カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

誰かの夢が叶う頃――「ガルプラ」感想走り書き

「ガルプラ」が終わった。

だが、筆者の心のもやもやは晴れない。こんな時の気持ちを書き留めておくのがブログだと思うので、さっくり書いておくことにする。

初回放送開始は2021年8月6日。娘の誕生日前日、妻は既に入院していたので1人洗濯物を畳みながらぼけーっと見た。

筆者は「ガルプラ」を配信しているMネットに加入しているのだが、今回はアベマでも同時無料配信があった。

(実際はラグの関係か配慮なのか微妙にMネットが早くて、特に順位発表の時にこの影響がTLに大きく出ていたように思う)

ただ、字幕付なのはアベマだけ。なので録画をしていることもありMネットで見ていた筆者はさっそく出遅れてしまった。

今までサバイバル番組を見ていて、醍醐味というか番組に自分が「馴染んでいく」過程として最初にシグナル・ソングからはじまり、段々顔と名前、キャラが一致していくことがあったのだが、アベマの配信では(Mネットでは未確認)今回もなかったのが残念ではあった。


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思えばこのシグナル・ソングの時からちょっと嫌な予感はしていて、曲中には1人にぐっとフィーチャーされるシーン(「私よ」という台詞がある)があるのだが、その機会が2回しかない。3か国でやるんだから3回あっても良いのに……と思ったりはした。

全編韓国語、時々英語というのも典型的なk-popで、勿論韓国の番組なんだけど「ネッコヤ」経由組としては早速うーん……。という気持ち。

でも曲自体は今でもすごく好きである。サバイバル番組の「呪い」をよく表現していると思う。

番組自体はほとんどPRODUCEシリーズなのだが、(名前だけ一生懸命変えているのが逆になんか笑えてしまう)「CELL」という特殊ルールがあった。日中韓、JCKで彼女たちは「CELL」というチームを作り、それでもってそのうち誰かが脱落ラインであると他2人も一蓮托生で失格になってしまう、というものだ。

思わず歴史の五人組制度を確認したくなってしまうが、これによって特に実力者揃いであるがゆえ、突出した人気が初速では出にくい韓国勢が大きく割を食うことになってしまったのは否めない。妻のKの推しも早い段階で脱落してしまったらしい。

この危惧からか、それともMネットの社風なのか、やはり編集には段々と偏りが生じてくる。お得意の時系列シャッフルで誤解を生むことも忘れない。

「そんなこと言っていない」

退院し、自宅に戻った妻がガルプラを視聴しながらそうつぶやいた。ある中国人練習生のシーンだった。妻は3か国に留学経験があり、中国もその一つだった。本人が喋っていることと、逐語訳が違うという。全くの虚偽と言うよりはニュアンスを変えられての訳、ということが多かったようだが、逐語訳は韓国語で出ているテロップを反映させたものであろう。それは印象操作ではないだろうか。

そうしたことに義憤を感じたと言うこともあったのだろうか、妻は個人投票になってからはフー・ヤーニンさんに投票するようになっていたようだった。

典型的な見た目はちょっぴりヤンキー、心はガラスのハート…ではないが温かなものを持った人で、掘れば掘るほど魅力がある人なのだが全体的な中国勢への冷遇によってそれを知る機会は能動的にならなければ難しかったように思う。

ちなみに筆者が中国勢で推していたのはツァイ・ビーンさんで参加者の中で一番妻に似ている。これに加え個人的な好感度が最も高い是非グループに1人はいて欲しい人材だったウェン・ジャさん、特徴的な髪色で惹きつけた後はあふれるスキルでその目を他にそらすことを許さないスー・ルイチーさん……皆、脱落してしまった。


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フー・ヤーニンさん、ツァイ・ビーンさん、ウェン・ジャさん、スー・ルイチーさんとデビューした江崎ひかるさん、キム・ダヨンさん、シェン・シャオテインさんで構成されたユニット「メデューサ」が披露した「Snake」がガルプラ楽曲の中では一番好きである。まさしく見るものを硬直させ、愚直なリピートを押すだけのマシーンにさせるそのパフォーマンスは圧巻で、月並みな言い方で言えば「もうこれでデビューしようよ」であった。

というか、ようやくここに至って筆者は腰を据えてガルプラを見始めた。娘の育児にいそがしいのもあり、また、自分が娘を持つ親になってみて、改めてサバイバル番組の残酷さに慄然として薄目で見るような感じになっていたのもあるけれど、今までは2回目の評価あたりで目を開かせるようなパフォーマンスが叩き込まれたように思うが、今回それがなかなか訪れなかったのである。

恐らく、いや今見直すと確実に、今回の練習生諸賢がそれまでと比べて大幅にスキルが劣るということはない。こうなったのは一つは多忙で益々曇った筆者の見識のなさ、もう一つはMネットの「雑さ」であろう。プデュXにおいても気になった練習生という素材に頼り切った粗雑なストーリー、ギミックは新鮮さに欠け、練習生のパフォーマンスそのものをぼやかしてしまった。

そして、最終回が訪れる。

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波乱の中間順位発表を経て、しかし練習生諸賢はあくまでも満点のパフォーマンスを披露してくれた。1曲を2組でパフォーマンスする、というのは祖であるPRODUCE101シーズン1を思い出させ、懐かしい気持ちになった。


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最終投票は、筆者はチェ・ユジンさんに投票した。

25才、デビュー経験者、素晴らしいスキルとリーダーシップ、変幻自在のコンセプト消化力、笑うと目がなくなるようなきゅうっとした笑顔……。

筆者はかつて応援していた「誰か」を思いだし、そして同じ結末を辿って欲しくないと投票を決意したのであった。

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パフォーマンスとしては誰よりも「少女」であった「Shoot!」が好きである。表情管理、しぐさ、勿論歌唱とダンス、全てが完璧であった。

祈りが通じ、無事、彼女はデビューした。

しかしその後、眼前の画面は、Mネットの目論見が瓦解していたことを告げる。

筆者はデビューするためには手持ちのカード全てを使うことは至極当然なことであると考えるから、ランクインの方法について異議のあろうはずもない。

ただ、人の親となった筆者は思うのである。いわばバブル的な投票でデビューを手にし、コロナ禍の出口が見え始め、対面握手会が復活するかもしれないご時世で、人気は否応なしに可視化される。もしその時、あまり好きな言い方ではないが「滑走路」状態になっていたらデビューへ送り込んだ勢力は何を思うのだろう。あの少女は何を思うのだろう。地獄への道は善意(なのかどうか)で舗装されているとはよく言ったものである。

こういうのは最終回の夜にサッと書くのが正しいのだが結局こんな時間になってしまった。

そろそろ娘を風呂に入れる時間なのでこの辺にしておこう。

ガルプラに対して終始思っていたことは「外野がアホやから推し活ができへん」であり、運営に対して一言いえるとしたら「ちゃんとして」である。

短歌で言えば、

そうですかおやすみなさいよかったねあなたのわたしはけさしにました/白糸雅樹

であろうか。

誕生するガールズグループは「ケプラー」というらしい。地学選択者であった筆者としては懐かしい気持ちになるが、しかしケプラーは母の魔女裁判の濡れ衣に対して敢然と立ち向かった人物であり、悪編集によって現代版魔女裁判を引き起した運営が名付けたと思えばなんとも皮肉な気持ちになる。

誰かの夢が叶う頃、誰かの夢が破れていく。けれど夢を見なければ夢は叶わない。

だから、またそれぞれの場所で夢を見て欲しい、そしてその夢をまた我々に見せて欲しいと思うのはエゴかもしれないが、思わずにはいられないのである。

蛇足

放送中から今に至るまで、時々トピック「IZONE」でガルプラを貶めることありきで彼女らの名前が使われていることがあり、悲しい気分になることがあった。

例え周囲でどんな生臭いことが跋扈していようと、練習生諸賢の汗と涙だけは嘘ではないことを誰よりも知っているはずの諸賢がどうか懸命な発言をされるよう、WIZONEの端くれとして願ってやまない。

 

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