カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

豚骨王国の変容ー第五回鹿児島ラーメン王決定戦に臨む

今年も中日の半端な時間にラーメン王決定戦に参戦することが出来た。

 

混み具合はこんな感じで、多少並ぶもののうまさをより増幅させてくれる程度の並び方で済んだ。席も程よく空いていた。やはりラーメン王決定戦を満喫するのなら、中日の夕方に限るという確信が深まった。

我々の口元を拭ったりテーブルを拭いたりなど今年も八面六臂の活躍を見せてくれていたのはもちろん鹿児島県民の八割が所持しているといわれるふるさとのデパート山形屋ティッシュであった。

なお、妻はあるラーメン屋さんの虜となり、本日昼前にもう一度単騎駆けしたが、非常な混雑となっており泣く泣く諦めたそうである。

因みにその時の様子がこちら。ここに単身挑むには妻はまだ功夫が足らなかった。筆者も躊躇するであろう。

↓ちなみに昨年はこんな感じでした。

kimotokanata.hatenablog.com

 では、今回も堪能させてもらった三杯のラーメンについてど素人が徒然に感想を書いていきたい。

そばる「特製鴨ねぎ醤油そば九条ねぎと焼きねぎのマリネ~」

以前からファンだった蕎麦屋さん。父にお薦めしたところ、「おい、ラーメン屋さんだったぞ、美味しかったけど」と言われたのが懐かしい。(当時はまだ不定期だったように思う。現在は曜日によって蕎麦屋さんとラーメン屋さんの日は完全に区別されている)まさかラーメン王決定戦に参戦するほどになっているとは…と事前特番を見て驚かされた。

蕎麦屋さんとしては毎日違う日替わりメニューを出すなど革新的なことをしてきたそばるさんがラーメン王決定戦では果たしてどんなラーメンを食べさせてくれるのか?(例年、出場者決定特番とどんなラーメンを提供するかの特番が組まれるのだが後者を見逃してしまい、その後はあえて情報を遮断するようにしたのである)

ワクワクは尽きず、まずはそばるさんと心に決めた。


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一口啜ってなるほど、これはラーメンではなくまごうことなき「醤油そば」であると納得させられた。焼き鳥メインの居酒屋も経営され、筆者も大好きな鴨南蛮そばを擁するそばるさんだからこそ出来るしっかりとコクと深みのあるスープ。二つのねぎの甘さと香ばしさ、食感の楽しさはどうだ。スモークされた合鴨の香りと頼もしい味付け、それらに彩られながらもしっかりと主役を主張する麺。緻密な計算が美しく器の中に調和している。後のことなど考えさせず、この一杯に真摯に向き合わなければいけないと思わせる完成度の高い麺だった。汁までしっかり飲み干してしまった。

麺酒場木村本店「本場四川汁無担々麺」

続いて妻がセレクトしたのは麺酒場木村本店さん。放送当時からイケメンと名高い店長さんであったため、つ、妻……まさかイケメンにつられて……捨てないで……と不整脈が出かかったが妻は筆者が担々麺をこよなく愛する人間であることをちゃんと覚えてくれており、その為のセレクトだったのである。(いい話)ちなみに店長さんは一生懸命ラーメンを作っており、ご尊顔を拝見できなかったようであった。対応してくれた奥様もたいそう美しかったようである。なお、店長さんの名字は上釜さんと言い、屋号の木村本店はご自分の名前は全く関係なく、木村拓哉さんのファンだからである。

妻曰く、奥様直々にひたすら混ぜるようにと言い含められたようで、気合を入れて混ぜていた。途中、筆者も加勢する。そしてようやく口にする妻。「おいし…いやうまい!」言い直す必要はあるのか。とはいえ筆者が広島から離れている間にご当地グルメとして存在感を高めているという(帰省時食べ損ねた、くやしい)汁無担々麺を広島にて堪能して舌が肥えている妻が即座にポジティブな意見をたたき出すのだから期待が高まる。口にした瞬間、頭の先まで山椒の「麻(しびれ)」の刺激と香りが突き抜ける。そして加速度的にトウガラシ、ラー油と混然一体となった「うまさ」―これ以外になるほど形容しようがない―が増大していく。舌の刺激がリズム良く、更なる一口を要求してくる。汁がないことも手伝って、あっという間に食べ終わってしまった。

Noodle Laboratory 金斗雲「黄金雲!!~照り焼きトーフステーキ&ジューシーチキン~バターフレーバーオイル添え~」

金斗雲さんもラーメン王決定戦の常連で、いつも気になっていたがこれまで食べる機会はなかった。特集の時に見る店舗のおしゃれさ、店長さんの喋り方はいわゆる「意識の高いラーメン」を筆者に想起させ、日々をちゃらんぽらん過ごす筆者にとっては勝手な苦手意識を抱いていたのかもしれない。二つのラーメンを食べ終え、さてあと一杯くらい、と考えていたとき、筆者は正直なところ「絶対に食べたい!」というラーメンはなかった。食べたかった二杯は既に食べていたし、心優しい妻は筆者が汁無担々麺にハマっているのを悟り、半分以上を筆者に食べさせてくれたので、満腹感もそれなりにあったのである。この状態で他のラーメンに臨むのは不誠実なのでは? と思ったりもした。しかし祭りに参加している高揚から、また前売り券はもう一枚買ってもいるということもあり、もう一杯食べてみたいという気持ちも同時に存在していた。

妻の鶴の一声で、金斗雲さんになった。前回の記事にも書いたが、妻はあまり豚骨ラーメンが得意ではないので、味噌ラーメンである金斗雲さんはありがたい存在であったことであろう。また、トーフステーキは「トーフだからヘルシー」と妻の二杯目への罪悪感を薄くしてくれているようであった。優しい欺瞞。

流石人気店、この時間帯であってもそこそこ列の待ち時間があったが、ふとチケットを渡す相手を見て驚いた。店長さんその人であった。柔らかな物腰で、来店のお礼とトッピングの有無を尋ねられた(全て入れていただいた)。やはり規模が大きく、運営を任せられるスタッフの体制が整っているからこそだとは思うが、暖かい部屋で指揮を執っていても構わないであろうに、先頭に立って接客をされるその姿勢に勝手な偏見、苦手意識でもって足を遠のかせていた自分を深く恥じ入る思いであった。筆者の耳の赤かったのは二月の北風のせいばかりではない。

万感を持って受け取ったラーメンと、謎の容器を持って筆者は妻の待つブースへと向かうのだった。

具の贅沢さがまず目を楽しませてくれる。どこから手をつけようかという幸福な迷いの後、意を決して箸を差し入れると具で封じられていた豊かにブレンドされた味噌の香りがぶわっと広がる。野菜、カラッと揚げられたチキン、トーフステーキの三者三様の食感と味が楽しく、その斬新さと定番「黄雲」をベースとした味噌ラーメンが理想的な同居を果たしている。全体的にはあくまでも優しい味わいである。

妻は「正直チキン目当てだったのにごめんなさいという感じだ!」と自分が頼んだものが予想以上に美味しいというポジティブな困惑を抱えつつ、丼もがっつりとホールドしていた。半ばまで食べたころ、筆者は店主より託された謎の容器を解き放つことにした。それこそがバターオイルである。そう、黄金雲はまだ一段階変身を残していたのだ! 丼へかけ入れられたバターオイルは周囲に破壊的なまでの香りをふりまく。これで食欲が刺激されないわけがない。これ以上はないと思われたスープはよりまろやかにかつコク豊かに変貌し、まさしく我々は店主の掌の上で踊る孫悟空に過ぎなかったことを痛感させられた。妻の傾倒ぶりはすさまじく、ほとんど一人で一杯食べてしまうほどであった。一杯食べる妻が好き。帰宅から今に至るまで、「金斗雲さんおいしすぎじゃなかった?」「明日も食べようかな……いや食べよう!」「混み過ぎて食べられなかった…(その後美容院の予約があったため長居は出来ない)…こんなに好きなのに…」「もしかしてと思ってほかの店舗に行ってみたけどやっぱり閉まってた……」「きんとうん~~すちだ」などと完全にムーブがガチ恋勢のそれであり、筆者の観測上から考えれば妻をそこまで至らせたのは道重さゆみさん以来であるのでかなりビビっている。捨てないで…。(不整脈)そのうち店舗にもお邪魔したいと思う。

 

 ↑妻が悲し気に送ってきた閉まっている店舗の写真

食べ終えて

今回も三杯ともとても美味しく、投票においては三店舗に一票ずつ投票させていただいた。記事を書いている間に、結果が出ていた。TAKETORAさん二冠おめでとうございます。そばるさんの技能賞がわがことのように嬉しい。木村本店さん、金斗雲さん、が選外だったということに驚きが隠せない。それほどのレベルの高さがある大会だということであろう。

今回おおっと思ったのは、十八店舗のうち実に十店舗と、過半数以上が「豚骨ラーメン以外」を選択していたことである。保守的な気風である鹿児島でも、ラーメンには変革の嵐が吹き荒れているようで面白い。とはいえやはり上位陣は豚骨ラーメン勢が多くを占める。お互いが切磋琢磨され、より鹿児島ラーメンが盛り上がればいいな、と思う。

それと、昨年に続いてになるのだが、やっぱりラーメンは一杯五百円くらいにして、もう少し量を抑えてほしい……こんなにたくさんおいしいラーメンがあるのに胃袋が限界なんてこんな残酷な話はないのである。

第六回の中日の夕方ごろに、またお会いしましょう。