カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

腹筋崩壊太郎に花束を――仮面ライダーゼロワン初回感想

新シリーズをリアルタイムで見られる機会というのは一度しかない。

という訳でせっかくなので、感想もリアルタイムで投稿してみたいと思う。

いつも以上に勢いで行くしかないので許してほしい。

なお、筆者は本編視聴までは努めて仮面ライダーゼロワンのビジュアル、主人公が社長であるということ、なかやまきんに君が登場するということ以外の知識を取り入れないようにした。

 

開幕、正しく近未来の情景が映し出される。山寺宏一氏のナレーションの説得力。が、その創業者は既に亡い。この辺り、角川版「犬神家の一族」を思わせ、デジタライズされた世界でなお息づく家族の物語を提示していくのか、と予感させてくれる。

遊園地。主人公が登壇する。社長ではないらしい。滑る。解雇される。恐ろしいテンポの良さ、スピード感である。これが令和のスピードか。

他方、腹筋崩壊太郎は自らの腹筋を崩壊させるというヒューマギアならではのテクニックで老若男女の観客を抱腹絶倒の渦に叩き込んでいく。

主人公は夢破れた。仮面ライダーゼロワン完。

飛電インテリジェンス、崩壊した街、再び遊園地――目まぐるしく場面が変わっていく。

遊園地、腹筋崩壊太郎は他の芸人の研究に余念がない。自らのメモリーから先程の観客たちの笑顔を思い浮かべ、自らも笑みを浮かべる腹筋崩壊太郎。

と、そこに滅亡迅雷net.の迅が現れる。この場の破壊を「友達」として腹筋崩壊太郎にお願いする迅。

自分の使命は人を笑わせることだと必死に抵抗する腹筋崩壊太郎だが、ついにその使命はハックされ、上書きされてしまう……最後に彼の脳裏によぎったのはやはり無数の観客の笑顔――。

どことなく龍騎のライダーベルトを思い起こさせるデザインのベルトによって腹筋崩壊太郎はもはや人類滅亡太郎となり、昆虫の絶滅種「クジベローサ・テルユキイ」をモチーフとしたベローサマギアと変貌を遂げ、愛する場所の破壊に手を染めてしまうのだった……。

いわゆる戦闘員が闊歩し始め、人間サイドが対抗を始める。そして夢を笑われた主人公はついに夢を守るために変身を決意する――。

仮面ライダーゼロワンは見た目もカッコよかったが、動くとますます格好いい。オトモのバッタが更に被害を拡大しているように見えたが地面は陥没していないので大丈夫だ。安心して欲しい。CGと現実の地面を合わせるのが面倒だとかそういう話は今していないのだ。

父に言われたのとはちょっと違って物理的に高く飛ぶことができるようになった主人公はそれでもってベローサマギアを翻弄、見事「ライジングインパクト」により爆発・破壊。

遊園地を守り、みんなの笑顔を守った。

新たな「人を笑顔にする方法」を得た彼は、社長を受け入れるのだった……。

テンポが良く、あっという間の30分間であった。随所に今後の伏線も敷かれ、素晴らしい初回であったと思う。少なくとも筆者は次回が気になって仕方ない。

だからこそ、腹筋崩壊太郎が気になるのである。

劇中、主人公は「人工知能にお笑いは判らない」といい、しかし腹筋崩壊太郎は見事爆笑をかっさらっていく。

腹筋崩壊太郎がスタンダードなヒューマギアであれば、あるいはそうだったのかもしれない。しかし彼はシンギュラリティに達したヒューマギアであった。

腹筋崩壊太郎が見て研究している芸人も生身であるから、ヒューマギアであそこまで笑いを理解しているということが特異点であるということがやはりわかる。

かつて京極夏彦が「笑わせるのが一番難しい」というようなことを言っていて、確かに彼がギャグ小説を目指した「どすこい」はビックリするくらいつまらなかったのであるが、(フォローしておくと「百器徒然袋」シリーズはギャグ小説としてかなり素晴らしいできであると思う)しかし「笑い」が例えば他の感情と比べてかなり高度な次元であることは読者諸賢も納得いただけるのではないか。

その高度に発達した彼であったからこそ、狙われ、怪物と化してしまう。

そして散っていく。彼がシンギュラリティに達したヒューマギアであることは敵方以外誰も知ることはない。彼が観客の笑顔を何度も取り出しては自らも笑顔を浮かべていたことも、その笑顔をまた得る為に他芸人の舞台を熱心に鑑賞していたことも、その笑顔を楔にどうにかハッキングに耐えようとしていたことも。

このようにデータが改ざんされ、ヘッドセットのレッドアラートが点灯した状態のヒューマギアは原状回復を果たすことは技術的にほぼ不可能であり、破壊する以外の対処方法はない。

マギア|仮面ライダーゼロワン|テレビ朝日 より引用。

悲し過ぎるではないか。敵方がいうように、マギア適性のあるヒューマギアが即ちシンギュラリティに達したヒューマギアであるというなら、毎回このような悲劇が繰り返されてしまうというのか。

オタク特有の「そういう目」で見てしまうからというのもあるが、ゼロワンには先輩ライダーを感じさせる諸々を感じ取ってしまう。笑顔が見たい主人公、異形の可能性がある主人公、アタッシュケースの武器、ベルトに四角いものを挿入、変身モチーフのデザインが円形のレリーフ、衛星が変身に関わる、人外の相棒……。そして「データ(記憶)」を用いて行われる怪人化。

仮面ライダーダブルにおいてメモリブレイクは即ち死ではなかった。しかしマギアを排除するには破壊するしかないという。

人の笑顔を欲し、守ろうとした。

それは主人公も腹筋崩壊太郎も同じである。

しかし前者はヒーローとなり、後者は破壊される。

いや、破壊とは言うものの、「自我の芽生えた人工知能」というものはもはや、人間とどう違うのかを考えた時、それは「殺人」ではないのか?

これがゼロワンの大きなテーマになってくるのではないかと思っている。

というか、なってほしい。

他には、我が家で名作請負人(大河ドラマ3作、朝ドラ2作、他リーガルハイなどヒットドラマ多数出演)しているアンジャッシュ児嶋一哉さんが出演ということで安心して見られそうであるし、敵方2人が耳を映さないのはやはりそういうことなのかなと思ったり、主人公の出生の秘密が冬映画かな……と思ったりもした。機械音声の使い方「迷子のお知らせです」や「次、止まります」が演出に効果的で、繰り返しになるが次回以降の放送も楽しみである。

 

ついしん。どーかついでがあったらあなたのこころのなかのふっきんほうかいたろうのおなかに花束をそなえてやってください。

 

【Amazon.co.jp 限定】仮面ライダーゼロワン DX飛電ゼロワンドライバー&プログライズホルダーセット (購入特典 ビジュアルシートつき)