カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

とても綺麗なものは全てあなたにあげたい―「EYES ON ME : THE MOVIE」ネタバレ感想

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余談

あの頃、筆者は絶望の淵にいた。

 

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 一周年を迎え、カムバック、映画公開を控え、ますます勢いを増すIZ*ONE(以下文中アイズワン)に突如降って湧いたあの事件。それまでが華やかだったからこそ諸々が延期、中止となっていく一つずつ灯が消えていくような不安感はなんともいいようのないものがあった。そして、映画公開も中止が決定した。

 

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CJへの怒り(今読むと連中のX1についての仕打ちが思い出されまたも腹立たしい気持ちになってしまった)と希望を込めて私的テン年代映画ベストテン番外に入れた。それはあてどのない祈りであった。

しかしその後、不死鳥のようにアイズワンは全てをレベルアップさせて舞い戻り、我々WIZONE(以下ウィズワン)を歓喜させ、映画公開決定でさらに沸かせるのであった。

引っ越しによって生じた数少ないデメリットの一つが映画館が遠のいたことであった。しかし片道小一時間など目の前に広がる花道の前には遠いうちにも入らない。夫婦して初めてムビチケを予約し、(特典はクォン・ウンビさんとチェ・イェナさんであった)妻に至っては2時間周辺を密を避けつつ散歩して時間とコンディションの調整を図ったうえで、我々は公開初日最終上映、4DX版を追加料金へ払って入場するのだった。

コロナ禍での鑑賞は初めてで、時間帯もあるのだろうがエントランスの賑わいが明らかに減少していることに胸が痛んだ。ドラえもんの「新しい映画様式」を眺め、4DXのご注意で説明キャラクターが3Ⅾ眼鏡を装着することに不安になりつつも(受付で渡されなかったので/本映画は飛び出さない)、いよいよ場内が暗くなり、アイズワンの皆さんの上映前のコメントが流れる段に至って興奮は最高潮だ。

「お蔵入り」と思われた映画をついに、スクリーンで見ることができる――。

彼女たちとの「再会」がついに訪れた。

本題

※ということでここからは映画のネタバレに全く配慮しない感想です。まっさらな状態で見たい! という方はご注意ください。

 

※ ※ ※

 

いきなりの「ネッコヤ」ピアノver.である。流れた瞬間涙腺が刺激されるように調教されてしまった筆者にとっては開幕いいジャブをもらってしまった形となった。幼い子どもたちの写真、それを背景に語られるメンバーそれぞれのデビューを目指す理由。完全に「プデュ」最終回のフォーマットでのっけからずるいだろ……と思わされる。チョ・ユリさんが一番好きなシーンに選んだのも納得である。

その12人の少女たちは夢を叶え、アイズワンとしてデビューした。そしてついに韓国で単独コンサートをやるに至る。

巨大な会場、並ぶ密なファン、進む大掛かりなセットの設営……わずか一年ほど前でありながら今は遠き夢物語のような風景に不思議な気持ちになってしまう。

いよいよ開幕。重低音と振動が座席に響く。現世の奇跡、アイズワンの降臨だ。

「重低音と振動」は筆者が実際に現地参戦した時に強烈にこれが「現場」か…!と

意識させらた出来事であったので4DXでそれを体感できたことは嬉しかった。

 

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 入場。そして画面にだだだだだだだだだだだだっと並ぶ女神たち……。

もう筆者の脳のキャパはオーバーである。一日に摂取できる美の限界を超えてしまっているのである。あっちも美、こっちも美、逃げ場がない、逃げたくない。

一人一人の一挙一動を見たいのに困ったことに筆者の目は二つしかないのであった。

実際、上記の参戦時はあちらこちらに注意が映ってしまって悔しい思いもした。この点、本映画はプロがそのプライドにかけたカメラワークで撮っているので確実な満足感が得られるだろう点が良かった。

もちろん逆に言えばそれ以外の視線は許されないので単推し勢諸賢には寂しいところもあるだろうがそればかりはしかたあるまい。とはいえ各人推しカメラ編集版を出してくれるなら有給を質に入れてでもいつでも見に行きますという所存である。

(個人的にはViolettaのツバメダンスは宮脇咲良さんを正面にしてくれ~! という気持ちであった。)

前情報を全く入れていなかったので、コンサートフィルムというのはその名の通りライブビューイングのような感じでコンサートの始まりから終わりまでをぶっ通しで流すものかと思ったらそうではなかった。冒頭のデビューに至るまでのモノローグに始まり、本番前の練習と本番の様子、幕間映像の収録と上映を行き来する形で語られる。

簡単にいってしまえばこれまた「プデュ」のいよいよ評価です→それに向けての練習はこんな感じ→さあ本番だ! という流れをなぞっていると思えば国民プロデューサー諸賢は想像がつくのではなかろうかと思う。

ひまわりのふんわりしたかわいらしさ、AirplaneのCGの妙なチープさと「ウィズワン!」という自分たちでも所属事務所でもなくファンの名前を叫んでくれるそのありがたさ。

そしてキム・ミンジュさんのピアノで紡がれる「夢を見ている間」――私が誰かを幸せにできるなんて思っても見ませんでした、と最後のあいさつで述べた彼女だが、その真摯さ、パフォーマンス、日々の立ち居振る舞いすべてが我々の幸福度を常に上げてくれているのである。

8月という「プデュ」がフィナーレを迎えた月に聞く「夢を見ている間」は沁みた。最終回のちょっとがたついてガコッと上がるせり上がりを幻視してしまうほどであった。

畳みかけるような「Really Like You」で尊さはもはやうなぎのぼり。

そこからの「ネッコヤ」やコンセプト評価曲メドレーは国民プロデューサーの亡霊を絶対に成仏させない、という気概が感じられてよかった。

ただインタビューで「この季節は『1000%』ですね」と自分が発表した曲に誇りを持っていたイ・チェヨンさんに嬉しくなっただけにその曲がなかったのはいささか残念だったが…(他の日ではやったりしたのだろうか?)投票で移動になった「I AM」でのパフォーマンスは圧巻であった。

本来の公開時期であれば「え! この新曲は絶賛発売中のNEWアルバムで聴くことができるんですか!?」という展開になるはずであったろう「So Curious」と「AYAYAYA」 周りについては特に力を入れて編集しているのが伝わってきた。

「So Curious」組のイェナさんと奈子さんの絡み(矢吹奈子さんがカウントダウン告知でおすすめしていた部分)のユーモアあふれるやり取りは素晴らしいし、実際のステージではイェナさんしかできないキュートさが炸裂していた。可愛らしいながらも新規の振り付けが多く、その展開も早いこの曲は彼女の高いダンス・パフォーマンススキルがあることで更に高い次元に昇華したことは疑いがなかった。世界最大の妖精・お手本のような可愛さの矢吹奈子さんと久々に見た金髪姿はやはり錬磨の美しさを感じさせる本田仁美さんは(もともともあるのかもしれないし髪との対比もあるのかもしれないが、全員並んだ時など本田さんの肌はひときわ白く見え、本当に美容に意識を高く持っているのだろうなあと思わされた)もともとの愛嬌をさらに磨きをかけるだけでなく前述したような難度の高いダンスもこなしており、まさにグローバルアイドルといった感じだ。キム・チェウォンさんの小悪魔的笑顔と歌声、しなやかな動きには翻弄されたくて仕方がないし、黄色の衣装がよく似合うひまわりの化身のような明るさを届けてくれるアン・ユジンさんを見ると冷房の利いた室内でも心地よい暖かさを感じる。チャン・ウォニョンさんはレコーディングから既に五億点です。「準備チェンナヨ?」のレコーディングで苦労していた日々がもはや懐かしい。ステージでの姿は勿論、練習室でのあっさりしたメイクとさっと結んだヘアースタイルが可愛らしすぎてヤバい。ちょうど最近見た「アンナチュラル」での石原さとみさんを彷彿とさせた。


[최초공개] 아이즈원(IZ*ONE) - SO CURIOUS | COMEBACK IZ*ONE BLOOM*IZ

編成が変更にはなっているがカムバック時の同曲を貼っておく。このキュートさが大画面で鑑賞できてしまうのでもうマスクの下は緩みっぱなしである。初めて窮屈なマスクに感謝をしたかもしれない。

「AYAYAYA」組のチョ・ユリさんは今までとは毛色の違ったガールクラッシュな曲に戸惑いを見せるものの、(とはいえコンセプト評価時は「Rumor」志望だったらしいので方向性自体は好きなのだろう)本番ではその力強いボーカルが動きの背骨となっているかのような文句なしの動きを見せていた(しかし、本田さんもそうだがちょっと肩が「セクシだ」過ぎてどぎまぎしてしまう。カン・ヘウォンさんも然り)。ちなみにユリさんの練習室での薄めのメイクもめちゃくちゃ好きである。努力する天才、アップデートの権化である宮脇咲良さんはその目力と負けん気そのままにAKB48ダンス最高難度の曲「NO WAY MAN」のセンターを務めたことすら通過点にして更に一段ギアを上げてきた。後、「幻想童話(Secret Story of the Swan)」にてダンサーの一翼を担う下地は既に出来上がっていたわけである。へウォンさんは自身のスン…としていれば周りがちょっと怖くなってしまうほどの美貌を最大限にガルクラに活かしていたし、いつもにこにこほんわかのミンジュさんが「hush」する様のギャップは発電できてしまいそうなほどの落差で嬉しい悲鳴が上がりそうだ。ウンビさんのキャリアを感じさせる間違いないパフォーマンスはこれを支柱として他のメンバーは安心して自らの向上に打ち込めるのだという頼もしさを感じたまさしく大黒柱であった。極めつけはこれぞメインダンサーのイ・チェヨンさんである。髪の一本一本、指先、足先の細胞の一つ一つにまで神経が行き届いた全身パフォーマーである彼女の動きを見た後では今後軽率に「鳥肌」という言葉を使うことはできないように思えた。

日本曲からの「好きと言わせたい」では宮脇さんの視線が絶妙過ぎてそれ以外がほとんど記憶にない。ウィズワンたちの「好きと言わせたい」コールも心地よく、この演者と観客の幸福な共犯関係を取り戻したく、ほとんど叫びたい胸の内をぐっと押しとどめて楽しいのに辛いという矛盾した気持ちに時勢を恨んだりもした。

幕間の吸血鬼ズワン。こういったゴシックな服装が(も)彼女たちはとても似合う。どんどんオフショットとか蔵出ししてほしい。後の「ヴァンパイア」を彷彿とさせるような悪女の極み、キム・チェウォンさんや演技の睡眠でも半目をして見せる指原さんの薫陶を感じる咲良さんの演技、眼鏡の本田仁美さんが特に必見である。本田さんが本を片手にふむふじゅえっへんと語り、みんながさすが~!と甘やかすシーンは月まで吹っ飛ぶ可愛さなので是非収録してほしかった……。

そこからの「Highlight」「La Vie en Rose」「Rumor」「Violeta」はまさに圧巻、メンバーのパフォーマンスは勿論のこと、新規アレンジでも見事に合わせて見せるファンたちの力にこれがコンサートだよな、これがライブだよな、と再びのアイズワンとウィズワンの蜜月ぶりに胸を熱くさせられた。

楽しい時間にもやがて終わりがくる。本公演が終了し、コンサートの物販グッズに着替えたメンバーが一人ずつ挨拶をはじめる。

もう、ボロ泣き。

多くのメンバーが映画の一番好きなところにあげるのも納得といったところで、メンバーたちの感情の爆発、そしてそれが許される状況を作り上げた会場の雰囲気のすばらしさに全国の映画館の湿度は五パーセントは上がったのではないかと思われる。

一推しであるからかもしれないが、チャン・ウォニョンさんの言葉に特に筆者は心を動かされた。ユーモアある喋り出しから始まりながらも、そこから感じられるのはそこに至るまでの沢山の苦労。15歳の少女に華やかな舞台を与える代わりにショービジネスの世界は何を奪ってきたか、それには我々も少なからず加担している……。胸を痛めながらも、その大きな瞳から涙をこぼしながらなお明るく笑い、みんなに感謝を告げる彼女にやはりアイズワンのセンターは彼女しかいないという思いを強く抱きもするのであった。「もう大丈夫」が今もずっと大丈夫であり続けていますように。

イ・チェヨンさんの言葉にも泣かされた。素晴らしいスキルを持ちながら、自信を持てない彼女はそのため外部の評価が芳しくなく、それによりまた自信を失ってしまうという負のスパイラルが続いていた。それがアイズワンの日々で断ち切られ、事実彼女は日々美しくなっている。「自信が人を作る」という言葉の故事成語になってしまうのではないかと思うくらいである。「SIXTEEN」で姉妹揃ってしょぼくれていた頃から比べると本当に別人かと思ってしまうくらいだ。そのダンスの軽さから「羽チェヨン」と呼ばれる彼女がウィズワンたちに「あなたたちは私にとっての『羽』」と言ってくれるのだから泣かせるではないか。彼女がアイズワンにいてくれて本当に良かった。

 

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韓国に単身来てくれたお母さんに感謝の涙を流す本田さん、いつも泣かないチェウォンさんがストレートに伝える感謝、(抱きつかれに行くユリさん)、「プデュ」時は何かあると泣いてしまっていたヘウォンさんは涙が減った代わりに沢山笑顔が増えたことを述べ……と本当にみんなの挨拶が素晴らしいので枚挙にいとまがなく、既に五千字を超えてしまったので是非鑑賞をして確かめていただきたい。

特に最後のアン・ユジンさんのコメントはいつもの陽気なビタミンである彼女からやはり等身大の少女としての言葉であり、しかしMCを単独で務めただけあって非常に素晴らしい言葉になっておりウィズワンの涙腺にとどめを刺してくるので必見である。

その後の円陣……打鍵しながら視界がにじんでいくのを筆者は抑えることができない。本当に得難い体験であった。

スタッフロールの間も決して立ち上がることはできない映像が流れていく。そして……。

風立ちぬ」で言えば「堀越二郎堀辰雄」の位置に我々ウィズワンが立つことを許されたその瞬間を、繰り返しになるが是非劇場で鑑賞していただきたい。

蛇足:雑感など

円盤、出るのだろうか。出てほしい……。(公開してもらっただけでもありがたいのにすぐ欲を出すオタク)幕間映像を是非収録してほしい。スマホの中のアイズワンさんや、吸血鬼ズワンさんは本当にかわいいのである。きゃわいいのである。

4DXについては飛び出しはしなかったものの大満足であった。ただ、基本的にパフォーマンス中は振動しっぱなしなので、お手洗いは事前にしつこいくらいに行っておいたほうがよいだろう。アイズワン諸賢の飛び散る汗、すれ違った時の香りが再現されるのか……⁉と一瞬思ったがしっかりパフォーマンスの底上げに活用されているので安心されてほしい。一番かみ合っているのは個人的には「La Vie en Rose」だったと思う。

内容に関しては上記の通り素晴らしいものであったが、きわめて個人的な部分で言えば「好きになっちゃうだろう?」は是非収録していてほしかったし、「Violeta」のツバメダンスは真正面からの画が欲しかった……というくらいであろうか。あとは歌詞の字幕があるとよりありがたかった。

しかし改めて、オンラインコンサートも非常にありがたいがリアルコンサートが恋しい。自分がもう一度あの感動を味わいたいという気持ちに嘘はつけないし、そうでないとしてもアイズワンの皆さんががウィズワン諸賢の大歓声によってさらに磨かれ、その輝きを増すさまを眺めたい。