カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

夜はすべての猫が灰色に見える あるいは一人暮らし一年目よSTU48の「暗闇」を聴こう

今年の妻の実家帰省時に撮影した瀬戸内の風景。向かいに見えるのは宮島である。

なんかGooglephotoにアップロードしたらおしゃれな感じにフィルターをかけてくれた。(下図)


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【MV full】暗闇 / STU48 [公式]

はてなダイアリージャスラックと提携していない(アメーバブログとかはしているらしい)のでひとまず上のMVをご覧いただいたり、こちらで歌詞をご確認いただきたい。

秋元康という人は毀誉褒貶の激しい人だが、やはり作詞家として純粋にすごい人なのだな、と改めて思わされる。彼自身は富・名声・地位この世のすべてを手に入れた壮年であるはずだが、なぜその状況に置かれてもなお、こんな自意識が肥大化しがちな思春期を過ぎたと自分では思い込んでいる青春スーツばっちり装着中の若者の思考をトレースしたような歌詞が書けるのだろう。

STU48は昨年発足した国内AKBグループの末っ子グループで、広島のFFといえばファイナルファンタジーよりこっちだろでお馴染みフラワーフェスティバルより本格的な活動を開始した。STUは「瀬戸内」を意味しており、瀬戸内7県を主な拠点として活動するグループである。特色として「劇場船」を持ち、各港に寄港して公演を行う、というものがあるのだが、残念ながら現在まだ完成していない。

上記の「暗闇」は今年1月31日に発売されたデビューシングルである。デビューシングルに随分とネガティブなタイトルだな、と思ったが(サムネも何やら不穏に感じてしまう)聞いてみると透き通った声と切れのいいリズムについ聞き入ってしまう。ちなみに作曲は朝ドラの主題歌となったことで知られるAKBグループのカップリング曲で最も有名だと思われる「365日の紙飛行機」の作曲もされたaokado(青葉紘季さん、角野寿和さんのユニット)が担当されている。

瀬戸内、広島という場所は大学時代の4年間を過ごした、そして伴侶の故郷でもある、筆者にとって特別の思い入れがある場所である。とはいえお陰様で日々をそれなりに忙しく送っており、思い起こすことはあまりない。ところが、今回「暗闇」を聴いたときに10年前のあの頃が鮮やかに浮かんできた。誰にも何も言えない時、人はウェットでポエトリーになりがちだ。それは次の自分になろうとして殻を内側から引っ掻いている状態であったりするのだが、当の本人はなかなかそのことに気づけない、そんな頃を改めて俯瞰的に教えてもらったような気分になった。同時に皆そうなんだな、と思った。社会性の獲得は自己愛の喪失とある程度比例するように思う。

歌詞の中に、瀬戸内にいればこそ自分が今どこにいるかがわかる、というような部分がある。鹿児島から広島に出てきて、ときどき、そう、それこそ瀬戸内海を見た時などに筆者は、「ああ、ここには桜島がないのだ」とふと思っていたことを思い出す。どんな出身地でもそういったランドマークは少なからずあるはずだ。けれどそれが地理的な意味ではなく、自分の精神的な立ち位置にもある種作用していたことは、出てみないとなかなかわからないものである。自分とは逆に、瀬戸内が故郷である人を妻に迎えてようやく、筆者は瀬戸内のある種の呪縛から解かれたのかもしれないと改めて思う。

ちなみに弟2號機は熊本に進学したとき「熊本には太陽がない」と智恵子抄のようなことをぽつりとつぶやいて妻を驚かせたが、これは恐らく鹿児島の地場スーパー「タイヨー」のことである。鹿児島県民の8割は百均市のBGM、または明るいタイヨー家族の歌を脳内再生できるといわれている。

進学したり、就職したりして一人暮らしをはじめ、よくわからんうちに4月が過ぎ、順調に5月病になり、6月は梅雨でますます鬱々としている読者諸賢は、是非「暗闇」を聴いていただきたい。そういうときというのは誰にでもあることで、貴方が他の人と比べて劣っているとか歪んでいるとかそういうことは一切なく、夜明け前が一番暗いということがわかっていただけるはずである。

そしてこの曲では残念ながら選抜されなかった筆者的一押しメンバー甲斐心愛さんが次回シングルで見事選抜となったので(めでたい!)見せてもらおうか……筆者の支持する甲斐さんの選抜ぶりとやらを……といった風に次回シングルを楽しみに生きていただければこれに勝る喜びはない。

瀬戸内(特に広島)では様々な番組に出演しているらしきSTU48であるが、なかなか全国ネットでは見る機会がない。

Huluではセトビンゴ!が配信中であり、MCもメイプル超合金さんで安定感があってのんべんだらりと見られるので加入して絶対に見た方がいい! とまでは言わないが、すでに加入済みであるならよかったら見てください、心が平和になりますよ、といった温度でおすすめしておきたい。ZIP!でお馴染み桝アナウンサーのカープ愛もわかる貴重な番組である。

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