カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

金田一少年の事件簿Rが無料なので「蟻地獄壕殺人事件」に挑戦してみる

金田一少年の事件簿原作のネタバレがあります。

前回書いた記事が多くの方に読んでいただいたようで、ありがたい話である。

kimotokanata.hatenablog.com

さて本日は前記事にも書いたとおり、「聖恋島殺人事件」が放映されるはずであったが、痛ましい現実のため、延期となった。

代りに、という訳でもなかろうが、4月末まで無料だった「金田一少年の事件簿」と入れ替わりに「聖恋島殺人事件」も含まれる「金田一少年の事件簿R」がコミックdaysアプリで5/7まで無料で全話読めることとなった。感謝。

残念ながらその間の「20周年記念シリーズ」(現在イブニングで30周年シリーズを連載しているというからここからさらに10年経っていると考えると恐ろしい)は無料対象外で、高遠の目的などがちょっとわかりにくいが基本的には事件ごとに独立しており、さして影響はないだろう。(筆者も20周年記念シリーズは薔薇十字館しか読んでいない)

Kindleでは4/30時点で「狐火流し殺人事件」の途中まで(単行本3巻まで)が無料であり、それに続けて読ませてもらう形になった。

狐火流しの次、学生明智の事件は倒叙式であったが、彼がリクエストしたMr.Childrenの「HERO」は2002年のシングルであり、なおかつ彼の父は3億円事件に関りがあり(1968年)、社会人になってからポケベルを活用(最盛期1996年、2007年サービス停止)する彼の人生を思うと、長期連載って大変だな……と正直事件どころではなかった。(内容自体も同じ倒叙物の代表格、古畑任三郎の名編「さよなら、DJ」のアレンジといった感じで佳品ではあるがちょっと物足りない)

そして、次に開幕する事件が「蟻地獄壕殺人事件」である。

砂丘の中に建てられた元軍の収容施設、通称「蟻地獄壕」。流砂や荒海で外界から隔絶された天然の牢獄にスマホのソシャゲの課金資金欲しさ(この間ポケベルを使っていたはずなのに…)に心理実験のモニターとしてやってきた金田一一七瀬美雪、いつき陽介。

他のモニターたちも含め、各人はそれぞれ指定のカラーの服に着替えさせられ、バイタルチェック用のブレスレットを付けられる。バイタルは5分ごとに測定され、エラーがあるとモニターで遠隔確認ができる仕組みだ。

そんな中、バイタルに異常が出たモニターの一人・彩世泉のもとへ金田一一行が向かうと、彼女は指定されたベージュの服を着たまま、広間の一つで物言わぬ骸となり果てていた。続けて華形拓人は祝木桐彦か蜂倉柊太以外殺害が不可能と思われる状況でやはり死体となって発見された。(図参照。黄色部分は内側(彩世の死体がある広間。死体にはベージュの毛布がかぶされている)から施錠されており、①は蜂倉、②は祝木の部屋。真上の棒人間が華形の死体)犯人はこの二人のどちらかなのか?

金田一少年が推理を進めるうちに、ある人物の関与が明らかになる。地獄の傀儡師、高遠である。(なんどめだ高遠)。被害者バイタル停止時の各人のバイタルの数値を見たあと再度事件現場を確認し、一は言う。

「謎はすべて解けた!」

木本少年32歳の推理

と、いうことで今回、金田一少年に挑戦してみようというのが本記事である。

この宣言を一ちゃんがしたということは、作者からすれば「手掛かりは全て提示されました」ということである。ここまでの情報を追っていけば、筆者でも謎が解けるはずだ。

本事件の謎としては

・犯人(蟻地獄)の正体

・華形殺害のトリック

・地獄の傀儡師は誰に化けているか

ということになるだろうか。

ということでここからはさらに核心に踏み込みますので、よければ是非一度皆さんもここまで「蟻地獄壕殺人事件」を読まれて推理をされてから続きを読まれてみてください。

 

 

犯人(蟻地獄)の正体

それはあんただよ――舞谷かえで!

あんたこそがこの事件の犯人…「蟻地獄」だ!

初めにこう書いたとおり、筆者の推理としてはまず「舞谷かえで犯人ありき」である。金田一少年に限らず、たいていの推理小説はトリックが解題され、それが可能な人物ということで犯人が導き出される――という場合が多いと思うが、今回の場合その定石からは少し外れた形になる。

なぜか。第7話で表示されるバイタルの数値。これがそれぞれの被害者の数値と舞谷の数値がぴったり同じなのである。つまり、5分間のインターバルの間に被害者の腕からバイタル測定のリストバンドを外し、自分につけていた、ということが推測できる。こんなことをするのは犯人以外におるまい。

なぜそんなことをするのか。死亡推定時刻はバイタルの異常値検出に拠っているから(今までの事件にはこういった場合わざと「検死役」が犯人によって設定されることがままあったが今回はそうではない――「法医学的に正確な死亡時刻」がわかるとストーリー的に都合が悪いというメタ的な理由が考えられる)ここをコントロールするというのが狙いであろう……これは華形殺害のトリックにも関連してくる。

華形殺害のトリック

気を取り直して華形殺害の方法である。これは金田一少年学を履修している読者諸賢ならピンと来たのではなかろうか。

施錠されていた場所には彩世の死体がある。

いや、「施錠されていた場所には彩世の死体であろう膨らみのある毛布がある」(「」部分傍点)のである。

今にして思えば、毛布を掛けられた遺体を見慣れているはずの金田一少年以下登場人物がやたらチラチラとすることがヒントだったわけである。

即ち、舞谷は華形を殺害、もしくは気絶させてバイタル測定用のリストバンドを奪い、施錠前の広間に華形を運ぶ。(あるいはここでとどめを刺す)そして内側から施錠し密室にした後、自分は毛布をかぶって彩世の死体に成りすましたのである。そして頃合いを見計らってリストバンドを外し、金田一たちが死体を見つけたら混乱のうちに彩世の死体を戻して自室に悠々と戻ればよいのだ。

地獄の傀儡師は誰に化けているか

となると自称、引きこもりの司吉里子は本当はそうやって疑いの目から逃れ、舞谷のサポートをしていたのかもしれない。実際に手を貸さなくとも、舞谷が殺人のたびに部屋を出ることは隣人に気づかれるというリスクが高いので、舞谷の隣が彼女であるということは身内=高遠の変装であるという証左ではないか。

金田一少年の推理(答え合わせ)

犯人

舞谷かえで。決め手はやはりバイタルサイン。

華形殺害時のトリック

やはり死体に化けていた。〇〇〇〇殺人事件で見たトリックとおんなじだ!やっててよかった金田一式。

地獄の傀儡師の正体

違いました。その正体はぜひ…君の目で確かめてみてくれ!

推理を終えて

いつも使う脳みそと違う部分を使っている感じでなかなか楽しかった。推理小説を読む数が極端に減ってずいぶん経つが、また読みたくなった。まずは「R」の続きを読み進めていきたい。

金田一少年の事件簿R(1) (週刊少年マガジンコミックス)