カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

機械猫の奴隷――2020年買って良かったもの

お題「#買って良かった2020

余談

「買って良かった2020」とはいうものの翌年一月八日まで大丈夫やんけ余裕やな……と思ったらばっちり当日ラスト一時間白紙という感じで筆者の今年の一年が早くも象徴されたような展開であるが、折角なので記しておきたいと思う。

昨年の買って良かったものと言えばダントツに家(マンション)だったわけで、その関連で家具周りをいろいろと買ったりアップグレードしたりしたのだが、よくよく考えると波乱万丈であった引っ越し顛末記もその波乱万丈さゆえにまとめ切れておらず、このブログを筆者の自分史としてみた時にやや唐突である気もする。

今一つ、「体験」を記そうとしたがこれもまたのべ三か月ほどの記録であるからここから一時間でまとめるのは筆者の能力では至難であるし、別のアプローチで世に出したいと思う。

じゃあ「本」でも一つとも思ったが、kindleによると昨年の読破数は293冊(仕様的に再読を多く含むはずである)、昼休みも外出をしないようになったコロナ禍故の出来事のように思われるが驚くほど内容を覚えていない。コロナに対する不安を文字で押し流そうとするあまりそのものも流れてしまったことは悲しい。しいていえば、発売前から楽しみにしていた「つけびの村」はいつか記事にまとめたい。

と言っている間にますます時間が迫ってきた。ならばやはり最初に立ち返ってマンションに入居するにあたり新たに導入した家具の中から何か一つピックアップして書いてみるのがよかろう。いわば、のちに予定される新居に引っ越しました記事に対する先行シングル・カットみたいなものである。アルティメットものはいいようである。

では何にすべきか。ここからさらに絞ろうとすると筆者はまたモダモダと悩み、急に鼻の脂が気になったりし、とりあえずTwitterを開いたりしつつ、同時にkindleで「やっぱり『べしゃり暮らし』はおもしれえなあ」とひとりごちながら、気が付けば日付変更五分前となり慌ててソシャゲのデイリー報酬のためにログインする、という未来がまざまざと見える。せめて最後は記事を書こうとしろ。

ということで有識者に尋ねることにした。筆者の新居を知り尽くす人間、人(CV.加藤みどり)は彼女を「空間の幸せ請負人」と呼び、筆者は妻と呼ぶ。本当は名前をもじったあだ名で呼ぶ。

ともあれ空間の幸せ請負人っちょに2020年に買って良かったものは何かを尋ねた。

「それぞれどれも忘れがたく、決めるのは難しいのですが……」

急にオードリー・ヘップバーンめいた妻は逡巡する。

と、妻は壁際の黒い円盤を見咎める。

「ルンバです!なんと申しましてもルンバe5です。私は、その思い出を生涯大切にすることでしょう」

そういうことで、以下はルンバe5における私見を述べる。

本題

 

 

筆者もルンバe5は大変買って満足している。厳密に言えば、住宅エコポイントにより導入したのだが、まあ広義の「買ったもの」でよかろう。

ルンバ自体は新居に越したら何かしらの手段で調達してみても良い、と思っていたが、「e5」が我が家にやってきたのはまったくもって住宅エコポイントを利用したから、という理由による。というのも、住宅エコポイントでメインで狙っていた白物家電を引き替えた余りで引き換えられるルンバとして逆算したグレードが「e5」だったからである。筆者個人はルンバはメーカー名もルンバだと思っていたので、最初は「アイロボット」というパチモンばかりひっかかる……邪魔くさいなあ……と思ったりもしていた。

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ルンバはバカでかい箱に入ってやってきた。多分詰めたら二台は入れたと思う。開梱するとあからさまに「ルンバe5が入っていますよ」という箱が更に現れた。時は2020年の十月。レジ袋有料化とかエコバッグとかそんなちまちましたことやってんじゃねえ、これが俺のスタイルだといわんばかりの熱い過剰包装ぶりにゴミを掃除するものを買ったのにゴミが増えてしまうというのは落語でありそうな題材だな、と思いながら筆者はセッティングをし、自分のスマホと連携させた。

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e5のいいところ(ちょっと駄洒落みたいになったけど違いますよ)はアプリが使えることで、スマホさえあれば筆者が仕事場で昼休み中、妻が居間で「メーデー!惨劇の瞬間」を固唾をのんではらはらと見守っている時を見計らってルンバを解き放つことが可能である。また、上記のように正常でない場合はお知らせもしてくれるので良い。

ダストボックスはボタン一つでカパッと開き、中に残った細かいホコリごと水洗いできるのも素晴らしい。(フィルターは取り外し可能だが水洗い不可)

少し先走ってしまったので時を戻そう。続けてアレクサとの連携も終え、いよいよ我が家のルンバの初陣である。アプリの清掃ボタンを押すと、軽快な音と共にルンバが駆け出した。

「ああーっイヤホンが落ちている! 巻き込んでしまう!」

「このデカいクッションとかは塞いでしまうから片付けとこ」

「おいおい同じところずっと回っとるじゃないかこっちだぞ」

「ほんとにゴミ吸ってんのかな……?(進路上にレシートを破って置く)おー吸ってる! えらいえらい!」

「家に帰る途中で力尽きて寝ちゃってるじゃないか……ほら家(充電スタンド)に帰りますよ」

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ルンバは猫である。

ルンバが来てから、確かに家は片付いた。ルンバが快適に掃除が出来るように、人の手によって。

しかし人は、少なくとも我々夫婦は意外とそれが嫌いではない。苦にならない。結構な音がするので(夜間は絶対にしない方がいい)不在時にしっかり働いてピカピカ……というのも一つの理想ではあるが、我が家ではルンバが気ままに動き回るのをある時はほのぼのと、ある時はひやひやしながら見守りながらのティータイムが休日のひとときの風景として定着しつつある。時々会心の動きをした時などは思わず拍手をしたくなる。

もちろん、しっかりゴミも集めてくれている。特にベッド下の掃除は本領発揮である。

我が家はペットOKの物件である。実際、入居にあたって猫を……というのも少し考えたりはしたが、やはり寿命のある生き物と共に過ごす覚悟が今は我々には足りなかった。

そういう意味で、我が家にとってルンバは意外な、しかし幸福な伏兵であった。日々に気まぐれな同居人と、ついでにピカピカな床を取り入れたい諸賢はどうぞ検討していただきたい。

 

 

 

Amazon アソシエイト・プログラムはじめました。

魂心Tシャツ 人の心を見つめ続ける。時代おくれの男になりたい。(LサイズTシャツ白x文字黒)

アイキャッチ画像に使えて便利なので、今までも当ブログではたびたびAmazon商品リンクを挿入させていただいていた。

もしかしたらそこからご購入いただいた読者諸賢もいらっしゃるかもしれない。

blog.hatenablog.com

年始の記事に書いたとおり、この個人ブログ冬の時代にあえて収益化の道を歩むことを目指す筆者としては、公式の導きに従ってAmazon アソシエイト・プログラムをはじめることとした。

Amazonユーザーであるので住所を選んで簡単に出来るかと思いきや、なぜかエラーが出て一から打ち直させられたりはしたものの、無事にアソシエイトIDを獲得することが出来た。

そのアソシエイトIDをはてなブログに登録し、↑上記リンクを貼ったのだが、このリンクからが有効なのか、以前のものも有効なのか、この辺りは良くわからない。

ひとまず細々とやっていきたい、と思っていたが、届いたメールを見るとどうも半年以内に3件以上の売上がないとそもそも審査が始まらないらしい。

まあその時はその時ということで、無理せずやっていきたい。

勝手にお金が発生しても申し訳ないなあと思うのでご報告でした。

永遠に擬した刹那連鎖に座す―インターネット生活20周年

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余談

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

2018年元旦に開設したこのブログも丸3年が経過し、ますます頑張っていきたいところである。

恒例の昨年の反省からすると、

 

kimotokanata.hatenablog.com

 

目標とした週に1回の記事の公開は公開できた記事が47記事と12か月・4週計算ではぎりぎり1記事足りないある意味絶妙な感じで終えてしまった。「今週のお題」への参加も積極的だったとは言い難い。

アドセンス周りは去年はチャレンジすらできていない。

当ブログ「らしさ」というのもいまだ、模索中である。

体たらくな昨年とは体よくおさらば、心機一転頑張っていきたい所存である。

本題

2021年。

すなわち、筆者が本格的にインターネットに、webの海に漕ぎ出でてから早20年が経過した。それ以前も父の職場に遊びに行った折などに触れてはいたが、我が家に家庭用PCがやってきたのがその時だった。

まさしく黒船襲来であった。好きな漫画のタイトルでYahoo!を検索すれば、そこにはガキが及びもつかない深い考察が展開されていたり、原作者本人と見間違うような絵が展示されていたりした。

その中でも大手といえるサイトの掲示板に書き込み、そこで知り合った同世代のサイトにお邪魔したりもした。キリ番ネチケット、常連アイコン……何もかもみな懐かしい。

チャットにも熱中した。テキスト中毒の気がある筆者がTwitterを飽き性ながらずっと使い続けているのは、都度今まで見たことのないテキストが眼前に出現するからというのが理由の一端であるが、チャットもまさしくそうであった。しかもレスポンスがある。レスポンスができる。この「眼前のテキストに相互干渉できる楽しさ」というのは、もしかしたら今のはLINEのオープンチャットとかディスコードで体感できるのかもしれないが、あの無味乾燥な画面で繰り広げられた楽しさ、空気感というのは筆者はちょっとほかに代替が思いつかない。

中学生になってしばらくして、「レスポンスの速射性」を追い求め続けた結果、いつの間にか筆者は2ちゃんねるに辿り着いていた。今となっては比べるべくもないが、当時はまさしく不誠実な集合知の廃棄所といった佇まいで、ゲームの攻略情報など他と一線を画すスピードであった。もちろん、お礼は3行以上である。鮫島スレに張り付いて1日無駄にしたりするのである。

ゲームといえば連邦VSジオンDXにもハマっていたが、当時のオンライン対戦の敷居の高さたるやハナから挑戦する気にもならないものであった。

そうして高校生になり、2006年がやってきた。この年、筆者は携帯電話を手にした。多くの友人は高校合格を機に携帯電話を買ってもらっていたが、筆者はPCがあるし……と遠慮していたが、高校では見る間に携帯電話を持つ者と持たざる者との間に歴然とした格差が顕現し始め、遅れて導入したのだった。

そして筆者はニュー速VIPに出会う。闇鍋めいた魅力を放つ勢いすさまじきその掲示板に、そのころ咲いていたあだ花に「新ジャンルスレ」というものがあった。

そこで筆者は初めて「まとめられる」という経験をする。それは全く利害関係のない人間に評価されるという新鮮な経験であり、それは「文才ないけど小説書く」スレ参加へと繋がっていく。

その後大学へ進学し、入会したサークルのサイト運営(先輩方から受け継いだものを後輩へ右から左に流しただけ)をしながら、はてなダイアリーをはじめ、Twitterを開設し、今に至るのである。

なぜこんなことをつらつらと書いたのか。新年早々後ろ向きに過去を振り返ってどうするのか。本当はもっとディティールを書きたかったがあと5分で日が替わるので端的に言うと、上記に挙げたサイト、Twitter以外全部消滅しているんである。いや、サークルのサイトも消えてたのは今検索して知ってちょっとビビった。プロも輩出しているのでどっかで話題に上がったりしてないかなーと思ったらそりゃあ自分が管理していた当時はジオシティーズだったからないことはわかってたけど後継のブログに内容が引き継がれた形跡がないのである。

2ちゃんねる自体は名前を変えて存続しているし「元スレッド」もいくつか見つけられたが、まとめてくれていたサイトはかろうじてインターネットアーカイブで見つけることが出来ただけだった。

例えば電子書籍だって急に配信停止になったりする。永遠というものが仮にあるとしたら、それはインターネットの外にあるのだろう。

デジタルタトゥーというものが問題になっているように、すべてが消える訳ではない。しかし多くは。この大海の中を漂い、摩耗し、朽ちていく。

デジタルのデータはデジタルであるがゆえに、アナログのものより軽んじられる傾向があるように思うが、アナログよりもいとも簡単に消え失せてしまう。

そのことを踏まえて記事を書いていこう、コンテンツに触れようと思った元旦である。

そういえば、妻と出会って10周年でもある。妻の忍耐強さに敬服して記事を終えることとする。

蛇尾・2020

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晦日である。誰も彼も言っているが、筆者もまた、これまでの人生にない「大晦日感のなさ」を感じている。

とはいえ仕事はばっちり年末進行であり、これにコロナ禍での調査事項やら何年かに一度の点検作業やらいつもの月末業務やらが駆け込んできて、かれこれ二週間ずっと具合が悪い……。本来ならば一昨日くらいから、ヒプアニ総括感想、今年買ってよかったもの、そして今年の総括と順を追って記事にしていくつもりが、このざまである。

どうも最近年のせいか、気候のせいか、打鍵することに乗り切らない日々が続いている。色々と勇ましいことは来年言うことにして、筆者の日記帳にその体たらくを残しておくのもその醍醐味の一つであろうと思うので、こうして記しておく。

全体的に終わりの見えない螺旋階段をぐるぐると歩き続けたような一年であった。伴走してくれた妻に感謝である。

記事数:47(他下書き11)

PV数:約20万

良いお年を。

もはや漫才の大会ではない―M-1グランプリ2020ネタバレ感想

余談

コロナ禍、それでもM1は止まらなかった。例年通り、敗者復活戦からリアルタイムで楽しませてもらった。

予想は全く当たらなかったわけだが、実際に今回のM1は過去最も混戦だったのではないか、と思う。

時々思いついたようにやる直後だから許される感想言い逃げ、今回もやっていきたいと思う。

本題

何が嫌いって「ここめっちゃ笑ったwwww」みたいなテレビ直撮り著作権侵害動画がTwitterでバズることなのであるが、かといって漫才を語るときにやはり映像がある都内とでは相互の理解が全く違う……というジレンマにしばしば悩まされる。漫画の感想を書く時もいつだってクソみてえな画像ペタペタ貼りネタバレブログに筆者は憎悪を燃やしているのである(「アル」さんをちゃんと勉強して活用したい)ありがたいことに最近はテレビも素早く公式動画を上げてくれるので、筆者の素人感想はどうでもいいのでただ動画で大会の熱気の思い起こすだけでも良いかもしれない。

ファーストラウンド

インディアンス


インディアンス【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順1〉M-1グランプリ2020

史上初、敗者復活組が一組目。にもかかわらず、いやだからこそなのか、セリフを飛ばして悔しい思いをした去年より確実に成長を感じさせる出来の良さだった。あるいは最初の組でありながら、一番M1らしいコンビであったかもしれない。上沼さん以外の審査員の方の点数にそれぞれ+3点くらいあっても良かったと思う。

 

東京ホテイソン


東京ホテイソン【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順2〉M-1グランプリ2020

大会最年少、初出場ということを感じさせない堂々としたネタ運び。霜降り明星を決勝で見た時もそうだったが、準決勝でくすぶっていた頃とはやはり違っていて審査員の目は確かなのだな、と感じた。多分、エンタみたいなテロップが出る番組と相性がいいんだろうな、と思う。Tシャツが転売屋の餌食になっていないことを祈る。

 

ニューヨーク


ニューヨーク【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順3〉M-1グランプリ2020

去年、「ニューヨークが決勝に出る」と聞いた時に期待していたネタをしてくれた感じだった。その上で去年のM1を総括するときにしばしば言及された「やさしい漫才」に対して中指を立てているようでそれまたニューヨークらしくて嬉しくなる。個人的には十分最終決戦に進むべき出来だったと思うのだが……。もっともダーティな王者の誕生は持ち越しになったようである。

 

見取り図


見取り図【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順4〉M-1グランプリ2020

「経験者」の貫禄をガツンと見せてくれたネタだった。リリーさんが噛んでしまうが、それさえマネージャーのミスという演技に感じさせるような全体の安定感は素晴らしいものがあった。最初のお詫びの練習が最後に収斂していくなど、M1の決勝を見ているという満足感のあるネタだった。

 

おいでやすこが


おいでやすこが【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順5〉M-1グランプリ2020

こがけんさんの「オーマイガ」ネタが大好きなのであるが、果たして個性の強い者同士がぶつかるとどうなるのか……と思っていたがやはり会場を揺らしてくれた。「歌ネタ」というのはいわば博打であるが、見事に波に乗って見せた。この波乱がしかし、さもありなんというかたちで飲み込まれたのが今年のM1の恐ろしさであったと思う。

 

マヂカルラブリー


マヂカルラブリー【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順6〉M-1グランプリ2020

ぶっちゃけた話、筆者は今年のM1は「錦鯉のストーリー」か「マヂカルラブリーのストーリー」どちらかになるだろうと思っていて、野田クリスタルさんがぶち破って入ってきて、会場をその日一番の笑いで包んだときは「こっちなのか!?」と思った。

が、もちろんその後も安定して面白かったものの、正直なところそこ以上の花火は打ち上らなかったので爪痕を残して終わり…次回に期待、と思っていただけに最終決戦進出はいささか驚かされた。

「負けたことがある」ということがいつか大きな財産になる、ということを今回の出場者で最も体現してくれたコンビであろう。

 

オズワルド


オズワルド【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順7〉M-1グランプリ2020

間違いなく面白かったし、昨年からブラッシュアップされていたことも感じられた。しかし筆者もそうであるように、審査員の皆さんもまた、オズワルドには「チル」を求めていたようである。松本さんと巨人師匠、果たしてどちらのアドバイスを受け入れるのか、来年の去就が最も楽しみなコンビかもしれない。

 

アキナ


アキナ【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順8〉M-1グランプリ2020

今回最も前評判というモンスターに泣かされたコンビであっただろう。事前予想1位であればどうあってもプレッシャーはかかる。出番順としてもかなり好条件だっただけに、本人たちの悔しさはいかばかりだろうか。テレビでしか接していない筆者は、未だアキナの100%を見ていない気がしてならない。来年こそその前評判通りの実力がいかんなく発揮されるところを画面越しに見てみたい。

 

錦鯉


錦鯉【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順9〉M-1グランプリ2020

ということで、今回の筆者の優勝予想は錦鯉であった。と言っても熟年の遅咲きのスターがM1で王者、大ブレイクというストーリーを審査員も視聴者も求めるだろう……という下心もあっての予想だったのだが、ふたを開けてみると実際一番笑ったかもしれない。トリッキーとオーソドックスの闇鍋のような漫才はそれこそパチンコのように様々にぶつかり、拡散して大きな笑いに繋がっている。こちらも十分決勝進出の目があったと思うのだが……とはいえ世間には大いに認知されたであろうから、存分にブレイクしてほしい。

 

ウエストランド


ウエストランド【決勝ネタ】1stラウンド1st Round〈ネタ順10〉M-1グランプリ2020

彼らもまた敗者復活戦でなじみ深かったのだが、その闇もキレも数段ギアを上げていた。同じタイプのスタンドであるニューヨークといい具合に離れていたことも彼らにとって幸運だったのではないだろうか。井口さん、なんかのドラマに出てほしい。

 

最終決戦


見取り図【決勝ネタ】最終決戦〈ネタ順1〉M-1グランプリ2020


マヂカルラブリー【決勝ネタ】最終決戦〈ネタ順2〉M-1グランプリ2020


おいでやすこが【決勝ネタ】最終決戦〈ネタ順3〉M-1グランプリ2020

 

昨年の大会はまさにM1、「話芸」で勝ち取ったという印象があった。他方、今回の王者は文字通りもがいてもがいて、栄冠をつかみ取った。決勝に残った3組はまさに三者三様、いかにもなM1という見取り図、スラップスティックというかスリップスリップ&スリップだったマヂカルラブリー、歌ネタを突き抜けて歌芸にまで昇華していたおいでやすこが……カオスが顕現した最終決戦はその後の審査の割れ方がその甲乙つけがたいさまを物語っていると言えるだろう。

正直なところ、筆者としては一番スタンダードに漫才らしい「見取り図」に取ってほしい、という気持ちがあった。しかし、寝て起きたら漫才しかなくなってましたコンビや
どうしても笑わせたい人がいる男が自分たちの人生を文字通りBETして、M1という概念を変えにかかってきたのだから一視聴者としては降参せずにはいられない。

もはやM1は漫才の大会ではなくなったのかもしれない。しかしそれは、お笑い無差別級の開幕として、更なるカオスの幕開けとしてポジティブに捉えたいと筆者個人としては思う。

少なくとも今回の王者の言葉、大会の締めにおいて「えみちゃん辞めないで」以上の言葉を筆者は思いつけない。

あるいは、ガチガチのオーソドックス漫才で最終決戦で上沼さんがマヂカルラブリーに投票し、史上初の連覇王者になるという未来も面白いかもしれない。

 

ろくでなしミトリズ #1

エンドロールには早すぎる――IZ*ONE(アイズワン)カムバックソング「Panorama(パノラマ)」感想・妄想・考察


IZ*ONE (아이즈원) 'Panorama' MV

IZ*ONE(以下文中アイズワン)のカムバックソングについて語るとき、いつも深夜になってしまう。もちろん、記事投稿自体を夜に行うことが多いからなのだが、彼女らがカムバックするとき、それは世の美が更新されるときであり、その「新しい世界」になじむのに些か時間がかかってしまうからである。それは幸福なチューニングの時間だ。

既に昨夜の「2020MAMA」においてその出来栄えのすさまじさにウィズワン諸賢を沈黙させた「Panorama」のMVがついに公開された。

そこで筆者が見せつけられたのはまたも新たにして多様な美の顕現とウィズワンへの愛、メンバー間の信頼、そして今こうしてアイズワンというグループを応援できているという奇跡の再確認、最後に、どうしようもなく近づいている「終わり」であった。

以下、いつも通りの筆者の妄想を書きなぐっていく。

考察(妄想)

平行世界で何度も「アイズワン」を繰り返す彼女たち

初めに総論から言うと、これは「語られなかった思い出」を取り戻そうとしたアイズワンがしかし、「語られなかった思い出という思い出」を受け入れてそのループに終止符を打った物語だと思っている。言うのはタダである。

初めに全員の群舞シーンで現れるコンクリート造りのような背景の黒服のアイズワン達こそが、何度も過去に戻り、改変しようとするアイズワンだ。

彼女たちの気持ちはひとつ、「もう一度過ぎ去るあの季節の風景、話せなかった私たちの話」を話したい、ということだ。

あの季節。気温よりなお寒く、ただひたすら、推しの命が続くことを願ったあの季節。ひっそりと息をひそめたあの季節――はや一年が過ぎた「本来のFIESTAカムバック」である。シックな服装も似合いすぎるキム・ミンジュさんがディレクターズチェアに座り、カチンコが打ち鳴らされる。アイズワンの記念日を記されたカチンコが、ゼロになる。再びの「アイズワン」の開始である。

それまでの記録を眺めるのはオードリー・ヘップバーンを彷彿とさせるカン・ヘウォンさんである。そのフィルムを収めている数から、これが一度や二度ではないことが分かる。

展開されるのはどこかで見た景色、どこかで見た衣装、どこかで見た小道具、どこかで見た演出……。しかしそれは我々の知るそれではない。演者が違う、色合いが違う、衣装が違う、表情が違う……。ACTが違うのだ。我々の知っている彼女たちとは。繰り返す平行世界を示唆するかのように、黒い服以外の彼女たちの像はある時はブレ、ある時は分裂し、ある時は万華鏡のように拡散する。

ついに120%の魅力を発揮したように感じる矢吹奈子さんの表情管理と堂々としたパフォーマンスには驚かさせられるが、まずはその像が多重になっているからこそその未来が確定していないというヒントになっているように思える。後半、チェヨンさんがチェスの駒を進める前にその動きを知っているのはその出来事をかつて経験したからなのではないか?

アイズワンでなかった世界線を示唆

そして金髪が大正解のクォン・ウンビさん、肩ががっちりしているドレスも問題なく似合ってしまう宮脇咲良さん、デカリボンをセレクトしたスタイリストに五千兆円くらい支給してほしいチョ・ユリさん、完全に超新星女優アン・ユジンさんは「アイズワンでなかった場合の彼女たちの未来」を現わしているように感じられた。アイズワンではなくソロとして活動していた可能性が高いのは確かにこの四人だろう。キャリアも長くダンススキルの高いウンビさん、48Gの第一線で活躍しており劇団経験もある宮脇さん、アイドル学校で人気を勝ち取り歌唱力が絶賛されたユリさん、コンタクトレンズのCMで注目されていたユジンさん……。単独でデビューしていてもきっと多くのファンを得ていたことだろう。黒髪もバチボコ似合うチェウォンさんもまた、アイドルになっていなかったらそのように過ごしていたかもしれないゴージャスなふるまいをしていて可愛らしい。

それでもアイズワンは、この世界線を選ぶ。

過去の改変は、しかしうまくいかない。無数の平行世界が生まれ続けるが、どの世界においてもあの季節の風景は過ぎ去っていってしまう。アイズワンには一度、ひどく厳しい冬が訪れる。

ならば、編集すればいい。誰かが思いつく。フィルム状にして過去をさかのぼり、改変しようとしている彼女らの周りには膨大なフィルムがある。それをつなぎ合わせて「あの季節」のシーンは削除してしまえばいい。冒頭の歌詞、「静かに始まったドラマ(これはPRODUCE48が歴代最低視聴率だったことも示唆しているのだろう)」の「大事にしていた欠片」とは「うまくいった過去」のことではないだろうか。

そういったシーンがチェ・イェナさんの圧巻のセンターダンスシーンの後、矢吹奈子さんと後半美しすぎる一筋の涙で全国一千万人をドギマギさせた本田仁美さんのまわりに沢山のフィルムが釣り下がっているシーンであろう。

ミステリアスさにも磨きがかかりますます魅力的なイ・チェヨンさんがいうように虹の家に招待され、楽しく日々を過ごせたらどんなに良いだろう。

しかし彼女たちは気づく。「全部入れておくわ物凄く特別だから」と。彼女たちは過去を編集しないことを選んだ。あの日々さえも今や愛おしいのだと。何故か。

「あなたの目の中で輝くstarlight」を見つけたからである。

「あなた」は、ウィズワンは何をその目に宿しているのか。

アイズワン諸賢に他ならないではないか。

こうして彼女たちは、ウィズワンを通してどんな苦難の時であっても自らが輝いていたことに気付く。「初めて会った時あの瞬間」のように。

そう、あの時我々は互いに約束したのだ。

「君の星になる」「私の光になって」と。


[ENG sub] PRODUCE48 [최초공개] 프로듀스48_내꺼야(PICK ME) Performance 180615 EP.0

だから、我らが最強マンネ、チャン・ウォニョンさんはこう歌って〆るのだ。

永遠に覚えていて約束よ
Don’t Let me Down Down Down

こんなことを言われたらますます応援をせざるをえないではないか……。

しかし今回のアルバム「ONE-REELER ACT IV」のコンセプトから考えるに、本当は「ONEIRIC THEATER」ってこのタイミングでやるつもりだったのかな……と思ったりもした。本当にアイズワンは瞬間瞬間の奇跡で成り立っているのだな、と改めて思う。

アルバムの到着が楽しみである。

しかしこんな「集大成です!」みたいな曲を出されてしまうと、そりゃあめちゃくちゃに素晴らしいのだが、いよいよ幕引きを予感してしまって辛い。「~IZ」シリーズが三作出たから「ONE~」シリーズが三作出ること、信じています。なんなら三十作出してもいいけど。

[KIHNO ALBUM] アイズワン - One-reeler Act Ⅳ+Extra Photocards Set [KPOP MARKET特典: 追加特典両面フォトカードセット][韓国盤]

絶対振り向かない―カムバック前夜、MAMAの夜に最近のIZ*ONE(アイズワン)について。

Twelve 通常盤 Type A (DVD付) (予約特典なし)

今週のお題「自分にご褒美」

IZ*ONEカフェに行く

実は過日、妻とIZ*ONEカフェに行ってきていた。万が一ということもあり、その際アイズワン諸賢に迷惑をかけることがあったら耐えられない……ということで訪問してから早一月ほど、体調は良好なので解禁することにする。

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看板から既に可愛いの洪水が始まっている。もちろん検温他感染対策はしっかりなされ、しかも店員さんがとても見目麗しく、きびきびと検温してしまうため「このサービス有料じゃなくていいのか?」とずれた心配をしてしまうほどであった。

食事をしながら、日本活動のMVを鑑賞しつつ、順番が来たら特設会場でグッズを買う、という形式であった。

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推しを激写しようとしたらタイミングがずれてホラーになってしまったりした。

(時間帯一番乗りで他の方がいらっしゃる前に撮らせていただいた)

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同時期にツイステッドワンダーランドのコラボカフェも同運営で計画されており、オタク界隈では何かと話題の運営であったため失礼なところドキドキしていたのだが、少なくとも筆者の訪問した福岡のアイズワンコラボカフェにおいては、パスタがちょっと薄味だったくらいで料理はおいしく、バーガーも「コラボカフェ特有の固いバンズ」ということもなく、提供速度も気にならず、店員さんもとても丁寧に接してくださり、楽しい時間を過ごさせていただいた。

もちろんコロナ禍で人数制限のある今回と炎上した時とは混雑具合も違うであろうし、運営の過ちがなくなる訳ではないが、悪事千里を走るの言葉通り、悪い噂というのは尾ひれがついて拡散してしまうものであるから、このアイズワンコラボカフェについては筆者は大変満足させていただいた、ということは記録にしっかりと残しておきたい。

ランダムアイテムはどちらもイ・チェヨンさんであった。箱推しなので当りしかないのが嬉しいところである。

今更「Twelve」及び「Beware」感想・妄想・考察

「好きと言わせたい」で14歳センターのフレッシュなグループに倦怠期の歌を、(これ西野七瀬さんの卒業曲にしてMVが卒業後主婦になった西野さんが再びアイドルに……みたいな感じにしたらハマってたんじゃないかなあと今でも思う)「Buenos Aires」で心中すら思わせる駆け落ちの歌を、「Vampire」でエビ中の何周か遅れの歌を提供し、もはやミュートの方がいいのでは……とすら筆者に思わせていた日本曲。(カップリングはどれも出色の出来だけに余計に)

今回やっと「正解」に気付いてくれたか……。としみじみした。


IZ*ONE (아이즈원) - 'Beware' MV

潔く可愛さ全振りでいいのである。等身大の歌詞でいいのである。令和の世に「ハートのアンテナがピピピ」とか言い出した時はさすがにどうしようかと思ったが。

「Beware」に感じるのは恐らくはじめIZ*ONEの日本プロデュース陣が脱却しようとした「48グループらしさ」の肯定だ。同年代女子がわちゃわちゃすることで生まれるポジティブさが現れた楽しい作品になっている。


【MV full】12秒 / HKT48[公式]

また、冒頭、矢吹奈子さんが眠りにつくシーンは5年前(マジかよ)の「12秒」を思い起こさせ、「12秒」と「twelve」という「12」の符合からも狙っていたのではないか、と深読みしてしまうし、彼女らが列車に乗っていることはこれまたHKT48の傑作「大人列車」を彷彿とさせる。


【MV】大人列車 Short ver. / HKT48[公式]

もっと言えば列車のシーンは、AKB48 の快進撃前夜、「10年桜」のバスシーンを思い起こさせる。


【MV full】 10年桜 / AKB48 [公式]

ただ、そうすると「Beware」は楽しげな中に死のモチーフを感じさせるMVということにもなるのだが……(いないかのように振舞われるクォン・ウンビさん、異常事態を知らせるかのように明滅する車内、最後に一人ぼっちになるキム・チェウォンさん、真っ赤な衣装などこれまた「意味が分かると怖いMV」的解釈が出来るつくりになっているのが心憎い)

そういえばおよそ一年前に筆者は「次回の日本センターはチェウォンさんでは?」と予想したのだが今回当りということでいいのだろうか。

 

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 メンバーによる訳詞はまさに思いの乗ったもので、分けても「以後」の歌詞に再構築を果たした宮脇咲良さんの「FIESTA」は白眉であろう。筆者は昔、fromis9の「lovebomb」を訳詞しようと試みたことがあったが、冒頭から三小節くらいに直訳すると「幽玄なる雲がゆったりと広がって」みたいな日本語を押し込めなくてはならなくなってギブアップした思い出があり、それだけに脱帽である。

「yammy summer」は楽曲の素晴らしさももちろん、「夏にアイズワンでこの曲を聴きたいなあ…パフォーマンスを見たいなあ……」と思わせてしまうメタまでも取り込んだ名曲である。

「twelve」であるのに収録曲は11曲、ということでサプライズで「With*One」の日本語訳が収録されているのでは!?と期待したが、残念ながらそうはならなかった。有志訳でも感涙させられたが、ぜひ今回のようなクォリティで彼女たち自身の訳詞で聞いてみたいと思う。

PRODUCE48を巡る諸々

元プロデューサーの刑が決まり、司法によって順位操作をされたとされる練習生が明かされ、参加していた元練習生が当時の打ち明け話をする、ということがあった。また、次期カムバックのロゴではPRODUCE48の象徴であったデザインが抹消されているという。

本当に、世の中というのはIZ*ONEに平穏な11月を過ごしてほしくないのだな、と皮肉の一つも言いたくなってしまう。このタイミングで物事が動くことは当然、カムバック前だから話題になるという卑しい計算が働いているであろうから、彼女たちが日々晒される「大人」の汚さに、大人の一人として本当に恥ずかしく、申し訳なくなってしまう。

我らが「オンニ」イ・カウン(ガウン)さんの「何も申し上げることはありません」というコメントに涙が出そうであった。そう言うしかないではないか。ずっと言ってきた。誰も得をしないと。本当にそうなってしまった。真相究明委員会って、今何をしているんだろうか。ちゃんとケジメをつけてくれたんだろうか。

もう本当に、一年以上言い続けている。罪には罰である。「国民プロデューサーの投票でデビューが決まる」という約束を破ったのならば当然そこには罰を受けてしかるべきである。が、それはデビューした彼女らではない。もちろんデビューできなかった他の練習生諸賢でもない。番組制作者である。

PRODUCE48のあと、「SIXTEEN」や「Nijiプロジェクト」を見てつくづく感服させられたのがパク・ジニョン(J・Y・Park)氏の「覚悟」である。デビューするメンバーの決定について自分が責任を持つ、それでどれだけの誹謗中傷を受けたのだろう。しかし彼は屈せず、自らの良いと思うメンバーを、自らの責任において決定し、任命し、デビューさせた。

結局のところ、アン・ジュニンには、他関係者にはその覚悟が足りなかった。誰を選ぶかという苦悩を、誰を落とすかという苦痛を、国民プロデューサーになすりつけ、その深い苦しみと対になっているはずの「自分たちでデビューメンバーを決める」という栄誉はまんまとかすめ取っていたのである。恐らくは「SIXTEEN」のカウンターとして、絶対的な権力者ではなく民主的に決めよう、という建前にありながら選出方法としては劣化していたというのはとんでもないことであり、繰り返すが断罪されてしかるべきことである。

それに他練習生諸賢が不満を持っても仕方がないことだと思うし、その救済を切に望む。

それでも筆者がこの騒動に思うことは、あの大ヒット作品の言葉を借りれば、

たくさんありがとうと思うよ

たくさんごめんと思うよ

忘れることなんて無い

どんな時も心は傍にいる

だからどうか許してくれ

鬼滅の刃 57話より

 

 ということに尽きる。あの日々だけは、悲喜こもごもの100日間だけは、それに臨んだ練習生諸賢の気持ちだけは嘘ではなかったと、今でも筆者は考えるからである。

だからこそ、後ろ向きに振り向かないでほしい、そう願ってやまないのである。

また、今回話題になった元練習生さんが引退したとき、筆者は記事を書きかけていて完成させていたなかったが、良い機会であるので改作してこの記事に組み込み、供養としたい。

宮沢賢治の詩に「告別」というものがある。

教師時代の賢治が楽才があると思われる生徒に送った詩で、学校を辞め、安定した生活を捨てる己自身の覚悟も問い直すような詩だ。

その性質からクリエイター諸賢にも刺さるところが多いのか、しばしば引用されているところを見る。

賢治は、生徒の楽器の才能の可能性について述べた後、こう続ける。

けれどもいまごろちゃうどおまへの年ごろで
おまへの素質と力をもってゐるものは
町と村との一万人のなかになら
おそらく五人はあるだらう
それらのひとのどの人もまたどのひとも
五年のあひだにそれを大抵無くすのだ
生活のためにけづられたり
自分でそれをなくすのだ
すべての才や力や材といふものは
ひとにとゞまるものでない
ひとさへひとにとゞまらぬ

宮沢賢治春と修羅」より

……賢治、プデュ見てた?

PRODUCEシリーズは良くも悪くもその後の参加者の去就に注目が集まる。最終合格者はもちろん、最終まで残った者たち、デビュー組、俳優転向、または引退など……置かれた場所で咲きなさい、というのは置いたものの怠慢にすぎない。どれほど努力をしても、このアイドル戦国時代、継続して売れるというのは並大抵のことではない。

もしもおまへが
よくきいてくれ
ひとりのやさしい娘をおもふやうになるそのとき
おまへに無数の影と光の像があらはれる
おまへはそれを音にするのだ
みんなが町で暮したり
一日あそんでゐるときに
おまへはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまへは音をつくるのだ
多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌ふのだ
もしも楽器がなかったら
いゝかおまへはおれの弟子なのだ
ちからのかぎり
そらいっぱいの
光でできたパイプオルガンを弾くがいゝ

―引用元同じ。

かつて「べしゃり暮らし」で「絶対に売れる方法」をお笑い養成学校の校長が伝授する、というエピソードがあった。

絶対に売れる方法。それは、「売れるまで頑張ること、しがみつくこと」であった。もちろん、それが出来れば苦労はしない。出口が見えないトンネルを歩き続けることほど辛いことはないだろう。

けれど筆者は南の果て鹿児島から九州新幹線「さくら」に乗ってやってきて、ビジネスメロンパン、ダンスが下手、ごり押し、頭打ちといわれのない非難を受け続け、華やかなりし青春時代をかなぐり捨てて10代をアイドルにささげた宮脇咲良というアイドルを、鹿児島の、いやアジアの、いやいや世界の誇るべき金字塔を見るにつけ、この「歩き続けたアイドル」を見るにつけ、やはり賢治のこの詩が思い出されるのである。

その時彼女が思っていたのは一人の優しい娘ではなく、ファン諸賢であり、かつて彼女が過去現在未来全てのファンを肯定して見せたのは以前記したとおりである。

 

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 この気持ちをすべての練習生に持てというのはやはり厳しいのかもしれないが、少なくともPRODUCE48において、ファンのついていない練習生など存在しなかった。そのことを心のどこかに留めて、誇りを持って過ごしていって欲しいと思うし、そういうルーツの一つであるPRODUCE48の象徴がデザインから消えるのは、やはり個人的には寂しいものがあった。

2020MAMA

去年の仕打ちを忘れたわけではないので個人的には裏番組で長時間コンサートとかしてほしさもあったのだが、やはり晴れ舞台に立つ推しを見るのは嬉しい。花三部作の更にブラッシュアップされたパフォーマンスに続き、「Panorama」の不意打ちは喰らった。そのすさまじさたるや、TLで登場に沸き立っていたウィズワンが突如押し黙り、パフォーマンス終了後放心したかのように賞賛のツイートをぽつぽつと投下したところからも推し量れるであろう。またしても「正解」が提示され、果たしてアイズワンの「解」はいくつあるのだろうか、と思うことしきりである。

カムバック時に改めて単独で記事を書きたいと思う。

かつてストレイド卿は言った。「人間にとっての『最高』ってヤツは『変わっていく』ってコトだろうからな」と。

アイズワン諸賢を見るたび、実感する筆者である。

蛇足

Mwaveで申し込んだBloomIZ、まだ手元に届いてません……。