初詣に行ったことがない。なかった。
まだ同じ町内に神社があったりしたら違ったのかもしれないが、わざわざ人が多いところを目掛けて行かなくてもいいじゃないか……というのが基本スタンスである。
もう少し日をずらして行った方が神様の方もお願いを真摯に聞いてくださるのではないかと思ったりもしていた。
そんな折、Twitterで一つのツイートが流れてきた。
謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年が皆様にとりまして素晴らしい年となりますようお祈り申し上げます。精矛神社にて行われました大河ドラマ『西郷どん』ロケの様子をパネル展示しております。初詣は島津義弘公をお祀りする精矛神社にぜひお越しください。#精矛神社 #島津義弘公 #初詣 #西郷どん pic.twitter.com/mwpODnJZPh
— 島津義弘公没後四百年記念事業 (@kuwashihoko2019) 2018年1月1日
これはチャンスかもしれない、と思った。
・島津義弘公は誕生日が同じということで勝手に親近感を抱いている。
・割かし近所であり、看板など見て気になっていたが今まで訪れる機会がなかった。
・情報を収集するに二日に訪れる分にはそこまで混雑しそうにない。
・ということは昨年断念した御朱印集めを再開するチャンスでもあるかもしれない。
・せごどんのロケ地に興味がある。
・今まで初詣に行ったことがないというと同僚に同情された(全踏み)ので詣でることでマイナスからゼロになりたい。
・今日から初めたブログのネタになる。
など精矛神社へ初詣に行くことで随分と良いことがありそうなのである。
早速翌日詣でることにした。
翌二日は晴天の絵に描いたような初詣日和、初もうdayであった。
おせちもいいけどカレーもね。
ということでまずはすき家で牛あいがけカレーメガ盛(とろーりチーズとおんたまトッピング)で腹を満たす。
途中左折のタイミングを二回ほど間違えながらも精矛神社の幟が立ち並ぶエリアへ入った。視界の先に鳥居が見える。が、車を停められそうなところが見当たらない。道の左右に車がそこここ停められているが、完全にそのそばの民家の方々のものである。いよいよ鳥居が迫り、もしかして駐車場は別の場所なのかと青くなったとき、真横に臨時駐車場の看板が見え安堵する。因みに駅から徒歩県内なので遠方からの方もご安心である。
中途半端な時間のためか駐車場には車はなし。新しくトイレを建設中であり市が「せごどん需要」に対して期待しまた対応している姿勢が感じられて良い。
鳥居を二つ抜けると本殿であった。
繰り返しになるが精矛神社は島津義弘公をお祀りしている神社である。
筆者のイメージでは豊臣秀吉(豊国大明神)、徳川家康(東照大権現)、そして筆者に初詣=盛大でごみごみしていて交通が麻痺するのイメージを与えた鹿児島市内中心地に祀られる維新の立役者島津斉彬(照国大明神)の印象が強かったが、調べてみると名だたる武将はだいたい神となっていて面白い。(明治頃藩祖を祀るブームがあったらしい)
生涯50余りの合戦を戦い抜いた祭神の荒々しさとは対照的に境内は静謐であった。百年前に建てられた社殿も周りの風景と実に溶け込んでいる。
参拝者を暖めるために焚いてくださった火のパチパチという音と雅楽の音色が心地よい。お賽銭を入れ、鐘を……上手く鳴らすことが出来なかった。一年の何事かを暗示しているように思われたが、じっくり祈ることが出来た。
そのまま社務所で可愛らしい巫女さんに御朱印をいただく。お正月以外は行事の時ではないともらえないとのこと。300円。先方が紙まで用意してくださっていた。
一通り境内を見て回ったところで「やはりおみくじも引きたい」ということになり、再度社殿へ向かう。すぐ横なのでせっかくなのでもう一度お祈りもする。今度は鐘を上手く鳴らすことが出来た。何事も思い切りであると学ぶ。
裏に英訳がされているおみくじで、そちらから見ると「Very good」。ひっくり返すと「中吉」であった。それならば大吉は「Very Very good」なのだろうか。一瞬湧いた疑問は同行人が「大吉」を引いたのですぐに氷解した。「Excellent」であった。なるほど。
撮影風景の写真は二つの鳥居の間、開けた見やすい場所に掲示されていた。ロケは恐らく妙円寺参りのものだったのだろうか? 少年たちの屈託のない笑いが印象的だ。
随分と長い記事になってしまった。関ケ原、また維新におけるインターネットミームと化しつつある「クレイジーな薩摩人」について、薩摩人の死生観についても書いてしまいたかったが、また項を分けることとする。
帰りは随分と駐車場に車が増えていた。すれ違う人々に、どちらからともなく「おめでとうございます」の声掛けがある。丁度いいな、と思う。二日の昼前にふらりと来て、願い事を聞いてもらい、居合わせた人々と互いにおめでとうのお裾分けをする。新年初めのささやかなエールを送りあう。この初詣、丁度いいな。
来年の初詣も二日に、ここに詣でよう。