余談
あれは多分筆者が小学5年生だったころの話である。筆者自身のクリスマスプレゼントは「ハリー・ポッターと秘密の部屋」。弟にはゾイドの「ライトニングサイクス」。当時は弟は小学校2年生。とてもではないが作れるわけがない。「秘密の部屋」をひと段落した筆者はおもちゃが手元にないのが寂しいのもあって恩着せがましく弟の代わりに作るのを買って出た。
午前いっぱいかかっただろうか。ようやく形にはなった。意気揚々とスイッチを入れる弟。ライトニングサイクスは動かなかった……なにかしらが空回りする音と、弟の「あれ……」という顔が記憶に残っている。昼食を食べて罪滅ぼしのように弟を公園に連れて行ってひとしきり遊びながら、すっかり忘れた弟とは違って筆者はずっと動かなかったライトニングサイクスが頭の片隅にあった。動物型であるから余計に、ゾイドが上手く動かず苦しんでいるように思えてならなかった……。
2人で5時のチャイムに慌てて帰ると父は既に帰宅しており、留守番をしていた末弟がこちらへ何かをけしかけた――シャカシャカと動くそれこそはライトニングサイクスだった。父が母から話を聞いてなにかしら調整をしてくれたのである。自分の不器用さ、父の格好良さ、弟たちの笑顔が強く焼き付いた……。
それから今に至るまでの人生、不器用に打ちのめされることの連続で、それゆえいわゆる「モノづくり」ができる人々には特別の憧れと尊敬の念がある。
ブンドドさんもまたこのネットの荒波の中、ブログを10年以上維持されている豪の方である。筆者もアクションフィギュアは好きだが、収納スペースや懐事情、また最近では対象年齢以下の娘がやんちゃする危険性など鑑みて、なかなか収集には踏み切れないが、氏はコンスタントに購入・組み立て。忖度なしのレビューを書かれていて、その継続性、製作能力の確かさ、また特に特撮では同じモデルの比較(figmaとSHFなど)を番組ファンだからこその視点から記載されていて、購入検討されている諸賢には大いに役立つだろうこと間違いなしである。
フォーゼあたりは1人暮らしをしていた頃自分の手元にもあったので懐かしさを覚える。
これも弟のクリスマスプレゼントで我が家にもあり、やっぱり退色してしまっていたので「筆者にブンドドさんのような技量があれば弟の心を救うことができたのに……」などと思った。
自分がネットの海に深く沈み込みだした頃は龍騎の未アクションフィギュア化ライダーのソフビとアクションフィギュア素体を使ってのアクションフィギュア化やオリジナルサバイブ作成などが花盛りだったなあ……ということも懐かしく思い出すのだった。
ブンドドさんご本人とは今まで「友達の友達」というくらいの距離感であったのだがスペースでも何度かご一緒させていただいたことがあり、その守備範囲の広さには驚かされていたが(映画も多く嗜まれている)、恥ずかしながら今回初めてブログを運営されていることを知り、またその運営歴の大先輩ぶりに慄いたのであった。
今回ご参加いただいたことで更に交流を深めていくことができたら幸いである。
本題
余談が、ながくなった。
ガレージキットというものの存在を知ったのは「こち亀」だった。こち亀が終わって以来、筆者にこういうニッチな知識を授けてくれる媒体がないのでとても困っている。GIジョーの話とか好きだったなァ……。
さておきそこから受けた印象はまさに「職人」、筆者のような人間はとてもではないが踏み出せない「覚悟」が必要な世界、という印象であった。
しかしそんな職人の皆さんも自作を作ってのレポがとても嬉しい、というブンドドさんからの情報を見ると、自分もそうであるが何かを発信している人に特にポジティブなリアクションを送ることってとても大切なんだなと思う。筆者など写真で見ただけであるが、このようなWeb上のデジタルなデータではなく実世界にモノとして産み落としたものを多くの場合手渡しで頒布するのだから、なおさらそうだろうなと感じた。
離型剤を落としたり、ヤスリがけや気泡埋め作業
と何気なくサラッと書かれているが、ここに「覚悟」があることは筆者でも何となく感じるところである。
さてそうして職人たちと交流を持つに至ったブンドドさんが「自分のような素人(そうだろうか?)が意見を言っていいものだろうか」から「自分も作る側にまわってみよう」という発想になるのはまさに特撮主人公めいた価値観のシフトで、なかなか筆者にはたどり着けない境地で憧れてしまう。
続いて立体の作成に関しても躊躇するのだが、「自分の欲しいエフェクトパーツを作ればいいじゃないか」という打開策もまたコペルニクス的転回で唸ってしまう。
その後自らの住環境も考慮しながらついにエフェクトが完成し、筆者などこれだけで大満足だと思うのだが更にブラッシュアップを重ねていく様、既にブンドドさんを素人だなんて思っている人は誰もいないことだろう。
もとからブンドドさんはエフェクトを用いた撮影はさすがのワザマエであって、遡ること12年ほど前、ディーラーデビューなどおそらく全く考えていらっしゃらないだろう時に上梓された記事では悲劇的な目に遭ったジンベエへの供養? としてジンベエ付属の水流エフェクトパーツがウェザードーパントの演出に効果的に使われている。
これが今年のワンフェス参加では自ら作成された水流エフェクトを出展されており、またその流麗さは個人作成とは思えないリアルさと迫力に満ちていて、この二つを今比較できることにブログを継続して続けていただくことの意義を大いに感じるし、ブンドドさんが趣味人から職人――いや「焼き討ち職人(ディーラー名インパクトがありすぎる)」へと着実に歩みを進めていることを再確認して、勝手ながら感動するのであった。
ワンフェスについては筆者も一度は訪れてみたいと思っているのだが機会に恵まれない。来年二月のワンフェスにも出展されるということなので、読者諸賢でご予定の合う方は是非筆者の代わりに楽しんできていただきたいところである。