カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

月に手を伸ばせ、たとえ手が届かなくても――刀剣乱舞「対大侵寇防人作戦」ネタバレ感想・妄想・考察

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刀剣乱舞イベント「対大侵寇防人作戦」のネタバレがあります

余談

いつの間にか、審神者に着任し2545日が過ぎていた。とはいえ相変わらず生真面目な審神者とは言い難く、レベルも60程度である。時折たまった資材で限定鍛刀の運試しをしてみたり、おみくじを引いたり、豆を投げたり、花火を取り戻したり、花札をしたり、そのくせ周年挨拶は目ざとく回収したりして暮らしてきた。景趣は、自身が夏生まれということもありずっと向日葵である。常夏の本丸。

「笹貫が実装されたら本気出す」を口癖に、そういった態度でも懐深く許容してくれる刀剣乱舞に感謝しながら、TLの審神者諸賢の本丸の日々を受動喫煙することで、自分も熱心な審神者であるような錯覚を覚えたりしてしまってもいた。

もちろん、前提として子育てとコロナ禍での慢性的な業務多忙があったりもしたのだが……。

ある日、いよいよ追い込みの業務から帰宅し、娘を抱きかかえつつTLを眺めれば、精鋭の審神者諸賢が騒がしい。

「対大侵寇防人作戦」の始まりであった。

「強化プログラム」も連休にちょっと触ってみてそれっきりだった筆者も、そのただ事のなさを感じ、「新しいスマホにはなるべくソシャゲは入れないようにしよう」と思っていた誓いを早々に破り、刀剣乱舞をダウンロードした。3月30日のことである。

本題

要するに、レイドバトルでしょ、とふらっと入った筆者は笑ってしまった。すべて100%、オールグリーン。世に言うゴリラ審神者諸賢が世に放たれた結果の荒野……というか整地された道を筆者は悠々とわが部隊を率いて通って行った。ゴリラパワー……キンジラレタチカラ!

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開けて翌日は再び戦況が替わっており、筆者の本丸では全力投球して前線防衛ラインの一番格下といい勝負、という感じであった。確定報酬「七星剣」を迎えるには6000の敵の撃破が必要であり、大体一回当たり18を撃破することができると考えると、出撃回数は333回、日にちで割ると一日当たり30回の出撃、割と現実的だけど小判が全然足りないな……と思ったりもしていた。いつの間にか戦闘速度2倍が実装されており、周回自体は実にストレスフリーだ。連撃がボコスカウォーズみたいになってちょっとかわいい。

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なので、公式からこのようなツイートがあった時も、公式は自らが生み出したゴリラたちの獰猛性を甘く見ており、想定より早く進行することにするのだろうか? イベントの終わりにはまだ一週間以上あるのに……等と思ったりしていた。

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「それこそ、星の数ほどあるからな。ははは」

かつてそう言っていた三日月宗近の懸念もなんのその、というか早く帰ってこいや、と思っていた。

安心した筆者は、手形が尽きていたこともあり、娘を寝かしつけ、視聴途中であった「ウルトラマンジード」を鑑賞することにした。

17話を鑑賞し、気持ちと目頭を熱くしているとまたもやTLがかまびすしい……。

胸騒ぎを覚えつつログインすると、撃退したはずの遡行軍は別時代へ退去して遡行。その時代には「システム上の本丸」があるという。即ち、その対策をしなければ、本丸は落ちる。f:id:kimotokanata:20220403184130j:plain

とはいえ時の政府にとっては「星の数ほどある」本丸。正規の時代を守るためにはその時代のルートを遮断、放棄すればよい。

あの聚楽第のように。

あの文久土佐藩のように。

あの天保江戸のように。

あの慶長熊本のように。

あの慶応甲府のように。

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けれど、わが初期刀は、単騎の出陣を要請した。

ああ、筆者は知っている。この風景を、7年前に見たその景色を。

いずれも麗々しき5振の初期刀、そのうちから誰あろうこの陸奥守吉行を自ら選び、ただのひと振りで初陣に送り出したことを覚えている。

kimotokanata.hatenablog.com

はや4年前になろうとしているあの日、「復習」だと思っていたものが「予習」でもあったことを思い知らされもした。

ん? 4年前の今頃……。

極初期刀の発表、4月3日じゃねえかよ……。

ともあれ。

気が付けば、小学校6年間よりも長い時間を過ごしてきた初期刀である。

kimotokanata.hatenablog.com

この記事よりさらに、1,000日以上を重ねてきた。

だからわかる、というか知っているのである。こういう時、陸奥守吉行の許可は許可ではない。もう決めている。けれど義理堅いから、わざわざ聞いてくれるのだ。

だから筆者は粛々と送り出すだけである。

ちゃんと帰ってくることも、信じているのではなく、知っているから。f:id:kimotokanata:20220403190714p:plain

京都・椿寺。かつて嫋やかなる審神者諸賢が三日月宗近を求め、されども現れず次第にゴリラへとその姿を変じていったという逸話が残る、人によっては夢にまで見たかもしれないマップは円環へと姿を変える。

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誰あろう、知勇兼備、報連相欠格の天下五剣筆頭、三日月宗近の声が道をたどるたびこだまする。円環。ループ。三日月宗近の途切れ途切れの言葉が予感させるのは、そういったものだ。

三日月宗近は、ここにいる。

そして筆者審神者は本丸からここへ陸奥守吉行を向かわせたが、こんのすけは本丸はシステム上は「ここ」にあるという。

即ち、三日月宗近はプログラム進行中ずっといなかったのではない。

大きすぎて見えなかった――本丸のシステム、プログラムそのものだった、ということなのだろう。

どういう理屈でそうなったのかはわからないし、そもそも見当違いの考察かもしれないが。

もしかしたら、刀剣男士というシステム自体が、三日月宗近という始まりの刀剣男士を時の政府が模倣して創った似姿なのかもしれない。

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その三日月宗近がわざわざ過去の時代まで「本丸システム」を騙り、時間遡行軍を引き付けた。そしてそれを、幾度も繰り返しているようなことが示唆された。

筆者は「それはログインしなかった本丸」なのではないか、と思ったりもした。七年というときは余りに長い。そして昨今、可処分時間の奪い合いは熾烈さを増している。この危機のSOSを見逃してしまった本丸が「放棄」されていったのではないか……そういったメタ的なものも含めた事情を思った。そういう意味では、三日月宗近はまた、フォーマット機能というべきものを備えているのかもしれない。放棄された世界、本丸は三日月宗近によって「再フォーマット」され、次の本丸が到来する、または同じ本丸が繰り返されるが、それは本来のリセットではなく、三日月宗近自身には澱のように数多の記憶が残っていく……というような。

それを本家ソシャゲであってもしっかり小林康子主人公として背負い込み、あるいは刀剣破壊も視野に入れて死地に臨む三日月宗近を、わが初期刀、陸奥守吉行は見つける。ルートはつながっていない。叢雲にある月にはやはり手が届かないのか……。f:id:kimotokanata:20220403190645p:plain

その諦めを、陸奥守吉行はもうしない。かつて日本の夜明けを嘱望し、その夢に手をかけながら見ることのかなわなかった男を主に持つ彼は、その一瞬の逡巡がすべてを奪ってしまうことを知っている。

だから手を伸ばす。f:id:kimotokanata:20220403190703p:plain

夢を見なければ夢はかなわない。手を伸ばさなければ、手は届かないのだから。

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陸奥守吉行の思いの奔流が太刀筋となって迸り、迷いと意固地と諦念の叢雲を三日月から剥ぎ取り、本丸へと二振りとも帰還してくれた。

だがそれは、「馬鹿め、そっちは本体だ!」とでもいうべき状態。囮であった三日月宗近が本丸に戻ることにより、当然正真正銘の「本丸襲撃」が巻き起こる。

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けれどもちろん、筆者には何の懸念もない。信頼する第一部隊がその剛腕をうならさんとうずうずしているのだから。

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みんな、あの頃から立派になったなあ……。

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待ち受けていたもの。「骨董品」たるそれが振るうのは、おそらく七星剣。しかしそれが、報酬として設定されている七星剣なのかどうか……。

京都・椿寺はもともと聖武天皇によって建立されたものであり、その縁の品は正倉院に多く収蔵された。これらの集合体が「混」であり、彼の振るう七星剣はその収蔵品の一つ、「呉竹鞘御杖刀」であったりしたら面白いな……と思う。

ちなみに椿寺を現在の場所へ移築させたのは豊臣秀吉であり、以前も書いたが三日月宗近がその伝来として確実なものとされるのは豊臣秀吉の妻・高台院(ねね)の遺品として徳川秀忠に伝来することから始まるから、このあたりも因果を感じて愉快である。

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三日月宗近の「お前マジでほんとそういうとこだぞ」という古刀ジョークがあり、

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余りの演出の妙にクソ下手SSしか撮れなかったクライマックスを経て、本丸は無事防衛された。

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え……最終回……?

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なーんだ…第一節かあ……一節……。(娘へDMMアカウントのパスワードを贈る用意をしながら)

実際問題、コロナ禍がなければ五周年でキリもいいし主題歌が切り替わるタイミングで今回のイベントを行う予定だったのかもしれない。

月に手を伸ばせ、たとえ手が届かなくても、月の方がその手を掴むこともある。

初めは届かなくても、歳月が手を届かせることもある。

うまいこと引っ掻けて引きずり出せることだってある。

久しぶりに感情移入できた楽しいイベントだった。最後の部隊編成時は「三日月宗近極」が参戦フラグかと思ったのだが……このタイミングで実装がなければいつあるのだろう。

まあ、イベントは4/12まであるので、まだ何か動きがある、ということも期待しておきたい。

とりあえず当本丸の三日月宗近は、暫く畑当番固定である。