特別お題「わたしの推し」
またまた、駆け込みで企画参加である。
推し、という単語には未だに違和感があって、それは以前他の方がより素晴らしく言語化してくれているが、
今回「スター」というエクスキューズを与えてくださったのが筆者としては大変有り難かった。
さて、筆者にとってのスター、あるいは推しと考えると、
アイズワンであったり、
娘であったり、
妻であったりするわけであるが、それぞれ一度は既に記事を書いてしまっていた。
どうするか、と思っていた23時ごろ、娘が泣き出し書き出しがさらに遅れたりもしたわけである。
現在、娘はいわゆる離乳食の期間に入り、十倍がゆ、かぼちゃをベビーフードによって与え、娘はモリモリ食べている。
このわずかな量を米を炊いたり、切り分けたり、裏ごししたり……という過程を思うと気が遠くなり、成し遂げている方々には頭が下がる思いであるが、この文明の恩恵に筆者としてはしっかり預からせていただく予定である。
そういえば、と筆者は思い至る。その「恩恵」、食品について扱った大好きな作品があったではないか、と。
そういうことで、筆者の「スター」、辿り着きたくともはるか先に輝く光芒は、とり・みき先生の著作「冷食捜査官」である。
冷食捜査官、ざっくり一ツイートでいうとこういう話である。
「冷食捜査官」、冷凍食品がご禁制となった近未来でなんとかして冷凍食品を食べようとする人々とそれを取り締まる側との悲喜劇を描くんですがハーフボイルドでたまらないんですよ……。
— 木本 仮名太 (@kimotokanata) 2021年9月14日
近未来と言ってもそう遠くはなく、かつて本物の魚をさばいて握っていた寿司職人は生きている程度の未来。ただし、主人公の冷食捜査官はこうモノローグする。
合成食料をまずいと思ったことはない
生物の死骸の氷漬けを争って食うやつらの気が知れない
このハードボイルドな述懐の後にさらっとロボットの「三代目東京コミックショー」が出てくるのがたまらない。
作者のとり・みき先生や関連アカウントで一部が紹介されているので引用しておこう。
★本日10月18日は「冷凍食品の日」だそうです。謂われはかなりこじつけっぽいですが各自お調べください。そういうわけで拙作『冷食捜査官』と、ご感想などをご紹介します。 pic.twitter.com/IrtOtkoSVT
— TORI MIKI (@videobird) 2021年10月18日
とり・みき『冷食捜査官』より pic.twitter.com/JjDMr3mcMl
— 『プリニウス』公式ツイッター (@plinivs) 2020年8月6日
ハロウィンですのでとりあえず毎年恒例の(『冷食捜査官』より「10月はたそがれの国」) pic.twitter.com/g3DZPUwrPU
— TORI MIKI (@videobird) 2021年10月30日
筆者は一応まだ、創作畑にも片足を突っ込んでいるつもりで自分はいて、そういう時「冷食捜査官」みたいな作品は本当に理想だな、と思う。ハードボイルドとギャグの絶妙なセッション、最後に残る余韻……。
クールな冷食捜査官の心がその話の終わりに少し「解凍」されるような語り口がたまらない。
もともと単発作品として作られたという「冷たい女」は冷凍食品を美味しく食べる謎の女性「コオリ」を撮影したビデオが非合法に流通する……といういわばフード・ポルノというべきものがまかり通っているという世界観が提示されるが、ある意味ASMRってそれに近い側面があるよな……など現代に通じる預言めいた部分はさすがの一言である。なんと30年以上前の作品だというから恐れ入る。
ええっ昨日見たら1円(本当)だったのに!?
— TORI MIKI (@videobird) 2021年10月19日
そういう意図はなかったんですが(だってこちらにはお金入ってこないからね)過去作をアピールするのも考え物だな。確約は出来ませんが電書化できるようにしたいと思います。 https://t.co/YE3PQhmx8i
残念ながら現在流通在庫はなく、中古本もプレミア価格となっている。是非電子書籍化を望みたいが、このままプレミア化が続き、「冷食捜査官」を高額で地下取引する好事家を取り締まる「『冷食捜査官』捜査官」が登場するのも面白いかもしれない。