カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

可哀想だたあ惚れたつて事よ、あるいはPRODUCE48&第10回AKB48世界選抜総選挙感想

余談

博多座公演もはや3年前。これ以来、アイドルのイベントには参加していない。妻の現在の夢の一つに「AKBグループの公演を見る」があるらしいので、なんとか実現させたいものである。

妻の中でアイドル熱が再燃しているらしく、ここ最近でHulu配信のアイドル番組をザクザク見た。「さしきた合戦」「今夜はお泊りッ」「セトビンゴ!」など。もう完全に同世代というか妹というか親戚の子どもみたいな感じになっていて、ただただ「がんばれ…」という気持ちになる。目下の希望は「にいがったフレンズ」がHuluで配信してくれることです。

 

本題

PRODUCE48が日韓同時放送するという。

鹿児島の誇るアイドル・宮脇咲良さんが楽曲でセンターを務めるという話は聞いていたが、詳細は全く知らなかった。というか楽曲が出来ていてセンターも決まっているということは知らないうちにもう終わっているものだと思っていた。

そうではなく、収録されたエピソードを配信し、そのタイミングでリアルタイムで投票を行い、その結果によって以降のメンバーの生き残りが決まるというサバイバル番組ということを知り、またその初回放送が間もなく行われるということを知ったのは先週の木曜日であった。

ちなみに下記が楽曲である。とてもネコネコカワイイですね。あくまで暫定の序列であり、ここからいろいろな変動が――もちろん人数の絞り込みも含め――行われるのであろう。最初は圧巻の96人である。


[ENG sub] PRODUCE48 [최초공개] 프로듀스48_내꺼야(PICK ME) Performance 180615 EP.0

放送されるのはBSスカパー!であり、選抜総選挙も同様。ということで2週間無料お試しを使って乗り切ろうと考えていたら選抜総選挙は無料お試し対象外であってやはりうまく出来ている。観念して基本パックを契約した。

PRODUCE48#0感想

そもそもPRODUCE48とは、先程も少し述べたが、アイドルデビューを目指すサバイバル番組である。そういうコンセプトである韓国の人気番組「PRODUCE101」シーズン3にAKB48グループのメンバーを含めた、96名でスタートして、最終的には12名でのアイドルデビューを目指す、というコラボレーション企画として「PRODUCE48」が生まれた、ということであるらしい。

ということで、PRODUCE48#0は前回のシーズン2(男性アイドルグループデビューに向けたサバイバルであった)のメンバーが司会となってPRODUCE101シリーズのコンセプトや、PRODUCE48参加者のピックアップなどを中心として話が進んでいく。有り難いことに字幕がついているのだが、どことなく機械翻訳というか忍殺感というか味わいのある翻訳であり、ちょっと気になる頻度で誤字脱字文字化けがあったりする。まるまる字幕がないところもあったりする。まだ手探り段階なのだろうが、ここはもっと改善が見られれば良いなと思った。

司会の男性メンバーのことは全く知らなかったのだが、サバイバルを勝ち抜いただけあって、60分見終わるころには不思議と愛着がわいてきたりする。

参加者のピックアップ動画で特に気になったのはこちら。


[ENG sub] PRODUCE48 AKB48ㅣ코지마 마코ㅣ너구리가 있으니 안심하라구! @자기소개_1분 PR 180615 EP.0

参加者のPR動画はyoutubeに掲載されているのだが、まず目を引くサムネイルにしているのが上手い。また、「たぬき顔」は以前、彼女のコンプレックスだったのだが、それによって認知されることを受け入れ(前述した男性アイドルたちにも「たぬき顔で有名」として認知されている)、強かに利用したところにアイドル力を感じる。

PRODUCE48#1感想

さていよいよ本番、23時から翌1時半までという狂気の沙汰の放送枠だが、妻と2人ばっちり最後まで視聴してしまった。

正直なところ我々夫婦はK-POPには全く疎いので、韓国サイドの参加者(練習生と言われていた)や、その所属事務所の力関係などは全く分からず、とにかくそのルックス、スタイル、ダンスや歌唱スキルのレベルの高さに圧倒され続けた。

練習生たちは審査員たちの前でアピールし、それによって暫定的にA~Fのクラスにランク分けされる。最初の試練というわけだ。

その高いレベルで次々とA,Bクラスに振り分けられる韓国練習生たち。その中で、筆者のような門外漢から見てもどうみても残念な歌、ダンスをする、ルックスは百点満点の練習生たちは容赦なくFクラスが突きつけられていく。

戦慄する日本練習生=AKBグループの参加者たち。最初に舞台に立ったチーム8の2人は紹介で「日本でダンスバトルとボーカルバトルの1位にそれぞれなったことがあります」と最大限にハードルを挙げられる。が、それはAKBグループの内輪番組の1企画に過ぎず、気の毒になる下駄の履かせ方である。その先入観も仇になったのか、2人の評価はFとD。審査員からは「舞台に上げられるレベルに達していない」という厳しい言葉が出る。その後もAKBグループへの酷評は続く。「ダンスがあっていない」「オーディションで何を評価されたのか?」 などなど。メンバーの目から次々と涙がこぼれていく。

そんな中、「日本のアイドルは正確さよりも愛嬌」というフォローをすぐに打ち出した今田美奈さんは素晴らしかった。

アイドル達も、そして審査員も「求められるアイドル像」の日韓の違いに戸惑う中、あるアイドルが彗星のように現れる。

 
PRODUCE48 [1회] ′감기는 아닙니다!′ 스튜디오를 장악한 허스키 보이스ㅣNGT48야마다 노에 180615 EP.1


NGT48 Team NIII 山田 野絵 (NOE YAMADA)

山田野絵さんである。彼女の登場により、場は一気にアイスブレイクし、誰もが笑顔になる。そうなんだよな、と思う。アイドルって、皆を笑顔にするお仕事なんだよなと。

その瞬間、会場の誰よりも山田さんはアイドルであった。審査員ははじめAクラスの判断を下すが、なんだかんだでCクラスとなる。それでも今までの最高評価である。

また、直前で韓国練習生とまさかの「ダンシング・ヒーロー」被りをした竹内美宥さん率いるユニットも素晴らしいジャズ・アレンジで審査員たちを惹きつけた。


PRODUCE48 [단독/1회] 셀럽파이브의 재해석ㅣAKB48타케우치 미유, 고토 모에, 이와타테 사호 180615 EP.1

しかし未だに、A、Bクラスを獲得できない中、いよいよ超選抜の松井珠理奈さん、宮脇咲良さんが舞台に上がる……ところで次回へ。引きが上手い。

ちなみに今回放送中に集計された投票では宮脇咲良さんが1位であった。

とにかく美少女たちがわちゃわちゃするという状況に圧倒され時間がものすごい勢いで過ぎていった。韓国練習生のバブリーダンスに活路を見出した歴の浅いユニットや、有名グループに入りながら半ば飼い殺しにされていた暫定センターなど、96人それぞれのストーリーをもっと知りたいと思う。常に右下あたりに名前が出ているとすごく有り難いのだが……。

審査員の皆さんも正しくプロ、といった形で厳しさがありながらも、しかしそこから引き上げて見せるという自負も感じられてよかった。果たしてどんなレッスンが待っているのだろう。

韓国のアイドルは客前に出る前に「完成」されるが、日本のアイドル(少なくともAKBグループにおいて)は発展成長するところに意義がある、という違いが明瞭に表れていて興味深かった。ここからどうやってMVの完成度に繋がるのか。来週以降を楽しみに待ちたい。

第10回AKB48世界選抜総選挙感想

○第100位 大家志津香さん

悲願の再度のランクイン。100位という順位のバラエティでの使い勝手の良さ。最高の武器を手に入れたのではないだろうか。指原莉乃さん&HKT48による投票配信も記憶に残った。

○第99位 石田千穂さん

もっと上かと思っていたので意外。個人的にはSTU48で一番美人さんだと思う。

○第94位 馬 嘉伶さん

台湾は妻が思い入れのある土地であり、現在のチームに所属するまでの紆余曲折もあり去就が気になっていたメンバーなのでランクインしたことがとてもうれしい。

○第91位 山田野絵さん

PRODUCE48の放送がもう少し早かったら、もっと上に行けていたのではないか。スピーチも面白かった。「面白い空気」をこの段階で纏っているのはすごい。今年絶対に外せないメンバーだと思う。

○第85位 下野 由貴さん

ついにランクイン。1期生の安定感で今後もHKT48を支えてほしい。

○第74位 瀧野 由美子さん

直前のSHOWROOMではちょっとネガティブな感じで、スピーチもちょっと上の空の感じがあった。SHOWROOM選抜も外れてしまったこともあり、やや心配。現状に満足してほしくはないが、気負いすぎないでほしい。WRD48にも選抜されたし、踏ん張りどころである。

○第73位 秋吉優花さん

痛みに耐えてよく頑張った。感動した! 本当はもっと美人さんなのにちょっと顔パンパン気味で残念。

○第69位 小熊 倫実さん

妻の中で今最も熱いと思われるメンバー。フワフワしていてしぐさがとても可愛らしい。NGT48とは違う、選抜でどのようなカラーを見せてくれるのか楽しみ。

○第37位 中井 りかさん

SHOWROOM選抜1位でありながら、運営をしっかり批判したり、事前に話して文春砲つぶしをするなど、立ち回りが相変わらず飽きさせない。SHOWROOMがなければアンダー入りも十分可能性があったのでは。半同棲とのうわさがあるが果たして。

○第30位 加藤美南さん

推され方と順位がやっと追いついてきた感じ。キャプテンとしてどう成長できるかで来年の総選挙の結果は全く形を変えるのでは。とりあえず髪型は一体何があったのか気になって仕方がない。

○第16位 本間日陽さん

本間さんがセンターを務めた「春はどこから来るのか?」の歌詞ではないが、いつの間にかどんどん綺麗になっていて驚く。小熊さんもそうだが、さしきた合戦のころと比べると隔世の感がある。


〈期間限定〉 NGT48 3rdシングル「春はどこから来るのか?」MUSIC VIDEO Full ver. / NGT48[公式]

s○第15位 古畑奈和さん

選挙期間中の騒動からの逆転ホームラン。そのばたばたがなければ地元名古屋であるしもう少し上に行けたのでは……と思えてしまうのがちょっと残念。

○第11位 惣田 紗莉渚さん

速報圏外からの選抜入りという史上類を見ないジャンプアップ。その分、選挙期間中のことが今後もチクチク言われそうなのはちょっと心配であるがファンの熱量は十二分に伝わった。

○第10位 田中美久さん

やったー! 選抜やったー!

そういうわけで筆者の世に言う推しメンは田中さんであって微力ながら投票をしたりもしたのでこの結果は大変うれしい。毎回全体的なボーダーが上がっているので、今回は20位~15位くらい……正直選抜に入れるかどうか……本人も言及していたが、「届きそうで届かない」ことが多く、今回も…と思っていたのでこの大躍進は見事だった。このあたり、田中さんが目指すメンバーの一人でもある柏木さんが神7の壁を突破したときのような感動があった。あるいは速報で17位だったことが一層ファンを奮起させたのかもしれない。

番組ではお父さんをくさすことも多いが、今回は素直に感謝していたことも印象的。

本当にめでたい!

○第9位 矢吹奈子さん

もう「なこみく」がここで並んでいるというのがエモい。今後ともその対称性でHKT48のみならずAKBグループ全体を引っ張っていってほしい。田中さんのお父さんに対して、矢吹さんはお母さんに言及しているのも好対照。

○第5位 岡田奈々さん

AKB48及びSTU48内で一番ということで求められるもの、自らに求めるものが多くなってしまって大変だと思うが真面目一辺倒でありながらユーモアを感じさせるあえて「オタク」呼びでのファンへのエールは素晴らしかった。今回のベストスピーチでは。

○第4位 荻野由佳さん


<期間限定>NGT48『世界はどこまで青空なのか?』MUSIC VIDEO Full / NGT48[公式]

情念のアイドル荻野さん。本当はもう少し一段ずつ上がってくるタイプのアイドルなのではないか、と思いもするのだが、前回の大躍進を自分なりに消化し、昇華しているようで安心。彼女もどんどん綺麗になっている。

普通の少女がアイドルに、という現在のAKBグループで最もAKB的なアイドルだと思うので今後も頑張ってほしい。上記MVはまさに「AKB系アイドルになるということ」を表現しきっていてスゴい。

○第3位 宮脇咲良さん

「バック・トゥ・ザ・さくら」という企画をされていたころからずっとファンで、同郷ということもあり応援しているのだが、(妻は握手会にも参戦したりしている)前回より大幅に票を伸ばしても1位には届かなかった。

本人は悔しいと思うが、立派な結果だと思う。少なくとも謝るようなことは何もないはずだ。彼女が一番、「指原さんの幻影」と戦っているように思う。早く脱却してほしい。少なくとも以前の彼女なら、これもまた「PRODUCE48」のストーリーの一つになると賢く考えることが出来たはずだ。

スピーチで背中を見せることに言及しておきながら、体調不良等やむを得ない事情があったのかもしれないが、フォトセッションを欠席してしまったのは残念だった。

一人のアイドル宮脇咲良として、気負わず頑張ってほしいと思う。

○第2位 須田亜香里さん

圧巻であった。一度崩れかけたものをしっかりここまで、雨降って字で固まるを地で行ってやり遂げた。もちろん本拠地ブーストもあったにせよ、ここまでとは。外仕事を多くこなすからこそ、グループへ苦言を出した。これは前述したAKB内輪番組の企画が独り歩きしてしまうことへの危惧ともとれる。ここまで上り詰めた人間だからこそ、外へ目を向けなくてはいけないという言葉が重く響く。放送後のAKB48SHOWでも松井さんへのフォローが印象的であった。

○第1位 松井珠理奈さん

悲願である栄冠をついに手に入れた。燃え尽きてしまうのでは……と思えたが、今のところその心配はなさそうである。ただ、総選挙後の生放送ではさすがに電池切れのようであったが……。長期政権になるかどうかはプロレス的な言動をどこまで曲解されないか、ということにかかっているように思う。熱い気持ちを言葉にしっかり落とし込むトレーニングが今よりもっと必要になるだろう。そういう時、須田さんや宮脇さんが上手くフォローしてくれたらよいのだが。

〇全体として

地元開催ということもあり、いつも以上にSKE勢が存在感を放っていた。基本的にはスピーチも皆さんそつなく、安心してみていることが出来た。初めて最下位からリアルタイムで見たが、回の方が時間が短い分、端的にまとまっていてわかりやすい。

後は後追いのスキャンダルなどでがっかりしたくないなあと思う。

蛇足・圏外だけど筆者が今後来る…! と思っているメンバー


STU48 甲斐 心愛 (KOKOA KAI)

甲斐心愛さん、カープ女子なんて生易しいものではないカープキ…ファン。普通14歳のお嬢さんがノムケン引退スピーチをパロディしますか? いや広島県の女子ならするかもしれないけど……セトビンゴ、STU裏ストーリーを見るにつけどんどん好きになってしまうアイドル。絶対隣の席にいたら勝手に消しゴム借りていくタイプのアイドル。オーディションを受けた理由が高校面接の練習というから本物である。応援していきたい。

大河ドラマ「西郷どん」第二十二回「偉大な兄 地ごろな弟」感想

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こんな施設が中心街のど真ん中にあるのが鹿児島のすごいところ。猿叫が響いていた。

余談

筆者が五年だか前に初めて作ったクレジットカードが更新された。作った頃は2018年の5月なんてはるか未来だと思っていたが、いつの間にやら到達してしまっていた。まずは6月最初の日曜日に高速を使う予定があったので、早速連動しているETCカードを差し替えて安心していたが、その後美容院で精算時に古いカードを使ってエラーが出てしまってたいへん恥ずかしい思いをした。

ちょっと間があってヤンジャン電子版を買おうといつものようにワンクリックするとエラーが出てしまい、そこでそういえばこれも期限の切れたカードに紐つけていたんだと気づく。Huluを見ようとPS4を立ち上げるとここも「お前のカード期限切れてない? 次回の更新できないよ」とアラートが出ており、ここに至って「あれ? もしかして同じカードで期限更新しただけでも再度登録しないといけないのか?」ということに思い至る。他にもジャンプ+であったり各種公共料金、インターネット代、ウォーターサーバー代などがここから引き落とされるようになっている。ちょっと調べてみると場合によってはカード会社と連携して勝手に更新してくれるが、そうでないことが多いらしいので時間を見つけて対処しなければなるまい。

ただ、Amazonのワンクリック決済が現在エラーになることで少なくとも4回ほど書籍の衝動買いを抑えられたという思わぬ効果もあり、Amazonに関してはもう少し更新しなくてもよいかもしれない……と思ったりもしている。

かつて某レンタルビデオ店で筆者がアルバイトをしていた時、そこではクレジット機能付会員証のスタッフ一人当たりの(もちろんパート・アルバイトを含めて)「目標」が定められていた。といってもアルバイトの場合は月に2~3件程度であり、達成してもしなくてもバイト代が下がるということはなく、1件当たり何百円か獲得したら手当がつく程度であった。筆者はそこで4年間アルバイトをしたが、その間にも目に見えてクレジット機能付会員証のメリットは減少していき、4年目に「目標」は事実上消滅した。促進対象から外れたのである。

その当時筆者がクレジットカードに対して持っていた印象は相当にネガティブなものであった。実家がいつもニコニコ現金払い主義であったことも起因するだろう。なので、結局自分ではカードを作ることもなかった。

社会人になってカードを作成したのは所謂お付き合いからで、まあ1枚くらい持っていてもよかろう、という気持ちで作成した。その後「お付き合い」で3枚作った。VISA、JAL,MASTERと取り揃えている。

Amazonのワンクリック決済という悪魔の存在により、いつの間にやらカードへの抵抗は格段に下がってしまった。それまでは振込手数料を犠牲にしてでも現金払いであったが、利便性を求めてカードの入力で済ましてしまう。学生時代、デッドライジングの体験版がカードがなくてできなかった憂さを晴らすかのように、ゲームもカードでDL版を購入することが増えた。シリアルコードをちまちま打っていたあの頃の筆者はもういない。

けれど、時々自問することがある。あらゆるものを手軽に引き寄せることが出来るようになった代わりに、購入するまでのあの苦しくも楽しい日々をいつの間にか失ってはいないか、購入した後その対価分しっかりと自分の中で咀嚼し、消化し、昇華できているか。一つ一つの体験が薄まってはいやしないかと。そして多分、今のところ、残念ながらそれはイエスなのである。なんだったらクリックしたときが興奮のピークであったりするかもしれない。

ということで暫く、クレジットの使用を戒めたいと思う。副次効果として積み本の解消も期待されるはずである。でもヤンジャンは買うけどね。

 

本題

大河ドラマ「大島三右衛門」第一話、なかなか良かった。久光と吉之助はこれから死ぬまで「斉彬トップオタ」をお互い一歩も譲らない、ということが改めて確認できた。しかし、斉彬は生前「お前はわしになれ」と吉之助に遺したが、それは斉彬と同じ感じで久光に話していいということではないと思うぞ。上司だぞ。その上命令違反で勝手に京都に行ってしまう。生きていることも一瞬でばれてしまう。そんなヤバレカバレで大丈夫なのだろうか。しかし死地を超えた男のオーラというのは判る人間には判るのか、有馬新七の暴走をいったんは収めることに成功する。このあたり、脱藩を止められなかった正助との対比が判り易くて良い。世が世であれば「正助人望なさすぎワロタwwwwww」スッドレが乱立していたはずである。

参考:世が世であれば立っていそうなスッドレ

・死人だけど何か質問ある?315流

・【極秘】薩摩藩がとうとう幕府に対して兵をあげるらしい【密勅】

・お前らのオススメの店in京都

・【国父】島津久光592チェスト【四賢候】

・【名君】島津斉彬40002ゴワス【多才】

・僕の蛤御門も閉鎖されそうです

脚本は相変わらず省略されまくっているが、鈴木良平さんの深く落ち着いた演技が説得力を与えている。

今回台風の目となったのはいよいよ満を持して錦戸亮君にクラスチェンジした信吾であった。かつてDV彼氏役を演じた時余りのその迫真の演技ぶりに好感度を下げたといわれる錦戸君の演技は確かに素晴らしいものがあり、自分個人ではなく「吉之助の弟」として見られることのつらさ、もどかしさが痛いほど伝わってきた。そして根底に流れるのは多感な時期に大好きな兄が遠くへ行ってしまった寂しさであるということも。まあそれを流されるときとかにもうちょっと描写してくれていればもっとよかったんですけれども。信吾のしたことで記憶に残っているのって菅との初夜時に布団に入ってきたことくらいだよ。

信吾がその複雑な心境を吐露するシーンは、今回のタイトルがダブルミーニングであったことを視聴者に印象付けつつ、何気に吉之助自身も「膨らんだ『西郷どん』の勇名」に戸惑っていることがわかるのも物語上重要である。この後西郷吉之助は幕末をある時は表玄関から堂々と、ある時は裏口でちょこちょこと跋扈するのであるが、その人物性は一貫していないことが多い。それはその虚実が判然としないということもあろうが、それ以上に「西郷どん」というのが「西郷吉之助個人」という枠組みをはみ出していわば共同ペンネームのような形で使用された、「西郷印」の旗のもとにあらゆることが執行されだした、ということではないかと筆者は考えているのだが、この展開はその推測にリンクするようでちょっと嬉しい。

そして平野國臣がまさかの登場。今かよ! 今出てきてもポカやって捕まるシーンくらいしか見どころがないのでは…(やらなそう)久坂玄瑞吉村寅太郎なども思い出したように出演したが、果たして今後どれだけ出番があるのやら。

紀行で述べられたように和宮と家茂が結婚したり、坂下門外の変があったり、そもそもなんで久光が出兵しようとしたかいうと長井雅樂という長州藩士の政策がもてはやされていることのカウンターという理由が一面としてあったりするのだが、語られない。特に家茂関連はあれほど篤姫に情熱を割いていたのにスルーするとは思っていなかったのでちょっと驚いている。

そんなこんなで来週は幕末薩摩の悲劇、寺田屋事件である。それまでにもう少し郷中の皆を掘り下げてくれていたらもっと劇的な描写になりそうなのだが、また思い出したように回想をねじ込むのだろうか。役者さんの熱演を楽しみにしたい。

大河ドラマ「西郷どん」第十九回 「愛佳那」第二十回「正助の黒い石」第二十一回「別れの唄」感想

余談

相変わらずゴールデンカムイ熱は冷めやらず、月曜日は一日の最後にゴールデンカムイアニメが見られるから……ということで鹿児島は鹿屋のくまざわ書店さんであった複製原画展に言ったりしていた。ついでに白石を確保したりした。

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ショッピングセンターの一角にある本屋さん。クマさんがアシリバさんのバンダナを!

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妻が「精神成長が止まっているので実質ショタ」と断言する尾形

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濃すぎる! アニメに鯉登少尉は出るんでしょうかね

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正解したらしおりがもらえるキャンペーン。こちらはまだやっているぽい。

ゴールデンカムイ熱はいまや北海道熱に延焼していることも以前述べたが、ますますその思いは強くなり、しかし家計は自動車税に加え夏には車検も控え、また繁忙期でもあり、北海道への憧憬は露と落ち露と消えにしおもひかなヒンナのことも夢のまた夢という有様でそんなタイミングでアニメカムイはニシン回で臍をかんでいた。

妻「いっちまえばいいじゃん、霧島によ」

霧島? 何故北海道を求め霧島なのか? 浅薄なる筆者は気づかなかったが妻は鹿児島の誇るふるさとのデパート山形屋のHPを指し示した。きりしま国分山形屋で初夏の北海道物産展がまさに開催中ではないか!

我々は車を急がせ、途中山形屋ショッピングセンターに間違えて到着したりしつつ、会場へ到着した。山形屋本店の冬の北海道物産展は鹿児島のどこにこれだけ人がいるのかというくらい盛況であり、我々も毎年その戦列に加わるのであるが、初夏の北海道物産展は初めての参戦となった。正直北海道は冬のものがいいだろう、という油断もあった。

そうではなかった。冬のもの「も」いいのだ、ということを今回思い知ることになる。

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鹿児島の北海道物産展が全国で最も売り上げがよいという

 

 

1000円でうまみしみ込んだステーキ丼を食べたり、

 

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憧れの鮭のルイベは勿論イカが恐ろしくサクサクしておいしかったり、

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しゅうまいより餃子派だった筆者が脱帽するほどのシウマイを食べたり、

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回転焼き(大判焼き/御座候/今川焼)の常識を覆すもちもちしたスイーツを食べたり、

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北海道限定を薩摩で味わう背徳感をスパイスにますますおいしいポ先生(コンプライアンスに配慮した表記)や土方も絶賛したサッポロビールを飲んだりした。

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実は他にも色々と買いあさってしまったのだが、取りあえずはこの辺りで。

本題

大分間が空いた間に大河ドラマ菊池源吾」が完結してしまった。

相変わらず起承転結のつけ方が下手というか、なんというか……。

「アンゴ(島女房)」ではなく奥さんになってほしい、という吉之助の言葉は良かったが、そこにはやはり吉之助自身も感じていない空虚さ、誤魔化しがあり、それが本妻…正助が迎えに来たときに露見する。愛佳那はそれ以前より感じ取っていたようだが。

少年漫画愛好家であれば思い当たる点があったかもしれない。

「はじめの一歩」の登場人物「伊達英二」である。日本フェザー級チャンピオン・伊達はかつて世界王座に挑戦したがその壁は厚く、引退し、義父の会社に入りその「ごく普通の生活」にやりがいも感じ始める。しかしその様子を見て妻は嘆く。「貴方がメキシコから帰ってきていない」(世界挑戦はメキシコで行われた)と。その言葉に自分が未練たっぷりの死人であることに気づいた伊達は、カムバックを決意し、そして再び王座を掴むのである。正しく一度死んだ男に女房役が未練を指摘し、カムバックに繋がる今回の流れではないか。

文字通り斉彬の懐刀であった吉之助が斉彬自身に授けられた懐刀を渡されることで揺さぶられる、という演出も王道であるがよい。この辺りは近いところで言うと谷垣と村田銃の関係に相似性が見られる。

そして再び吉之助は吉之助として、本土へ戻っていくのだった……いやあの小船じゃ絶対無理だろ!

 

……皆が「吉之助は薩摩をしょって立つ人間」「日本を変える人間」と持ち上げてくれるけれども、やっぱりその理由が全く分からないまま本土に戻ることになった。いや、中央でなんかしてたからすごいんだろう、というのはある意味地方のリアルであるかもしれないが、視聴者としては「このまま奄美で暮らしていた方が幸せなのでは?」と思えてならない。

正助、久光主従はなかなか面白い。久光、国父という響きが嬉しそう。青木さんもそれに合わせてちょっと増量したように見える。繰り返しになるが、今大河の注目は新しい久光像を掲示してくれることだと思っているので、引き続き期待したい。正助はビックリするくらい人望が相変わらずなくて笑う。軽々に立つな、という正助の見解は未来の視座から見ればむろん正しいのだが、郷中の連中とすれば今立たずしてどうする、であり、実際そんなことしているうちに桜田門外の変で水戸に抜け駆けされてしまっているのである。(井伊直弼の粛々とした退場はとてもよかった)しかも初期から出ている茶坊主出身の有村俊斎の弟(有村次左衛門)が井伊直弼を打ち取ってかつ死んでいるのである! どころかもう一人の弟も後々切腹させられるのである! せっかく幼少期から有村が登場しているのにその辺の描写が一切ないのである! というかそもそも西郷と月照と一緒に有村も命からがら逃げてきているのである! あまりにもったいない使い方ではないか。正助も安政の大獄がいいわけはないと判っている。井伊の言いなりになっていいわけ? と思っているはずなのである(あっ石を投げないでください)しかし大局を見るがゆえに動けず、しかしその間に実に薩摩人らしいムーブをした幼馴染が首魁の首を挙げ、またそれ故に同じく幼馴染が切腹しなければならない……その葛藤をきっと瑛太さんならしっかり演じてくれたはずなのだが、そんなことはなかったのが全く残念でならない。

久光、斉興の会話もなかなかよかった。斉興、斉彬、久光の誰が欠けても幕末・明治の薩摩の軌跡は成り立たなかった、というのが歴史のドラマティックたるところであるが、このうち久光だけは藩主ではない。それ故にこの後薩摩はまた人一倍苦労するのであるが、まずはその端緒が吉之助と久光のフルースタイルバトルという形で次回見られるようであるので楽しみに待ちたい。

しかし相変わらずお由羅の画面制圧力が恐ろしい。お久しぶりねってやかましいわ。

 

お久しぶりね

お久しぶりね

 

 

わが罪はつねにわが前にあり、あるいは入門に最適「天才柳沢教授の生活」11巻を是非読んでいただきたい話

余談

大勲位こと中曽根康弘氏が満百歳のお誕生日であるらしい。江田島平八の学生時代の友人であるというからすごい。この間、キン肉マンを読んだら故・大平首相が出ていた。どの漫画にどの首相が出ているか、というのを一度調べてみると面白いかもしれない。ぱっと思いつくのは脳噛ネウロに結構(パロディだけど)出ていた気がする。あとは刃牙とか。こっちは大統領が多いか。長期連載だとこういうところ大変だなあと思う。そいうえば空条承太郎の好きな力士は千代の富士だったが、彼がエジプトから帰還するときにはすでに引退していたという話を聞いた覚えがある。その千代の富士も今や鬼籍に入ってしまった。

話を中曽根氏に戻して、「戦後政治の総決算」を掲げ首相となった氏がそれを果たせたかどうかは筆者のような若輩では到底計り知れないが、しかしその存命によって未だ「あの時代」が厳然たる歴史ではなく政治経済の文脈で以て主だって語ることになっている、というのはあるのだろうな、と考える。そういう意味で間違いなく主に政治史の分野にて「戦後」の大部分を一人で引き受けられている訳で、恐ろしい方である。回顧録の出版からすら既に三十年近くたつということで、是非回顧録第二弾を出していただきたいものである。

中曽根氏が満百歳になりつつ、先週は西城秀樹さん、朝丘雪路さんなど名だたる方が鬼籍に入られた、または既にそうなられていたことがわかった、という憂鬱な週でもあった。ジャンルは違うが元TOKIO山口達也さんの報道の時も感じたことであるが、暗いニュースに際し明るい「それ以前」の映像資料を延々と垂れ流すことが、一度はいいとして、連日もあると、かえってその頃と現実との高低差に知らず疲れてしまうのだな、ということを思い知った週でもあった。

いつか、それは明日であるかもしれないが、そんな風には取り上げられずに筆者は死ぬとして、それまでに「このブログもう更新されないんだな、ちょっとさみしいな」という読者諸賢を少しでも生み出したい、増やしたいと思いながら、生活は続く。日常は続く。

本題

本記事がブログ記事50記事目ということで、長らく追いやってしまっていた天才柳沢教授についての記事を書きたい。本来は土曜日のうちに書いてしまうはずだったのだが、疲れからか、黒塗りの乗用車にはぶつからなかったものの、あ、これこの間も書いたな、ともあれなんだかもへへんとしてしまっていたので、二週連続で西郷どんの感想は月曜以降となってしまいますがご容赦ください。

何故「11巻」なのか

さて「天才柳沢教授の生活 11巻」についてこれから話をさせていただくのだが、読者諸賢は何故もちろん始まりでなければ最新刊でもない、キリの良い10巻などでもない11巻なのか、と思われているかもしれない。

それには三点ほど理由があって、

  1. 天才柳沢教授の生活」は基本的に一話完結であるのでどの巻から読んでも面白い
  2. 11巻は柳沢教授を多方向から切り取ったエピソードがあり、入門に最適
  3. 「オーロラ姫の眠り」という珠玉のエピソードを是非多くの人に読んでほしい

といったものである。実際筆者は漫画版はこの11巻から読み始め、全く支障が無かったので実績と自信をもってお勧めできる。

11巻収録エピソード紹介

なるべく先入観を持っていただきたくないので、エピソード紹介はごく端的に留め、引用も核心を突かない部分を心掛けた。本当はさらにキラーフレーズがあるのにご紹介できないもどかしさ。是非後々感想を語り合いましょう。

・あなたを知りたい

父親としての柳沢教授が描写されている。メインは娘の大学生活、ごく初期。筆者は大学時代はスタートで完全に躓いてしまって、六月ごろから何とかもろもろの軌道修正を果たせたタイプであるのだが、この話を読むと何かが始まっているが自分がその波に乗り切れていない、あのむずむずを思い出してしまう。また、聞き役に徹することも多いのだが、読者諸賢にそういったタイプの方がいらっしゃるのであれば、筆者がそうであったようにきっと救われるはずである。

悩みは根本的な理由を明らかにしなければ解決できません

――柳沢教授

講談社刊 山下和美先生著 天才柳沢教授の生活 11巻より 以下本記事引用全て同じ

 

・オーロラ姫の眠り

祖父としての柳沢教授が描写されている。ここ最近余談で述べたように生死について漠然と考える機会が多く、改めて再読したがやはり素晴らしいエピソードであった。幼子の駄々に対してどのように向き合うか。オーロラ姫の眠りと鬼籍に入るということはどう違うのか。それらが一組の夫妻に仮託され、語られる。 

筆者が初めて葬儀に参列したのは小学三年生の頃であったと思う。生前面識がなく、その方が亡くなって悲しいというよりは周りの雰囲気に感応して泣いてしまった覚えがある。何を感じたが今となっては曖昧だが、その日の日記はいつもよりずっと長かったことは覚えている。多分その頃から、脳や胸に生じたもやもやは文章にして出力するタイプの人間であったのだろう。

幸運にも分不相応な伴侶を得て、後はいかに出し抜いて、例えば僅か一日でもいい、妻より先に自分が墓に入ってみせる、という段階であるが、その時自分の枕頭に妻は何か供えてくれるだろうか、ということを考え、ちょっと悲しくなった。

華子がもう少し大きくなったらそのことについて考えましょう

その時は私も一緒に考えます

 

・女王の帰還

同級生としての柳沢教授が描写されている。オーロラ姫の眠りの後、続けてこのような傑作エピソードをものしてしまうのが山下先生の恐ろしいところである。扉絵で予め顛末が語られる豪徳寺一族。その家の子である頼子と幼き日の柳沢教授の回想が語られ、再び時計の針を現代に戻したとき……読者諸賢は最も理想的な形でのタイトルのリフレインを味わえるはずである。

(大原君に豪徳寺家の敷地に俺の家が1千万個入りそうだといわれ)

「『豪徳寺家は5千坪』と大人がいってました

大原君の家が5坪だとしても1千個しか入りません

 

ソネット83番

教育者としての柳沢教授が描写されている。大学の良さの一つに学びのペースがそれ以前より自由度が高い、ということが挙げられると思う。 その学びが及第点に到達しているかどうか判定してくれる相手が単位ごとに違う、というのも面白い仕組みだ。劇中で語られる大学の存在意義、最高学府としての立ち位置と就職予備校としての位置づけに対する齟齬などは20年以上たった現在でも色あせず、どころかますます深刻になっているように思う。

過疎授業を受け持つ偏屈教授、その授業の唯一の受講生である男子学生は柳沢教授の授業にも出席しているが、柳沢教授から見ても決して理解の早い学生とは思えない。しかしある一件で教授は彼を自分の学部へ編入したいと思い始め……。

学びの本質的な部分が語られ、読むたび自分の大学時代に舞い戻って学びなおしたくなる一編である。

(研究者にとって必要な資質を問われ)

1つめは好奇心

2つめは洞察力です

 

・夫婦の音色

夫としての柳沢教授が描写されている。柳沢教授は自分に厳格であるが、他人にも厳格であり、それは妻に対しても例外でない、良くも悪くも、ということがひしひしと伝わる。夏目漱石がそうであったように、夫がきっちりしている場合は妻がある程度おおらかに「変化」していくことで何とかなっているケースが多い。たいていのことは女性が上手なのである。

年齢と趣味とは基本的に無関係なはずです

年齢を理由に趣味の追及をやめるのは理にかないません

このセリフは、この巻のあるエピソードを踏まえ教授の考えが変化したこともわかり、そう言った意味でも味わいがある。

 

・夏の思い出

マレビトとしての柳沢教授が描写されている。柳沢教授は現在こそ目がどこにあるかわからない顔をしているが、若かりし頃は文字通り眉目秀麗のハンサムである。故にモテる。都会の風と、あれやこれやを持ち込んだハンサムボーイがとある旅館に果たして何をもたらしたか……という話である。この回は特に、絵による要所要所の余韻が素晴らしい。漫画の真骨頂である。

故人の意思を尊重するなど無意味なことです

 

・遠きロマンス

観察対象としての柳沢教授が描写されている。今回の狂言回しは教授の大学の図書館司書。冷静に第三者目線で語られる柳沢教授や、他登場人物は新鮮で面白い。読者諸賢においては活字中毒者、本の虫を兼業されている方も多いと思うが、その思想あるいは思考についてシンクロするところがあるかもしれない。

(どんな本も面白そうに読むことを指摘されて)

ええ

しかし生身の人間にはなかなかかないません

 

以上7話、どれを切り取っても 素晴らしいエピソードであると思う。再度になるが、是非ご一読のほどを。良質な読書体験はあなたを続けて他の既刊へと誘うことになるのではないだろうか。

それにしても、読み返すたび大学で学びなおしたくなる。

 

 

 

君は誰と幸せなあくびをしますか、あるいはアニメ ゴールデンカムイ第六話までの感想

余談

ゴールデンカムイに夫婦でハマっている。単純なもので、自分が好きなものを妻が好きだととても嬉しい。

単行本13巻時点での筆者の好きなキャラクターベスト3は

谷垣一等卒

鶴見中尉

尾形上等兵であり、

妻は、

尾形上等兵

鯉登少尉

杉元であるとのことだった。わかりやすい。

ゴールデンカムイに夫婦でハマってよかったこと

・共通の話題が増える

・食材への感謝がより深まった

ゴールデンカムイに夫婦でハマって困ったこと

・北海道に行きたくなる

・肉をヒンナしたくなる

ということで、近所のお肉屋さん「やまさき」に肉の盛り合わせを食べに行った。本日は博多和牛でお薦めの食べ方はレアということで完全にヒンナ案件である。


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妻「クラシタってさあ…倉下とか……みょうj」

筆者「違うから! 部位だから!(ロースの首に近い部位)ちょっと思ったけど」

妻「カタシンとかさ…そういうあだ名ありそう……」

筆者「カタオカシンタロウとかいそうだけどやめてね!」

(全国のクラシタさんとカタオカシンタロウさんに深くお詫び申し上げます)

因みにコサンカクが筆者的には一押しの部位であった。

良い肉は腹にたまる。食後は南北融和を願って冷麺を食べ、大満足でお店を後にした。


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妻「韓国に行ったときも冷麺に梨入ってたな~向こうはね、ユッケの下が一面梨だったりするんだよ~」

筆者「へ~……。あ、これ林檎だ」

妻「……」

筆者「多分季節で違うんだよ。知らんけれども」

本題

そういうことで、ゴールデンカムイアニメ版を見ることにしたのが先週のことである。携帯を機種変更した際に契約したFODはかつては「古畑任三郎」を、先だっては、「おっきいこんのすけの刀剣散歩」を我々に提供してくれたが、しかし月々千円弱はちょっと重いかな……と思った頃に今度はゴールデンカムイを独占配信などしてくれるので油断ならない。当地ではBS11での放送よりFODの配信開始の方が早いので、今後もFODで見ることになると思う。筆者のスマホからdTVを媒介にして(ミラキャストを使っている)居間のテレビで見る、という手法を使っている。自分のコンテンツは一切顧みられず、FODを見るための踏み台にされるdTVの心境やいかに。おっと思うものは大体かぶっているんだよな他の配信サービスと……頑張れdTV。

我々夫婦としては覇穹 封神演義を視聴しているわけであるが、前期はまだ「続・刀剣乱舞 花丸」があったため何とか相殺できていたダメージも事ここに及んでいよいよ限界、筆者は最早魂魄すら消滅しました……何とも恐ろしいアニメです……してしまうギリギリのところであった。前期、クソアニメと湧いたアニメがあったが、当時ですら「金曜日の夜十時にアベマを見てください、本当の糞アニメってやつをお目にかけますよ」といった状況であった覇穹 封神演義はGWを過ぎて完全に蒼井翔太案件と化していた。蒼井翔太召還は無理かもしれない……覇穹 封神演義を救うことは無理かもしれない……でもせめて視聴している我々の精神は何とか守ってくれ……! そういった手前勝手な願いに見事応えてくれたのが「TVアニメ版 ゴールデンカムイ」であり、不死身の杉元一行であった(すぎもとかずゆきではない)

筆者はどうして忘れていたのだろう……自分の好きな漫画がアニメ化するということは、声がついて動くということはとても素敵なことだということを。

主演陣は勿論、CV.中田譲治氏の土方歳三、CV.大塚芳忠氏の鶴見中尉など漫画を読んでいたときどういう声のつもりで読んでいたか思い出せないくらいのハマリ具合。ああ、後生だから聞きたい鶴見中尉の「ん猫ちゃん猫ちゃん!」が!

しかし何と言ってもCV.大塚明夫氏の二瓶鉄造は正にキャラクターに命を猛烈に吹き込んだといって過言ではない最高のキャスティングであった。もともと二瓶は「身もだえするほど濃厚なキャラクター」の更に序盤の最右翼でその後の方向性を決定づけたような素晴らしいキャラクターであったが、大塚明夫氏が声をあてることでその発言の一つ一つが深く染み入り、説得力を持ってしまう。

五発あれば五回勝負できると勘違いする

一発だから腹が据わるのだ

――二瓶鉄造(テレビアニメ版ゴールデンカムイ第五話「駆ける」より引用)

こんなことを「確かに良い銃だ だがその装飾(エングレーヴ)は何の戦略的有効性(タクティカルアドバンテージ)もない」と言い放ちそうな声で言われてしまったらなるほど……と視聴者は頷かざるを得ないのである。「猟師の魂が勃起する!」と断言されてしまうとああ性欲を持て余しているんだななるほど……それはするだろうななんてったってホロケウカムイだもの……。と納得してしまう。雪原響く狼の遠吠えなんて完全にMGS

そういえば、かの伝説の傭兵シリーズではCV.若本規夫氏のボスキャラクターが演説を攻撃手段にする、というものがあり、当時筆者はその説得力に慄いたものである。確かにあの声で演説されたら、気持ちが傾きそうであると。かように声の力というのは素晴らしく、盾にも剣にも勝る強さがある。

深夜アニメの難しさ、確かに止め画が多いが(この辺り活劇の多い土方組は割を食うことが多そうで残念である)それも「ニヘイゴハン」では効果的に生かされていたし、CGの動物は確かに最初面くらったが、その異質さ、本来この世のものではない「カムイ」であることを表現していると考えるとその違和感がかえって味となる。

はじめは変顔についても控えめであったが最新話ではかなり思い切って来たし、脳みそ食も普通に鹿の脳みそが出ていてスタッフがだいぶ踏み込んできているなというのを感じる。細かいところだが原作で「よくやった! 駄犬」であるところが「よくやった! 湯たんぽ!」となっている辺りも愛を感じる。

でも、「ヒンッ!」のシーンはすごくよかったのだがその前の杉元の台詞は原作通りの構図でやってほしかったかな……と思うが。

アニメがどこまでやるか分からないが、キャラクターを見るに勃起継承はしてくれるのかな……? と思うので楽しみに待ちたい。カネモチの話も観たい。

蛇足:妻が尾形上等兵が好きすぎて正直しんどい

・あっ完全に読者に「モブ第七師団第一号か……」と思われていた頃の尾形だ!

・罠に驚いて完全にキャラ崩壊している尾形(笑)黒歴史(笑)

・腕ぷらーん尾形がカットされている(怒)

・顔パンパン尾形(笑) 何故か二回も出てくる顔ぱんぱん尾形(笑)

大河ドラマ「西郷どん」第十八回 「流人 菊池源吾」感想

余談

今週のお題「おかあさん」

母は十歳の時父を事故で亡くした。元々、病弱だった母(筆者から見て祖母)は心労も重なりその翌年後を追うように世を去った。

後には祖母(筆者から見て曾祖母)と弟、妹が遺された。祖母は、施設でなく、きょうだいをばらばらに親戚に預けるのでもなく、三人きょうだいを自ら育てることを選んだ。と言って祖母もその時点で六十を超えていたから、日々の生活は母が貴重な労働力となった。

母もまた親の血を引いて決して体が丈夫でなかった。喘息を持病としていた。喘息で息が出来ず、視界がぼやけ、世界と自分を繋ぐ糸が一本ずつ切られていくようなあの感覚は、経験してみなくてはなかなかわかるものではない。

中学を卒業し、学費と、また一刻も早く一家を支えたいという気持ちから、母は看護学校へと進んだ。看護学校の系列へ進めば奨学金は返さなくてもよかったのである。もしかしたら、母や自分が病弱であったことも背中を押したのかもしれない。

そして就職した先に、臨床検査技師でありながら当時は貴重だったパソコンオタ…造詣が深い人材であったために(親父はマシン語を使っていたらしい。ご存知ですか? マシン語。機械とため口で話してんですよ)事務課に異動させられていた父がおり、なんだかんだで母は私の「おかあさん」となったのだった。

おかあさん、いつの間にかおかあさんになってからの方があなたの人生長いんですね。気が付いたら手品みたいに三人も息子がいましたね。

初めて進学のため広島に出てきた時、一緒について来てくれましたね。一人暮らし経験者の先輩として家具をそろえ、最寄りのスーパーで食材を指南し、保存食を手際よく作り、そして最初の講義へ送り出してくれた。

おかあさん、僕はあの時初めてあなたが泣き崩れるところを見ました。正直なところ、それまでは早くあなたと離れて本当の意味での一人暮らしをスタートさせたいぜ、くらいに思っていたのです。僕は講義の内容なんて全く入ってこなくて、そのまま食事をするのも忘れてしまいました。唐突に記念日なので寿司を食べようと思いつき、昼二人で行ったスーパーに行って、三割引きの寿司を買いました。寿司についていた醤油が塩辛くて、鹿児島の味と違って、とりあえず舌をリセットしようと冷蔵庫から昼間買ったお茶を出そうとしたら、サイドポケットに見慣れた鹿児島のさしみしょうゆが入っていました。多分あなたは全てお見通しだったんですね。ここまで早いとは思っていなかったんでしょうけど。僕はもう泣けて泣けて寿司どころではありませんでしたけど。

月日が経って、妻を紹介したとき、初めて娘が出来そうでとても喜んでいましたね。今では無事あなたの義理の娘になりました。震災不況の影響か、僕が最終選考に十二連続で落ちまくって東京他の交通費も馬鹿にならなくなっていて金銭的精神的肉体的に余裕を失い僕が自分を見失っている頃、弟に「東京の私立大学の推薦を蹴らせなければこんなことにならなかったんじゃないか」とこぼしてしまったことがあったそうですね(最近聞きました)おかあさん、私が東京の私立大学の推薦を辞退したのは徹頭徹尾主義の問題であって、また自分が弱いことをよくよく知っていたからです。仮に東京に十八の身空で出てきていれば、今頃生きていたかもわかりません。何より妻に出会うことも出来ませんでした。一切気に病むことはありません。


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おかあさん、最近ではLINEもマスターしましたね。カーネーションに対してベルばらのスタンプを用いるという、世代アピールとと花の関連性を併せ持つ素晴らしいスタンプセンスには畏敬の念すら覚えます。本日は帰れなくてごめんなさい。河原の草を刈っていました。花を贈りつつ、草は刈る。植物に対してアンビバレントな対応をするといえば聞こえはいいですがダブルスタンダードなところがあるのがあなたの息子です。今後ともよろしく。僕は元気です。妻はますます元気です。

 

本題

余談が、ながくなった。いやー大河ドラマ「菊池源吾」第一話「流人」、面白かったですよ。開始前は「島めっちゃ頑張るから」みたいな脚本側の言葉にかつて滅茶苦茶軟禁されていた黒田官兵衛を知っているものとしては一抹の不安があったのですが、少なくとも初回は大満足。視聴者を代弁してくれたというか、今までの部分のB面的な側面があったのがとてもよかった。

奄美大島。それは地上の楽園でもなんでもなく、薩摩本土からひたすら搾取される砂糖地獄の島。そこに住む人々は「民」にカウントされない。本土から来た流人に女性をあてがう風習もある。斉彬が、歴代薩摩藩主が、「最大多数の最大幸福」のために切り捨ててきた土地。残酷なまでの自然の美しさが、仕打ちの過酷さをより一層際立たせる。

菊池源吾は大いに荒んでいる。(実際は薩摩藩としては幕府の追及を避けるため島に死んだことにして「匿った」側面があるのだが今後語られるだろうか。できればそれが明かされて役人たちが平身低頭する展開でカタルシスが欲しい。(だから西ご…菊池源吾にはお給料もしっかり出ているのである)かつて農民の暮らしに涙したものとは思えぬお膳への八つ当たりなどその極地であろう。死するべき時に死ねない、ということは彼にとってそれほど重い。

そんな精神状態で斉彬が島民たちにどう思われていたか知る菊池源吾。正しく世界が反転する思いだったに違いない。あの斉彬の豪奢な衣装も、篤姫お輿入れのあれやこれやも、無論近代化のためのなにもかも、「カライモ! イブスキ! サクラジマ!」でさえも、島民たちの犠牲なくては成り立たない。その事実と、敬愛する斉彬を否定された菊池源吾は疲れからか、黒塗りの高級車には激突しなかったものの、高熱を発する。まあ推しメンの裏垢をいきなり暴露されたようなものだから仕方あるまい。この高熱、おそらくフィラリアで、この後遺症により菊池源吾はおかあさん、いやお袋さんが大変な大きさになってしまったという逸話がある。とぅまの「災い」はもしかしたらそういう形で作用したのかもしれない。

ともあれ菊池源吾は熱が下がって毒気も抜けたのか、島のことを教えてほしいと願うのだった。奄美大島のエメラルドグリーンの海がひたすらに美しい。

一方で橋本左内が粛々と処刑されてしまった。僅かな表情で見事に橋本左内を表現した風間さんは素晴らしい。それだけに、もう少し関係を掘り下げてほしかった。因みにこの二十日後に吉田松陰が処刑されるわけですが、出なさそうだなあ……。あ、サツマンルーレットの被害者こと島津斉興もこの頃だともう死んでいるのでは。

さて次回の島編、なかなか怒涛の展開である。個人的には1クールくらいAパート島、Bパートその頃江戸・薩摩では……というような感じでもいいと思うのだが。

覚えよう・島唄

今回からOPの奄美パートに歌詞が入った。ぜひ覚えてみんなで歌おう。

すらちまいあがれぃ

(大きくはばたけ)

なだこぼさず

(涙をこらえ)

あぶぃてぃ

(叫び出す)

うらんなりゅんちゅんきゅぬ

(散りゆく人々の)

うむいー 

(信念を)

かなむあふりてぃゆぬたむぃじ
(愛が溢れる世界のために)

 引用:見せもす!島の世界|NHK大河ドラマ『西郷どん』

封神演義 外伝という福音および覇穹 封神演義15話目までの感想

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画像:封神演義 外伝を二話目まで読んだ時の筆者の心象風景

封神演義全般のネタバレがあります。

余談

ジャンプ+で少年ジャンプを定期購読し始めて二年くらいが経つ。が、実は今年になってから一度も少年ジャンプを開いていない。

一つは最近のアンドロイドはアプリのデータをSDに移せないものが多く、ジャンプ+も例外ではないのでエクスペリアの容量がいっぱいいっぱいですごく動きがもっさりして、読んでは消しを繰り返さなくてはいけないというのが面倒くさいというのが理由だろう。

連載作品がつまらなくなったということは全くなくて、ドクターストーンはじめ毎週楽しみにしている作品は沢山あったし、ワンピースもこの間表紙でどかんと展開のネタバレを食らったからそろそろ読みたいなあとも思うのだが、しかし、年末年始の合併号で間が空いて、ちょっと読まずにいて、意外と平気な自分にちょっと驚いた。男は死ぬまで少年で自分もそれは例外ではなく、うちの親父の様に30,40,50,60歳喜んでの精神で週刊少年ジャンプを読み続けていくのだ、と何の疑問もなく考えていた。(うちの親父は50歳までジャンプ、マガジン、サンデー全てに目を通していたある意味での化け物である。チャンピオンは時々間違えて買ってきた)けれど半年近く、ジャンプ無しで何とかなっている自分がいる。

多分このまま卒業することも出来るだろう、くらいの手ごたえはある。フェードアウトさせようと思ったら出来る。でも多分、もうちょっとしたらまた溜まった分をガツンと読んで、週刊ペースで連載を追っていくのだろうなとも思う。

実はジャンプ+でジャンプを読み始めた最初の頃もこういう時期があった。鹿児島に住む筆者にとって、流通の関係で長らくジャンプは「火曜日に読むもの」であった。今では、毎週月曜日の朝に今週のジャンプが配信されました! と通知が来る。それがなぜかつらかった。自分の中でジャンプはつらい平日の始まりを何とかやり過ごしたその次の日に、弟と順番を争いながら読むべきものであって、そのリズムを崩されたくなかったからかもしれない。弟の、「ワンピースだけ先に読ませて!」という悲痛な叫びを、そういえばずいぶん聞いていないな、と思う。(筆者がジャンプを、弟初号機がマガジンを、弟弐号機がサンデーを親父が読み終わった次の「ご相伴」にあずかるというシステムがかつて我が家にあった)ともあれその時も、半年分くらい読まなかった気がする。その時は結局転職期間中の暇な時期に一気読みした。今、ジャンプを溜めているのはもう少ししんどくなった時のための安定剤として、最後に残しているのかもしれない。そういった自分を知っているから、溜めていても平気な自分がいるのだろうか……。

とかいいながら、来週辺り今週のジャンプ感想みたいな記事を書いてしまうのが筆者である。いつか子どもを授かり、ジャンプを読み始めた時に「この漫画父さんが○○歳の時からやってるんだぞ~」みたいな話をするためにもやっぱり読むかもしれない。かつて親父が少年漫画を息子たちとのコミュニケーションツールとしてきたように。

本題

そして筆者はヤングジャンプを購入した

封神演義外伝 - 藤崎竜 | 少年ジャンプ+

とりあえずまだもう少し一話は無料で読めるようなのでまだの読者諸賢は是非ご一読いただきたい。

この時点で筆者に一つの予感があり、本日とうとう前述のように少年の気持ちが停滞していたことも後押ししてヤングの階段を登り、初めてヤングジャンプ本誌を買い、はやる気持ちでページを繰って第二話を読んで筆者はやはり一つの推測をさらに固めざるを得なかった。

もしかして、藤崎先生は覇穹 封神演義で省略されたあの場面やこの場面をメインとして外伝を描くのでは、という推測を。

花狐貂の登場だけでは「過去の中でもインパクトのあるシーンだからなあ」と思うにとどめたが、なんと孔宣が登場するではありませんか。

孔宣は藤崎竜先生版封神演義にこそ登場しなかったものの、原典においては周の多くの武将を捉えた殷の将軍(三山関の総兵(総司令官→西伐軍大将)であり、原典作者のオリキャラで一度意識してみるとメアリー・スーぶりが愉快な「陸圧道人」すら一度退けた「もうこいつ一人でいいんじゃないかな」的強敵なのである。その正体は原典では孔雀明王で、正体がばれても倒したり封神したりされるのではなくおうちへおかえり……されるにとどまるという破格の待遇である。

孔雀明王を雉鶏精にアレンジするという手腕ももちろんのこと、こちらが時を飛べるだけではなく、相手も飛べるのでいろんな場面にお邪魔できる……という藤崎先生のストーリーのつくり方には感嘆しきりであるが、ここで重要なのは先ほどの原典での孔宣のポジションである。なんと、あの高継能の上司なのである!

えっ読者諸賢ともあろうものが「ちくしょう……この高継能が……」でおなじみのあの高継能をご存じない? 毎回筆者が「高い継ぐ能力」と入力して余剰部分を消し込んでいる高継能を? きっと蜂木乃伊を操っていた地面に潜っていたおじさんと言えば思い出していただけるんではなかろうか。ちなみに原典ではこの人が黄天化を討ち取っていたりする。へっ……こんな最期は考えてなかったさ……。

ともあれその高継能が登場した場所と言えばそう……クィーン・ジョーカーⅡ世号である。覇穹ではバッサリカットされた趙公明編である。他にも孔宣の同僚には丘引(ほら、あのミミズですよミミズ)や余化(黄天化ファンが蛇蝎のごとく嫌うあいつですよあいつ)がいたりしてもう完全に趙公明編も外伝で舞台にしちゃおうかなあという感じがしませんか?(しかし改めてみてみると、趙公明編は原典の朝歌への道筋の関所破りの大半を登場人物たちを豪華客船に移籍させることでマンネリに陥らせず行っているわけで、やはりこのストーリーの転がしっぷりはさすがである。)ちなみに趙公明編と言えば最初の敵でありまさかのキーマンとなった楊任は原典だと黄一家も竜吉公主も土行孫もガンガン死ぬ中最後の最後までスタメンだったりする。

ともあれまだ神農も完全に信用していいのか? とも思うし、(しかし三皇のうち伏羲、女カは早々に登場しているのに神農はずいぶん遅れて登場、というのはまるで無双シリーズのようである)全て成し終えた後太公望は本当に地球と同化してしまうのか? そもそもなぜ太公望の格好なのか?(ファンサービスなのか、事情があって分離しているのか)など気になる点も多い。が、やはり久々に毎週が待ち遠しい気分である。今後も楽しみに追っていきたい。そして見たい。今の作画で私立アンニュイ学園が!(基本的には昔の画風に寄せていて流石だと思ったが、やはり筆者は妲己ちゃんは昔の方が好きである。ちょっとのっぺりした感じがする。体型は外伝の方が「プリンちゃん」の形容に相応しくなっていると思う)

 

光が強ければまた闇も濃くなる

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画像:覇穹 封神演義を最新話まで鑑賞した後の筆者の心象風景

物事を再構成するときに取捨選択はもちろん大切である。重要なことはより詳しく、そうでないことは端的に編集することが肝要だ。

……楊戩、筆者も好きですよ。仙界大戦においてキーパーソンであるのもわかってますよ。でもそこに注力しすぎではなかろうか。その上で総集編まで楊戩楊戩アンド楊戩…そもそも仙界大戦の合間に「鏡」エピソードを挟むという狂気の沙汰をまあ……回想を総集編的な意味合いで使うというのはありかな……と何とか擁護できようかと思ったら一週はさんで総集編ってなんなんだよ……はじめて「アニメを見て酔う」という体験をした。ところでどうしていきなり鄧蝉玉を回想でしれっと出したのかな? どうして嘘つくのかな? かな?

最新話に関しては、比較的まともだったと思う。少年漫画していたと思う。だが、それまでの負債が余りにも多すぎて……「今何やってるんだっけ」と思っている間に30分が過ぎていく。また、新OPが折角曲(と背景美術)は引き続き素晴らしいのにアニメーションがダサすぎる。お前が歌うのかよ。お前も歌うのかよ。真ん中の丸い部分、いる? 同じような構図の白と黒のモントゥーノは格好いいのになあ……。


「白と黒のモントゥーノ feat.斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」MV-YouTube Ver.-/東京スカパラダイスオーケストラ

ひっくり返す掌がどうなっているかというと、今は主にヤングジャンプを支えてくれています。ともあれ今後は、かっ飛ばされるたびに「もしかしたら外伝でフォローされるかも……」とポジティブになれるので良かったですね。

完全に、「見るのよ 最後まで お父さま 戦ってらっしゃるわ」の心境で見ているので、せめて戦っていただきたいと思う。

蛇足:原作未読の妻の感想

・さいきん妲己ちゃんあんまりでないね…膝丸君はいっぱいいるね……。

・いつおもしろくなる?