カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

大和田取締役は再び「大和田常務」になるのか――「半沢直樹」初回ネタバレ感想

余談

色々と書きかけの記事があるのだが書ききる勢い、いわば日々の「余力」がない。そもそも相変わらずずっと体調が悪い――というか、うん、そうですね、受け入れます。これは…単純に「老い」ですね……。

あとは無事引っ越したものの今までのせんべい布団からベッドに寝具が変わって慣れていないのと、なんだかんだ組み立て家具を組み立てたり荷解きしたりで週末休めていないこともあるだろう。

そして購読しているブログもほとんど読めていないのがつらい。インプットしたい……。

そうこうしているうちにまだいくらか若かりし頃にインプットしておいたことが役立ちそうなことがあったので、いつもながらの深夜(十時半を深夜という感覚がもう老いなのか…?)の勢いで書いておきたいと思う。

私のモットーは「紙屑さえも書物にする速度が無ければ届かない言葉がある」ですから!

本題

と、いうことで「半沢直樹」初回をリアルタイム視聴したのだった。

前作はリアルタイム視聴を始めたのは第二部から。滝藤賢一演じる近藤直弼が鬼気迫りすぎていて目が離せなくなったことを覚えている。当時は筆者は会計事務所に勤務しており、中小企業の悲哀やしたたかさに大いに共感し、途中で原作を一気読み、今回のドラマの前半部分原作「ロスジェネの逆襲」も電子書籍で発売されるやいなや一気に読んだ。

そこから七年の月日が経った。くしくも同じく2013年流行語大賞を争った「お・も・て・な・し」が用意されるはずだった東京五輪は延期となった中、「半沢直樹」が再び戻ってきた。

開始一分で土下座を掘り返される大和田(元)常務。

今のところ明らかになっている原作との相違点、逆に未だ明らかになっていないキャスティング。

これらから今後の展開を予測してみたいと思う。

ということで以下、「半沢直樹」初回のネタバレ及び原作の該当部分、及び「銀翼のイカロス」登場人物のごく軽度のネタバレが含まれます。

大和田はラスボスとなるのでは?

香川照之の凄味のある演技で話題となり、前作である意味陰の主役と言ってもよかった大和田常務(当時)。前作最終話にて土下座をさせられ、常務の座は降ろされたものの取締役としては留め置かれた。これは原作通り。

しかし、その後の展開が大きく異なり、既に七年前の時点で議論を呼んでいた。原作ではそれは「出向待ち」状態となっていることを意味し、事実原作ではその後フェードアウトする。

が、ドラマでは中野渡頭取の判断により銀行に留め置かれるのである。原作では半沢直樹のセントラル証券への出向は役員の大和田も出向したのだからといういわば「喧嘩両成敗」的な側面もあったが、ドラマではあまりに半沢が一方的に割を食っていたのでドラマだけ見ていた方々は大いに戸惑ったのではないかと思う。

原作ロスジェネで頭取が半沢を評する言葉で筆者はとても好きなものがある。それは今の展開でもそのまま使える言葉でもあると思うので、ぜひ使ってほしい。ドラマ派の諸賢もきっとその一連の言葉で大いに留飲を下げるはずである。

話題が少しそれてしまったが、繰り返すが今回ドラマ化される部分の原作に大和田(元)常務は存在しない。あんなに堂々と出てるのに!

なのになぜ今回再びキャスティングされたのか? もちろん前作で残したインパクトがあまりに大きかったこともあるだろう。放送終了後に視聴者の心の中の「半沢直樹」の構成要素は「倍返し」「大和田常務の土下座」「金融庁の嫌な奴」がほとんどを占めていたのではなかろうか。

しかしただそれだけではなく、この「原作では退場した大和田」の扱いをうまくすれば原作の登場人物を圧縮した上で大和田常務が返り咲けそうだ……とスタッフ諸賢が考えたのではないか……と筆者は妄想するのである。

サラリーマンドラマは大体服装がスーツの上、年齢層も似たり寄ったりなので人物が覚えにくい。当たり前だがキャスティングの労もあるし、尺も限られている。できれば人物は圧縮したいというのが本音ではないだろうか。

事実、半沢の実家を危機に追い込んだ(原作では父は健在、ドラマでは自殺というのも原作と大きく異なるところである)銀行の担当者も原作では別の人物が担当していたのを大和田が担当していた、という改変が既に前作時点で行われているのである。

そう、これが布石。原作のラスボスは大和田に収斂していくのだ――。

銀翼のイカロス」において「紀本平八」という人物が登場する。彼は東京中央銀行において半沢直樹と対立する勢力の首魁である。

その役職は何か。

常務なのである。

この人物を吸収し、大和田常務として返り咲いて再び半沢直樹と対決するのではないかと筆者は考える。(ちなみに前述したように「ロスジェネの逆襲」において「大和田」という単語は一度たりとも出てこないが、「銀翼のイカロス」 においては紀本の前任者という説明のために同じ文脈の中で三回だけ登場する。こういうのをすぐ調べることができるのがkindleのいいところである)

即ち「ロスジェネの逆襲」編では「敵の敵は味方」理論で味方するものの、その手柄によって常務に復帰したのちは「紀本常務」の役割を吸収して半沢直樹の前に再び壁として立ちはだかるのではないだろうか?

そう考えると既にいくらかの伏線が仕込まれているように思えるのである。

大和田に与えられた役割「行内融和」

東京中央銀行は合併公。頭取(及び半沢)と大和田はそれぞれ別の銀行出身であり、行内の派閥意識は苛烈である。それが物語の中で様々なドラマを生んでいる。だからこそドラマにおいて頭取はその融和を願って敵対派閥の中心人物である大和田を留め置いたのだろう。

そして原作の紀本常務の役割を考えた時、大和田常務は頭取に「恩返し」を出来る要素がある。「行内融和」は新シリーズの一つのテーマではないかと筆者は睨んでいるのである。

降って湧いた同期「苅田」の役割

新シリーズ、小料理屋の場面において(小料理屋もドラマオリジナルの要素。ついでにいうと剣道も)半沢、渡真利の間にしれっといる広島弁のような言葉をしゃべる男。苅田光一。半沢、渡真利、近藤の同期で法務部所属。原作では一作目から登場。司法試験受験コース(支店勤務免除)というエリートコースに乗りながら受験失敗、関西支店へ転勤、出世レースから脱落し、それでは関西に骨を埋めようとマイホームを買ったらそれを狙いすましたかのように本部へ連れ戻され、妻子はマイホームのある関西へ残って単身赴任という銀行の不条理を背負った男である。

既に述べたようにドラマ化において登場人物の圧縮は課題の一つである。その結果、前作ドラマにおいて苅田は登場しなかった。(原作でもそんなに出番があるわけではない)それがなぜ新シリーズにおいて出てきたのか。

まずは単純に原作で役割があるからである。法務部である彼は「ロスジェネの逆襲」において株取引に関する解説を半沢達(と、読者)に行うポジションとなっている。

しかし他にも――上記のように「銀行のやり方」に不満を持っている彼に大和田が近づき、甘言を弄して前シリーズの近藤に相当する「裏切り者」の役割を与えられるのではないか……と筆者は思う。半沢がスーパー超人になっていく(原作では花の出番もなくなり、ますますそうである)今後の展開を考えるに「普通のサラリーマン」が共感できるポジションとして前回の近藤を超えるのは難しいかもしれないがその役割を果たしてほしい。

児嶋一哉さんはどこにキャスティングされるのか

今作で三木に東京03の角田さんがキャスティングされたとき、筆者は思考の虚を突かれながらしかし絶賛せざるを得なかった。端的に言えば「わかる~!」である。人力舎の芸人さんのドラマへの相性は異常である。フツーのおっさんの層が厚すぎる。飯塚さんは昼ドラで苦悩する夫の役とかやってほしい。

その最右翼は児嶋一哉さんであろう。実は妻はDVDやネタ本、果ては渡部建さんの書いた小説「エスケープ!」を所持するほどのアンジャッシュファンであり、それ故に最近の落ち込みようは見ていられないのだが、今作に彼がキャスティングされるということでいくらか気持ちを和らげたようである。

児嶋一哉さん。大河ドラマに二度出演。特撮にも出演。なぜかふなっしーとダブル主演など兼業俳優とは思えない錚々たる出演歴を持つ。池井戸潤先生原作のドラマでは「花咲舞が黙ってない」でゲスト出演したこともある。

そんな彼は現在、「出演する」ことは明かされたが、どんな役で出演するかはわかっていない。発表時に香川照之さんは「僕の了解取らないとダメ」と笑いを取ったという。また、児嶋さんは「ちょこっと撮ってます。あんまりまだ言えないけど」とも明かした。

……実はこれがヒントなのでは、と筆者は思うのである。

・香川さんの了解が必要→香川さん=大和田の部下?

・「ちょこっと撮っている」→後半「銀翼のイカロス」での出演?

・まだ言えない→この段階で役名が明かされると困る?

以上から、筆者は児嶋さんは原作での紀本常務の部下・曽根崎として出演するのではないか、と考えているのである。既に書いたように紀本常務は銀翼のイカロスで銀行でのいわば「ラスボス」的存在。そのキャスティングは誰もが気になっているところ。でありながら先に部下から発表されてしまっては前半の「仕掛け」の一つである「原作の紀本常務の役割を大和田が担うようになる」ということがよりもろ分かりになってしまうから伏せているのではないだろうか。(余談だが今回のキャスティングの個人的ベストオブベスト「わかる~」は柄本明さんの箕部役)

あるいは同じくまだ発表されていない総理大臣役かもしれない。大島さんは大変な時だが頑張ってほしい。夫婦で応援している。

さっくり書いてしまうつもりがいつの間にか四千字ほどになってしまった。

やはり半沢直樹は面白い。予想が当たるにしろ、外れるにしろ、引き続き楽しみに視聴したい。

ドラマ「半沢直樹」原作 ロスジェネの逆襲・銀翼のイカロス 合本