カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

「ブエノスアイレス」は「フィンランド」より「シンガポール」より遠いーIZONE日本カムバック曲「Buenos Aires」初見感想

余談

休日の朝は何故か早く起きる。子どもの頃からいつもそうだ。妻は大体まだ夢の中にいるので、その間に洗い物をしたり、ごく簡単な朝食を作ったり、シルバニアに関する工作をしたりする。起きたときの妻の「わあ!」が聴きたいのである。

昨日も五時に起き、それゆえ十一時くらいにはもう眠かったのだが、辛抱して起きていた。「シブヤノオト」でIZONEの日本カムバック曲がTV初披露されるからである。見ないわけにはいくまい。

本題

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そして見た。最終的に多重債務ボーイズ諸賢がすべてを持っていった感があり、この才能を未成年の女の子が多い今回にぶつけるセンスに深夜のNHKの尖りっぷりを感じるが、全体としてあっという間の30分であった。まさか夫婦で宮野守さんの歌に合わせて筋トレをする日が来るとは。ゲストを繋ぐキーがチャンカワイさんというのも笑ってしまったし、リトグリがこの時間に見られるようになったんだなあと思ったりもした。

ウォニョンさんの「ほれてまうやろー」の意外な低音は往年のたかみなさんを彷彿とさせたし、イェナさんの「松本人志さんにいただきます」エピソードは微笑ましく、渡辺直美さんの「女の子同士だと仲が……」といういじりに対して一番端でありながら誰よりも早く首を振って否定したヘウォンさんが嬉しかった。ユリさんの歌声も聴くことが出来た。日本においてもそつなく会話を回すユジンさんの頼もしさ。宮脇咲良さんがメールで送ってくれたユッケデリバリーに対して言及することに喜ぶ妻。ただやっぱり、30分番組で全員に華を持たせるのは難しいよな……といったところ。特にダンスメンの不遇が目立った。本番のパフォーマンスではもちろん素晴らしいものを見せてくれたのであるが。

特に今回フィーチャーされているキム・ミンジュさんがトークに絡まなかったのはちょっと残念だった。ミンジュさんは泳がせば泳がすほどディープな笑いにつながるトークを隠し持っていて、それが筆者は好きなのだが、生放送の尺では厳しかったのかもしれない。(YouTubeの近況映像でもよく途中がカットされている)


IZ*ONE (아이즈원) - Buenos Aires MV Teaser 1


IZ*ONE (아이즈원) - Buenos Aires MV Teaser 2

さて本命のパフォーマンス。もちろんティザームービーは何度も再生していた(こういう韓国のカムバック文化を取り入れるのはとても良いことだと思う)相変わらずダンスは素晴らしいものがあった。というか皆足が長すぎるし稼働域はどうなっているんだと毎度ながら驚かされる。あのコンセプト評価の名曲、「Rumor」を思わせる振り付け、KPOPにしばしば見られる腰振りを下品でなく落とし込むなど随所にニヤリとさせれらるし、曲も良い。イントロの異国を感じさせる流れからサビに向かってだんだんと石造りの建物が立ち上がってくるかのような、しかし南米の情熱も包括しているような音作りがとても好きだ。

ただ、それを受け止める歌詞が今公開された範囲だと、う、ううむ、と筆者は思ってしまうのである。先だって「太陽は何度でも」公演で新旧様々な秋元康の本気を見せられたからかもしれないが、しかしもうちょっとなんとかならなかったのかと思う。逃避行の歌詞ならNGTにでも投げてやれよとも思う。

いきなり見知らぬ単語から曲がはじまる。ブエノスアイレススペイン語である(良い風=順風の意味であるらしい)(いいですよね……レスレクシオン・セグンダエスパーダ……)のでスペイン語で引くが、出てこない。どうもフランス語であるらしい。英語での「Do you want?」となるようだ。実際のブエノスアイレススペイン語を主とした多言語都市で、フランス語も話されている。「南米のパリ」とブエノスアイレスが謳われていることが影響しているのかもしれない。

歌詞中で「映画で見た町並み」とあるが、その名の通り「ブエノスアイレス」という香港映画がある。トニー・レオンが同性愛者を演じたことでも話題になったこの映画は、しかしブエノスアイレスでの「やり直し」に失敗し、悲恋で終わる。そして元恋人の実家がある台北にて主人公は「会いたければどこでも会えるのだ」と結論付けて映画は終わる。ウォニョンさんが台湾にルーツを持つことまで考えてこの映画を引用した……とは、筆者はちょっと思えない。ミンジュさんをクローズアップすることと矛盾するからである。(ただ、曲調の不穏さ的に二番で映画みたいに悲恋で終わりそうだなあ、逃避行失敗しそうだなあ、そもそも行けなさそうだなあとは思う)

タンゴについても言及がなされるが、ブエノスアイレスはタンゴ発祥の地であるらしい。後半に出てくるタンゴは、違った単語は今度こそスペイン語で恋人といったようなニュアンスであるようだ。

うーん……。

この感覚を、筆者は以前にも味わったことがあった。STU48参上! を聴いたときである。瀬戸内のいわゆる名所、名物が特にこだわりもなく並べられており、「やすす、あんた『瀬戸内 名物』でググって出てきたものを適当に歌詞に入れ込んでいるんじゃ……」と感じたものである。

なぜブエノスアイレスだったのだろう? まず逃避行がテーマにあり、前述した映画と同じように「地球の裏側」であるからという発想から来たのか。筆者がブエノスアイレスで調べて思い至ったのは、ソウルと姉妹都市であり、(ちなみに大阪も)ここから企画がスタートしたのではないか? という考えである。まずブエノスアイレスありきであり、そこからパッチワークのように繋ぎ合わせてこのような歌詞が出来上がったのではないか、と。そうでも思わないと、どうにもちぐはぐで、ブレブレで、出だしのフランス語がだんだん「ぶれる、ぶれる」と言っているようにさえ聞こえてしまう。

多分意図的にちょい古を狙っているのだとも思うが、歌詞も素晴らしいものがあったVioletaに比べるとちょっとこれは苦しい。サビ前は結構好きなのだが、そこはどちらかというとハロプロらしさを感じてしまうのがなんともはや、である。

秋元康氏の作詞曲には「フィンランド・ミラクル」(んんんんんまなつううううううう)と「まさかシンガポール」(PRODUCE48でも目覚ましい活躍を見せた白間美瑠 さんがセンターを務めた)という曲がある。前者はフィンランドの伝説に端を発して、実際は行かないけれどそこから自分の心に大切なものを見出だす、という歌詞であり、後者は恋人が一人でシンガポールに行ってしまったのを追いかける、という「シンガポール」という距離感的にも「まさか」と「でも行こうと思えば週末とかでも行けそう」が絶妙で、どちらもその地名を設定する必然性が歌詞にある、と思う。フィンランド大使館のTwitterで前者は言及されたりしている。翻って、本作にその必然性があるかというと、ちょっと首を捻ってしまう。

それと、衣装である。何かしらコンセプトがあるのだろうが、しかし似合っているメンバーとそうでないメンバーの差が激しいように思う。何でウォニョンさんはジャージを着せられてるんだ。「ご機嫌サヨナラ」のときも思ったが、素材がグンバツだからって何でも着せていいわけじゃないぞ、と思う。総じて韓国では100の素材を200にも300にもしてくれているが、日本では本人たちの魅力でなんとか100を保っている、というように思えてしまう。こんな言い方はしたくないが……。

歌詞に関しては未出の部分が出てきたら手のひらを返す準備ができているのでよろしくお願いしたい。衣装に関しては、早くオサレカンパニーを引きずってでも連れてきて欲しい。発売が楽しみである。その時はまた感想を書きたい。

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