カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

おとうさんは擬似オタク

仮面ライダー龍騎」のネタバレがあります。

たまさか過日、「仮面ライダー龍騎」についてオタク諸賢と話す機会を得た。

折角なのでそれによって呼び起こされたあの時の衝動を忘れる前に書き記しておく。

龍騎」こそは筆者をこのようにならしめた原因の一つと言って過言ではない。

はじめ、書店で龍騎のビジュアルを見た時、正直言って筆者はカッコ悪い……と思った。なんだその網は、と。ナイトがあまりにも格好良かったせいもあろう。

中学生になり部活も始まり生活サイクルも変わっていた中で、ニチアサからは自然に離れていった。このまま卒業するのだろうという予感があったその時、たまたま見た回でライダーがカニに喰われた。

なにやら、未体験のことが起きているぞ、と予感しながらもあっという間に期末テスト、そして夏休みに突入しようとしていた。

筆者はバスケ部だった。体育館の夏休みの使用時間の割り当ての時、冗談のつもりで「朝一は仮面ライダー見れねえからなあ」と言ったら思いのほか部員たちの共感を呼び、そのせいか使用時間が朝一の日は例年と比べ極端に減った。

夏休みが終わり、実力テストも終えたころ、「ゴールデンタイムに仮面ライダー」というとち狂った企画が起こった。ひねくれた中学生だった筆者は「大人には騙されねえゼ」とばかりに投票はしなかったのだが……やはり翌日、部活で話題になった覚えがある。

そして秋の深まりとともに、筆者は彼と出会った。

漂う知的な雰囲気と大人の魅力。

確実に屈指の天才でありながら、それ故に大天才神崎士郎への言いようもないコンプレックスを抱えているサリエリ的一面。

「擬似」という立ち位置でありながらそのフォルムは劇中のどのライダーよりも正統派な昆虫をモチーフとした「仮面ライダー」なデザイン。

後の平成ライダーでも目を引く要素となる「加速」という強み。

他のライダーと違うカードデザイン・読込音。

プロトタイプという設定。

自らを律しながらもしかし情を捨てきることができない脆さ。

ファイナルベントの名前が「デッドエンド」というセンス。

悲劇的な最期。

バトルスピリッツ オルタナティブ・ゼロ コモン 仮面ライダー 相棒との道 BS-CB15 バトスピ ブースターパック 仮面・戦騎 スピリット 紫

仮面ライダーオルタナティブ・ゼロと香川英行に筆者が心奪われるのに時間はかからなかった。

今こうして思い返してみると、自分が父親になってますます、魅力的なキャラクター造形だと思う。父として、夫としての自らの代替物(オルタナティブ)はいない。覚悟ゆえに曇った眼鏡が見えなくしてしまった運命の皮肉が彼の胸を刺し貫いてしまったのだ……。

が、弟のクリスマスプレゼントという名目で買ったPSの仮面ライダー龍騎のゲームにはゼブラやゼールといったモンスターがバリエーション違いで登場するという謎のこだわりを見せつつもオルタナティブ及びオルタナティブ・ゼロは未登場という仕打ちを受け、筆者は悲しみに包まれたのだった……。

という話をしていると、話しているオタク諸賢やまた聞いてくださっているオタク諸賢から貴重な証言を頂き、さらに見識を深めていくこともできた。

一方で、特に一発勝負なリアルタイムトークをする場面ではもろに、筆者自身はというと「おれってやっぱ、オタクじゃねえなあ」と思うことが増えてもいる。

情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉……そして何よりパッと出たワードに反応できる速さが足りない。(老いも如実に感じられる一幕である)よくもまあこれで今まで「〇〇が好きです」「△△オタクです」などと言えたものだ……とこの年にして汗顔の至りである。

恐らく人によっては既にネットを断ち、この記事を読むことも当分先になるのでは……というくらいの「シン・ウルトラマン」への盛り上がりを見るにつけ、ますますそう感じた1週間でもあった。彼らは3年待ったのだ。素晴らしい作品であってくれ、とささやかに願ってもいる。

とはいえもちろん、種々のコンテンツを日々楽しませてもらっている。可処分時間のなさにため息をつく毎日である。

近年長らく覇権コンテンツであった「妻」に加え、大型コンテンツ「娘」も追加され、自称トップオタとしてはその供給に日々必死に食らいついていて、他の「オタク」になりきれない、ということもあるだろう。

この「オタク」だけは擬似でなくまっとうなオタクであり続けたい、と思う。

さあ、今日はお風呂上りどれを着てもらおうか。なんでも似合うから困っちゃうぜ。