カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

半返しじゃん! ドラマ「半沢直樹」ロスジェネの逆襲編ネタバレ感想

余談

月曜日よ

敵にして恐ろしく味方として儚きものよ

せめて今一記事を書く時間を我に与えたまえ

毎回月曜休みの時は日曜の笑点をゆっくり見ようと思うのに見そびれてしまう。

三連休ではあったが土曜、祝日が免許更新の対象外であるため中日の日曜日に行った結果、盆前の人手とソーシャルディスタンスの確保のためにひどく時間がかかって参った。きちんと整列して検温されながら進んでいくと「最終的に出荷されるのかな?」みたいな気分になる。

先週は検診で体重の増加を指摘されたことを思い出す。なかなか行事で休日をフルに満喫できないが、上手に時間を使っていきたいものである。

本題

ドラマ「半沢直樹」前半、「ロスジェネの逆襲」編が昨日大団円を迎えた。

相変わらずの面白さ、最後には「銀翼のイカロス」の布石もばらまかれ、大島さんも登場し、来週以降もますます楽しみである。

他方、原作からの変更点は前回のドラマ時点で多く見られたものの、特に今回の変更点は個人的にはカタルシスが減ってしまった部分もあった。原作との相違点を比較しながら、筆者の手前勝手なこうして欲しかったという願望を垂れ流しつつ、後半戦「銀翼のイカロス」の展開予想もしてみたい。

 

ということでここからは「半沢直樹」「ロスジェネの逆襲」ドラマ及び原作のネタバレがあります。

「タメ」の部分―三木の冷遇、郷田の苦悩の削減

半沢直樹」というのはサラリーマン水戸黄門である、と思う。理不尽に耐え、終盤において伝家の宝刀、印籠――「倍返し」において大いに留飲を下げる。

逆に言えば、理不尽という助走期間、タメが長いほどより高く「倍返し」というカタルシスは跳ね上がる――と筆者は思うのだが、筆者が原作を読んで感じた三木が銀行へ戻れはしたものの、適性がない場所に配置されたために鬱屈を抱えてしまう場面や、自らの会社の窮状を救うために偽のホワイトナイトを演じた郷田が経営者としての苦悩に一人もだえ苦しむシーンが端的に、あるいはナレーションで済まされてしまったのは些か残念だった。特に三木のシーンは前ドラマの近藤さん並みの画を期待していただけに……。郷田は原作ではその後、玉木をフォックスに迎え再起を図るのだが、それも描写がなかったのは残念だった。

伊佐山の「意地」の削除と平山夫妻の被害者化、巻き込み事故の副頭取

以前も述べたが原作では大和田取締役は既に銀行の人ではなく、「ロスジェネの逆襲」に「大和田」という単語は登場しない。(一応、伊佐山も三笠も旧T(東京第一銀行。半沢達が勤める東京中央銀行は東京第一銀行と産業銀行という二つの銀行が合併した合併行であり、それゆえの行内融和が課題である。旧Tが悪役となることが多い。何故かドラマでは旧Tと旧Sがそっくり入れ替わっている)ということは語られるが原作においてそれは「今回の悪役です」くらいの意味である)

当然伊佐山と大和田の間に弟子であるとかいう言及もなく、最初から三笠副頭取の腹心として語られる。

銀縁眼鏡の似合う知的エリートとして描写される伊佐山はドラマ同様、粉飾に気付けず、三笠副頭取から切り捨てられる。

そうして自らのキャリアの終わりを感じながらも、平山夫妻へ粉飾の事実を問い詰め、既に投入した資金の返済を迫る伊佐山のすべてをかなぐり捨てた姿は文章だけでも浮かび上がる「凄味」があったのだが、ドラマでは平山夫妻への追及は森山への役割となってしまった。

ちなみに原作の電脳雑技集団の資金ショートの原因は本業悪化のため慌てて多方面へ投資したが全部焦げ付いた、というもので(スパイラルの出ていった役員たちが主張していたことをやって失敗した形)、玉置も容赦なく解雇するなど平山夫妻へ同情の余地は一切ない。三笠副頭取が自らの野望のため暗躍していたのは間違いないが、私利私欲に電脳を利用してはおらず、また取締役会議で断罪もされていないので彼はドラマ用カタルシスのための犠牲者といえよう。もちろんあの告発もスカッとはするのだが筆者は最後の最後に被害者面する平山夫妻の方にイラっとしてしまったのと、原作の「静かにおのれの野望が潰えたことを悟る」三笠副頭取の描写が好きだったので少し残念であった。

お膳立てが出来ていたからこそやってほしかった大和田取締役の「倍返し」

受けた恩に必ず報い、受けた仇を必ず返す、報恩と報復に生きるほとんど極道の東京中央銀行(採用条件:表情筋が豊かであること、肺活量が大きいこと)にドラマでは生き残った大和田平取締役。大体会議室にいるがもしかしてお部屋がないのだろうか。

伊佐山に切り捨てられた…と思ったが実は策略のうち…と思いきややっぱり捨てられる……という土下座野郎らしい悲劇をたどった大和田取締役だが、原作では半沢の元直属の部下・内藤寛部長(吉田鋼太郎さんは今季お忙しいのだろうか…はまり役だと思うのだが)が引き受ける「半沢を取締役会に呼ぶ」という大役を果たして見せた。

これにより三笠副頭取と伊佐山は失脚。彼の進言により二人は電脳雑技集団への出向が決まり、(原作では頭取の決定)目の上のたんこぶと手を噛んだ飼い犬を同時に排除することが出来たのだった……。

いや~~~………。

それを映像で見たかったんですよ!!!

ここまで大和田の「倍返し」がお膳立てされているのだからぜひやってほしかった。

(妄想)

半沢が証券の岡社長に呼ばれ、銀行への栄転が明らかになるシーン。

そこで一度画面が切り替わる。

東京中央銀行の頭取室に呼ばれる三笠副頭取と伊佐山。

入室すると、そこに待っているのは大和田。頭取が帝国航空の件で多忙のため、特例で辞令を大和田が交付するのだという。

そして発表される二人の電脳雑技集団への出向。

高笑いしながら、行内で誰よりも電脳のことを知っている二人だからぴったりな辞令だという大和田。

屈辱と怒り、半沢を電脳へ出向させようとした野望が潰えた失望に震える二人。

二人の肩を抱きながら、「やられたらやり返す……倍返しだ!」

そう凄んだのち更に呵呵大笑する大和田であった……。

みたいな。

原作の大和田常務もそうだったが、この辺りの「ケジメ」をしっかり描写してほしかったのである。

好きな改変:三木へのフォロー、日曜池井戸ドラマな「電脳電設」、元役員の処遇

原作において三木が総務に配置されたことを訴えても半沢はけんもほろろだが、ドラマでは伊佐山のその処遇を疑問視し、「三木は事務作業は苦手だが顧客の懐に飛び込むのがうまい」とフォローしている。これは原作にはないもので、出向先においても部下をしっかり評価していることがわかって個人的にはいい追加だなと思った。

また、「電脳電設(ゼネラル電設)」については原作ではゼネラルグループの一つでグループの経営悪化のため身売り、ということになっているが、ドラマでは玉置の父の会社であり、経営悪化を平山夫妻に救ってもらった(そのため粉飾に利用され、特許も抑えられている)という設定になり、ゼネラル電設に訪問するなどもドラマオリジナルのシーンである。社長は胸の会社名が「ゼネラル電設」のままの作業着を着ているなど芸が細かいな~と思う。唐突に中小企業のモノづくりが語られる辺りは「下町ロケット」や「陸王」のセルフオマージュのようで面白かったし、決算書のみで語られるより話に厚みが出た。

また、原作を読んだときスパイラルの元役員が(背信行為を行ったとはいえ)元は瀬名にも原因があるのに完全に悪役として処理をされていたことに違和感があったので、今回の落としどころは良かったのではないかと思う(詫びるシーンはしっかり入れてほしかったが)詫びると言えば、諸田が証券の皆に謝るのもオリジナルである。ただこれは個人的には原作のもはや眼中にないというような扱いも筆者としては好きである。

ドラマ版「銀翼のイカロス」はどうなるのか?

ということで倍返しは取締役会議で起きている! という感じであの場でカタルシスの花火をどんどこと打ち上げたドラマ版は勿論楽しく見させていただいたのだが、筆者としてはそれぞれのタイミングでそれぞれの悪役は裁かれるべきタイミングで裁かれた欲しかったな、とちょっと消化不良な感じである。

銀翼のイカロス」では果たしてどうなるのか。

 

kimotokanata.hatenablog.com

前回筆者は原作の「紀本常務」に今回の手柄でもって「大和田常務」として返り咲いた大和田が取って代わる、と思っていたのだが、普通に紀本平八常務が登場した。今回の冒頭では「大和田常務」の話が出るなど、完全に制作側としてはこのミスリードを誘っていたのではないかと思われる。すっかり掌で踊らされたわけである。これは心地いいやられた! という感覚であった。

しかし気になるのは相関図の記述。紀本平八は「東京第一銀行」即ち旧Tの出身となっている。原作では旧Tの出身なのだ。じゃあいいじゃんと思われるかもしれないが前述したとおり、原作とドラマでは旧Sと旧Tが逆になっており、本来であれば紀本はドラマでは旧Sになっていなければおかしいのである。(ちなみに小説版「花咲舞が黙ってない」には東京第一銀行時代の紀本が登場する)

これは原作未見の諸賢にもドラマを楽しんでほしいので明言は避けるが、原作では紀本は旧T(ややこしいがドラマの場合の旧S)出身であることに重大な意味のあるキャラクターであるので、この変更は重大である。

逆に考えれば、やはり原作での紀本が負う役目を大和田が負う――ドラマオリジナルの要素で紀本が常務の役目を追われ、再び「大和田常務」が誕生するのではないか?

小料理屋の女将の反応も意味深である。もしかしたら女将は紀本の「あの元上司」の娘であったりするのかもしれない。

どうにも大和田はまだまだかき回してくれそうな予感がする。

他方、児嶋一哉さんの役職も決まった。白井国交相の秘書というドラマオリジナルの役である。そんなん予想できるか! ただこちらも相関図を見ると箕部幹事長(幹事長になったのもドラマオリジナル)の秘書を経て白井の秘書となっているということから、極めて重大な役だと思われる。いかにも「秘書がすべてやったことです」ポジションの秘書にさせられそうである。当面のカタルシス提供役になりそうな予感だ。

 

www.tbs.co.jp

後半戦も一筋縄ではいかなそうな「半沢直樹」来週以降も楽しみにしていきたい。

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