床に就くのである。

ということで本日の筆者の睡眠のために、最近のこまごましたところを雑多に書いていきたい。雑記ブログの真骨頂である。

上記で挙げた要素のネタバレが大いに含まれる内容となるのでご注意されたし。

 

 

 

ツイステッドワンダーランド(ツイステ)

「星に願いを」をクリアした。オルト君がいい子過ぎて……。彼が「ピノキオ」もそのバックグラウンドストーリーにするというのなら、ちょっと気が早いけどイグニハイド寮のストーリーはその発展である「鉄腕アトム」をもとにした感じでイデア君とオルト君で天馬博士とアトムをやるんだろうか。優等生過ぎるオルト君を相手に、「お前はトビオじゃない」は確かにかっちりハマりそうではある。スカラビアでやると思ってた「ラスボスが二人体制」はイグニハイドでやるのだろうか。

今回は「フェアリーガラ」に続きリズミック主体イベントで、前回が忙しさの極みであったので(少年少女には信じられないかもしれないが年を取るとログインボーナスまで受け取ったら力尽きてしまう日というのが出てくるんじゃよ)初めてそのタイプのイベントに参加することになったが、噂には聞いていたが一切画面に触らなくてももらえるイベントアイテムの数は変わらない、というのは優しいを通り越してなんかよくわからない山を登りつめているな……と感じた。ありがたいのだけれども。リズミックの種類でもらえる飾りが違うと今更気づいて虚無になっている。よくわからない優しさと言えば、コンボが切れてしまうのに「Good」はやめてほしい。普通に「Bad」でいいんではなかろうか。あとタイミングばっちりの時も音にいまいち爽快感がないのを何とかしてほしい。

最後の星が降り注ぐ様を思い思いの姿で見ているところはなかなか感慨深かったが、基本的に全員好きだが特にスカラビア推しの筆者としては、ジャミルのいう「いろんなことが些末に思えてくる」が「4章のあれこれ」を含んでいるのかどうかが気になる。星送りの衣装的に涼しそうだし、七夕の季節のイベントだと思うので4章以降のスカラビアではあるのだろうが……。

後はストーリー本編のケイト君の行動とイデア君のパーソナルストーリーで矛盾があるようでそこはちょっと気になってしまった。

イデア君&太鼓で赤城リツコ女史を思い出している方が多くてちょっと安心した。

と、打鍵している間に日が替わってしまったが、ジャミル・ヴァイパー君の誕生日であった。

ツイステにおいて一推しというものが存在するとすれば、それはジャミル君である。最初は声も本職でない方故の味わいがあって……と思っていたがそれも「演技」であったと分かりますます好きになってしまった。「おめかし」のジャミル君は果たしていつのジャミル君なのか、というのが気になってしまう。ホーム画面での会話からすればオクタヴィネルと打ち解けている感じがするので(アズール君への信頼……なし!)いじられ倒した後で吹っ切れているのか、それとも「ご主人様」にこだわりを見せているあたり下剋上を虎視眈々と狙っているその時なのか……。

そう考えると4章の終わり方は二人とも何も解決できていないのでは、と思ったりもしたけれど、「そこからまたどうとでもできる」という点においては上手いこと出来ているな、と思った。

気が早いが来年はどうなるのだろう。復刻なのか、劇中で進級も予定されているから新しくなるのか、そもそもバースデーイベントが一周したらおしまいなのか……。

バースデーイベント自体はリーチ兄弟がどんな風になるのかも気になる。午前午後で分けてきたらどうしよう。

引きこもり界の王者・イデア君を直近で蜜漬けお菓子漬けにした後だったので、初めて「星のかけら」を砕くことになったが後悔はしていない。まさしく星に願いをであった。

 

ヒプノシスマイク(ヒプマイ)

特典CDを聴き、オフィシャルガイドブックを読み、(絶対にこの順番を厳守したほうが良い)「やめてくれないか! 設定の洪水をワッと浴びせかけるのは!」という気分になった。ワンピース並みに進む時は一気に話が進むな……。

邪答院仄仄という不穏しかない(この人のラップは個人的にめっちゃ好き)人物の登場。以前シンジュクドラパ感想において「独歩だけ全然過去から追われていない」と書いたように思うが、まさか一番どぎついのが追いかけてこようとは……。仄仄が独歩にちょっかいを出そうとした結果、一二三が犠牲になり、それが独歩の自虐癖のきっかけになったということなのだろうか。そうなると、勘解由小路無花果の気を引くために碧棺合歓が大変なことになりそうで恐ろしい。

最終的には声がめちゃくちゃ豪華なのにずっとやられ役の帳残星・残閻兄弟と手を組んでスリーマンセルとなり、ラスボスポジションに収まるんじゃなかろうか……と考えている。

今回語られた東方天と勘解由小路の過去はそれぞれ時系列が離れており、まだまだドラパで語られる過去は多そうだな、と感じた。勘解由小路が杖を突いている理由、側近に抜擢された理由は根は同じだと予想しているのだが、明かされるのだろうか。

東方天についても現在の彼女は権力を使役していたつもりがいつしか権力の奴隷に成り果ててしまったパターンに思うので、その「悪堕ち」的なきっかけのエピソードが気になるところである。実は彼女自体もマインドハックを受けているのかもしれない。(天谷奴がかつて言っていた「余計なことしかしていない」はどこまでを指すのだろう?)

そもそもの結党自体、少なからず父親の「汚い金」が流れているような気がするのだが。

本筋とは関係ないが、ディヴィジョンの中にあるであろう学校で二郎が普通に女子からお弁当もらっていたり、一二三がホストやっていたりするのでこの辺がよくわからない。

全てを塗りつぶす中王区と全てを巻き込んでいくディヴィジョンオールスターズの激突の時は近い。

アイズワン

アイズワン初のオンラインコンサート「ONEIRIC THEATER」を妻と視聴した。予定時刻になっても画面が動かず、試しにリロードしてみるとすでに「メリーゴーランド」の後半部分であった。

いや、良かった。ますます痩せているように見えて頼むからご飯をたくさん食べてくれ……と思ったが、そのパフォーマンスはますます素晴らしかった。

特にユニットは圧巻であった。まさしく温故知新、賢者たるアイズワンは歴史からアイドルの極意を学び、更に成長していたのである。他方、これが「権利関係のため再配信・見逃し配信はありません」ということかあ……としょんぼりもしたが、最後にBlu-ray化が示唆されますますうれしかった。

皆さん素晴らしかったのであるが、最近アン・ユジンさんがますます美しくなったように思えてならない。

www.youtube.com

しかしオレンジキャラメルを引っ張ってくるとは。今後もカバーはいろんなところでやってほしい。個人的には、「アモーレ・ファティ」すごく好きだったので余計に。


IZ ONE - "Amor Fati" Cover [Immortal Songs Ep 400]

しかしまあアイズワン諸賢はレトロな感じが(も)大変似合いますな。

生バンド演奏もまた違った曲への味付けで新鮮であった。機会があれば他の曲でもまたやってほしい。

そうして最後、みんなのメッセージは毎度感動させられているので何とかこらえられたが、暗転してVRで満員のアリーナが再現されたときはさすがにジーンとさせられた。

どんな所にも行くことのできる、作り出すことが出来るVR。それを用いて上空や宇宙にまで飛び出したアイズワンが帰り着いた場所、歌いたかった場所が「そこ」であるという事実。前回のコンサートでは難なく実現できたことの困難さ。幾重もの感情が筆者の中で渦巻いた。

もう一度、肉眼で彼女たちを捉えたいものだと思う。

刀剣乱舞(とうらぶ)

完全に福祉くらいの扱いでゆるゆるだった花火の景趣を獲得失敗、ひどく落ち込む筆者である。続いての戦力拡充作戦も経験値が大変美味しいので、ちまちまやってはいるのだが前述したようにPCを触る機会がなかなかなく思うように進まない。kindlefire版を導入しようか考え中である。しかしこのゆるゆるできる感じが「とうらぶ」という感じで実家のような安心感に今日も甘えてしまっている。

半沢直樹

いや~生放送とても良かった。導入の力の入れっぷりに笑ってしまったが。総集編もよかったけどこ…これだよ視聴者が求めているモノは! といった感じで見事であった。惜しむらくは途中で台風10号により筆者宅は停電し、ちょうどこの生放送を見ているときであったので後半がとびとびになり、半沢直樹のバックナンバーを録画しているHDDがお亡くなりになってしまったことだろうか……。

さて本編だが、もしかして大和田取締役がこのドラマで頭取になるのではなかろうか、と筆者は思うようになってきた。というのも紀本常務は秘密を抱えており、それは原作では頭取と敵対する派閥の爆弾であったわけだが、既に以前の記事で指摘したようにこのドラマでは頭取と常務は同派閥なのである。そうなると、かつての敵対する派閥の領袖――大和田を残した意味が出てくるのである。

そうなってくると現女将・元頭取部下の智美さんがどのような役割を果たすのか、ということが気にかかる。恐らくは8話で登場する浅野和之さんが演じるだろう検査部の行員が果たす役割を分担するだろうかと思われるが、どうなるのか……。

紀本常務失脚→「大和田常務」復活からの「恩返し」になるのか、それともストレートに頭取からの禅譲になるのか……。そのためには大和田にももうひと働きしてほしいところであるが。主人公の父親を自殺に追い込んでいるわけだし……。

同人イベント

以前参加させていただいた「レキソウオンライン」にて注文させていただいた諸々の本を読ませていただく大変幸せな時間であった。近いうちに感想をまとめて各作者様にお伝えしてみたい。

pictsquare.net

懲りもせず、来週末のイベントに参加させていただくことになった。

再び歴史エッセイ、今回は「薩摩の廃仏毀釈」について。よろしければお越しください。

おわりに

駆け足になってしまったが、こうなるとなかなか人生楽しんでいるようで何よりである(他人事)

次回は本題をお届けしたい。

オンラインイベントの温度――31歳、同人サークルとして初めてイベントに出展する。

余談

前回、筆者は人生初のサークル出展を予告した。

 

kimotokanata.hatenablog.com

 

果たしてどうであったか、Twitterを追ってみよう。

形から入るタイプなので……。

 

学び:土を買いに行くとパソコンから離れるため、原稿を書くことが出来ない。

学び:カリンバを演奏していると手がふさがるため、原稿を書くことが出来ない。

学び:入浴中はぬれると壊れてしまうため、パソコンを持ち込めず、原稿を書くことが出来ない。

学び:おいしいスイーツに夢中になっているときは原稿を書くことが出来ない。

学び:とりあえず原稿が完成していなくてもお品書きと告知で自分を追い込もう。

学び:パソコンに向かって打鍵すると原稿が出来る(ことがある)。

次回に活かせることばかりで我ながら感心してしまったが、しかし健診で循環器がよう経過観察の指摘を(二年ぶりn回目)受けてしまったので次回はより余裕を持った工程を心掛けたいと思う。

床にはいってもなお遠足前のようなドキドキが筆者を支配し、寝付いたのは二時を過ぎた頃であった。

本題

薩摩隼人のたしなみである日曜早朝の草刈は筆者の執念が通じたのが通常の三倍の人数が集まり、一時間ほどで片が付いた。そのまま帰宅し、体を清め、軽食をとる。心地よい疲れと風呂上がりの爽快さ、小腹が満たされた喜びと朝の丁度良い気温……すべてが筆者を眠りへ誘おうとしていた。

開場まではあと一時間である。ありがたいことに、早朝の飛行機に飛び乗ったり、見慣れぬホームを彷徨ったり、カートをガラゴロ引きずる必要もなく、ボタンをクリックすればこの南の果て、薩摩の地からイベントに参加が可能なのである。素晴らしい。未来である。かがくのしんぽって すげー!

が……罠……!!

クリック一つで(実際にはパスワードも用意してくださっていたが)入場できるということはクリックするその一刹那まで……ダラダラできてしまう……! 本来のイベントであればねぐらから会場まで行動することによって少しずつ「イベントモード」に切り替わる心は……依然……家っ……!!

ステイホームっ……!!

筆者は職業柄コロナ禍にあっても通常通り出勤、無遅刻無欠席一時間程度残業であり、テレワーク勢を大いにうらやんでいたのだが、しかしこの状況で忠勤できる皆々様に畏敬の念を抱かざるを得なかったのだった。今の筆者にとって、会社までの道のりが無ければ「仕事モード」に切り替えることは不可能に近い。

草刈り機の振動でまだ震えの余韻が残る指をほぐしながら、筆者は思案する。時刻は九時。眠気が落ち着いてくると筆者は急に不安になってきた。本当に参加してよかったのだろうか? なんかこう……「いつもの空気」みたいなのがすでに醸成されていて、意図なく変なことをして周りの方を不快にさせないだろうか? 価格設定は適切だろうか? そもそもお金を取れるほどの出来なのだろうか? 「そういうこともある」とわかっているつもりでも、ただただ時間だけが過ぎて悲しい気持ちにならないだろうか?

その不安は、筆者に打鍵させていた。不安を解消するにはただ一つ、不安の素である作品を少しでも煮詰めるしかない。文章を再度見直し、最後に蛇足として「スイカ売り決死隊」のその後について簡単に書き記した。

滑り込みでアップロードが完了したところ、まさに10時であった。このツイートをしながら、筆者は既に自分の中で何かがエンディングを迎えようとしているのを感じた。

大学時代、自由な時間を生かしてコミケに行きたい、ということは幾度となく思ったが、薩摩の長男にとって盆正月に帰省しないということは考えられず、ついぞその野望は叶うことはなかった。

げんしけん」で、「マキとマミ」で、さまざまなイベントレポート漫画で、妻の報告で、筆者も知識としてあった「開幕時の拍手」。

そこに今、筆者は参加しているのである。それは文字列であったけれど、確かに筆者には100スペース分の拍手が聞こえたのである。

筆者は早速自らのスペースで頒布活動へと入った。

 

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ダイマとかいうレベルではない

 パッと見神羅兵が頒布しているような形になり、無骨度が爆上がりしてしまった。

筆者のスペースは一列目と立地が良く、さまざまな様相の人々が通り過ぎていく。筆者はそれぞれの「約束の地」へ向かう諸賢を眺めながら、カリンバをポロポロ奏でていた。カリンバは執筆の妨げにはなるがパソコンの前で手持無沙汰を解消するのには打ってつけであるという学びがあった。

開始十分、一人の方が拙スペースに入られた。

「閲覧中です」

自動メッセージがその上に出る。

カリンバを取り落としそうになりながら、筆者は挨拶しようとする。が、画面をスクローしていて入力ウィンドゥが見切れていることに気付かない。

テンパっているうちに、その方はすごい勢いで垂直に飛び出していった。(今回は人数が多かったこともあるのか、挙動がトリッキーで、話している途中で消えられたり、高速後ろ走りを披露されたり、ずっと「閲覧中です」だったり、抜け殻を残されたりなど、多種多様な事例が見られた。)

見ず知らずの人が、自分の作品を手に取ってくれた。その時筆者は確かに自らが作った冊子をはじめましての方がぺらりとめくるその音、そよぐ風さえも聞こえ、感じられたように思えた。

さほど間を開けずして、また新たな方が訪れ――

「購入しました」

今度は筆者は、お礼を言うことが出来た。打鍵しながら、声も漏れていた。昨日一瞬、「と、ここまで書いてきましたがカリンバが弾きたくなったのでここまでです」でぶん投げて終わらせようかな、と思ってしまった自分を恥じた。日が替わっても黙々と作業を続けた自分をほめた。

 

kimotokanata.hatenablog.com

 以前も書いたが、少なくとも筆者にとって、創作というのは孤独な作業だ。書くこと自体は好きだ。自分の中に流れる気持ちをうまく言語化できた時の快感は代えがたい。他方、この世の中、時間は有限でありながら無限と言ってもいい娯楽が存在している。ただただ、それを享受し続ければよいではないか、仕事で疲弊した脳に鞭打ってなんになるのか、と思ったことも一度や二度ではない。お前が何か作ったところでそれが何か意味があることなのかと。

意味はあるんだ。

あったんだよここに。

筆者が作らなければこの世に存在しなかったものを求め、対価を支払ってくれた方がいる。何の利害関係もない、縁もゆかりもない方が。そしてまたしばらく時間をおいて――

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アバターは伏せさせていただきました

ああ、おれは創作をしていて良かった。このイベントに出て良かった。

オンラインでよかった。リアルイベントであったら、醜態をさらしていたことであろう。

コアタイムが過ぎると流れもだいぶ落ち着いてきて、今度は買い物へと繰り出した。橋のサークルまで移動しても全く疲れない。お目当てが幾つか売り切れており、残念ながら自分の目の確かさを喜んだりもした。主催の方に開催のお礼を伝えることもできた。スペースもオンラインならでは、筆者はデフォルトの飾り気のない形だが、色々な創意工夫が凝らされていて見るだけで楽しい。

クレジット決済であることとイベントの興奮が購入欲にブーストをかける。これが頭の上のほうが開いている感覚……。会場を二周ほどしたところでさすがに三時間睡眠の限界、どっぷり眠りについた……と思ったが、一時間半程度むくりと起きてしまった。よほど興奮しているのである。その間も何冊か購入いただいており、現実の離席中には絶対にありえないオンラインイベントの利点であるな、と感じた。

その後もゆるゆると掲示板などで交流をさせていただき、厚かましくもTwitterをフォローさせていただいたりもして、フィナーレを会場で迎えることが出来た。

時間が来ても退出しない限りは一定時間はいられるようで、祭りの後をぶらぶらと歩いているうちに、既に自分が「次のイベント」を求めていることにも気が付いた。

なるほど、妻がのめりこむわけだ、と納得した。完全にネットミームであるところの「一時的に欲求は満たされます」のあれじゃん……と思った。

ふたを開けてみると、筆者の想定よりずいぶん多く購入いただいていて驚いた。

ありがたいことに最終的には無料配布、メインの頒布物合わせて34冊も巣立っていたことが明らかとなった。また、対面(オンラインではあるが、筆者は上記のような出来事を対面と呼びたい)、メール、掲示板、リプライ、DMなど様々なアプローチで温かい感想を頂いた。本当に創作者冥利に尽きることである。

その日の筆者は久しぶりに、深くゆっくりとした睡眠を味わうことが出来た。

オンラインイベント(ピクトスクエア使用)雑感

アバター、スペース共に拡張性があるのは素晴らしい。デフォルトでも種類が豊富であるのがうれしい。次回は自分もカスタマイズを挑戦してみたい。

・今回は女性向けの作品も多く、筆者としてはそういったものも特に抵抗なく読めるのだが、リアルイベントでは作者様の方が気にされる場合もある。しかし、今回の場合はアバターであるので作者様にとっても抵抗が少なかったのではないか……と信じたい。

・本文中にも述べたがコミュニケーションをとるのに多様なアプローチがあり、離席することのデメリットが売り手買い手共に軽減されているのが良い。

・オンラインならではの挙動は愉快でもあるが、やはり安定するに越したことはない。

・それこそRPGのウィンドウ的な感じで「戦利品リスト」を作れるとありがたい。(実体がないと情けないことにちゃんと買ったかどうかわからなくなってしまうことがあった)

オンラインイベントでありながら、確かに人の温かさ、温度を感じることが出来た「レキソウオンライン」が初めてのサークル参加で本当に良かったと思う。主催様、参加者の皆様お疲れさまでした。ご来訪いただいた皆様誠にありがとうございました。

pictspace.net

会場で頒布させていただいたものに加筆修正を加えたものをお値段据え置きで頒布しております。よろしければご笑覧ください。

(現在ファイル名が文字化けしてしまっておりますが中身は問題なくお読みいただけます)

 

31歳、人生初のサークルカットを作成する。

余談

そりゃあ雨はもううんざりだといったけど加減しろ馬鹿、と言いたくなる猛暑、酷暑が続くうちに31歳になった。親父が自分の年の時にはすでに自分がいたわけで、また一つ親父の後を追うのではなく自分自身の生き方になっていくのだな……とポジティブに考えることにする。

31歳になったので31アイスクリームを食べよう……と思ったら末弟からパンナコッタが届いた。すっかり社会人ムーブを身に着けたことに感激もひとしお、そちらと妻の買ってきてくれたケーキで誕生日のスイーツを満たしてもらった。パンナコッタって、給食のデザート以来に食べた気がしたがのど越しもよくておいしい。生クリーム(パンナ)を煮て(コッタ)作った、故にパンナコッタらしい。イタリア発らしい。全部ふくおか県酪農協さんのHPで今知りました。テラコッタもイタリア語で「焼いた (cotta) 土 (terra)」だと覚えた気がするがまあコッタの懐が深いのであろう。HPからも買えるようである。相変わらず銀の匙してんな、末弟。(こちらで奉職させていただいているわけではない)

f-kenraku.com

職場からもお祝いを頂き、TLでも祝福いただいて大変ありがたい誕生日であった。そういえば、自分で風船を飛ぶところを見られなかったのが心残りである。

本題

コロナ禍の息苦しい日々が続いている。いわゆる「ヒプステ」をtrack1と2続けて観る機会があり、詳しくはまた別記事を設けたいと思うが、演者同士の対峙シーン、客席とのコール&レスポンス、客席降りなどコロナが奪った諸々をまざまざと見せられることにもなり、辛さがあった。(内容自体はどちらも素晴らしいものであった)

我が家においても妻の遠征予定は全て白紙。市内のアニメショップ詣さえも辛抱する毎日である。オタクを殺すにゃ刃物はいらぬ、という言葉を奥歯がすり減るほどの噛み締めるうち、しかし近頃の妻はいくぶん血色がよいような……。

どうも妻は「pictSQUARE(ピクトスクエア、以下ピクスク)」なるものを導入したようなのである。

pictsquare.net

 

懐かしさのあるドットめいた世界で展開されるのは我々が焦がれた「即売会」の風景である。見覚えのある「RPGのお店」にいる店主たちは全員実在の人物。そこに我々は歩いて買いに行くことが出来る。遠征費もかからない、無理な日程の強行軍も必要ない、会場内での熱中症も、もちろん感染の心配もない。

チャットでの対面コミュニケーションだけでなく、席を外していた時は掲示板にメッセージを残すこともできるのである。差し入れだってgifteeを用いて安全かつ確実にお届けが出来てしまう。とはいえ数々の不便を乗り越えながらのリアル会場でのやり取りが至高、イベントそれだけでなく道中も含めて大切な思い出なのだ、というご意見もあろうし尤もだとは思うが、しかし南の果てから東京までの遠征費を「推し」に注ぐことが出来るというのは妻にとって非常に良いことであったのだろう(遠征費分が浮く……実質無料では? というオタク会計に隙はなかった。クレジットカード決済により消費は加速する……!)。

また実際に面と向かって会うと言葉を失ってしまう「神」に対しても、自宅という自らのホームであれば幾分冷静にご挨拶ができるようであるのも利点であろう。

そうなってくると……。

筆者は思ったのである。自分も出てみたいと。

妻が遠征の準備をし、そして無事帰ってくるたびにその様々な苦労に思いを馳せながら、しかし充実した横顔に羨望の念を抱かなかったかと言えば嘘になる。以前一般参加として参加した「広島コミケ」の体験が素晴らしかったこともあり、「即売会」にサークル参加してみたい、という思いは静かに筆者の中で募っていった。

とはいえ妻のジャンルに「売り子」としていくのは妻、買いに来られる方々にとっては謎のプレッシャーになるであろうし、かといっていきなり一人参戦というのも元来がコミュニケーション能力絶無の筆者にとっては難しいところであった。また、移動諸々を考えても現実的ではなかった。土日の、翌日の仕事に間に合うための交通機関は、当然のことながら需要も金額も高いのである。

そこに現れたこの機会は筆者にとってまさしく晴天の霹靂、アジカンで言うところのラッセーラッセーでありバンプオブチキンで言うところのオーイェーイェーアハァンであった。痛みを二等分するのではなく全国各地から等分にイベント参加という花を咲かすことを許されたというこの機を逃すわけにはいくまい。

兄貴も言っていたはずである。「参加したい」と思った時にはスデに……「参加申し込み」は終わっているのだと。

そういうことで筆者は、8/30開催「レキソウオンライン」にサークル参加申し込みをさせていただいた。

pictsquare.net

「レキソウ」はもともと今週末、インテックス大阪で開催された「超SUPER COMIC CITY 2020 -day1-」にて行われたプチオンリーである。そのオンライン版として本イベントを設けられたのだというが、その参加・不参加に関わらず参加可能というなんとも温情深いイベントであり、そのご厚情に筆者は甘えさせていただくことにしたのだ。

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pngで簡単にサークルカットを作成できるのはありがたいですね

サークルカットはペイントで作成した。以前、妻がレイヤがどうの透過がどうのと唸りながらサークルカットを作成していたことを考えれば、作りやすくまた確認しやすいこのシステムは完全初心者の筆者にとっては嬉しい仕様であった。

内容はサークルカットにある通り、筆者にできることなど駄文を書き連ねることしかできないので、幕末薩摩におけるもっとも滑稽味があって好きなエピソード、「スイカ売り決死隊」についてのエッセイ(のようなもの)をつらつらと書きたいと思う。PDFダウンロード方式にするか、コピ本方式にするかまだちょっと結論が出ていない。(なので頒布品はまだ未公開の状態である)価格は高くても300円までにしたいと思っている。その辺りとか、また他に書いたほうがいい題材、テーマなどのご助言などもしあれば、お題箱からいただければ大変ありがたいです。

 

odaibako.net

参加されるサークル一覧を見て、その絢爛さにいまさら気後れしてしまったりもするが、参加することに意義があると強い気持ちで頑張りたい。気後れよりも圧倒的にワクワクの方が大きいからである。

ということで来週は是非、一般参加(今ならサークル参加も!)無料(スマホからもアクセス可能)ですので拙サークル、「ハナハキリシマ」まで、いっど、おじゃったもんせ。

半返しじゃん! ドラマ「半沢直樹」ロスジェネの逆襲編ネタバレ感想

余談

月曜日よ

敵にして恐ろしく味方として儚きものよ

せめて今一記事を書く時間を我に与えたまえ

毎回月曜休みの時は日曜の笑点をゆっくり見ようと思うのに見そびれてしまう。

三連休ではあったが土曜、祝日が免許更新の対象外であるため中日の日曜日に行った結果、盆前の人手とソーシャルディスタンスの確保のためにひどく時間がかかって参った。きちんと整列して検温されながら進んでいくと「最終的に出荷されるのかな?」みたいな気分になる。

先週は検診で体重の増加を指摘されたことを思い出す。なかなか行事で休日をフルに満喫できないが、上手に時間を使っていきたいものである。

本題

ドラマ「半沢直樹」前半、「ロスジェネの逆襲」編が昨日大団円を迎えた。

相変わらずの面白さ、最後には「銀翼のイカロス」の布石もばらまかれ、大島さんも登場し、来週以降もますます楽しみである。

他方、原作からの変更点は前回のドラマ時点で多く見られたものの、特に今回の変更点は個人的にはカタルシスが減ってしまった部分もあった。原作との相違点を比較しながら、筆者の手前勝手なこうして欲しかったという願望を垂れ流しつつ、後半戦「銀翼のイカロス」の展開予想もしてみたい。

 

ということでここからは「半沢直樹」「ロスジェネの逆襲」ドラマ及び原作のネタバレがあります。

「タメ」の部分―三木の冷遇、郷田の苦悩の削減

半沢直樹」というのはサラリーマン水戸黄門である、と思う。理不尽に耐え、終盤において伝家の宝刀、印籠――「倍返し」において大いに留飲を下げる。

逆に言えば、理不尽という助走期間、タメが長いほどより高く「倍返し」というカタルシスは跳ね上がる――と筆者は思うのだが、筆者が原作を読んで感じた三木が銀行へ戻れはしたものの、適性がない場所に配置されたために鬱屈を抱えてしまう場面や、自らの会社の窮状を救うために偽のホワイトナイトを演じた郷田が経営者としての苦悩に一人もだえ苦しむシーンが端的に、あるいはナレーションで済まされてしまったのは些か残念だった。特に三木のシーンは前ドラマの近藤さん並みの画を期待していただけに……。郷田は原作ではその後、玉木をフォックスに迎え再起を図るのだが、それも描写がなかったのは残念だった。

伊佐山の「意地」の削除と平山夫妻の被害者化、巻き込み事故の副頭取

以前も述べたが原作では大和田取締役は既に銀行の人ではなく、「ロスジェネの逆襲」に「大和田」という単語は登場しない。(一応、伊佐山も三笠も旧T(東京第一銀行。半沢達が勤める東京中央銀行は東京第一銀行と産業銀行という二つの銀行が合併した合併行であり、それゆえの行内融和が課題である。旧Tが悪役となることが多い。何故かドラマでは旧Tと旧Sがそっくり入れ替わっている)ということは語られるが原作においてそれは「今回の悪役です」くらいの意味である)

当然伊佐山と大和田の間に弟子であるとかいう言及もなく、最初から三笠副頭取の腹心として語られる。

銀縁眼鏡の似合う知的エリートとして描写される伊佐山はドラマ同様、粉飾に気付けず、三笠副頭取から切り捨てられる。

そうして自らのキャリアの終わりを感じながらも、平山夫妻へ粉飾の事実を問い詰め、既に投入した資金の返済を迫る伊佐山のすべてをかなぐり捨てた姿は文章だけでも浮かび上がる「凄味」があったのだが、ドラマでは平山夫妻への追及は森山への役割となってしまった。

ちなみに原作の電脳雑技集団の資金ショートの原因は本業悪化のため慌てて多方面へ投資したが全部焦げ付いた、というもので(スパイラルの出ていった役員たちが主張していたことをやって失敗した形)、玉置も容赦なく解雇するなど平山夫妻へ同情の余地は一切ない。三笠副頭取が自らの野望のため暗躍していたのは間違いないが、私利私欲に電脳を利用してはおらず、また取締役会議で断罪もされていないので彼はドラマ用カタルシスのための犠牲者といえよう。もちろんあの告発もスカッとはするのだが筆者は最後の最後に被害者面する平山夫妻の方にイラっとしてしまったのと、原作の「静かにおのれの野望が潰えたことを悟る」三笠副頭取の描写が好きだったので少し残念であった。

お膳立てが出来ていたからこそやってほしかった大和田取締役の「倍返し」

受けた恩に必ず報い、受けた仇を必ず返す、報恩と報復に生きるほとんど極道の東京中央銀行(採用条件:表情筋が豊かであること、肺活量が大きいこと)にドラマでは生き残った大和田平取締役。大体会議室にいるがもしかしてお部屋がないのだろうか。

伊佐山に切り捨てられた…と思ったが実は策略のうち…と思いきややっぱり捨てられる……という土下座野郎らしい悲劇をたどった大和田取締役だが、原作では半沢の元直属の部下・内藤寛部長(吉田鋼太郎さんは今季お忙しいのだろうか…はまり役だと思うのだが)が引き受ける「半沢を取締役会に呼ぶ」という大役を果たして見せた。

これにより三笠副頭取と伊佐山は失脚。彼の進言により二人は電脳雑技集団への出向が決まり、(原作では頭取の決定)目の上のたんこぶと手を噛んだ飼い犬を同時に排除することが出来たのだった……。

いや~~~………。

それを映像で見たかったんですよ!!!

ここまで大和田の「倍返し」がお膳立てされているのだからぜひやってほしかった。

(妄想)

半沢が証券の岡社長に呼ばれ、銀行への栄転が明らかになるシーン。

そこで一度画面が切り替わる。

東京中央銀行の頭取室に呼ばれる三笠副頭取と伊佐山。

入室すると、そこに待っているのは大和田。頭取が帝国航空の件で多忙のため、特例で辞令を大和田が交付するのだという。

そして発表される二人の電脳雑技集団への出向。

高笑いしながら、行内で誰よりも電脳のことを知っている二人だからぴったりな辞令だという大和田。

屈辱と怒り、半沢を電脳へ出向させようとした野望が潰えた失望に震える二人。

二人の肩を抱きながら、「やられたらやり返す……倍返しだ!」

そう凄んだのち更に呵呵大笑する大和田であった……。

みたいな。

原作の大和田常務もそうだったが、この辺りの「ケジメ」をしっかり描写してほしかったのである。

好きな改変:三木へのフォロー、日曜池井戸ドラマな「電脳電設」、元役員の処遇

原作において三木が総務に配置されたことを訴えても半沢はけんもほろろだが、ドラマでは伊佐山のその処遇を疑問視し、「三木は事務作業は苦手だが顧客の懐に飛び込むのがうまい」とフォローしている。これは原作にはないもので、出向先においても部下をしっかり評価していることがわかって個人的にはいい追加だなと思った。

また、「電脳電設(ゼネラル電設)」については原作ではゼネラルグループの一つでグループの経営悪化のため身売り、ということになっているが、ドラマでは玉置の父の会社であり、経営悪化を平山夫妻に救ってもらった(そのため粉飾に利用され、特許も抑えられている)という設定になり、ゼネラル電設に訪問するなどもドラマオリジナルのシーンである。社長は胸の会社名が「ゼネラル電設」のままの作業着を着ているなど芸が細かいな~と思う。唐突に中小企業のモノづくりが語られる辺りは「下町ロケット」や「陸王」のセルフオマージュのようで面白かったし、決算書のみで語られるより話に厚みが出た。

また、原作を読んだときスパイラルの元役員が(背信行為を行ったとはいえ)元は瀬名にも原因があるのに完全に悪役として処理をされていたことに違和感があったので、今回の落としどころは良かったのではないかと思う(詫びるシーンはしっかり入れてほしかったが)詫びると言えば、諸田が証券の皆に謝るのもオリジナルである。ただこれは個人的には原作のもはや眼中にないというような扱いも筆者としては好きである。

ドラマ版「銀翼のイカロス」はどうなるのか?

ということで倍返しは取締役会議で起きている! という感じであの場でカタルシスの花火をどんどこと打ち上げたドラマ版は勿論楽しく見させていただいたのだが、筆者としてはそれぞれのタイミングでそれぞれの悪役は裁かれるべきタイミングで裁かれた欲しかったな、とちょっと消化不良な感じである。

銀翼のイカロス」では果たしてどうなるのか。

 

kimotokanata.hatenablog.com

前回筆者は原作の「紀本常務」に今回の手柄でもって「大和田常務」として返り咲いた大和田が取って代わる、と思っていたのだが、普通に紀本平八常務が登場した。今回の冒頭では「大和田常務」の話が出るなど、完全に制作側としてはこのミスリードを誘っていたのではないかと思われる。すっかり掌で踊らされたわけである。これは心地いいやられた! という感覚であった。

しかし気になるのは相関図の記述。紀本平八は「東京第一銀行」即ち旧Tの出身となっている。原作では旧Tの出身なのだ。じゃあいいじゃんと思われるかもしれないが前述したとおり、原作とドラマでは旧Sと旧Tが逆になっており、本来であれば紀本はドラマでは旧Sになっていなければおかしいのである。(ちなみに小説版「花咲舞が黙ってない」には東京第一銀行時代の紀本が登場する)

これは原作未見の諸賢にもドラマを楽しんでほしいので明言は避けるが、原作では紀本は旧T(ややこしいがドラマの場合の旧S)出身であることに重大な意味のあるキャラクターであるので、この変更は重大である。

逆に考えれば、やはり原作での紀本が負う役目を大和田が負う――ドラマオリジナルの要素で紀本が常務の役目を追われ、再び「大和田常務」が誕生するのではないか?

小料理屋の女将の反応も意味深である。もしかしたら女将は紀本の「あの元上司」の娘であったりするのかもしれない。

どうにも大和田はまだまだかき回してくれそうな予感がする。

他方、児嶋一哉さんの役職も決まった。白井国交相の秘書というドラマオリジナルの役である。そんなん予想できるか! ただこちらも相関図を見ると箕部幹事長(幹事長になったのもドラマオリジナル)の秘書を経て白井の秘書となっているということから、極めて重大な役だと思われる。いかにも「秘書がすべてやったことです」ポジションの秘書にさせられそうである。当面のカタルシス提供役になりそうな予感だ。

 

www.tbs.co.jp

後半戦も一筋縄ではいかなそうな「半沢直樹」来週以降も楽しみにしていきたい。

合本 半沢直樹【文春e-Books】

たつね行まほろしも哉つてにても―科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶 大千秋楽ネタバレ感想・考察・妄想

科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』改変 いくさ世の徒花の記憶(法人特典なし) [Blu-ray]

余談

今年初め、筆者は初めて「刀ステ」を現地でその身に浴びた。それまでに予習としていくらか見てはいたが、やはりリアルタイム、ライブでのそれは「圧」が違った。誇張でもなんでもなく、この舞台と同じ時代を生きられる幸せを噛み締めたものだった。

引き続きこの舞台を追いかけていきたいと思った。

そこにこの未曽有の事態である。

「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜静かの海のパライソ~」

が東京公演の千秋楽を早め、他公演を見送ることが決断された。

そして「舞台『刀剣乱舞』綺伝」もまた――。

しかしそれだけでは終わらないのが刀剣乱舞というコンテンツの素晴らしさである。

「科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶」。

これはコロナ禍のこの状況に舞台という表現形式をどのようにアップデートしたかという革新の目撃者となった筆者の感想、考察、妄想ごちゃまぜの闇鍋走り書きである。

本題

ということでここからは当該作の血も涙もないネタバレがあります。

コロナ禍をも利用し更に表現の次元を高めた舞台の凄味

「別の本丸の特命調査」として語られる今回の科白劇。

相変わらずそのSEを聴くだけで心を湧き立たせる「入電」。

いつも以上に壮大なOP。

心を高揚させながら、しかし既に人が密集しない工夫がなされている。

今回は時間遡行軍もアンサンブルではなくプロジェクションマッピングにより表現されるが、キャスト諸賢の錬磨された殺陣によってそこに遡行軍がその場にしっかりと「在る」。

刀剣男士の殺陣も基本的に一人一人となっており、密に配慮しつつ、今まで画面所狭しときらびやかに展開され、目が追いつかなかった筆者にも優しいじっくりばっちりとアクションを味わうことができるようになっている。

そして目玉はまさかの「刀装」という形で参加した講談師さん。上記のように人員。動き・演出をコンパクトにしなくてはならない本舞台においてあたかも百見は一聞に如かず、的確なフレーズ・声量・テンポにて紡ぎ出されるその言葉の渦は我々をいつも通りの「刀ステ」に、いや、更なるステージへと導いてくれるのだった。

愛しさ余って憎さ百倍の細川夫婦

ストーリーとしては細川ガラシャを核として改変された世界線キリシタン大名を中心に慶長熊本を「神の国」として支配している時間遡行軍の排除が目的となっている。

一見理想郷(パライソ)のように思える「神の国」だが、「そうはならんやろ」というぐらいドレッドなうらぶれはてた細川三斎忠興の登場によって本来既に慶長熊本において亡き者たちが生きていることの影響が如実に出ていることが冒頭から示唆される。

 

kimotokanata.hatenablog.com

 筆者もゲームにて無事特命調査は終えているのだが歌仙兼定を極めておらず、次回復刻時までに極めたうえで記事にしようと虎視眈々とその時を狙っている。

上記予想記事においては筆者は「文久土佐藩」、「維伝」における「核」が彼であったように、「慶長熊本」においても「核」があり、それは細川忠興ではないかと予想していたが、実際には細川ガラシャであった。しかも味土野(現在の京都府京丹後市弥栄町明智領であった。)幽閉時であるというからガラシャの父・明智光秀麒麟が来ず、待ちかねて自らが羅刹となり第六天魔王織田信長を本能寺にて紅蓮の炎に消したその時のほとんど直後である。

普通は細川ガラシャを核に歴史改変をするにしても大坂屋敷人質事件あたりではないかと思うのだが、この時代に設定するあたり、やはり「刀ステ」において本能寺、織田信長というのが非常に特別に扱われているように思えてならない。

ところで明智ガラシャ細川忠興の結婚を決めたのは……。

そう、織田信長なのである。

やはりこの辺り狙っているような気がする……。

今回タイトルの歌は全文では以下のようになる。

たつね行まほろしも哉つてにても
たの有かをそことしるへく

「あなたを尋ねてくれる幻術使いがいてくれたらいいのに。人づてでもあなたの行方が知ることができるように」というこの歌は源氏物語にて桐壷帝が詠んだ歌を本歌とする、幽閉中にガラシャが詠んだとされる歌である。形式上離縁されながらも幽閉され開放するわけでもない夫、忠興に対してなお慕ってくれているガラシャがいじらしいが、この世界線において幻術使いが忠興を尋ねることはなく、ガラシャの元に時間遡行軍が訪れるのであった……。

言いがかりで庭師を弑したばかりか妻を蛇呼ばわりする鬼・細川忠興ガラシャの行いによって落ちぶれた彼は彼女を憎むが、それは愛情がオーバーフローして憎くなっているもはやバグのような状態である。だから彼は、ガラシャを斬ることができない。

ガラシャもまた忠興を憎む。(めっちゃ順当な感情である)しかしそこにはやはり愛しさがある。自らを殺してほしいほどに。しかし、歌仙兼定キリシタン大名の働きによってそれはなされない。それによって彼女はいよいよ異形へと姿を変えてしまう。

地藏行平と行動をしつつも最後には彼や歌仙兼定、古今伝授の太刀、キリシタン大名たちに誉めそやされた「花」としてではなく、「蛇」として散っていくことを選ぶのであった……。

細川君! いちゃつきに刀剣男士や世界線を巻き込むのはやめよう!

ともあれ細川ガラシャがその真意を誰にも察してもらえずにそれぞれの都合のいい「偶像」として扱われる様は、実際の史実にて亡くなったガラシャの死が「キリシタンの鑑」「子殺しの烈女」「貞淑なる夫人の理想」などそれぞれの都合で勝手にラベリングされ、消費させていたことを考え合わせると何とも言えない気持ちにさせられる。

七海ひろきさんの熱演もあって筆者の中では「魔界転生」のイメージが強かったガラシャ像がようやく更新されたのだった。完全にガラシャさまの虜となって終演を迎えた次第である。……「宝塚」は我々オタク夫婦としてはハマったらおしまいの最後の沼として恐れているが、段々と包囲が狭まっているようで恐ろしい。

キリシタン大名・その数奇なる運命

細川夫婦の流血の痴話喧嘩に花を添えるのはキリシタン大名たち。朧の騎士ならぬいわば徒花のキリシタンと化した彼らは西洋の武器を振るい、刀剣男士と相対する。

そのラインナップを見るに細川ガラシャから続くキリシタンの地獄がシームレスに導かれるように感じられたので以降、史実の彼らの歴史を紐解きながら綴っていこう。

まずはゲームの特命調査:慶長熊本に未登場の二人、大友宗麟黒田官兵衛孝高(如水)。2人ともキリシタン大名のビッグネームである。細川ガラシャキリスト教に入信したのは大友宗麟と島津の争いによって細川忠興が九州に従軍し、その隙を縫って教会に行ったためであるからいわば宗麟は「細川ガラシャ」の生みの親と言ってもいい。

大友宗麟が洗礼名ドン・フランシスコとなるのは天正七年からで、前年に耳側の戦いので大敗があり、現世利益が目的とされているがその後も有力豪族離れは加速し、島津の北上が止まらぬ中、秀吉に懇願する形で九州征伐を行うものの、本人は島津降伏の前に病に倒れた。(天正十五年没。ということで史実の彼は「慶長」を知らない。)だからだろうか、信仰のむなしさを感じているところに獅子王に朗らかに肯定され敗れる彼は嬉しそうであった。九州の大大名という重責から離れ、初めて一人のキリシタン「ドン・フランシスコ」となれたのかもしれない。

黒田官兵衛、彼のリクエストに従えば孝高はかつて出会った彼とは違う彼だとは言うが、しかしこちらとしては相変わらず頭の回転に驚かされる。「維伝」での「彼」がそうであったように、彼もまた様々な自分の記憶が混濁しているがそれを活用する貪欲さこそ天下の軍師である彼にふさわしい。「一合戦仕る!」はやはり鳥肌ものである。相対する山姥切長義に敗れる彼はかつての自分が山姥切国広に敗れたことに触れる……こういうリフレインが筆者は大好きである。史実の彼は九州の関ヶ原と呼ばれた石垣原の戦いにおいて宗麟の遺児・大友義統の軍と相対し、日本号の所持者・母里太兵衛友信が苦戦する場面もあったが勝利。しかし関ヶ原のスピード決着によって所領は変化せず、慶長九年に没。キリスト式の葬儀が行われた。

小西行長は後述する事情で大名でなくなった高山右近の旧臣を多く召し抱えた。また、天草一揆を鎮圧したのち領土とした。その地のキリシタンの勢力が強まったが、弾圧をするのではなく教会に援助を積極的に行っている。関ヶ原の戦いで敗北。キリシタンのため切腹を拒否、斬首された。

大村純忠天正十二年、沖田啜の戦いにおいて甥・有馬晴信と相対するが積極的に戦うことはなかった。その後九州征伐に際しては秀吉に臣従、本領を安堵されるが既に病に侵されており、宗麟と同じく天正十五年にその生涯に幕を下ろす。キリスト教には熱心だったが改宗しないものの扱いも厳しかったようで、領内では反発も大きかったようだ。

その甥・有馬晴信の沖田啜の戦いの陣には弥助がいたという説がある。関ヶ原にて小西行長の所領を攻略。息子が家康の側近となるなど安定した老後を送れるかと思われたが長崎奉行暗殺の陰謀が露見し、切腹させられた。資料によってはキリシタンのため小西行長同様に斬首としたともされる。彼の領地はキリシタンが多く、彼自身もキリシタンであったため、陰謀露見後、息子の代で国替えが起こってからはかの地は弾圧の対象となった。その地の名は島原という。

 高山右近細川忠興と同じく利休七哲の一人に数えられた知識人。「へうげもの」主人公古田織部の義弟でもある。キリシタン大名の多くが秀吉の圧力により棄教する中、領地・地位よりも財産を選び、大名の地位を失った。その後、有馬晴信の事件も影響もあって発令された家康の禁教令により国外追放。マニラで歓迎を受けるも間もなく病を得て慶長19年、元和偃武を目前にして客死した。葬儀は盛大に行われたという。細川忠興キリスト教のことを教えたのは史実でも彼であるらしい。

 ……段々と一つの事象に収斂していくのがわかるだろうか。

そう、「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜静かの海のパライソ~」の舞台である天草・島原の乱へと人々がつながっていくのである。

更に言えば、島原の乱を引き起こした苛烈な政治を行った松倉勝家は細川家と同様に明智家と縁戚の関係にありながら土壇場で見方をせず日和見(洞ヶ峠)を決め込んだ筒井重慶重臣の家系であるというのも奇妙な縁であるといえる。

極めつけにはガラシャの甥であり、本能寺の変後根絶やしにされた明智家の男子で唯一と言ってもいい生き残りであった三宅藤兵衛は天草富岡城の城代としてキリスト教一揆の農民たちに討ち取られるに至ることを考えるに、やはりこの二つの熊本のリンクが偶然だとは思えないのである。

例えばこれら二つを経た後の「大演練」において、かつて同じ刀派がそうであったように天草に縁があるキリシタン大名小西行長の所持していた刀、「芦葉江」が顕現したりしたんじゃないか……とか妄想してしまうのである。

 

演技に圧倒されて妄想ばっかりになってしまった。ディレイ配信も拝見して、もう少し内容を煮詰めたいと思う。

本当に「これが舞台だ!」というものを見せてもらって大満足であった。

詠むべき時を安心して待つことができそうである。

 

 

とても綺麗なものは全てあなたにあげたい―「EYES ON ME : THE MOVIE」ネタバレ感想

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余談

あの頃、筆者は絶望の淵にいた。

 

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 一周年を迎え、カムバック、映画公開を控え、ますます勢いを増すIZ*ONE(以下文中アイズワン)に突如降って湧いたあの事件。それまでが華やかだったからこそ諸々が延期、中止となっていく一つずつ灯が消えていくような不安感はなんともいいようのないものがあった。そして、映画公開も中止が決定した。

 

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CJへの怒り(今読むと連中のX1についての仕打ちが思い出されまたも腹立たしい気持ちになってしまった)と希望を込めて私的テン年代映画ベストテン番外に入れた。それはあてどのない祈りであった。

しかしその後、不死鳥のようにアイズワンは全てをレベルアップさせて舞い戻り、我々WIZONE(以下ウィズワン)を歓喜させ、映画公開決定でさらに沸かせるのであった。

引っ越しによって生じた数少ないデメリットの一つが映画館が遠のいたことであった。しかし片道小一時間など目の前に広がる花道の前には遠いうちにも入らない。夫婦して初めてムビチケを予約し、(特典はクォン・ウンビさんとチェ・イェナさんであった)妻に至っては2時間周辺を密を避けつつ散歩して時間とコンディションの調整を図ったうえで、我々は公開初日最終上映、4DX版を追加料金へ払って入場するのだった。

コロナ禍での鑑賞は初めてで、時間帯もあるのだろうがエントランスの賑わいが明らかに減少していることに胸が痛んだ。ドラえもんの「新しい映画様式」を眺め、4DXのご注意で説明キャラクターが3Ⅾ眼鏡を装着することに不安になりつつも(受付で渡されなかったので/本映画は飛び出さない)、いよいよ場内が暗くなり、アイズワンの皆さんの上映前のコメントが流れる段に至って興奮は最高潮だ。

「お蔵入り」と思われた映画をついに、スクリーンで見ることができる――。

彼女たちとの「再会」がついに訪れた。

本題

※ということでここからは映画のネタバレに全く配慮しない感想です。まっさらな状態で見たい! という方はご注意ください。

 

※ ※ ※

 

いきなりの「ネッコヤ」ピアノver.である。流れた瞬間涙腺が刺激されるように調教されてしまった筆者にとっては開幕いいジャブをもらってしまった形となった。幼い子どもたちの写真、それを背景に語られるメンバーそれぞれのデビューを目指す理由。完全に「プデュ」最終回のフォーマットでのっけからずるいだろ……と思わされる。チョ・ユリさんが一番好きなシーンに選んだのも納得である。

その12人の少女たちは夢を叶え、アイズワンとしてデビューした。そしてついに韓国で単独コンサートをやるに至る。

巨大な会場、並ぶ密なファン、進む大掛かりなセットの設営……わずか一年ほど前でありながら今は遠き夢物語のような風景に不思議な気持ちになってしまう。

いよいよ開幕。重低音と振動が座席に響く。現世の奇跡、アイズワンの降臨だ。

「重低音と振動」は筆者が実際に現地参戦した時に強烈にこれが「現場」か…!と

意識させらた出来事であったので4DXでそれを体感できたことは嬉しかった。

 

kimotokanata.hatenablog.com

 入場。そして画面にだだだだだだだだだだだだっと並ぶ女神たち……。

もう筆者の脳のキャパはオーバーである。一日に摂取できる美の限界を超えてしまっているのである。あっちも美、こっちも美、逃げ場がない、逃げたくない。

一人一人の一挙一動を見たいのに困ったことに筆者の目は二つしかないのであった。

実際、上記の参戦時はあちらこちらに注意が映ってしまって悔しい思いもした。この点、本映画はプロがそのプライドにかけたカメラワークで撮っているので確実な満足感が得られるだろう点が良かった。

もちろん逆に言えばそれ以外の視線は許されないので単推し勢諸賢には寂しいところもあるだろうがそればかりはしかたあるまい。とはいえ各人推しカメラ編集版を出してくれるなら有給を質に入れてでもいつでも見に行きますという所存である。

(個人的にはViolettaのツバメダンスは宮脇咲良さんを正面にしてくれ~! という気持ちであった。)

前情報を全く入れていなかったので、コンサートフィルムというのはその名の通りライブビューイングのような感じでコンサートの始まりから終わりまでをぶっ通しで流すものかと思ったらそうではなかった。冒頭のデビューに至るまでのモノローグに始まり、本番前の練習と本番の様子、幕間映像の収録と上映を行き来する形で語られる。

簡単にいってしまえばこれまた「プデュ」のいよいよ評価です→それに向けての練習はこんな感じ→さあ本番だ! という流れをなぞっていると思えば国民プロデューサー諸賢は想像がつくのではなかろうかと思う。

ひまわりのふんわりしたかわいらしさ、AirplaneのCGの妙なチープさと「ウィズワン!」という自分たちでも所属事務所でもなくファンの名前を叫んでくれるそのありがたさ。

そしてキム・ミンジュさんのピアノで紡がれる「夢を見ている間」――私が誰かを幸せにできるなんて思っても見ませんでした、と最後のあいさつで述べた彼女だが、その真摯さ、パフォーマンス、日々の立ち居振る舞いすべてが我々の幸福度を常に上げてくれているのである。

8月という「プデュ」がフィナーレを迎えた月に聞く「夢を見ている間」は沁みた。最終回のちょっとがたついてガコッと上がるせり上がりを幻視してしまうほどであった。

畳みかけるような「Really Like You」で尊さはもはやうなぎのぼり。

そこからの「ネッコヤ」やコンセプト評価曲メドレーは国民プロデューサーの亡霊を絶対に成仏させない、という気概が感じられてよかった。

ただインタビューで「この季節は『1000%』ですね」と自分が発表した曲に誇りを持っていたイ・チェヨンさんに嬉しくなっただけにその曲がなかったのはいささか残念だったが…(他の日ではやったりしたのだろうか?)投票で移動になった「I AM」でのパフォーマンスは圧巻であった。

本来の公開時期であれば「え! この新曲は絶賛発売中のNEWアルバムで聴くことができるんですか!?」という展開になるはずであったろう「So Curious」と「AYAYAYA」 周りについては特に力を入れて編集しているのが伝わってきた。

「So Curious」組のイェナさんと奈子さんの絡み(矢吹奈子さんがカウントダウン告知でおすすめしていた部分)のユーモアあふれるやり取りは素晴らしいし、実際のステージではイェナさんしかできないキュートさが炸裂していた。可愛らしいながらも新規の振り付けが多く、その展開も早いこの曲は彼女の高いダンス・パフォーマンススキルがあることで更に高い次元に昇華したことは疑いがなかった。世界最大の妖精・お手本のような可愛さの矢吹奈子さんと久々に見た金髪姿はやはり錬磨の美しさを感じさせる本田仁美さんは(もともともあるのかもしれないし髪との対比もあるのかもしれないが、全員並んだ時など本田さんの肌はひときわ白く見え、本当に美容に意識を高く持っているのだろうなあと思わされた)もともとの愛嬌をさらに磨きをかけるだけでなく前述したような難度の高いダンスもこなしており、まさにグローバルアイドルといった感じだ。キム・チェウォンさんの小悪魔的笑顔と歌声、しなやかな動きには翻弄されたくて仕方がないし、黄色の衣装がよく似合うひまわりの化身のような明るさを届けてくれるアン・ユジンさんを見ると冷房の利いた室内でも心地よい暖かさを感じる。チャン・ウォニョンさんはレコーディングから既に五億点です。「準備チェンナヨ?」のレコーディングで苦労していた日々がもはや懐かしい。ステージでの姿は勿論、練習室でのあっさりしたメイクとさっと結んだヘアースタイルが可愛らしすぎてヤバい。ちょうど最近見た「アンナチュラル」での石原さとみさんを彷彿とさせた。


[최초공개] 아이즈원(IZ*ONE) - SO CURIOUS | COMEBACK IZ*ONE BLOOM*IZ

編成が変更にはなっているがカムバック時の同曲を貼っておく。このキュートさが大画面で鑑賞できてしまうのでもうマスクの下は緩みっぱなしである。初めて窮屈なマスクに感謝をしたかもしれない。

「AYAYAYA」組のチョ・ユリさんは今までとは毛色の違ったガールクラッシュな曲に戸惑いを見せるものの、(とはいえコンセプト評価時は「Rumor」志望だったらしいので方向性自体は好きなのだろう)本番ではその力強いボーカルが動きの背骨となっているかのような文句なしの動きを見せていた(しかし、本田さんもそうだがちょっと肩が「セクシだ」過ぎてどぎまぎしてしまう。カン・ヘウォンさんも然り)。ちなみにユリさんの練習室での薄めのメイクもめちゃくちゃ好きである。努力する天才、アップデートの権化である宮脇咲良さんはその目力と負けん気そのままにAKB48ダンス最高難度の曲「NO WAY MAN」のセンターを務めたことすら通過点にして更に一段ギアを上げてきた。後、「幻想童話(Secret Story of the Swan)」にてダンサーの一翼を担う下地は既に出来上がっていたわけである。へウォンさんは自身のスン…としていれば周りがちょっと怖くなってしまうほどの美貌を最大限にガルクラに活かしていたし、いつもにこにこほんわかのミンジュさんが「hush」する様のギャップは発電できてしまいそうなほどの落差で嬉しい悲鳴が上がりそうだ。ウンビさんのキャリアを感じさせる間違いないパフォーマンスはこれを支柱として他のメンバーは安心して自らの向上に打ち込めるのだという頼もしさを感じたまさしく大黒柱であった。極めつけはこれぞメインダンサーのイ・チェヨンさんである。髪の一本一本、指先、足先の細胞の一つ一つにまで神経が行き届いた全身パフォーマーである彼女の動きを見た後では今後軽率に「鳥肌」という言葉を使うことはできないように思えた。

日本曲からの「好きと言わせたい」では宮脇さんの視線が絶妙過ぎてそれ以外がほとんど記憶にない。ウィズワンたちの「好きと言わせたい」コールも心地よく、この演者と観客の幸福な共犯関係を取り戻したく、ほとんど叫びたい胸の内をぐっと押しとどめて楽しいのに辛いという矛盾した気持ちに時勢を恨んだりもした。

幕間の吸血鬼ズワン。こういったゴシックな服装が(も)彼女たちはとても似合う。どんどんオフショットとか蔵出ししてほしい。後の「ヴァンパイア」を彷彿とさせるような悪女の極み、キム・チェウォンさんや演技の睡眠でも半目をして見せる指原さんの薫陶を感じる咲良さんの演技、眼鏡の本田仁美さんが特に必見である。本田さんが本を片手にふむふじゅえっへんと語り、みんながさすが~!と甘やかすシーンは月まで吹っ飛ぶ可愛さなので是非収録してほしかった……。

そこからの「Highlight」「La Vie en Rose」「Rumor」「Violeta」はまさに圧巻、メンバーのパフォーマンスは勿論のこと、新規アレンジでも見事に合わせて見せるファンたちの力にこれがコンサートだよな、これがライブだよな、と再びのアイズワンとウィズワンの蜜月ぶりに胸を熱くさせられた。

楽しい時間にもやがて終わりがくる。本公演が終了し、コンサートの物販グッズに着替えたメンバーが一人ずつ挨拶をはじめる。

もう、ボロ泣き。

多くのメンバーが映画の一番好きなところにあげるのも納得といったところで、メンバーたちの感情の爆発、そしてそれが許される状況を作り上げた会場の雰囲気のすばらしさに全国の映画館の湿度は五パーセントは上がったのではないかと思われる。

一推しであるからかもしれないが、チャン・ウォニョンさんの言葉に特に筆者は心を動かされた。ユーモアある喋り出しから始まりながらも、そこから感じられるのはそこに至るまでの沢山の苦労。15歳の少女に華やかな舞台を与える代わりにショービジネスの世界は何を奪ってきたか、それには我々も少なからず加担している……。胸を痛めながらも、その大きな瞳から涙をこぼしながらなお明るく笑い、みんなに感謝を告げる彼女にやはりアイズワンのセンターは彼女しかいないという思いを強く抱きもするのであった。「もう大丈夫」が今もずっと大丈夫であり続けていますように。

イ・チェヨンさんの言葉にも泣かされた。素晴らしいスキルを持ちながら、自信を持てない彼女はそのため外部の評価が芳しくなく、それによりまた自信を失ってしまうという負のスパイラルが続いていた。それがアイズワンの日々で断ち切られ、事実彼女は日々美しくなっている。「自信が人を作る」という言葉の故事成語になってしまうのではないかと思うくらいである。「SIXTEEN」で姉妹揃ってしょぼくれていた頃から比べると本当に別人かと思ってしまうくらいだ。そのダンスの軽さから「羽チェヨン」と呼ばれる彼女がウィズワンたちに「あなたたちは私にとっての『羽』」と言ってくれるのだから泣かせるではないか。彼女がアイズワンにいてくれて本当に良かった。

 

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韓国に単身来てくれたお母さんに感謝の涙を流す本田さん、いつも泣かないチェウォンさんがストレートに伝える感謝、(抱きつかれに行くユリさん)、「プデュ」時は何かあると泣いてしまっていたヘウォンさんは涙が減った代わりに沢山笑顔が増えたことを述べ……と本当にみんなの挨拶が素晴らしいので枚挙にいとまがなく、既に五千字を超えてしまったので是非鑑賞をして確かめていただきたい。

特に最後のアン・ユジンさんのコメントはいつもの陽気なビタミンである彼女からやはり等身大の少女としての言葉であり、しかしMCを単独で務めただけあって非常に素晴らしい言葉になっておりウィズワンの涙腺にとどめを刺してくるので必見である。

その後の円陣……打鍵しながら視界がにじんでいくのを筆者は抑えることができない。本当に得難い体験であった。

スタッフロールの間も決して立ち上がることはできない映像が流れていく。そして……。

風立ちぬ」で言えば「堀越二郎堀辰雄」の位置に我々ウィズワンが立つことを許されたその瞬間を、繰り返しになるが是非劇場で鑑賞していただきたい。

蛇足:雑感など

円盤、出るのだろうか。出てほしい……。(公開してもらっただけでもありがたいのにすぐ欲を出すオタク)幕間映像を是非収録してほしい。スマホの中のアイズワンさんや、吸血鬼ズワンさんは本当にかわいいのである。きゃわいいのである。

4DXについては飛び出しはしなかったものの大満足であった。ただ、基本的にパフォーマンス中は振動しっぱなしなので、お手洗いは事前にしつこいくらいに行っておいたほうがよいだろう。アイズワン諸賢の飛び散る汗、すれ違った時の香りが再現されるのか……⁉と一瞬思ったがしっかりパフォーマンスの底上げに活用されているので安心されてほしい。一番かみ合っているのは個人的には「La Vie en Rose」だったと思う。

内容に関しては上記の通り素晴らしいものであったが、きわめて個人的な部分で言えば「好きになっちゃうだろう?」は是非収録していてほしかったし、「Violeta」のツバメダンスは真正面からの画が欲しかった……というくらいであろうか。あとは歌詞の字幕があるとよりありがたかった。

しかし改めて、オンラインコンサートも非常にありがたいがリアルコンサートが恋しい。自分がもう一度あの感動を味わいたいという気持ちに嘘はつけないし、そうでないとしてもアイズワンの皆さんががウィズワン諸賢の大歓声によってさらに磨かれ、その輝きを増すさまを眺めたい。