カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

知らない街はきっと彼女の見飽きた夢、あるいはHARU COMIC CITY 24 東京(春コミ)に妻が参戦した話など

余談

さすがに2月の話を4月にするのもどうかと思うのでいい加減記事にしておきたい。これから記述する話と明日更新予定の記事は妻と筆者それぞれがなんとひと月以上が経過してしまった2/24の前後にどのように振る舞ったかと言う物語である。

その日、我々はそれぞれ別々の場所で非日常に接することとなった。インドア派の2人にとって稀有なことであったので書き留めておく。同時間帯のことが重複して語られることがあるかもしれないが、それぞれの章が奇数章や偶数章のみで展開される訳ではない。

 

まずは妻の話、大都会へのゆきて帰りし物語である。

 

本題

出発まで

妻が刀剣乱舞を敬愛する審神者であることは、既に述べた。愛があふれると文章化してしまう性質を持っている妻はそれをしばしばコミュニティにシェアする日々を送っていたが、刀剣乱舞においてはその思いが一層極まり、ついに広大なるインターネットに放り込むボトルメールから物質化して黒猫に託すスタイルに昇華したようであった。刀剣乱舞はいわゆる二次創作活動においてガイドラインがしっかり制定されており、それを参照しつつ安心して同人活動が行えるのも有り難いことであった。週末の我々のルーティンの一つに「集荷センターに行く」が追加されて久しい。

京都行の際も単独行動の時間で他審神者さんと実世界での交流を持ち、大変刺激を受けたようでその後益々創作に励んでいたが、昨年末、妻から相談を受けた。

「春コミに出たいのだが、どうだろうか」

といったものであった。筆者は所謂即売会には参加経験がないことは以前も述べたし、不勉強にも「春コミ」をその時点で存じていなかった。調べてみると、なかなか巨大規模であるらしかった。旧知の方も同じイベントに参加するため、一人で参加するよりは安心して参加できると思う、とのことであった。

妻の同人活動は細々としたものであり、頒布価格も一般的なものであるため印刷代と送料を引くとお金はほとんど残らない。東京に遠征したら確実に赤字になるであろう。しかし直接自分の作品を好きな人と会えるチャンスが目の前にぶら下がっていたら、それを無碍にできる創作者はそうおるまい。筆者であってもそうであろう。元々の発行部数自体が少ないということもあるだろうが、妻の同人誌が同人ショップにおいて本来価格より大幅に高騰して取引がなされているのも見せてもらった。需要はあるようである。

創作の大半はひとり家でPCに向かう地味な作業である。その作業の中で実際に対面した読者諸賢を想うことは励みになるに違いない……と考え、送り出すことにした。即売会のレポートでは時折会場の熱気に浮かされたタイプの人とエンカウントすることがあるようで、そこに一抹の不安があったが妻の読者諸賢が紳士淑女であることを信頼することとした。

となれば、東京に行き、そして帰る準備をせねばならない。幸い早めに相談をしてくれたので、飛行機も安くチケットが取れた。問題は宿で、筆者も東京は何度か行ったことがあるが地理関係が全く分からず、いちいちグーグルマップとにらめっこしながら空港、会場、路線との兼ね合いで逡巡を重ねた。

結局のところ、女性専用であること、滞在時間に割と融通が利くこと、リーズナブルな価格であることから都内のカプセルホテルを予約した。

春コミに合わせて新刊を出すことにし、「会場搬入」というテクニックを使っていた。これは所謂ウスイホンであっても3本の矢メソッドでもってダンボールで届くとなかなかな重量となり妻の腰を寒からしめ移動において各所へ迷惑をかけてしまう所を、会場に直接お届けいただくことでそれらの苦悩を取り除いてくれるシステムである。差し入れ用のお菓子や設営用のグッズも一緒に入れておけばますますご安心だ。これと撤退時に会場から搬出することの2段構えでなるべく荷物を減らす心づもりであった。

なにしろ初出展。お品書き、名札、お釣りなど全てが手探りであり、細々したものを買いに100円ショップには大変お世話になった。設営においてはあの布屋さんに足を向けては寝られないと妻は言う。

筆者としては気がかりなのは会計で、お金を扱うのは慣れていても緊張するもの。基本的に(筆者も人のことを言えないが)文系科目にスキルを全振りしている妻にとって、横にお知り合いの方がいるとはいえ初対面の人相手では緊張してしまい、電卓の打ち間違いなどが発生しないとも限らない。また、別件ではあるが東京は複雑である。地図を参照することが多くなるであろう。

ということで筆者のタブレットを渡すことにし、Padposを導入することにした。Android限定であり、現在は開発が停止してしまっているのが残念だが、基本無料であり、妻の同人活動においてはこの無料の範囲内で全く問題がない。画像(妻の場合はそれぞれの同人誌の表紙画像にした)を選択することで自動的に金額が入力され、複数冊購入、全種購入への対応も簡単であり、ジャーナル機能や金種機能も備えているのが有り難い点である。タブレットがあれば大画面で地図を参照できるのもよい。

また、都会と言えば初心者殺しの交通機関。GooglepayがSuicaにも対応したということで、こちらも導入した。交通系ICカードの統一で鹿児島や広島にも使えるのでもっと早く導入すればよかったと思う。

妻も無事新刊を入稿し、準備は整った。

1日目・鯉登少尉の女再び

出発当日。いつもの如く、休日の我々は平日の3倍のスピードで目覚めた。LCCの朝は早いので丁度いい。空港への道のりも特段の問題はなく、搭乗手続きもスムーズであり、予定通り妻は機上の人となった。機体が安定すると、得意げに機内Wi-FiでLINEを送ってきたりした。

無事東京に到着した妻が最初に送ってきたのはピーポくんの写真であった。(妻はアンジャッシュファンである)

今回の妻の東京行きには春コミ(特に妻の参加するイベントは「閃華」というようであった)の他にもいくつか目的があり、そのうちの一つは「ゴールデンカムイとコラボした香水に接する」ことであった。銀座にてそのコラボ香水を実際に目にし、手にできるショップがあるというのである。史上稀に見る目的で銀ブラデビューを果たす妻の無事を祈っていると、「実は既にかいで来た」というLINEとともに画像が送られてきた。即ち今まで茫然自失するくらいには堪能してきたらしい。

銀座の一等地に突如出現した極北の地。この演出力には驚かされる。パッケージも格好良く、デキる男といった感じがする。「既にかいで来た」とは妻の弁であるが、実は既に予約も済ませていた。これが鯉登少尉の女の真骨頂……。

意識を取り戻した妻は身軽になるため宿泊先へ。「宇宙船の様でテンションが上がった」とは妻の弁。コンパクトにまとまっていながらコンセントも2穴あるのがうれしいとも。

 

荷物を置くと再び目的のひとつである國學院博物館にて行われていた特別展「神に捧げた刀―神と刀の二千年―」へ。直前まで勘違いしていたが國學院博物館は國學院大學と独立して渋谷にあり、都会の真ん中でこういった展示があるあたり、やはり文化力とでもいうべきものの違いを見せつけれらるようで田舎オタクとしては羨望である。

審神者である妻のお目当てはやはり「薄緑丸」と「ソハヤノツルギウツスナリ(写し)」であったろうか。シャーマンキング世代の筆者としては「フツノミタマ(写し)」も気になるところ。

「薄緑丸」は箱根神社所蔵の刀であり、別名を「膝丸」としても知られるかの源義経が奉納したとされる刀である。となれば「刀剣乱舞」の膝丸!と筆者などはすぐに思ってしまうのだが自体はもう少し複雑であって、「膝丸」伝説を継ぐ刀は複数本存在し、刀剣乱舞においては公式コラボも果たした「大覚寺の膝丸」がその比重としては強いようである。しかし、派生作品で箱根神社の「薄緑丸」に言及したという話も聞き、(筆者は未確認)刀剣乱舞という作品の性質を考えるに、古より様々な人々の思いが仮託された刀はそれぞれに揺るぎ無き刀であり、総括するに「源氏ばんざい」であるのであろう。キリストだって沢山墓があり、仏舎利を集めたら何人分になるかわからないという話も聞く。大切なのは鑑賞することによってまた1つ、その刀に思いが乗っていくというその事実である。

妻曰く、お兄ちゃん(前回の京都行でこちらも諸説ある「髭切」を北野天満宮にて鑑賞している)よりスマートで凛とした感があり、他方お兄ちゃんに感じた「妖刀」感はあまりなかった、とのことであった。ちなみに妻は源氏兄弟本を上梓している。

その後無事明日共闘する審神者さんと合流し、良い雰囲気の食事をして決戦前夜は更けていったようであった。

決戦当日

戦が始まる……。

妻は8時には戦場入りし、なんやかんやでぎりぎりまで設営をしていたようである。「Get Wild」がかかり、スタートなのに既に何事かが終わった雰囲気も漂う中、順調な出足で、完売こそしなかったものの想定外の売上、沢山の交流及び純粋なファンとしての頒布物の購入などを実現しつつ、初出展でありながら会計まわりもバッチリだったということで本当に良かったと思う。アフターにも参加できたようだ。その移動時、連絡が取れなくなり肝を冷やしモバイルバッテリーを次回はもう一つ余計に持って行ってもらうと良いかもしれない。

楽園へ

その翌日、妻は埼玉にいた。実家にてシルバニア愛を呼び覚ましていた妻にうかつに埼玉の「森のキッチン」の存在を教えてしまったがため、決戦翌日であるというのに妻はまたも早く起床、県をまたいで聖地巡礼へと向かったのである。

開店とともに森のキッチンへ滑り込む妻。愛…愛である。

シルバニアファミリーにはピザを欲張って取ったことを戒められるエピソードがある、ということを教えてくれながら妻が送ってきたピザ。味も良かったらしい。

ジオラマも豊富に展示されていたようである。よく聞く「赤い屋根のおうち」なども年代ごとにマイナーチェンジしているのであるが、それを淡々と言い当てる妻がちょっとこわい。「これがUKモデルだから……」とかさらっと言ってくる。

お待ちかねのショータイム、ショコラウサギちゃんの神ファンサである。この後ツーショットも撮ってもらっていた。店内は平日でありながら満席であったという。実は妻は幼少のみぎり、シルバニア愛が高じるあまりコンテストに応募し、入賞した経験があるのだが遠方であるためウサギちゃんから直接賞状が手渡される授賞式に参加できなかったという経験を持つ。今回ついに、妻は過去を取り戻すことが出来たのである。

ショータイムが終わってからのちの妻が暫く何も言わず、ただただ写真を送り続けたも仕方のないことだと言えよう。

その後、都会の文化資本サブカルショップめぐりと言う形で満喫し、再び無事機上の人となり、帰宅する妻であった。

初めての即売会出展参加が良いもので終わってとてもよかったと思う。シルバニアファミリー展が開催されることもあり、早速GWは大阪に参戦するらしいので、良いことの連鎖が続けばよいなと思う。筆者の分も満喫してほしい。あと石切丸も鑑賞してきてほしい。