IZ*ONE(以下文中アイズワン)のカムバックソングについて語るとき、いつも深夜になってしまう。もちろん、記事投稿自体を夜に行うことが多いからなのだが、彼女らがカムバックするとき、それは世の美が更新されるときであり、その「新しい世界」になじむのに些か時間がかかってしまうからである。それは幸福なチューニングの時間だ。
既に昨夜の「2020MAMA」においてその出来栄えのすさまじさにウィズワン諸賢を沈黙させた「Panorama」のMVがついに公開された。
そこで筆者が見せつけられたのはまたも新たにして多様な美の顕現とウィズワンへの愛、メンバー間の信頼、そして今こうしてアイズワンというグループを応援できているという奇跡の再確認、最後に、どうしようもなく近づいている「終わり」であった。
以下、いつも通りの筆者の妄想を書きなぐっていく。
考察(妄想)
平行世界で何度も「アイズワン」を繰り返す彼女たち
初めに総論から言うと、これは「語られなかった思い出」を取り戻そうとしたアイズワンがしかし、「語られなかった思い出という思い出」を受け入れてそのループに終止符を打った物語だと思っている。言うのはタダである。
初めに全員の群舞シーンで現れるコンクリート造りのような背景の黒服のアイズワン達こそが、何度も過去に戻り、改変しようとするアイズワンだ。
彼女たちの気持ちはひとつ、「もう一度過ぎ去るあの季節の風景、話せなかった私たちの話」を話したい、ということだ。
あの季節。気温よりなお寒く、ただひたすら、推しの命が続くことを願ったあの季節。ひっそりと息をひそめたあの季節――はや一年が過ぎた「本来のFIESTAカムバック」である。シックな服装も似合いすぎるキム・ミンジュさんがディレクターズチェアに座り、カチンコが打ち鳴らされる。アイズワンの記念日を記されたカチンコが、ゼロになる。再びの「アイズワン」の開始である。
それまでの記録を眺めるのはオードリー・ヘップバーンを彷彿とさせるカン・ヘウォンさんである。そのフィルムを収めている数から、これが一度や二度ではないことが分かる。
展開されるのはどこかで見た景色、どこかで見た衣装、どこかで見た小道具、どこかで見た演出……。しかしそれは我々の知るそれではない。演者が違う、色合いが違う、衣装が違う、表情が違う……。ACTが違うのだ。我々の知っている彼女たちとは。繰り返す平行世界を示唆するかのように、黒い服以外の彼女たちの像はある時はブレ、ある時は分裂し、ある時は万華鏡のように拡散する。
ついに120%の魅力を発揮したように感じる矢吹奈子さんの表情管理と堂々としたパフォーマンスには驚かさせられるが、まずはその像が多重になっているからこそその未来が確定していないというヒントになっているように思える。後半、チェヨンさんがチェスの駒を進める前にその動きを知っているのはその出来事をかつて経験したからなのではないか?
アイズワンでなかった世界線を示唆
そして金髪が大正解のクォン・ウンビさん、肩ががっちりしているドレスも問題なく似合ってしまう宮脇咲良さん、デカリボンをセレクトしたスタイリストに五千兆円くらい支給してほしいチョ・ユリさん、完全に超新星女優アン・ユジンさんは「アイズワンでなかった場合の彼女たちの未来」を現わしているように感じられた。アイズワンではなくソロとして活動していた可能性が高いのは確かにこの四人だろう。キャリアも長くダンススキルの高いウンビさん、48Gの第一線で活躍しており劇団経験もある宮脇さん、アイドル学校で人気を勝ち取り歌唱力が絶賛されたユリさん、コンタクトレンズのCMで注目されていたユジンさん……。単独でデビューしていてもきっと多くのファンを得ていたことだろう。黒髪もバチボコ似合うチェウォンさんもまた、アイドルになっていなかったらそのように過ごしていたかもしれないゴージャスなふるまいをしていて可愛らしい。
それでもアイズワンは、この世界線を選ぶ。
過去の改変は、しかしうまくいかない。無数の平行世界が生まれ続けるが、どの世界においてもあの季節の風景は過ぎ去っていってしまう。アイズワンには一度、ひどく厳しい冬が訪れる。
ならば、編集すればいい。誰かが思いつく。フィルム状にして過去をさかのぼり、改変しようとしている彼女らの周りには膨大なフィルムがある。それをつなぎ合わせて「あの季節」のシーンは削除してしまえばいい。冒頭の歌詞、「静かに始まったドラマ(これはPRODUCE48が歴代最低視聴率だったことも示唆しているのだろう)」の「大事にしていた欠片」とは「うまくいった過去」のことではないだろうか。
そういったシーンがチェ・イェナさんの圧巻のセンターダンスシーンの後、矢吹奈子さんと後半美しすぎる一筋の涙で全国一千万人をドギマギさせた本田仁美さんのまわりに沢山のフィルムが釣り下がっているシーンであろう。
ミステリアスさにも磨きがかかりますます魅力的なイ・チェヨンさんがいうように虹の家に招待され、楽しく日々を過ごせたらどんなに良いだろう。
しかし彼女たちは気づく。「全部入れておくわ物凄く特別だから」と。彼女たちは過去を編集しないことを選んだ。あの日々さえも今や愛おしいのだと。何故か。
「あなたの目の中で輝くstarlight」を見つけたからである。
「あなた」は、ウィズワンは何をその目に宿しているのか。
アイズワン諸賢に他ならないではないか。
こうして彼女たちは、ウィズワンを通してどんな苦難の時であっても自らが輝いていたことに気付く。「初めて会った時あの瞬間」のように。
そう、あの時我々は互いに約束したのだ。
「君の星になる」「私の光になって」と。
[ENG sub] PRODUCE48 [최초공개] 프로듀스48_내꺼야(PICK ME) Performance 180615 EP.0
だから、我らが最強マンネ、チャン・ウォニョンさんはこう歌って〆るのだ。
永遠に覚えていて約束よ
Don’t Let me Down Down Down
こんなことを言われたらますます応援をせざるをえないではないか……。
しかし今回のアルバム「ONE-REELER ACT IV」のコンセプトから考えるに、本当は「ONEIRIC THEATER」ってこのタイミングでやるつもりだったのかな……と思ったりもした。本当にアイズワンは瞬間瞬間の奇跡で成り立っているのだな、と改めて思う。
アルバムの到着が楽しみである。
しかしこんな「集大成です!」みたいな曲を出されてしまうと、そりゃあめちゃくちゃに素晴らしいのだが、いよいよ幕引きを予感してしまって辛い。「~IZ」シリーズが三作出たから「ONE~」シリーズが三作出ること、信じています。なんなら三十作出してもいいけど。