カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

まるで記憶の宝石―宮脇咲良 HKT48 卒業コンサート ~bouquet~感想

余談

矢吹奈子さんの誕生日が温かく盛大に祝われて後、とうとう宮脇咲良さんの卒コンがやってきた。

いつもよりも早く目が覚めたのは、あるいはそのことによる気持ちの高ぶりを感じていたからかもしれない。

卒コンを前に身を清めねばと歯の定期検診に向かった歯科での待合室で見た番組のBGMは「ネッコヤ」(韓国語を学べる専門学校を紹介するローカル番組だった)であったりして不思議な縁を感じながら、呼ばれるまでと開いたTwitterで回ってきたニュースに筆者は目を疑った。

アイズワン再結成を目指す動きがあるという。

結論としては、宮脇咲良さんがかつて言ったように「公式の発表を待つべき」であろう。

なので、ここから書くのはただの筆者の恨み節である。卒コン感想を読みに来てくださった方は「本題」まで飛ばしていただいて構わない。

皮肉というかなんというか、筆者はこの報を初めて聞いた時、同じくガールズグループの旗手であるモーニング娘。の舞台、ステーシーズでも印象深い「再殺部隊」を想起した。

 

再殺部隊

再殺部隊

  • provided courtesy of iTunes

 

髪の毛も、指も。思い出も……骨も。

 

筆者にとってアイズワンというのは替えの利かない、愛しき推しである。彼女らが「大人」たちにとって理不尽な幕切れを迎えた時、それでも明るくウィズワンを活動終了の日まで支えてくれたその眩さは永遠に失われることはなく、それ故に夫婦してそれまでの履歴からおすすめしてくるYouTubeのアイズワン関連の動画から目をそらしながら五月以降を過ごしてきた。

ライブも、峯岸みなみさんの卒コンやAKB単独は見たけれども、8コン(たまたま出先で見たら本田仁美さんカムバックだけ見ることができた)やHKTコンはまだ見られるような状態ではなかった。

その間にも彼女たちの輝きはもはやベールに包むことも難しく、インスタグラムではついに全員集結するなど、アフター・アイズワンとでもいうべき動きを見せてくれていた。

もちろん一抹の寂しさがないかと言えば嘘になるが、それよりも嬉しさや誇らしさの方が勝っていた。

まるでヴァージンロードを随伴していた愛娘が我が手を離れ、愛する人と手を携えているのを目を細めて見守っているかのような感覚。

「幸せにおなり……」 

と思わず声がこぼれるような。

最近アイドル諸賢について書くことが多いので必然これも何度も書くことになってしまうが、人間にとっての「最高」というのは「変化し続けていくこと」「成長し続けていくこと」ということだと筆者は考える。(藤田先生の受け売りだけど)

確かにアイズワン諸賢というのはみんな女神のように可憐で花々のように美しく儚げであったけれども、その瞬間を保存して留めておくことはできないし、許されることではない。

何故なら彼女たちは人間なのだから。

不老不死の女神でもないし、もちろんコンテンツでもない。

だからこそ、当初より「連合」諸賢の動きについて筆者は反対であった。彼らが好きだったのは、復元を目指しているのは「あの頃のアイズワン」であって、一分一秒下手したら一刹那のスピードで進化し続ける彼女たちにとってその行動はもはや枷にすらなってしまうのではないかと。

そう言った形でコンテンツホルダーの逆鱗に触れ、最悪アイズワンの名前を取り上げられてしまうよりはアフター・アイズワンにおいて彼女らが八面六臂の活躍をすることで自然活動再始動(筆者はアイズワンはあくまで「活動終了」であって「解散」はしていないと考えている)の機運が盛り上がることがベストなのではないか。

クラウドファンディングによる交渉といってもそれが不透明なものであれば「札束を積んで動かした」ということになり、ますます世論の反発を招くのではないか――と。

それらは結局、アイズワン諸賢を悲しませてしまうことに他ならないのではないか。

こう書くと「連合」支援者諸賢としてはいや、そんなつもりはない、純粋に再び彼女らが集うところが見たいのだ、と憤ることがあるかもしれない。

筆者もあの荒涼としたラストコンサートの景色を忘れるつもりはない。

しかし、一度「金で解決」してしまえば、今後何かあれば同様の手段を取ろうとしてしまうかもしれないし、そうでなくてもファンダム外から「金で解決したのだろう」と邪推されはしないか。彼女たち自身には罪がないのに「不正アイドル」とされてしまった、その苦しみをなによりわかっているであろうあなた方がまた違ったレッテルを彼女たちに貼ろうというのか。

知っています。あなた方も、アイズワンのことを愛していると。けれど、例えば少し前講談師が「もののけ姫」について炎上したように、人というのは特に焦燥しているとき、視野が狭くなり、その時に見えたものに飛びついてしまいがちです。

いつしか、自分に都合のいい部分だけを切り取り、つなぎ合わせ、不気味にキメラめいた「真実」が誕生してしまう。それに固執してしまう。こういったことをおっさんである筆者はいろんな界隈で何度も見てきました。いずれも、そのジャンルを本当に好きだった方たちでした。

クラウドファンディングによりCJが動き出しました。誠意でしょうか。愛情でしょうか。残念ですが、「金になるから」としか筆者には思えません。だからこそ彼らは、仮に再始動するとしたら運用は彼ら自身の投資によると明言しました。

おわかりでしょうか。「善意」で3億円以上の資金を集め、そして交渉を進めているらしいあなたたちの動きを見たCJはかつて不正騒動を鎮火するためにすべての利益を放棄したアイズワンに再び「投資」すると言ったのです。

あなた方の善意が、アイズワンに不正のレッテルを貼ったCJが再びアイズワンを用いて金儲けをする下準備をしてしまったのです。それが他のウィズワンへの、アイズワン諸賢への、そしてあなた方自身への誠意に対しての裏切りでなくて何だというのでしょうか。チャン・ウォニョンさんとした「約束」はそんなものでしたでしょうか。

ウィズワン、ご飯は食べましたか?

少し深呼吸をして、温かい食べ物を食べてください。暑いからと言って冷たいものばかりではお腹を壊しますから。

その後に、無理やりに蘇らされた、まるでゾンビのようなそのガールズグループが本当に「アイズワン」と呼べるのかどうか、じっくり考えて頂けたらと思います。

本題

余談が、ながくなった。

今世紀最大の美しさからなるOverture。差し込まれる懐かしい映像。既に我々は手に抱えきれないほどの思い出の花束を受け取って卒業コンサートは開幕した。

M1.桜、みんなで食べた

日が落ちようとする時間の開幕、しかしライジングサンめいた演出で登場した宮脇咲良さんが今日は楽しもうといった時、それが今日のスタートとなるのだ。

HKT48 の未来、矢吹奈子さんと田中美久さんを配し階段を下りていく。爽やかな中に確実な別離を予感させるギターのリフ……48Gの桜曲に外れなし。

個人的には宮脇さん左後ろの豊永さんが終始とても印象に残った。

友達甲斐ランキング一位独走中の村重さんによる「HKT48はさくらのことが大好き!」もばっちり決まり、最高の滑り出しとなった。

M2.君のことが好きやけん

師である指原莉乃さんが参加した「君のことが好きだから」のアレンジ版がHKT48が彼女の「ホーム」であることを強烈に想起させてくれる。「永遠の先」に向かおうとしている宮脇さんのエールのように響く歌詞がよい。

今回、配信にて視聴し、その分存分に声を出したが、この曲に関してはマリンメッセのスピーカー左右に振れるイントロをぜひ現場で聴いてみたかったな、と思う。

M3.初恋バタフライ

初のHKT48CD曲にして超新星田島芽瑠さんがセンターを飾り騒然となったことがもはや懐かしい。時を経て田島さん・宮脇さんの二人は中央でそれぞれの光を増幅しあうような最高のプリズムとしてこの曲を彩ってくれた。確かな成長を感じさせながら、それでいて透明感を失っていないのがHKT48の「らしさ」である。

M4.早送りカレンダー

前曲で大きく横一列に広がったメンバー。その両端がダブルセンターの矢吹さんと田中さんだ。その列をファンに挨拶しながら横断していく宮脇さんは、それを追いかけるカメラの向こうの我々に「この後ろの子たちから次の推しを見つけて」と言っているようで……。

曲のコミカルなキュートさに夢中になっているうちにいつしかフォーメーションが変わり、ダブルセンターが揃うのは構成の妙である。

M5.希望的リフレイン

王道AKB曲として筆者を再びAKB沼に引きずり込んだ名曲は今聞いても色あせない。次期センターの運上さんに渡辺麻友さんを幻視してしまったのは筆者だけだったろうか……。早速先日卒業された森保まどかさんを思い出して寂しくなってしまい、感情が忙しくもあった。

しかしここまで見てきてHKT48諸賢はぷく顔っていうのか、頬をちょっと膨らませる表情がみんなすごくかわいいですね。

M6.マンモス

もともとはチームK「最終ベルが鳴る」公演の曲。チームHも公演したことがあるが、その際は宮脇さんは参加していない(その後チームKⅣでの公演では出演者である)。

大好きだというこの曲に乗せるパフォーマンスはまさに二年半という別環境での「進化」を感じさせた王者の風格堂々のものだった。後ろの映像をそのままMVとして配信してほしい。

M7.夏の前

こちらはチームKⅣオリジナル曲。運上さんへのエース継承式の趣を出しながら、(ぐっと涙をこらえる運上さんにもらい泣きしそうになる)儚く優しい空気が前曲とのいい意味でのギャップを生み出してくれていた。心友本村碧唯さんのこぼれそうな笑顔。バラエティ担当を自負する村重さんの頼もしいボーカル。すべてが夏の前のサンチマンタリスムに溶け込んでいく。

M8.空耳ロック

HKT48の末っ子率の高い若きチームT。松岡はなさんの笑顔には何度も既に笑顔にさせられていたが、宮脇さんが完全に「素」でニヤニヤしてしまっており、その破壊力が我々だけではなく宮脇さんにもしっかり刺さっていたことが分かる。

PRODUCE48でも活躍した本日お誕生日の栗原紗英さんをはじめ、荒巻美咲さんや村川緋杏さんなど、宮脇さんだけでなく彼女たちにとってもあの経験から更に先に進んでいることが分かり、胸が熱くなる。しかし、今村さんめちゃくちゃ大きくなったな……。

M9.僕の想いがいつか虹になるまで

田中さん、松岡はなさんとのユニット「さくらはなみく」が誕生した時は普通にシングルカットでいいじゃん……と思ったほどの出来に驚いたのを覚えている。

www.youtube.com

MVがめちゃくちゃ可愛いので観ましょう。

三人共実は心の中に悪がきを住まわせているので、そのやんちゃぶりが曲調とコラボレーションしたようで楽しい。

と、思いきや田中さん、松岡はなさんのコメントで泣かせてくる。

この最強ユニット結成後半年を待たずして宮脇さんはアイズワン入り、文字通り最初で最後の楽曲となったこの曲は錆付きを全く感じさせない。

早くもレジェンドの風格がある曲である。ぜひ歌い継いでほしい。

M10.夢を見ている間

見慣れたイヤモニ、マイクで歌われるこの曲に震えないウィズワンなどいるだろうか。

今を生きている」という歌詞が、重く重く響く。これこそが、同時代を生きるアイドルを推すということの真骨頂ではないか。常に最高を更新し続ける彼女たちが思い出を思い出にせず、今を生きる血肉として取り入れ、再びアイズワンの楽曲は大勢のファンの前で、サイリウムに照らされながら奏でられることを許されたのだ。これが幸福でなくて何だろうか。「感動をありがとう」という言葉はウィズワンたちこそ叫びたかったに違いない。

続いてのMCの本田仁美さんの登場、「咲良さん」が「さくちゃん」になったその尊さを感じながら、筆者の涙腺は刺激され続けるのだった。

しかし相変わらず秋元氏の歌詞の汎用性はすごい。

M11.制服のバンビ

リリースはなんと8年前、オリジナルメンバーは宮脇咲良さん、指原莉乃さん、兒玉遥さんということでサプライズオリメンを期待したがそうはならず。

フレッシュなメンバーが懸命に踊る様はあの頃の彼女たちを思い起こさせ、思わず後方孫自慢爺顔みたいになってしまう。

もはや歌詞の「先輩」の立ち位置になった宮脇さんがしっかり可愛いのはさすがだ。

M12.胡桃とダイアローグ

宮脇さんも一時兼務したAKB48teamA。48の嫡流、本家本元、本丸、ド王道である彼女たちのチームの色が濃く出ており、筆者も好きなこの曲。(MVで指原莉乃さんがリズムをとるところが当時の彼女のヘタレだった立ち位置と違い余りにも様になっていて目を奪われたのだが今探したら何故か公式から消えてしまっていた……。)マンネキャラより取り見取りといった感じのHKT48が衣装チェンジも相まって一気に大人びて見えるからやはり彼女たちもプロである。

宮脇さんの衣装はヘビーローテーションを意識させるが……?

M13.LOVETORIP

続いては「時をかける少女」の主題歌ともなったLOVETORIP。ある種浦島太郎となった宮脇さんの現況とも重なる曲がすっと出てくるのは楽曲の厚さとはやはり強みであるということがよくわかる。

「恋はいつか上書きされているもの だけど最初の切なさ覚えてる」

というのは初夏に聴くと一層染み入る名フレーズである。

M14.ジワるDAYS

指原莉乃さん総選挙一位の曲に続いては卒業ソング。これもまた今の宮脇さんをトレースしたかのような歌詞に驚かされる。

盟友・松岡菜摘さん(PRODUCE48での評価は本当に不当で気の毒)と本村碧唯さん。「君の瞳から涙が溢れたら……」という歌詞を一度は乗り越えたが、三人の涙の表面張力は二番で決壊してしまった。ちなみに筆者は冒頭のメッセージでとうに決壊していた。絶対駆けつけてくれそうなメンバーに歌わせるのはずるい。

「自分の夢をやっと見つけたんだろう?」

という言葉がこんなに似合うアイドルと、「勇気を出して踏み出すんだ」と背中を押してくれるアイドルがいることの幸福を噛み締めたい。

M15.サヨナラの意味

さすが指原莉乃さんの薫陶を受けた人のセットリスト、という感じで差し込まれる乃木坂46の曲。一期生、二期生が並び立ち、間奏でサプライズのエールが贈られる。もう、筆者(おっさん)はボロボロである。

そして宮脇咲良さんもとうとう、万感迫り、胸が詰まって歌うことが難しくなる場面もあった。

ああ、ここが彼女の「泣ける場所」なのだ、と思った。

同期や愛する後輩がいる、彼女の「ホーム」。

だからこそ、「サヨナラ」なのだ。

だからこそ、彼女は卒業をしたのだ、と腑に落ちた。

正直なところ、筆者も始め、卒業発表を予感はしていたけど「もう」か、という気持ちがあったことは否定できない。

彼女のことも、HKT48のことも好きだったから、「帰ってくる」というのは、シングルに一度くらい参加する、ということだと思っていた。

しかし考えれば彼女は、鹿児島から飛び出し、AKBを兼任し、そしてHKT48の大エースの安定をかなぐり捨ててまで異国の地に殴りこんだ凄まじい「アイドル運動量」を誇る人だ。

彼女は安定が自らのアーティストとしての何か大切な部分を丸くさせてしまうことを知っている。鈍くさせてしまうことを知っている。賢いがゆえに、彼女はそれを看過できない。

誰よりもその場所を愛するからこそ、しかし彼女が己をさらに高みに置こうと奮い立ち続ける限り、その場所に長居はできないのだ。

一流のアイドル、アーティストであるが故の宿命、業と言ってもいいそれをまざまざと見せつけられたようで筆者は感動しながらも背筋が寒くなる思いがした。

その嵐の航海の先に何があるのか。あるいは何もないのか。彼女の瞳には今何が映っているのか。果たして今後、彼女が錨を下ろす地は現れるのか。

筆者はただ、見守ることすらできない。それすら振り切られそうなスピードであるけれども。

M16.思い出のほとんど

公式親友(なお警備員さんに制止される模様)村重杏奈さん。しばしば、愛を持って村重と呼び捨てにされる彼女が完全に「あーにゃ」だったステージだった。……と思いきやつけまつげが外れてしまって宮脇さんに華麗にカバーされるというあたり期待を裏切らない。

もともとは前田敦子さんと高橋みなみさんのために作られたこの曲の重さに負けないしっかりとした友情をパフォーマンスでも村重さんの言葉でも見せつけてくれた。

M17.夕陽を見ているか?

いや円陣はずるいよ……。

当初はHKT48はなかなか卒業しない、という空気があったがいつしか、一期生はずいぶん少なくなった。当時末っ子グループだった彼女たちも十年の時を経て、みんな本当に素敵なお姉さんになった。そんな彼女たちが当時のように肩を寄せ合って円陣なんて知ったら泣くに決まっているのである。完全にEDの曲をこんなタイミングで大丈夫……? と思ってハッとして窓を開ければ梅雨の合間の晴れた空に夕日は今まさに沈まんとしており、これまた指原チルドレン恐るべしと震えるのであった。

M18.彼女

Oh……ジスイズジャパニーズアイドル……という宮脇さんの「持ち歌」可愛らしさを損なうことなく、ステージを大きく使ったパフォーマンス、安定した歌唱などこれまた成長をビシビシ感じさせてくれる。ベレー帽似合い過ぎです。キメ顔も完璧でした。

M19.夢でkiss me!

完全にザ・ベストテンでした。現地オタク諸賢がセリフで悶死してしまい、宮脇さんが一躍史上最大のテロリストにならないかどうかハラハラしてしまったが大丈夫だったようである。

「今はダメ」のところの視線移動、宮脇咲良さんの十八番だなと感じる。(霊体で話しながら)

M20.スキ!スキ!スキップ!

これまた懐かしいHKT48メジャーデビュー曲。当時のまま、センター横でしかし抜群の存在力を発揮していた。めちゃくちゃ活きのいい声で歌っていたのが誰なのか気になる。

しかし散々思わされているがこういう曲でしっかり可愛いのは恐ろしい。

M21.しぇからしか!

松岡はなちゃんのスマイルと叫びにはクールビューティ宮脇モードであってもガード無効貫通効果を発揮することが再び確認されていて良かった。

マンモスの時もそうだが今回も曲に合わせてシリアスな顔の田島さんにドキリとさせられる。憑依型の彼女をもっと移してほしかった……。

M22.ウィンクは3回


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これもMVが最高なので是非機会があればFull版を視聴していただきたい。

服装も相まって矢吹・300点・奈子の再来を見ているようで心が躍った。

しっかりと「ウィンクが出来ません」というポジションを死守する宮脇咲良さん……これが「達人」である

M23.メロンジュース

井上ヨシマサ氏が一グループに一曲はそっと置いていくという神曲、それがHKT48の場合はメロンジュースであった。博多座の折に自分も緑のサイリウムの一員となったことが懐かしく思い出される。

宮脇さん自身も最高にハイ!ってやつになって田島さんとの連携がぐだぐだになってしまったのは残念だが、やはりマスターピースであった。

会場、叫びたかったろうに……。

M24.大人列車

 

kimotokanata.hatenablog.com

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 もう、イントロで泣いた。

「知っていた」のである。大人列車に兒玉遥さんがいないと始まらないということを。

久しぶりの彼女はほっそりとして、でもやつれているのではなく健康的な美しさに思えた。

その動きはついさっきまで公演をしていたかのようで、それまでの空白を全て吹き飛ばして再び「はるっぴ」として彼女はその空間に君臨していた。

彼女を迎えるのは松岡菜摘さんと宮脇咲良さん。

はるなつコンビ、はるさくコンビ。もう見られないと思っていたその姿が、グレードアップして眼にある。

またしても歌詞がシンクロする。

「若さとは不器用でやり残すもの」

……来月、はるっぴ卒コンやりませんか?

M25.12秒

矢吹奈子さん考案の「よっ」が響く中、後光を背負って降臨するのはHKTのゴッドマザー、指原莉乃さんである。迎えに行くのは宮脇咲良さんと兒玉遥さん。指原莉乃さん卒コン時に誰もが望みながらも叶わなかった光景がついに果たされたのである。

指原さんの涙をこらえる姿、最後のカウントアップで決壊しつつある様にまたももらい泣きである。

その後の宮脇さんの二人への言葉に成仏したオタク諸賢も少なくなかったのではないだろうか。

M26.最高かよ

最高だよ……。

しかしこんな曲が眼前で展開されて声を上げることが出来ないなんて最高の環境が一転地獄の具現となり、現地組はさぞつらかったことと思われる(防振マット完備で堪能しながら)

やっぱ指原さんのオタクを見つけてびしっと指さすしぐさ、めちゃくちゃ最高だな……。

本編を跳ね回る曲で締め、涙も吹っ飛ばした……かに見えた宮脇さんの目はしっかり充血しており、またも筆者の涙を誘うのだった。

EN1.あなたがいてくれたから

本当に美しいものをというのは不思議なもので、人から語彙を吸い取ってしまう。

天使が降りてきたのかと思った。

十年間。一口に言っても余りにも沢山のことがあったことをVTRで語られた後、我々の前に現れた彼女はそのVTRのどの瞬間よりも美しかった。

その少女としての時間を全てHKT48に捧げた彼女が「大人になれたでしょうか」と涙ぐみながら歌う姿は、万感という言葉がぴったりだ。

スローガンとペンライトの海が、そんな彼女を優しく包む。

ずっとこんな景色が見たかったんだもんな……。

コロナ禍でさえなければその光の一筋になっていたかもしれない悔しさと、この時期でありながら彼女にその景色を見せてくれたオタク諸賢への誇らしさが入り混じった。

その後紡がれる言葉は、かつてHKT48 在籍時の総選挙のスピーチを見事に乗り越えた見事なものだった。

筆者の付け加える言葉は何一つない。

mdpr.jp

無冠の帝王とも言うべきその覇道はしかし、いつもオタク諸賢の祝福に満ちていた。これからもきっとそうであろう。

EN2.思い出にするにはまだ早すぎる


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即Full解禁&サブスク配信という運営の快挙にまず拍手を送りたい。

これまた筆者の言葉は全て蛇足にすぎ、上記を参照してほしい……と締めたいところだが、しかし直筆でつづられる歌詞、汎用性がありながらしかしそこここにどうしようもなく「宮脇咲良」を感じるその詞世界は秋元氏の意地を見せてもらった気持ちだった。

一期生、二期生……と彼女のもとに集うメンバーを見て、かつて筆者が見たHKT48という若芽は宮脇咲良という人が中心となって愛情を注ぎ続け、素晴らしい人材がその年輪となり、いつしか大樹となって豊かな実りを迎えていることを改めて感じ、その歳月の密度とこれからの可能性に脅威と希望を見た。

EN3.君はメロディー

「君はメロディー」がこんなにも卒業曲として破壊力を持っているとは……。もはや涙をぬぐうこともなく歌うメンバーたちの姿……と打鍵する筆者の指もまたぽたぽたと落ちる雫が煩わしい。

特にずっとにこにこだった松岡はなさんの号泣には思わず駆けだしたくなってしまった。

宮脇咲良というアイドルはサビだけでなくイントロもそしてこの後のアウトロも、多くの人に記憶されるだろうという確信を持ちながらも、しかし彼女の輝かしいアイドル人生の一つの「サビ」に今日の日の出来事は記録されるだろうと思った。

EN4.桜、みんなで食べた

残念ながら永遠に続いてほしい時間も終わりがくる。まるで宮脇さん自身もそれを拒むかのように、最初と最後の曲を同じ曲にして、円環にするかのような……。

恐ろしいのはこの三時間ほどの間にも彼女はさらに表現力を上げているように見えるところであるが。

「今日はいい天気だから余計に切なくなるんだ」

梅雨のど真ん中の開催でありながら晴れを引き当てたのすら、彼女の計算であるように思えてしまう。

再びの彼女の感謝の後、桜色の祝砲が弾ける。

桜が舞い、散り落ちていく。メンバーのもとに、オタク諸賢のもとに。まるで涙を、悲しみのリーズンを拭い去ろうとしているかのように……。

そうして彼女は我々の心のブーケに最後の一花を挿してしばしのお別れをしたのだった。

桜の花言葉

ソメイヨシノは「純潔」。

しだれ桜は「優美」

八重桜は「しとやか」

英語ではmoral beauty(精神美)。

なるほどどれも彼女を想起させる言葉ではある。

でもここで、コンサートタイトルのbouquet(ブーケ)が効いてくるのではないかと筆者は考える。

bouquetはフランス語であるというので、フランスの桜の花言葉を引いてみる。

 

Nem’oubliez pas」

 

和訳すると――

 

――私を忘れないで。

 

忘れられるわけがないではないか。

 

十年間お疲れさまでした。少しでもゆっくり休めますように。

また会えることを楽しみにしています。

 

 

43rd Single「君はメロディー Type C」初回限定盤