カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

2023年第三弾公募チャレンジ結果発表

2月は逃げるとはよく言ったもので――という書き出しが果たしてこの世の中にどれだけあるのだろう。しかしただでさえ加齢で時が過ぎるのが早くなっている上に昨年からゾンビのようによみがえってきた業務案件などもあったりして本当に2月は一瞬だった。明後日は2月28-Ⅱ日とかにしてもらわないと困る。2月28-Ⅻインターナショナル日くらいまで2月には頑張ってもらわないと非常に困る。

さて昼休み、とはいえ業者さん来訪待ちで外出は難しいという微妙な状態で筆者は自分のデスクでTwitterを開いていた。今日は皆で焼き肉~♪という15時間前のフォロワーさんのツイートが目と胃袋を刺激する。おすすめタブ、筆者の食欲を破壊するためだけの機能かよ。

見づらくなって久しいツイート群を追い、一言二言つぶやいても見て、筆者は何の気なしに下部の虫眼鏡アイコンをタップした。トレンドでも見てみるか、と思ったのかもしれない。
が、筆者の手指はそのまま今度は画面上部の検索窓を意図せずタップし、検索候補に「東京創元SF」がサジェストされた。

第14回創元SF短編賞。およそ10年前から筆者がその存在を認知していながら、ことごとくタイミングを逃していた賞に今回筆者は満を持して作品を出すことが出来た。
公募提出前は志を共にする人々や既受賞作の感想を述べる人たちのツイートを見て己を奮い立たせる手段として、提出後は定期的に選考結果発表を確認漏れしていないかのチェックとして、しばしば検索していた。

昨年は月末。なので今年も今日か明日辺りであろう――。
――今のうちに確認しておくか。

「東京創元SF」のサジェストをタップして、ツイートを検索する。
「話題」(これもどうなんだ)タブには「東京創元社」様のアカウントのツイートがずらり。(東京創元社のマスコットはくらり)
その中に、第14回創元SF短編賞の1次選考結果を知らせるツイートがあった。
3日前のツイートであった。金曜日は木曜祝日の留守を狙ってメールボックスに投げ込まれた案件を片付けているうちに過ぎ、土日は娘様に遊んでいただいていてTLを追うどころではなく、そもそも先述のように今日か明日だろう、と思って検索していなかった。まったく迂闊であった。

しかし、「受賞者のことば」みたいなのを参照すると「いい感じに忘れている」ことはいい結果を産むことが多いように思う――なんて誰も見ていないのにへらへらを気取りながらも、心拍数が上がっているのを感じる。自分を励まして、体温が移って生ぬるいスマホを今一度タップする。
選考通過者は50音順に並んでいるようだった。


木本仮名太(きもとかなた)という筆名は、1次選考を通過した68名の中には見つけることが出来なかった。
一応、最下段まで確認してみる。ない。

やおらPCを立ち上げ確認してみる。ページを「木本」で検索してみる。0/0。
当たり前だがスマホとPCで結果が変わることなどあろうはずはない。

第14回創元SF短編賞1次選考落選。

久しぶりだなあ、と思う。
いや、また感じ方が変わった気もする。

愛する家族との時間を削り、労働の後の自分を叱咤し、敬愛するブログを読むことを我慢し、他のあらゆる娯楽に背を向けて、孤独にPCに向かって生み出した作品は、世界で5人だけが知っている作品となった。(選考委員の方が4名いらっしゃる)

もともと10年以上の付き合いである筆者の中で最も愛着のある作品をこの賞向けに化粧直しをして出したもので、これで1次選考も通らなかった、というのはなかなか堪えるものがあった。

とはいえそれは同時に、今回「産みの苦しみ」としては然程ではなかった、ということでもある。今後全くのさらの状態から仕上げた作品が同じようになって、気力体力が衰えた筆者は果たして受け止めきれるだろうか、と恐ろしい気持ちにもなった。

今回提出した作品は面白い、と筆者は信じている。いや、知っているのだ。初めてこの作品が世に生まれておよそ15年間、読むたびに「いい話だなあ」と自賛してきた。場面場面の映像が浮かぶ。登場人物の声がする。息遣いが聴こえる。むかしむかし、本州に身一つでやってきた薩摩の芋がサークルで居場所を獲得できた、とても大切な作品だ。

だから、悔しい。この面白さを筆者はしっかり出力が出来なかった。公募の規定に達するため冗長に書き加えてしまった部分があったのではないかと今になって思う。選考いただいた皆様はもちろんのこと、作品に、過去の自分に申し訳がない。

いつかもっと良い形で皆さんにお届けしたいと思うので、ここでは内容はあえてお話ししません。

しかしまあ、このタイミングで知ることが出来て良かった。発表された金曜日に知っていたら、土日はぼけっとして娘に張り合いがないと思われていたかもしれない。全力で遊んでくれた娘の笑顔の貯金で今週は頑張れそうである。

初っ端大黒星スタートでめちゃくちゃに恥ずかしいのですが、ここで激励いただいた皆様への礼儀としてご報告させていただきました。引き続き頑張ります。