カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

永遠より続くように――IZ*ONE(アイズワン)活動終了発表に寄せて

IZ*ONE SPECIAL SURPR*IZ PHOTO BOX (仮) ([バラエティ])

〇余談

去年と比べて自分が成長していると胸を張って言えるのは花粉症の症状くらいではないかというくらい今年も花粉症がひどい。ということで今までで一番強い薬を処方してもらったら今度はその影響で眠気がひどく集中力散漫になってしまっている。とにかく運転だけは気を付けなければ……。

ということでいつもにまして書きたい記事を書くことも出来ずに、日々を過ごしていた。それは週半ば、即ち本日発売の「ナゴヤVSシンジュク」CD、そして週末の「アイズワンオンラインコンサート」を道しるべとして、心の支えとして彷徨う旅でもあった。

仕事終わり。既に配信開始されていた「ナゴヤVSシンジュク」をプレイリストに追加しながら、妻に「今から帰りますLINE」を打たんとした筆者に、TLで信頼するオタク(尊称)のにわかに信じ難いつぶやきが飛び込んできた。

「IZ*ONE解散マジか…」

矢も楯もたまらず尋ねる筆者にソースを提示してくれたオタク氏。

そして筆者も複数先で調べ、どうやら間違いがないようだ、という結論に至った。

news.kstyle.com

終わる。IZ*ONE(以下文中アイズワン)が。

どうやって帰宅したのか、正直記憶にない。

〇本題

少し前から、WIZONE(以下文中ウィズワン)の間では、延長か、終了か、ということが議論されていた。

もちろん、筆者のTLには愛すべきWIZONEが多数いるということを割引いて考える必要があっても、延長の声が多かったように思う。

事実、Universeへの参画、メンバーの音楽番組MCの就任、ペプシCM、ブランドイメージ抜擢など「続き」を示唆するトピックは贔屓目なしに多かった。

筆者ならずとも、オンラインコンサート2日目の最後のMCで延長発表、というストーリーを浮かべていたウィズワン諸賢は多かったのではないだろうか。

他方で、宮脇咲良さんがまるで「まとめ」のようなプライベートメールを送る頻度が増えているように思えたのが、気になってもいたが……。

先述した山積している「書きたい記事」の中に、アイズワンの今後について思うところの記事もあった。

筆者は、「期間を再び設定しての活動延長」派であった。アイズワンが行くところ、どこであっても花たちは目覚め、花弁は舞い、最高潮が訪れる。それは煌々と照る太陽のように永遠性を感じさせ、「もうこのままずっと活動すればいいじゃん」という考えをごく自然に鑑賞者たちに生じさせる。

けれど彼女らはベテルギウスである。太陽の何倍も燦然と輝く代わりに、その「終わり」はずっと近くににじり寄っている。「だからこそ」の刹那性を孕んだ美しさ、儚さというのも間違いなく魅力の一つとしてあったはずだ。

悲しいけどこの世に永遠なんてないから

悔しいけど時は前にしか流れないから

かつて風味堂が「LAST SONG」でそう歌ったように、始まったことには必ず終わりがある。その終わりが見えているからこそ本人たちも、ファンもその情熱がうねりとなって立ち上るのだ。その「ゴール」を「やっぱり動かそう」としてしまうのは、人気が出たから引き延ばされる少年漫画のような愚ではないか、と。

ただし、あの冬が訪れ、そしてそれを超えたかと思った時に世界全体が未曽有の事態に叩き落された。それは当然考慮すべきだ、とも考える。

具体的には、4月以降も少なくとも2回分のカムバック期間の確保と、有人での解散コンサートの解散を筆者は願っていた。

 

kimotokanata.hatenablog.com

およそ半年前、筆者はこんな記事を書いた。

そうして最後、みんなのメッセージは毎度感動させられているので何とかこらえられたが、暗転してVRで満員のアリーナが再現されたときはさすがにジーンとさせられた。

どんな所にも行くことのできる、作り出すことが出来るVR。それを用いて上空や宇宙にまで飛び出したアイズワンが帰り着いた場所、歌いたかった場所が「そこ」であるという事実。前回のコンサートでは難なく実現できたことの困難さ。幾重もの感情が筆者の中で渦巻いた。

もう一度、肉眼で彼女たちを捉えたいものだと思う。

お前は俺かってまあ筆者なのだが、「ほんとそれ」でしかないのである。

万雷の拍手を浴び、地鳴りのような声援を受け、一体になり盛り上がる。

同じ空間で喜怒哀楽を共にし、ひとつの物語を作る。

それがアイズワンとウィズワンではなかったか。

【Mnet 公式コメント全文】

こんにちは。Mnetです。

MnetとSWINGエンターテインメント、OFF THE RECORDはIZ*ONEのプロジェクト終了を控え、12人のメンバーの最善の活動のために、各所属会社の意見を継続的に聴取し、協議をしてきました。

2018年、アルバム「COLOR*IZ」でデビューし、韓国はもちろん、世界を舞台に大きく愛され、アジアを代表するガールズグループに成長したIZ*ONEの活動は、予定通り4月に終了することになりました。

IZ*ONEを愛するファンの皆さんと一緒に過ごすオンライン単独コンサート「ONE, THE STORY」が3月13日、14日の両日行われる予定です。

MnetとSWINGエンターテインメント、OFF THE RECORDは、これまで素敵な姿を見せてくれたIZ*ONE12人のメンバー全員に感謝の気持ちを伝え、一緒に作ってきた素晴らしい物語が続けられるよう、今後もアーティストとしての成長を支持していきます。

これからも彼女たちが見せる新しい姿に、期待と応援をお願いします。

ここから読み取れるのはまず「所属会社の意向によって活動終了することになったこと」である。彼女たちの願いが延長なのか活動終了なのかは全く明らかにされていない。

そもそもアイズワンに長い冬が訪れたのはその「所属会社」のせいなのだが、その辺りの総括はしっかりしてくれたのだろうか。今回の活動終了だって「所属会社」のいくつかが不祥事を出しているからアイズワンメンバーを引き戻して収拾を図りたいのではないか、とうがった見方をしてしまう。

加えて「予定通り」というけれど、活動当初の「二年半」と実際にアイズワンとウィズワンが過ごした二年半は大きな隔たりがあったことが既に述べた通りで、それを補う腐心はこの文面からは感じられない。ただ機械的に楽な方法――契約その他の変更なしに――を選んだようにしか思えない。

「素晴らしい物語が続けられるよう」と言い繕ってはいるものの、その第一幕である「PRODUCE48」にて醜態を晒し、今また第二幕で黒子がせかせかと動き回っての幕引きを図っているような動きをする連中がする「支持」とはなんだろうか。

ウィズワンたちの願いを、「魔法」を踏みにじって語られる物語をそれでも、「彼女たちに応援を」と締め括るのはエンタメ業界の悪癖、演者を盾にする手法で文字通り反吐が出る。

彼女たちは今頃何を思っているだろう。今日の発表だと知らされていたのだろうか。

プライベートメールをどのようにすべきか、頭を悩ませたりしていないだろうか。本当ならば「オンラインコンサート楽しみにしていてね♪」で済むところを、無駄に心を砕き、頭を痛めているかもしれない。

いよいよ練習も佳境、雑念が怪我を引き寄せてしまったりしないだろうか。

MCもただわちゃわちゃとはいかないだろう。

「大人」か。

また「大人」なのか。「大人」の都合で始めされられ、中断させられ、終わらせられるのか。こんなに素晴らしいグループが。そうして彼らは顔を持って出てこない。生贄にさせられたアンPD以外。槍玉としていつもアイズワンがその先頭に立たせられる。

本当はもっと建設的なことが書きたかったのだけれど、Mnetの発表を読み返すたび腹が立ってしまっていろいろな要因で視界がにじむ。今日はこの辺りにしておこうかと思う。

アイズワンは永遠ではなくなった。ならばウィズワンが出来るのは限られた期間が永遠より続くように日々を噛み締め、密度を濃く過ごすほかない。

うつくしいところだけを我々に見せて去っていこうとする彼女ら、我々の星に対してそれがせめてものエールであり、餞であり、手向けであろう。

 

IZ*ONE SPECIAL SURPR*IZ PHOTO BOX (仮) ([バラエティ])

IZ*ONE SPECIAL SURPR*IZ PHOTO BOX (仮) ([バラエティ])

 

 

 

 

I AM YOUR FATHER/改革すら煩雑――オオサカVSイケブクロドラパ「Aikata(s)Back Again」&「Life is what you make it」及びバトル曲「Joy for Struggle」完全ネタバレ感想・考察・妄想

いつものやつです。ネタバレです。よろしくお願いいたします。

余談

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 あの興奮から気が付けば一月が経とうとしている。

バトル曲「Joy for Struggle」及び新曲は素晴らしいものだったが、やはり音源として堪能し、またドラマトラックも確認した上でいわば「本戦」とでもいうべきCD投票にしっかり臨みたいという思いがあった。

そして本日。安定のkonozama。毎度のごとく、サブスクで一足先に拝聴した感想を書き綴っていきたい。

花粉で目がかすみ花はつまり思考がいつも以上にまとまらないが、とりあえず一聴して寝るまでのこの今の衝動を出力しておきたいのでご容赦願いたい。

オオサカドラパ「Aikata(s)Back Again」

いや~~……。めっちゃいいタイトル。オタクは弱いんですよ! こういうリフレインに!

筆者としては是非、全人類、ことにオオサカヘッズには「べしゃり暮らし」を読んでほしいと思っているのだが、

 

 相方。この不思議な存在。相方以外に形容しようのない存在。それこそ親子よりも兄弟よりも夫婦よりもある時は己と近いかもしれない存在。

現実でも「じゃない方芸人」という言葉がある。得てして、コンビが同じように売れるというのは難しい。月と太陽。一度ついた差は雪だるま式に開いていく。あるいは、「じゃない方芸人」のポジションにつくことである種安定すると考える芸人もいることだろう。

でも、そうではなかったはずだ。「俺が一番面白いんや」「俺のことをみんなに認めさせたる」そういう気持ちで入ってきたはずだ。躑躅森盧笙はかつて、その気持ちをプレッシャーに押しつぶされた。思えば、彼の人生は期待に押しつぶされてきた歴史だった。

そこに、白膠木簓が再び現れた。「俺に任しとき」頼もしい言葉だ。そこに不純な気持ちは一切ない。かれは、相方が戻ってきたこと、バック・アゲインしてきたことの喜びに満ちている。

でもそれは躑躅森自身も気づいていなかったが、かれのプライドを痛く傷つけていた。

なぜならば彼らは「相方」だからである。要介護者と介助人ではないのだ。「おれがいちばんおもろい」それはまず隣にいる人間、相方をどうねじ伏せていくか、ということが本来の漫才の真骨頂ではなかったか。

そこはヒプノシスマイクの世界。ラップで二人はぶつかり合い、本音が炸裂して、白膠木の一方的な「Aikata Back Again」ではなく二人ともが同格の相方と改めて認識する――「Aikata(s)Back Again」がそこに成り立ったのだった。

白膠木にとってはこの顛末をPRODUCEしてくれた天谷奴と躑躅森、複数の相方を得た、ということで「Aikata(s)」であったということもできよう。

洗脳は特にそのままであるようだが、しかしチームはさらに打ち解け、「笑オオサカ」や「Joy for Struggle」での絆の描写もさもありなんと納得が出来た。

筆者は「笑オオサカ」の「最後は絶対笑てや」というフレーズがとても好きである。他のディビジョン曲が悲壮な覚悟であったり殺意満点であったり殺伐としていたりする中、どついたれ本舗は観客の方を向いている。そのフットワークでもって天下を取ってくれそうなのがこのディビジョンの魅力である。

イケブクロドラパ「Life is what you make it」

このセカンドバトルにおいて、やはり主人公は山田二郎なのだな、ということが強く伝わるドラマトラックだった。本来であれば、前回のバトルシーズンでイケブクロが優勝し、山田二郎は「兄にチャンピオンにしてもらった」ことに思い悩みながら連覇を目指す中でまずは自分の中の「王」である兄を超えたい……みたいな流れになる予定だったのかな……とつい考えてしまう。

それぐらいポケモン金銀のレッドみたいな前作主人公感を醸し出す山田一郎だがもちろんまだま現役でいてもらわないと困る我らがBBである。

しかし今回、筆者はいやしくも彼と同じ三人兄弟の長男として看過できない事態があった。二次創作でよくネタにされていた天谷奴零の育児放棄疑惑だが、少なくとも彼には三兄弟を養育する意思があったらしいのである。それを一郎は敢然たる意志で拒絶した――のは格好いいのだがしかし結局それが二人を日本の闇の渦中に叩き込んでいるのだから、やはりこれは手放しに絶賛することはできない。

もちろんその決断を下したのはさらに年若きときだったろうが、言ってしまえば自分の意地に弟たちを巻き込んでしまったことは否定できないだろう。

虚像ではなく、そうした等身大の兄と向き合った二郎はもはやライムクローンではないオリジナルである。インターネット上の人物を信頼してはいけませんという教材になりそうな三郎は零を拒絶し、自分自身で真実を見つけると豪語したがその一端を一郎にさらっと言われてしまった時の彼の心境が気になる。二郎に比べるとやはり三郎はまだちょっと、不穏なものが感じられて心配である……。

ともあれラップパートはさすがにどちらも珠玉の出来、ブレない芯の強さが感じられた。

オオサカVSイケブクロ リリックをロジックに考える

そしてバトル曲、「Joy for Struggle」である。ライブの熱気と殺気溢れる競演も良かったが、職人芸で仕込まれた音源も聴きごたえがあった。

ではこのバトル、どちらの勝ちなのだろうか。

もちろん、その勝敗は投票に委ねられているのだが、筆者なりにリリックをロジックでもって分析して、「曲の上での勝敗」を考えてみたので投票の参考になれば幸いである。

バトル曲ではお互いの陣営が相手の陣営を交互に攻撃しあう形式をとっている。

例えば先にどついたれ本舗からBuster Bros!!!の攻撃を分析してみよう。

1回のパート(verseという)で攻撃対象が1人の場合を1として、対象が2人なら1人当たり0.5、3人なら0.3がその対象に対してダメージとして蓄積するものと考えた。

まずは零が「3兄弟調子はどない?」から始まる攻撃を繰り出すので三兄弟にダメージが均一に入る。

その次は躑躅森先生が学生二人を説教するので(足らん知能は本当はタランティーノで踏みたかったんじゃないかなあ)二郎三郎に半分ずつダメージ。

お次は白膠木がボケナスカスに対して苦笑交じりのオオサカの民にとって最大限のDIS「おもろない」を繰り出しやはり全員にダメージを分散させる。

三人揃ってのパートでは「ほんわかぱっぱ」や零のうっさんくせえ関西弁などイラつきゲージを効果的に挙げながらやはり三人同時の攻撃に成功している。

漫才パートにおいては再び二郎三郎に半分ずつダメージ。

最後に零が一郎に自らの覚悟の後に我が子の覚悟を問い直して終了。

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DHがBBB!!!に与えたダメージ(推定)

こうしてみると図ったかのように綺麗に全員に均等にダメージが入っている。陽気ではっちゃけているように見えながらこの冷徹な計算が働いていたのかと考えると恐ろしい。

 

他方のBuster Bros!!!はどうだろうか。まずは零を三郎が詐欺師と斬って捨てる。

続けて二郎が躑躅森先生を「鼻毛以下」とこれまたバッサリ。

満を持して登場した一郎は「ささらんやつはおらん」と自負する白膠木を「刺さらない」と断言し、最後のフレーズで「お前ら」と全体攻撃。これは例外としてポイントを白膠木が多く引き受け、躑躅森先生、零にも少し分配した。大将を引き付けておいて周りにも煙幕を巻くようなビッグブラザーの面目躍如の働きである。

三人揃っての攻撃では相手に均等にダメージを与え、漫才に対しては兄弟二人で辛辣な批判。

最後に実の父へのアンサーを返してバトルは終了。

f:id:kimotokanata:20210225003223p:plain

BBB!!!がDHに与えたダメージ(推定)

相手のそれぞれに与えたダメージの推定は上記の通り。こう見ると恐らくダメージが「2」蓄積すると気絶の可能性がありそうに思える。となると零は最後の攻撃が通っていればダウンすることになる。

「通っていれば」というのは、ドラパ感想でも述べたように零は恐らく養育の意思があり、またバトル曲の零パートも素直に読めば息子たちへのアドバイスでしかなく、これに対して一郎の最後のパートは「イケブクロのBB」であることのレぺゼンではなく兄弟愛に逃げ、またそれは自分のよく言えば覚悟、悪く言えばエゴでありながら「自分勝手」と零を非難するのは少し違うように思える。少なくとも立ちはだかるものに対して粉砕の意思を持つ零には通じないのではないか。

そう考えると、最後一郎の攻撃は無効とまではいかなくとも半減する。となれば零の合計ダメージは1.9となり、持ちこたえている可能性が高まる。

バトルのルールを考えると、全員あと一息のところを持ちこたえているBuster Bros!!!は本来有利なはずの後攻であるから、この次の延長でどついたれ本舗が全体攻撃を繰り出した時敗北する可能性が高い。

以上のことから、筆者はオオサカVSイケブクロはオオサカの勝利ではないかと考える。無論、このダメージ計算式自体が筆者の妄想に過ぎないし、零への最後の攻撃が反撃するにあたっては「だいじょうぶはねかえした」みたいなもう全部お前のルールじゃないか、という心持も我ながらしないでもないが、一定の理屈は取っているのではなかろうか。

あと、単純にBuster Bros!!!のDISが芸人さんを馬鹿にし過ぎている感じがしてあまり好きではなかった。「板の上」に立っている漫才師をなめてはいけない。

イケブクロ、オオサカ、どちらもバトル前夜とは違う顔を見せてくれた。それはまさしく改革ともいえる出来事であったが、それが一足飛びに栄光に繋がるかというとまだまだ煩雑な過程が必要そうだ。しかしその過程すらも彼らの糧になるという革新が得られる良いドラマトラックであったと思う。

 

ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 2nd D.R.B『どついたれ本舗 VS Buster Bros!!!』

 

 

 

再生と破壊、泰平とかはない――ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 6th LIVE ≪2nd D.R.B≫ 3rd Battle-Fling Posse vs MAD TRIGGER CREW-感想

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kimotokanata.hatenablog.com

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いよいよ2nd D.R.B初戦も最終戦。初めての既存ディビジョン同士の対決である。

即ち、かつて「一度負けた者たち」同士の戦い。

それも、どちらも麻天狼に。更に、Fling Posse (フリングポッセ/以下FP)はMAD TRIGGER CREW(マッドトリガークルー/以下MTC)に票数で勝りながらもルールの関係で決勝に勝ち上がれなかったという因縁を持つ。

「負けたことがあるということがいつか大きな財産になる」

その古の言葉通り、彼らは一皮も二皮も剥けて帰ってきた。

もとより前回の勝敗の差も刹那ほど、僅かに引き金が狂っただけでどう転ぶかわからなかったものだ。

結果、決勝と見まがうほどの熱戦が繰り広げられることになった。こうして筆者は三度幸福な苦悩を味わう羽目になったのである。

シブヤ・ディビジョン


シブヤ・ディビジョン“Fling Posse”「Black Journey」Trailer

開幕「Stella」という全体バフをかけてくる本気度。(一部ではシブヤ推しのヘッズの視界に尋常ならぬデバフをかけるハマの策略ではという声もあったが)どのディビジョンよりもこのバトルにかける思いは切実だ。もちろん優勝したねー、えらいねー、飴あげるねなんてうまい話になる訳はないのだが、それでも歪な軌跡を刻み輝くことこそが今の彼らの生きる意味なのだから。

個人曲においてもカメラワークまで味方につけたエモーショナルな動き、とうとう失敗を完全に排除したスリーショット撮影などまさにトリッキーなシブヤの面目躍如といった見事なライブコントロールだ。

そして満を持して放たれた新曲。「Black Journey」もまた変幻自在な捉えどころがなく、しかし変化するたびに加速度的に聞くものの感情の揺さぶりを大きくさせる恐ろしい曲である。白井さんの表情管理の素晴らしさもさらに上があったのかと驚かされる。「シブヤ」に「ぼくりり」なんてマーケティングが完璧すぎる。命を掴む旅は最後でも、命を掴んだ後の旅路が果てしなく広がっていることを信じている。先へ。

ヨコハマ・ディビジョン


ヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW”「HUNTING CHARM」Trailer

完全に「ご本人登場」だった三人。バトルの熱気の高まりに連れて少しずつ服を脱いでいく碧棺左馬刻様が最終的に全裸になったらどうしようかと思ったが思いとどまってくれて良かった。ハマにはめられた我々が出来ることはもう何もない。圧倒的な「ファミリー」の圧力にずぶりずぶりと沈められていくだけである。

そして脳天目掛け撃ち抜かれる新曲「HUNTING CHARM」。それは余りにもヨコハマ、あまりにもICE BAHN(アイスバーン/以下IB)であった。なんと今年活動二十周年、ハマのリビングレジェンドであるIBがのっけから放つのは「零、四、五」。もちろんハマの市外局番である。ラッパーが地元をレぺゼンする時市外局番はしばしば用いられる。IBがMTCに「ハマ」を背負わせた。これは大げさではなくHIPHOP史に残る「事件」である。かつて「フリースタイルダンジョン」においてハマの気鋭のラッパーDragon Oneに対して「まあ何を言うかはお前に任せるよ だがあの時代なら一週間以内に刺されるぞ」とこともなげにベッタリ踏んでハマの治安の悪さを筆者に刻み付けて切り捨てたあのIBが。FORKが。

それから後ももちろん凄い。怒涛だ。煮えたぎっている。ライム至上主義の名に恥じずIBの魂そのままに怒涛の押韻が成される歌詞は青い炎だ。この歌詞に負けることなく飼い慣らして自らの武器として扱うMTCの照準は既に優勝にしか向いていない。

シブヤVSヨコハマ

いや~……バトル曲三曲全部違って全部良いなんて金子みすゞもびっくりである。

オオサカVSイケブクロは王道VSエンタメの戦いであった。

ゴヤVSシンジュクはスタイルウォーズを超えた宗教戦争ですらあった。

果たしてシブヤVSヨコハマは――互いにとっての「壁の超え方」であった。

「Reason to FIGHT」。とはいえそれまでのバトルにも戦う理由はある。が、この二ディビジョンは特に重い。文字通り命がかかっている。

ヨコハマは1+1+1は3ではないという。十倍だぞ十倍

増幅される力。その力でもって彼らは拳を上げる。握りしめるうちにも更に脈打ち力強くなる様子が分かるようだ。そして振り下ろすのだろう。打ち砕くのだろう。壁を。その先へ向かおうとするのだろう。

他方シブヤは、自分たちは3で割れないという。大きな1。分かちがたき1。引っ張ってもちぎれない。伸びる。その柔軟さ。柔らかさ。とても柔らかいということはある種、何よりも固いということ。そのバネでもって彼らは飛び跳ねる。壁を超える。その先へ向かう。

「再生のverse」を経たFPはそうして凹んでは戻り、飛び跳ねる柔軟性で、引き金を引き続けるMTCは破壊によって壁に相対する。それはリーダー対決でも同じだ。

碧棺左馬刻は飴村乱数を絶対に許せないという。ぶん殴るという。一方で飴村乱数はそれをひらひらとかわす。実際のところ、神の視点を持つ視聴者はそれが誤解であることが分かっているが、あくまで彼は「みんなの知る飴村乱数」を演じ続ける。弁解をしない。恐らくそこには後悔もない。この悲しい訣別がこの後解消されることを祈るが、さておきその対決においては筆者は闘牛と闘牛士のごとく、飴村乱数が一枚上手であると感じた。

特に以前二試合と比べてバトルらしいバトルであったから、他二人も実際のMCバトル的な粗が気になる。理鶯の食事云々はステージの下のことをごちゃごちゃいうつまらないMCのようでいつもの彼らしくないし、入間巡査部長の「ナイトメア」と「泣いとけや」は踏みしだかれ過ぎて新鮮さの感じない押韻だ。

また、MTCの「死ぬときは前のめり」や「覚悟が違う」もこれまた神の視点から見てしまうと今まさに覚悟完了して前のめりにバトルをしているのがFPであるのでその後のFPのアンサーに素直にうなずいてしまった。

という訳で今回は特に悩みもせずシブヤ……としたいところなのだが今回、あまりにもお膳立てが良すぎて素直にそうできない「逆張りオタク」な自分がいることも確かである。こんな据え膳みたいな感じでいいのか!? シブヤ!? という思いがある。もちろん、彼らが望んでそうなったことでないことは分かっているのだが。運営はオオサカVSイケブクロを今回のテクニックを使って再編集して再配信してくれ。

そういうことでやっぱり悩んでいる筆者である。ていうかそろそろナゴヤVSシンジュクを決めなくては……。

 

 

スタイルウォーズ次第に興奮――ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 6th LIVE ≪2nd D.R.B≫ 2nd Battle -Bad Ass Temple VS 麻天狼-感想

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 第一試合から早二週間が過ぎた。相変わらず、コンテンツの熱気に当てられロクに記事を書けていないが、兎にも角にも苦しみながら筆者は投票先を決定した。

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 そして、本日である。15時半開場。18時半終了。なのに、いつの間にか21時前。

2週間前、初っ端からこんだけかっ飛ばしてると次はかなりプレッシャーだな……と思っていたが筆者が想定したハードルを軽く飛び越えられてしまった。

どころか、開催地はナゴヤだもんで味の濃いの強いのが当然と言わんばかりに、こってり分厚いパフォーマンスをぶつけてきた。もし会場にいたら消し炭になっていた可能性が高い。

いつも通り、その受けたインパクトが少しでも鮮明であるうちの走り書きを残しておきたい。

シンジュク・ディビジョン


シンジュク・ディビジョン“麻天狼”「TOMOSHIBI」Trailer

何度か書いてきたが、我々夫婦強いて言うならばシンジュク推しであり、しかしながらファンになったのは前回のバトル以降であったので「推しがバトルに挑む」のは今回が初体験である。

開幕の神宮寺寂雷先生(速水さん)の本日がバレンタインデーであることを活かしたジョーク、ディヴィジョン曲での玉座から発する圧倒的なプレッシャー、各個人曲の温度差で視聴者の感情を手玉に取り、「パピヨン」では余裕すら感じさせた。

まさしく大人、これは今回も危なげなく連覇か――そう思いもした。

そこに「TOMOSHIBI」である。それは余りにもGADORO。余りにも麻天狼であった。

 

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 「TOMOSHIBI」を作曲したGADOROさんについては以前の記事で述べた。孤高のMCは日本最強のMCを決めるMCバトルKOK(キング・オブ・キングス)において2連覇を成し遂げた後も、その一匹狼を心の中に飼っていた。もはやそれが餓狼と化し、己を、他人を無闇に襲うことはない。だが、豊かになっても、なればなるほど、彼の内面の狼は彼を見つめ続けたのだろう。

前回王者・麻天狼のディビジョン曲を提供するのにふさわしいのはそう考えると彼しかいなかったのかもしれない。一聴してそう思うほど、「TOMOSHIBI」は筆者に刺さった。

前回何故麻天狼は王者になり得たのか。もちろん、彼らが豊かな魅力とラップセンスを持ち、それが投票に繋がったからに他ならない。それは大前提としてある。

その上で彼らの下に栄冠が輝いた理由に、彼らが「カウンターであったから」という一因はやはり外せないように思うのである。投票によって展開される筋書きのないドラマ。とはいえ、「主人公」は山田三兄弟であることは誰もが感じていたことであろう。だからこそ、オタクの性か、ジャイアントキリングを、ブック破りを、逆張りを求める心理というのはあったのではなかろうか。いつだって「白イケ」ではなく「黒イケ」が過熱した人気を持つように。

そうして得た王座にて麻天狼が実に相応しく振舞ったのは、読者諸賢ご存じの通りである。しかしその裏側の苦悩が今回明かされた。眠らない街・病める街シンジュク。もっとも社会に縛られたディヴィジョンはまた、合わせて王者の呪縛を得た。

そして。彼ら自身が痛いほど知っている。追う者は追われる者よりよほど恐ろしいと。連覇。口にするのは簡単だがその道のりは果てしない。連覇できるのは彼らだけ。追われる者は彼らだけ。かつては「運営推しを退け王者となる」というジャイアントキリングを成し遂げた麻天狼は今や、巨大コンテンツに君臨する前回王者という巨人である。

正直なところ、筆者でさえ、「今回はイケブクロでいいんじゃないか」「いうても麻天狼は一回王者になったわけだし」と考えなかったことが全くないと言えば嘘になる。そんな自分を深く恥じた。灯なんかではない、悩める人々を導く大灯台として麻天狼が煌々と輝いてあるよう、応援したいという気持ちを強くした。

ゴヤ・ディビジョン


ナゴヤ・ディビジョン“Bad Ass Temple”「開眼」Trailer

麻天狼を応援したいという気持ちを強くした。直後にこんなものをぶち込んでくるのだから……もう……運営のバカ!(賞賛)

筆者は優れたキャラクターがどういうものが考えた時、その人物の背景が書割かどうか、ということ考える。現実世界の人間において、筆者がその人と初対面だったとしても、それまでのその人の人生が存在する。厚みがある。そういったものが創作において感じられるかどうか。筆者の目にはそういう人物として現れたけれども、その範囲外でも起きて、仕事をして、飯を食って……ということを経てきているかどうかを。

ゴヤ・ディビジョンは筆者の眼前に他のディビジョンより遅く現れた。ただそれは、それがたまたまその時だったからであって、彼らには彼らの人生が分厚くそれまでにしっかりあったのだ、ということを初対面でありながら強く伝えてくれた。

 

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 自分の痛みすらも自分のものだという天国獄。

ナルシストめいて何度も自分を見てきたから一番わかっているのだという四十物十四。

神や仏ではなくただのお坊さんであり家族だという波羅夷空却。

三者三様の脱皮を経た彼らの力強さは圧倒的だ。そのまま一気に頂上をかっさらってしまいそうな力強さを感じる。

しかし「開眼」、ドラマトラックで波羅夷空却の洗脳は解けたりするんだろうか。

前後するが、特典CD曲の「R.I.P」も素晴らしく、ここに至る経緯が特典ドラマトラックで明らかになると思うと待ちきれない。ディビジョン曲については口上がオリジナルだったが(これは麻天狼の一二三パートもそうでとてもよかった)気迫が伝わるが、四十物十四はいじめという卑怯なものをサバイヴしているからこそ「正々堂々」にこだわっているのかなと思っていたのでここが変更になったのは少し残念だった。

個人曲は激情の乗せ方が一年前より段違いにうまくなっているし高度に発達したぎゃらんBAMの後半歌詞は文字化けと見まがうばかりであり、マイクスタンドの取り扱いの切れも良くなっており、ダンスのツイストも腰が入っていた。

相手が前回王者という気負いを微塵も感じない恐ろしい3人である。

ゴヤVSシンジュク

バトル曲が始まれば甲乙を決めなければならない。聴きたくないが一刻も早く聴きたい。そのアンビバレントな感情の中「Light&Shadow」が開幕する。

作詞が前回「BATTLE BATTLE BATTLE」を手掛けたケンザさんということもあってこれまた今までのバトル曲とは一味違う、しかし間違いなく極上のスタイルに仕上がっている。

伝説のMCバトル番組「フリースタイルダンジョン」でも一貫して審査員を務めた(歌詞にダンジョンと出てくるのはその辺が理由?)ケンザさんがプロデュースするのはスタイルウォーズだ。とはいえ実際のMCバトルのようなパンチラインタイプとフロータイプとかそういった次元のスタイルウォーズではない。

その名の通り流儀だ。生き方だ。

ゴヤは「克己」。己に克つ。己を超える。あの頃の俺じゃない。過去の自分は踏み台であり、レベルアップした自分としてシンジュクに対峙する。ディビジョン曲で「見て見なほら悪くないmy face」なんて控えめなセルフボーストをしていた彼らはもういない。今の自分が最上だという自負に満ちている。Shadowは消え、Lightとなった。それはまるで荒行によって自己変革を起こす密教の修行めいて――。

対してシンジュクは「共助」。過去の自分を、弱い自分を自分の核であると肯定し、他人のそれも同様に受け入れ、共に歩んでいく。否定しない。受け入れる。ShadowもLightもそこにある。そうあれかしと祈って歌えば世界はするりと片付き申すとでもいうように――。

紡がれるリリックはその一つ一つがパンチラインでどれか一つを引用して語ることなどおこがましい。

あえて言えば、最後のリーダー対決は自己犠牲の精神が先行するあまりやや危うさのある寂雷先生のリリックをひっくり返して見せる空却のロジックの方が筋は通っているように感じた。だがそれくらい自分の「スタイル」を前面に出してバチバチに殴りあえるくらい独歩と一二三が成長したと思えば、ヒーラーに徹していたであろう前回を思うと感慨深くもある。

やはり今回も結論は出せていない。また期限ぎりぎりまで悩み続けることであろう。

 

 

「ひぐらし」は今が一番面白い――「ひぐらしのなく頃に業」ネタバレ感想

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※タイトルの通り「ひぐらしのなく頃に業 『郷壊し編』」までのシリーズ全般のネタバレがあります。

余談

ひぐらしのなく頃に」。筆者と同世代でゼロ年代からサブカル文化、インターネットに触れていた人間であれば恐らくその残滓ですら掠めなかったということはまずなかったであろう作品だ。そうでなくとも、現実の痛ましい事件の「元凶」として槍玉にあげられた報道をご記憶の諸賢もいるかもしれない。

筆者はどうであったか。当時はミステリ、分けても講談社ノベルスを濫読していた頃で、「正解率1%のミステリー」という売り文句に筆者は俄然引き付けられた。だがネタバレを恐れることもあり、聞きかじった情報のみ得ていた筆者はPCでするゲーム=いわゆる「エロゲ」であると思い込み、また当時は今以上にオタク番外地であった鹿児島に居住していたこともあり、「原典」に触れることはついぞできずにいた。

それでもオタクとして過ごしている中で、ひぐらしの「侵食」は進んでいた。巡回するサイトの管理人さんの日記、チャットでの例え突っ込み、ニコニコ動画でのMADやコメント欄、やる夫スレの登場人物……そうした中で筆者は本編を知らないまま、脳内で登場人物たちの人物像を積み上げていった。

いわゆる共感性羞恥を体感する「ひぐらしコピペ」や同じ作者が書いたという「怪談で踊ろう、そしてあなたは階段で踊る」を途中で挫折するという経験を経ながらも、筆者と「ひぐらし」は距離を保ち続けた。もしかしたら筆者がもう少し裕福であれば、講談社BOX版を買い集めていたかもしれない。

今年、ひぐらしが再びアニメ化する、ということも筆者は知らなかった。きっかけは、妻が作業BGMに旧ひぐらしアニメを見ている、ということであった。どうも再アニメ化の宣伝のためにAbemaで無料配信をしているらしい。

どうも妻は、ひぐらしをこよなく愛するタイプの人間であるらしく、筆者はこれはチャンスだ、と思った。無料配信は4日間という制限があるのもいい。背水の陣である。早速夫婦で旧作を見始めた。やはり今や三十路を超えた筆者には当時のアニメのノリは些か辛いこともありながら、しかし散々方々で耳にしてきたBGMが生み出す没入感はすさまじく、食い入るように見た。負のカタルシスが発揮され、不安と不穏を残したまま何事もなかったように新たに話が展開され、頭が混乱していく。一応の推理を試みて、なるほど「信頼できない語り手」の手法が使われているようだ、と分析をしてみるものの、針の筵のような、真綿で首を絞められるような、それこそ夏の寝苦しさのような不快感に悩まされた。

 フィットボクシングと組み合わせることで効率的な運動を図ったというより、そのもやもやを発散したいという気持ちで拳を振った。ずいぶんはかどったものである。そうしてそれらが「目明し編」「罪滅し編」で一応の収束を見た……と思ったところからさらにひっくり返してきたのには驚かされた。プライムビデオで続きが配信されていると知り、続けて見た。「解」に至って、妻が筆者の疑問にぽつぽつと補足をしてくれたりもしていた。(祟殺し編の最初の死体も特に説明がないので筆者はずっと悟史だと勘違いしていた)妻は筆者が震えてみている間、「実はこの時……」「さあ、ここ気付けるかな」「これ伏線ね」などという茶々を入れることは全くなく、満点のペースメーカーであったと言える。彼女が筆者に「解」に至る前に問うたのは、「罪滅し編」までがミステリーの範疇だけどここから先も見る? という点だけであった。筆者も何となくひぐらしがその解答に至って「荒れた」というのは聞いていたので了承し、そこである程度の覚悟はしていたのでそういった意味での驚きは少なかった。というか講談社ノベルスでミステリーかと思って読んでいたら最終的に「人類の存亡を賭けた最後の闘いが始まろうとしていた」で〆る作品を既に読んでいたので「あ、そのパターンですか」くらいの感じであった。読んでてよかった講談社ノベルス。鵺の碑は筆者が生きている間に出るのだろうか。

報連相の大事さを思い知りつつ、その大団円にはやはり熱い気持ちになった。「ひぐらしコピペ」も適材適所であればしっかり感動させてくれた。平成ライダーの登場人物たちは今すぐひぐらしを履修するべきである。戦う前にちょっと話したら避けられそうな戦闘が多すぎる。

勢いで漫画版も全巻買い、その後奥付で発行ペースを見て驚き、こればかりは一気読みできるのは後発組の特権であるな、と思った。

そしてそのまま、夫婦で新作も視聴することになったのだった。

本題

余談が、ながくなった。

ひぐらしのなく頃に業」1話。やはり「ひぐらしのなく頃に(曲名)」は偉大だと思いながら、妻は既に「コト」の重大さに感づいたような顔をしていた。

それからは毎話、驚かされている。

恐らくは意図的に、我々は古手梨花の疑似体験をさせられている。知っているけれど少し違う世界。必勝法などない、「勝ちパターン」に入ったと思ったことを何者かが嘲笑うかのように「反転」する結果。

竜宮レナは言う。

「見かけとは逆が真実かもしれないよ」

裏目に出続ける出来事をメタ的に俯瞰するかのような言葉を裏付けるようなその言葉。旧作では発症しなかった人物が発症し、援護してくれた羽入はもうおらず、オヤシロソードも不完全である。

それでも繰り返し続ける悲劇。それはかつて100年の時を経て得た「祭囃し編」のその後だということがとうとう確定し、筆者はひどく落ち込むのであった。

猫騙し編」は特につらい。突破口となりそうな人々が丁寧に発症させられている。それでもあがく古手梨花はトラップマスター・北条沙都子にトラップを仕掛け、それを指摘された彼女は古手梨花銃口を向ける――。

そして現在「郷壊し編」として「祭囃し編」のアフター、「猫騙し編」の前日譚が語られている。市内に進学し祭りの日にも来ない魅音、部活を開かれた場所として後輩に道を示す圭一とレナ。御三家としてもオヤシロ様の祟りを否定し、症候群も消滅に向かうなど良い方向に向かっていくように見える未来。

そんな中、古手梨花も「外」聖ルチーア学園を共に目指さないかと北条沙都子を誘うのだった……。というのが現在のところの最終話である。

ここから恐らくは北条沙都子が暗躍する今回のループに繋がる訳であるが、しかしまだまだ謎が多い。多くの人が北条沙都子の受験失敗を前提として考えているのがおかしいやら悲しいやらである。

北条沙都子が単独でループできるとは考えづらく、となればやはりミステリとしては禁じ手であるけれども何かしら人外のものが黒幕として関わっていると考えられる。例えばピッコロ大魔王のようにかつて切り離された「ダーク羽入」みたいなものが郷を捨てようとする巫女に罰を与えようと結託したのか、それとも羽入を討った実の娘である桜花がなにかしらの理由で介入しているのか、はたまたより未来の古手梨花が自分を懲らしめるために過去の自分を翻弄しているのか……。いずれにせよ筆者はともかく長らくこのコンテンツを愛してきた人たちが必要以上に心に傷を負わないような終わりになることを祈るばかりである。24話で完結するのか、それとも更に解答編としてもう1クールあるのか……(「卒」の存在が噂されるが、それは次のクールとなるのか、今クールの残り話数で新EDに絵が付くとともに明かされるのか……)

あるいは「うみねこのなく頃に」と接続し、終了後うみねこアニメ放送決定!なのか……

個人的には北条沙都子の持っているリボンが詩音のものであるとして、それがどのような経緯を経て彼女の手に渡ったのかが気になるところである。二人は共闘するのか。そうであれば、古手梨花竜宮レナコンビと対立することになるのか。

であれば、彼女の狂気に至った理由は昏睡状態にある北条悟史に何かしら関係があるのか。(兄のことを心配する彼女に古手梨花がうっかり地下にいることを告げて信頼関係が崩れるのか、受験の時に急変しその時に立ち会えないのか……)鉄平がしょっぴかれたとして、恐喝の実刑は10年未満であるので合格のタイミングで娑婆に出てきて全てが台無しということもあり得る。もしくは聖ルチーアで真のお嬢様たちになんちゃってお嬢様言葉を悪意なくいじられて落ち込んでしまうのかも……。

と、興味は尽きない。妻は言う。風呂敷を広げているときのひぐらしほど面白いものはないと。プライムで既放送分は全て視聴可能であるので、ぜひ読者諸賢もこの体験をリアルタイムで味わっていただきたい。

 

リスタート期す胎動――ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 6th LIVE <<2nd D.R.B>>「1st Battle -どついたれ本舗 VS Buster Bros!!!-」感想

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余談

近頃の筆者は幸福な悩みに苦しめられていた。

刀剣乱舞にて特命調査「慶応甲府」。

ツイステッドワンダーランドにて「5章後編2」。

FGOにて「いざ鎌倉にさよならを」。

ひぐらしのなく頃に業において「猫騙し編」。

アイズワンにて「D-D-DANCE」。

示し合わせたかのように追っているコンテンツが新展開を見せ、確定申告も迫る筆者は青色吐息、二兎を追う者は一兎をも得ずどころの騒ぎではなく、多方向から迫ってくるコンテンツをきょろきょろとするあまり目を回してその場に倒れ伏してしまうような有様であった。

三十路の旅路はオフロードとは白膠木の個人曲を提供したHIDADDYのパンチラインだが、まことそのようにごとごとと綺麗に咀嚼しきれないまま走り出してしまっているオタク人生の今日この頃である。

が、今回、自らの考えを咀嚼し、舗装し、何なら手すりでもつけてみる前に、とにかく今日、今、この気持ちをこのブログにぶつけておきたいと思える出来事があったので、ここに残しておきたいと思う。

ペンは剣よりもヒプノシスマイク。

かつて彼らはこう歌った。なんのこっちゃと当時思ったし、今でもそう思っているが、しかしペンで、あるいはキーボードで紡ぐ言葉の数々は自由で強靭だ。盾にも勝れば矛にも勝ろう。その特性は確かにただ斬りつけるのみの剣よりも、さまざまなラップアビリティを発揮させるヒプノシスマイクに近いのではないか。

筆者には、およそ才と呼べるものはなく、しかし幸いなことに生まれた時から言葉は身近にあった。それを用いて今、電脳の海においても実生活においてもささやかな居場所を築けている。であるならば、と続けるのもおかしい論理の飛躍であるが、このペンを、打鍵をヒプノシスマイクを追いかけるために使うのは至極全うではなかろうか。

筆者がヒプノシスマイクに出会った時のことについては、既に述べた。

 

kimotokanata.hatenablog.com

 その時、バトルはすでに終わっていた。筆者が初めてリアルタイムで購入したヒプマイの音源は「Champion」である。ちょうど妻は、今ははるか遠き東京・新宿にて街宣車の音をその耳に聴いていた可能性がある。今のハマり具合であれば、絶対に追いかけていたことだろうが……。

妻に遅れて興味を持った筆者は、公式サイトをチェックした。妻が買ってきたCDに麻天狼のものが多かったのはそれが彼女の「推しディビ」だからであろうと。ホワイトデーも近づいていたので、他のディビジョンのCDを買ってみよう、自分も聞いてみたいし――と。

なかった。

チャンピオンである麻天狼は4枚。決勝トーナメント初戦敗退の2組は2枚。

そのディスコグラフィーの淡々とした残酷さは筆者に「恐ろしい界隈に足を踏み入れてしまった」と感じさせるに十分だった。

余りにロジカル、資本主義的、「CD」という形で明確に分かたれる勝者と敗者。

それ以前より筆者はいわゆる48系アイドルに親しんでいたから、CDを積んで殴り合う文化には慣れていたつもりであった。

ただ、彼女らはたとえ敗れても、ランクインできなくても、ファンに声を届ける場所がある。SNS、メール、ブログなどによって。もちろん、メディアに取り上げられることは難しくなるかもしれないが。

ヒプマイでは最もメインであるCDという舞台において、それがあっさりとなくなる。

とはいえそれはバトルシーズン中のこと。その後アルバムが発売され、そこでは新たな物語が全員揃って展開された。それぞれに新曲も割り振られた。

が、その特典としてついてきた以前のライブDVDにおいて筆者は再び慟哭させられる。

「Buster Bros!!!」と山田一郎、木村昴さんのこのコンテンツに与えた影響の大きさを否が応もなく認識させられたからである。定期的に再度視聴するが、今でも結果発表のシーンは二度目を見ることはできていない。浅沼晋太郎さんのMTCのリーダーとしての気持ちと木村昴さんをそばで見てきたものとしての葛藤あるコメントがまた、沁みた。

ヒプマイというコンテンツはますます隆盛を極め、アプリも出来、ラジオやコミカライズなど多方面に進出した。そしていよいよ、12人全員が勢ぞろいするライブが開催された。大阪にて。

 

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 筆者は、ライブビューイングにて参戦した。12人最高!不仲説抹消!みんな…ズッ友だょ……というところに現れたのは、言の葉党の面々。続けて呼び出されたのは会場のあるオオサカをホームとする「どついたれ本舗」であった。ヒプノシスマイクというコンテンツは、それに関わるものに足踏みを許さなかった。賛否両論が巻き起こる中、どついたれ本舗は傑作をリリースし、その騒動を黙らせた。ヒプノシスマイクの面目躍如たる展開であった。

 

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 他ディビジョンも続けて怒涛のリリースが続き、いよいよ今度は18人揃ってのライブが告知され、我々夫婦は幸運にもそのチケットをつかみ取った。そして、コロナ禍において他のイベントがそうであったように、そのライブもまた中止となった。

それでも彼らは我々にそのリリックを届けてくれた。なんと無料配信ライブという形によって。 

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 画面越しでも伝わる熱さはいつかの再会を前向きに考えるのに十分であった。
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満を持して放たれたアニメもエネルギッシュな作品。その最終回にてとうとう、2nd D.R.Bが告知された。

ついに。

ついに自分が、当事者となるときが来た。

仕事でも感じぬ双肩にのしかかる鉛のごとき重圧を感じながら、妻と共に筆者は、ライビュ配信もあるらしいことを喜んでいた。踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆ならせいぜい運営の手のひらで踊り狂ってやろうではないか――。そういう決心があった。

遺憾ながらコロナ禍は益々の拡大を見せ、またも無観客配信という形になった。

今回は有料という形を選んでくれたこと、まず感謝したい。綺麗ごと結構であるが、やはりコンテンツに対する賛意を示すことで金銭を支払うことが少なくとも筆者にとってはかなり納得のいく方法であるからである。

筆者もまた臨戦態勢を整え、アベマTVにログインした。待機時間もリミックスで飽きさせない。「泣く子も黙る一郎のビート」に「どついたれ本舗」の曲が挿入されてバチバチ感を高める中、ついに決戦の火ぶたは切って落とされた。

本題

ということでここからはヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 6th LIVE <<2nd D.R.B>>「1st Battle -どついたれ本舗 VS Buster Bros!!!-」(長い!!!)のネタバレしかありません。

余談が、長くなった。

いつもライブがそうであるように、圧倒された。

逆に言えば、2ディビジョンであってもいつも通りの熱量を叩き込んできてくれた。

2ディビジョン分であっても「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-+」も「ヒプノシスマイク -Division Battle Anthem-+」はいい曲だな…としみじみしてからの「ヒプノシスマイク-Glory or Dust」にはドキリとさせられた。

そうだ、ここからは誰も知らない、未知数が始まる。2nd D.R.Bが。


ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- ≪2nd D.R.B≫開幕TRAILER

 躑躅森先生のフォローが早速入りつつ、どついたれ本舗、Buster Bros!!!がそれぞれ楽曲を披露する。それはかつて、同じように無観客での披露となったライブのセットリストとほぼ同じではあったけれど、それぞれがより楽曲を自らのものとして消化し、昇華したことがまざまざとわかる仕上がりになっていた。カメラワークも素晴らしすぎる。

筆者が偏愛する梅田サイファーが楽曲提供した「なにわ☆パラダイ酒」が聴けたのは嬉しい驚きであった。最後の辺りの酔っていく感じなどやはり声優さんはスゴイと思わされる。しかし河西さん美肌が過ぎませんかね……。

DJの切れ味鋭いプレイすら難なく乗りこなすダンスに唸らされた後、いつもの音楽で出てきたいつものロゴ。「お知らせ」のタイミングが今回は早いな――と思えばサプライズでかまされたのは『Femme Fatale』。


中王区 言の葉党『Femme Fatale』Trailer

丁度本日手元に届いた会報でたかはし智秋さんが「言の葉党のラップ」の重要性について語っておられ、シンクロして驚いた。「言の葉党のラップ」は勝者のラップ、権力がラップの形をしている、というものである。その説得力を持たせるのは容易ならざることであるが、しかししっかりそうなっているのだから彼女らの力のすさまじさたるや想像を絶し、その「壁」の分厚さが空恐ろしくなる。もし今回の投票先に「中王区」があったとしたら、どんな結果が出たものか……。

「権力」が去り、いよいよライブはラストスパートである。


イケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”「Re:start!!!」Trailer

「Re:start!!!」の作詞者の一人、WILYWNKAさんはかつてMCバトル「高校生ラップ選手権」に複数回出場し、間違いないスキルを持ちながらも組み合わせに泣かされ、バトルMCとして不遇な過去を送ってきた方である。そんな彼だからこそ敗北の物語を背負わされたBuster Bros!!!の心情をここまで細やかに形にできたのだろう。

浮かび上がるのは特に二郎の成長である。もう一郎のトレースである彼はいない。兄を超えようとし、弟を助けようとする次兄の青い炎の揺らめきはその優しさゆえに、強い。

負けたからこそ、こんな素晴らしい曲が生まれた。翻って、もうこれ以上、敗けた時の曲は必要ない。彼らの道にあるのは勝利しかない。最初から主人公が大勝利のストーリーではすぐに終わっちゃうからフックを作っただけ。当たり前のように勝ち上がるだけ。そんな力の抜けた強さを感じた。


オオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗”「笑オオサカ!~What a OSAKA!」Trailer

対するどついたれ本舗の「笑オオサカ!~What a OSAKA!」は実にファニーで視聴者参加型作品といった趣。この曲で凱旋して、沢山コール&レスポンスしたかっただろうと思うと大変悲しい気持ちになるが、彼らの笑顔を見ればそんな気持ちも吹き飛ばしてくれるようだ。

そう、Buster Bros!!!の三人が常に矢面に立たされてきた代わりに様々な露出機会があったのと対照的に、どついたれ本舗の三人はそのお披露目において「この人たち誰?」という視線を受けた以外はコロナ禍の影響で観客の前に立ち、喝采を受けるチャンスを射ことごとく奪われているのである。これが彼らに課せられた物語であるならば、勝ち上がって決勝、コロナ禍においてもその共存が見えた頃に、観客がいればいるほど強くなりそうな気さえする彼らに会場がオレンジ色に染まる景色を見せてあげたい。そう思った。

……

………(三点リーダー症候群を実感する)

決められない!

とはいえいよいよ、バトル曲が始まる。一部で話題になった今回の「どついたれ本舗 VS Buster Bros!!!」という表記であるが、どうやら先攻後攻を現わしていたようである。

「Joy for Struggle」は陽気でありながら殺気を秘めた、前回のシーズンとはまた毛色の違うバトル楽曲だ。互いのディビジョンカラーが色濃く出ながらも、しかし現実のMCバトルにおいて後攻が有利であるのが反映されているかのように、先攻であるどついたれ本舗の「茶化し」にBuster Bros!!!が小気味よく反撃していく。

個人的に圧倒されたのは山田一郎VS天谷奴零の親子対決。ラッパ我リヤのMr.Qを思わせるフロウですべてを重戦車のごとく押しつぶしそうな零のパンチラインは単なる詐欺師ではない、信念を持って実の息子とさえも対峙する姿勢を感じた。他方、山田一郎は圧倒的なライミングながら「アンサー」としては「兄弟のため」と逃げを打ってしまっていて、もちろんウソはないのだろうが、また「自分勝手」な零とは違うということなのだろうが、ディビジョンを背負う自分自身としてどうなのか、言う部分では些か説明不足なように感じた。また、個人的には三郎が「詐欺師」と斬って捨てたのとは裏腹に「親父」と認めてしまったのもまた彼の(やさしさに起因する)「弱さ」に思えた。

恐らく「一郎の迷い」「二郎の成長」「三郎の不安」が前回の(びっくりするくらいどついたれ本舗の酒盛りの記憶しかない)ドラパから更に膨張しどう解決されるか、が今回のドラマパートの鍵だと思うのだが、この「弱さ」はどうなっているだろうか。

個人的には声の仕上がりなども含め総合力ではBuster Bros!!!だが、最後の最後で天谷奴がヘビー級をズドンと打ち込んできたな……という印象である。

他方、もちろん勝ちたい気持ちに嘘はないのだろうが、どついたれ本舗はやはり勝ちへの「飢え」が見られないのが投票への決断を迷わせる。Buster Bros!!!にもうあんな歌を歌わせたくない、という気持ちが時間を置くごとに強くなる。

結局のところ、我々夫婦はこの問題にまだ結論を出していない。

2nd D.R.B。ヒプノシスマイクのリスタートはこの葛藤を踏まえるに大成功と言っていいだろう。その胎動はますます大きくなっていくはずである。

最高の瞬間を待ち望んで下されるサイコな審判―アニメ「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」ネタバレ感想

Straight Outta Rhyme Anima

タイトルが長い……!

二年ほど夫婦してハマっているコンテンツ「ヒプノシスマイク」がアニメ化し、そして最終回を迎え下らない日常が二週間ほど経過した。

本来なら昨年のうちに記事にしておきたかったのだが、気持ちを整理するのにそれくらいの時間が必要だったと思っていただければ幸いである。

何故時間が必要だったか。批判的な内容を含むからである。好きなコンテンツの批判をすることほど筆者にとって悲しく、消耗することはない。

筆者にとって九割五分、理想的なアニメ化だった。

だからこそほんのわずかな筆者にとっての引っ掛かりが今もまだ、胸につかえて取れずにいる。それを文章にし記事にして摘出することがこの記事の狙いである。

ということで以降は批判的な内容を含むネタバレ記事になるのでご留意の上お読みください。

 

第1話 As soon as man is born he begins to die.

第1話 As soon as man is born he begins to die.

  • 発売日: 2020/10/05
  • メディア: Prime Video
 

↑なんだったらアマゾンプライムで全話配信中なので是非見てほしい。 

本題

推しが動く、喋る、ラップする感動。

 待ち焦がれたヒプノシスマイクアニメ化。

山田一郎の片手に始まり、アプリ・ARBの差分絵を経ての完全アニメーションには全ヘッズが熱狂したに違いない。コロナ禍においてドームライブが中止となり、アニメ自体も延期となる中、Abemaでの配信などを経てその期待はいや増していった。

筆者もOPが非常にアニメ主題歌らしいパートに繋がることに不思議な気持ちになりながらも、公式ガイドブックを手に入れたりファンクラブに加入したりしながら幸福な「おあずけ」を食らっていた。 

放映初日。BSによって地方民でも最速同時できることに感謝しながら、妻とライブパーカーを装備して見た。四者四様のディビジョンの様が描かれ、ラップし、爆発した。

 ツッコミ不在で進む、ある種インタラクティブSNS時代らしい実況向きのアニメ(久々にニコニコ動画にログインしてみるコメントつき版も最高だった)という感じで、特に続いての二話はツッコミどころ・ラップ・オリキャラのキャラの立ち具合と完璧だった。それ以降はやや抑えめになってしまったが……(原作を摂取しているからそう思っているだけで初見勢諸賢は(おっと韻を踏んでしまった)よくもこんなクレイジーアニメを! と思っていたかもしれないが……)

作画も崩れず、毎回極上の新作ラップを惜しげもなく取り込んでいくその姿勢には感服させられた。一方で、二話の「俺は一郎」のように既存楽曲のビジュアル化も期待していただけにそちらは少し残念だったが、常に「更新」、今その時が全盛期だというコンテンツとしての矜持を感じたように思えてうれしかった。

二話路線をずっと継続してほしかったという気持ちはあるが、しかし余りに「上級者向け」であると、「ニンジャスレイヤーアニメイシヨン」のように表面の分かりやすいネタ部分だけを面白がって消化されてしまう可能性があり、そうならずに済んだのは良かったのではなかろうか(「マグ…いやタマゴだ」のセリフが忍殺シヨンで抹消されたことを許す気はない)

バトル楽曲ではない「MCバトル」のアニマとしてのアンサーが素晴らしい

かつて四ディビジョンは「バトルシーズン」においてバトル楽曲においてバチバチの戦いを繰り広げた。それは素晴らしい出来であり、筆者もここからこのヒプマイの沼にハマっていったが、しかしあくまでも「楽曲」、やり取りの間にはHook(いわゆるサビ)が存在したし、それぞれのパートごとにバトルビートには「味付け」が存在した。

MCバトルという風習になじみがない層にアプローチするために楽曲にバトルを落とし込むということ自体が画期的である。しかも実際のMCバトルとは違い、勝敗は後になるまでわからないのだから楽曲作成者の心労たるや察するに余りある。

しかしある一つの「ビート」を各人がどのように料理し、そしてビートと相手を支配していくのかということにおいては物足りない部分もあった。

アニマではどうであったか。実際のMCバトルと同じく同一ビートをターンごとに回し、ともすれば生まれる単調さを激しい絵づくりとSEで盛り上げてくれた。さすが昔取った杵柄、彼らがダメージを受けるごとにLPの減る「ティリリリリリ」という音が聴こえるようにさえ感じた。碧棺左馬刻様のラップアビリティが発動する瞬間など完全に「リバースカードオープン!」の趣である。

やはり新作のラップ部分も含めて(個人的には三郎の理鶯へのディスが「野郎…タブー中のタブーに触れやがった…」の気持ちそのままになって最高であったし、幾度もヘッズからこすられてきたそのネタについて理鶯が未だもって軍人であるという自負で斬って捨てるアンサーも良かった)「ヒプマイでのMCバトルをアニメ化する」ということに関して素晴らしい回答が得られたことは喜ばしい。


公式ベストバース集/戦極×AsONE 戦クロ4(2019.4.29)

ちなみにダイジェストであるが実際のチームバトル式MCバトルはこんな感じ。この中から次回のバトルシーズンに楽曲提供者が出てくるかもしれない。(既にヨコハマにがっつり関わっているサイプレス上野さんも出ている)本当はここで颯爽とフリースタイルダンジョンを紹介したかったんだけどな……。

クライマックスに向けて大きくなる違和感

伝説のチーム「The Dirty Dawg」のお粗末すぎる戦略

ラップが変わっても勝敗の結果は変わらず、王者が決まり、そして周囲がきな臭く動き出す。風雲急をつける事態において食べ歩きディビジョンだとばかり思われていた三人組がアニメオリジナルディビジョンである「Secret Aliens(シークレットエイリアンズ)」であると判明し、言の葉党に味方する彼らによってディビジョンオールスターズは窮地に陥る。

だが、他方で処刑されそうになった飴村乱数たちに助け舟を出すシークレットエイリアンズ。それはディビジョンオールスターズを助けるために捕まった Fling Posse(フリングポッセ)を人質に、言の葉党無しの正々堂々のラップバトルを行うためであった。

かくして伝説のチームThe Dirty Dawg(ダーティドッグ/T.D.D)が再結成される形でバトルが勃発する!

もとより4VS3であるが更に先攻を譲り、回復までさせてくれるシークレットエイリアンズ。(実際のMCバトルではビートの感触をつかめる、相手の出方を伺えるので後攻が有利であることが多いのはそうなのだが)

シークレットエイリアンズの先鋒・アイリスは恐らくはチーム全体にバフをかけるタイプのラップアビリティの持ち主で、初めに繰り出すことに意味のある采配だ。「デイサービス」というMCバトルで耳慣れないパンチラインも新鮮かつ痛烈である。

これに対抗して出てきたのは碧棺左馬刻様だった。

ん?

アニメでもあったように、彼のラップアビリティはカウンター。ダメージが蓄積するほど反撃を強力に放つことが出来るようになる。どう考えてもダメージが回復した直後に出てくるべきではない。案の定、続けての太郎丸レックスの攻撃を受けての、即席の飴村乱数・山田一郎のタッグも会心の一撃には至らず、トムの「本気」のラップでシークレットエイリアンズは分身…いや万華鏡状態となり(深く考えないように)12VS4で形勢逆転されてしまう。

トムは言う。経験の違いがこの結果なのだと。日本最強MC集団T.D.Dは井の中の蛙であったことを突きつけられるのだった……。

――そうだろうか?

経験がどうとかいうが山田一郎は戦災孤児、碧棺左馬刻様は母が父を殺したのち自殺、妹は失踪中、飴村乱数はいわずもがな、神宮寺寂雷先生は世界中の紛争地を転々としていた経歴を持つ。見てきた修羅場の数では負けないだろう。

敗因は徹底的に戦略の甘さである。先攻を譲ってもらったことを幸い、相手の最初のターンはバフに使うことを見抜けば道中に負った傷を回復する前にまず碧棺左馬刻様のラップアビリティによってカウンターを叩きこみ、次に飴村乱数のラップアビリティ「幻惑」によって太郎丸レックスの攻撃を攪乱した上で神宮寺寂雷先生のラップアビリティにより回復した山田一郎がクリティカルヒットをぶちかませば十分に勝てる可能性があったのではないだろうか。

あるいは、敗れてもいい。敗因を「絆」に求めるべきではなかったか。家族のような絆で結ばれたシークレットエイリアンズに対し、再結成とはいえ互いの溝が埋まっていないT.D.D。それが勝敗を分けたのだ――という展開が、この後の流れを考えてももっともらしいのではないかと思う。

やはり物量……物量はすべてを解決する!

命運尽きたかに思われたかと思った時の「ちょっと待ったー!」的王道展開により、集結したディビジョンオールスターズ!

聞こえてくるのは聞き覚えのあるあのイントロ……これはヘッズが大好きなOPを最終盤に持ってくる……!!

「「「サイコな審判!」」」

ん?

炸裂したのは二番であった。2番手、3番手のディビジョンを超えた共演などとても熱かったのだけれど、やはり「文脈」として考えた時、それぞれのチームの名前を叫ぶ1番を歌ってほしかったなあと思う。もはや青春の影となったT.D.Dではなく今はそれぞれのリーダーとして、ディビジョンをしょっていくことで口から湧く力、それこそがシークレットエイリアンズを打倒せしめたのだ…と思いたかったのである。12VS3(+9 万華鏡)だったからとかじゃなくて。この辺、万華鏡状態になった時点でポッセ組が「こんなの4VS12じゃねーか!」とかフォローを入れてくれてたらよかったのになあ。

で、山田一郎はトムに対して勝因を「ラップを楽しんでいたか否か」というのだが、確かに「ラップってたのC~!」がヒップスターの合言葉であるのだが、バトル編に入ってから山田一郎がラップを楽しんでいたとは全く思えないのである。碧棺左馬刻様への復讐心、敵対心が彼を突き動かしていたはずだ。

逆に言えば、万華鏡されて絶体絶命の時に「俺はこのところずっとラップを楽しめていなかった……だからこんなことに……」みたいなシーンがあればすべてが美しく繋がり、より納得度が深まったと思うし、前バトルシーズンの総括にもなっていたはずである。

キャラクター崩壊が著しい勘解由小路無花果

とはいえシークレットエイリアンズとの決着もつき、大団円……と思いきや内閣総理大臣補佐官兼警視庁警視総監兼行政監察局局長である勘解由小路無花果は再び数多の部下を引き連れて立ちはだかる。シークレットエイリアンズへの協力を強いる勘解由小路無花果だが、山田三郎がそれまでの言の葉党の乱行を録音しており、世界へ拡散すると脅すとそれによって再び日本が混乱すると説得を試みる。山田一郎他が更なる反論をしようとすると激昂、手を下そうとするも言の葉党党首・東方天乙統女の鶴の一声によって「今日はこれくらいにしといたる」といわんばかりに引き下がるのだった……。

が、原作を参照すれば山田三郎がアクセスしている一見非合法のディープなインターネットすら言の葉党の管理下であり、事前にアップロードすることが分かっていればその妨害は簡単そうだ。そこに執着する小物ムーブは今まで築いてきた勘解由小路無花果像が揺らいでしまったようで遺憾である。まさかのすごすご退散よりは、圧倒的多数の戦闘員VSシークレットエイリアンズも加わったディビジョンオールスターズでのラップバトル(ここで二番がかかる!)の方がカタルシスもあったと思うのだが……。

男は結局争う愚かな生き物、バトルはこれからだEND

 そしていよいよエンディングに突入するが、先ほど大見得を切っておきながら男たちは争う愚かな生き物であることを全力で証明する結果となってしまった。どことなく尺のない打ち切り感があるが、それ以上に残念なのは「次」の布石が打たれており、碧棺合歓が登場しておきながらナゴヤ・オオサカ勢が一人しか出てこなかったことである。せめて顔見せくらいはあるのかと思ったが……。

繰り返して言うが、個人的にほぼ完璧なアニメ化だった。それだけに、最後の最後ですっきりしない、御馳走の残りの一口を頬張ったら口の内側をガリっとやってしまったような切なさがある最終話であった。

とはいえ配信ライブ、バトルシーズンと加速していくヒプノシスマイクを引き続き追いかけていきたい。

ラップってたのC~~!!