カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

道枝金田一に挑め! 一足早く「聖恋島殺人事件」を推理する(段階的にネタバレあり)

余談

kimotokanata.hatenablog.com

恐ろしいもので、5月の幕開けに書いた記事から早1週間が経とうとしている。コミックdaysでの「金田一少年の事件簿R」無料期間の終了も迫ってきていた。

いよいよ、明日放送の道枝駿佑さんが金田一一を演じる5代目金田一少年の事件簿で初映像化となる「聖恋島殺人事件」にたどり着いた。初めての「原作を未読状態で体験する金田一少年の事件簿ドラマ」ということも考えたのだが、やはり筆者としても目の前の事件を前に素通りなんかは出来ない……ジッチャンの名に賭けて!(父方は電車の運転士、母方は大工)

ということで再びの、金田一少年への挑戦である。

本題

ここからは原作版聖恋島殺人事件のネタバレがあります

 

 

釣り大会のために「聖恋島」を訪れた金田一・美雪・剣持警部。金田一少年の事件簿おなじみの下衆そうなテレビ関係者・医療関係者が集まる中、何も起こらないはずもなく……早速夜明けの釣り大会集合時間に不在だと思われていた、誰もが登場時点で今回の被害者だと予想できたであろう影尾 風彦(無駄に名前が格好いい)が密室で背中に銛を突き刺された状態で発見される。そして密室から人魂のような光が別の密室へ移動したかと思うと、影尾の死体もまたそちらへ移動していたのである!

その際点呼をとると、影尾自体の全員がその場にいた。影尾殺しは島に巣食う「セイレーン」の仕業なのだろうか? 島の食料もセイレーンが食い荒らしたかのような惨状であり、製薬会社営業・伊豆丸 険とその系列医療機器メーカー営業の鰐瀬 たかしが釣りに出る。しかし釣果はゼロ。

腕に自信のある潮 小次郎と剣持警部、(と金田一一)が交代で釣りに出かけるが、一と剣持警部の目の前で海の底に引きずり込まれるかのように潮は消え、のちに溺死体となって発見された……。

参加者たちが恐怖に震え上がる中、寒野 美火を名乗る手紙で全員が呼び出される。しかしその瞬間、目の前で彼女は水中銃によって外から頭を射抜かれ、死亡した。そう、またしても全員がアリバイがある状態で……。

不可能と思われる犯罪、しかし金田一少年は録画された容疑者の発言、島に響く「セイレーンの声」、ボートに残された糸、美雪の手品からヒントを得て、宣言する。

「謎は全て解けた……!」

筆者32歳の推理

ここからはさらに事件の核心に迫っていきますので未読の方はご注意ください

犯人

今回はミステリー「漫画」らしさを生かした事件だと感じた。そして、「金田一少年の事件簿ファン」であれば端々にそれまでの事件の使いまわしオマージュを感じられる事件だと思う。

前置きはさておき、筆者の考える犯人は伊豆丸 険である。まずは一が「犯人がわかったかも」といった録画のシーンに着目すると伊豆丸の顔に線が入っているのが確認できる。潮不明後ということを考えると、これは水中眼鏡の跡が浮き出てしまっているものだと検討がつく。

そこを糸口として事件の全体の流れを考えてみると、トリックにかかわる部分は別項に譲るが、例えば食料調達のため釣りを言い出したのは伊豆丸であった。

伊豆丸がかつて島の住人であり、セイレーンの声が潮目の変化であると知っていたのなら、釣れない時間帯にあえて釣りに出てポイントをつぶし、罠の仕掛けてあるCポイントへ潮を誘導したと考えられる。

また、影尾を起こすように言われていた伊豆丸なら早朝の行動をコントロールできるだろう。

寒野殺害についても、甲斐甲斐しく世話をしていると見せかけて飲み物に睡眠薬を仕込めるのは伊豆丸であろう。

鬼島 高彦もかなり怪しい。録画でまだ二人目の被害者なのに「三人目」と口走っていたり、手紙のシーンの意味深な笑い、また、影尾がいないのに気づかないはずはないのにリアクションがないのも気にかかるし、「四時ちょうど」というのも潮目が変わるタイミングに合わせているのだとしたらそれを知っている=島の住人=犯人? という風にも考えられる。また、不正が疑われるこの大会も主催者側であれば任意の人物を通過させることもできるだろうし、部屋割りなども思いのままである。

正直メタ的な意味で「あからさますぎて怪しい」というのと、「伊豆丸の水中眼鏡跡が決定的でそこから根拠を逆算した」ということがなければこの人を犯人にしていたと思う。ただ、この人だと後述する理由で影尾殺しが恐らく無理。あと……メタな理由で申し訳ないんだけどこの人ドラマ版にいないので……多分違うんじゃないかな……。

また、鰐瀬も島出身ぽいのと後述する寒野の殺害トリックから考えるに怪しかったのだが、これも「あからさまに怪しげな写真を見つめる奴はシロ」という金田一世界のメタな理由と釣り部分を根拠に排除した。(ここは「伊豆丸さんが言わなけりゃ自分から言い出すつもりだったんだろう?」とか解決編で一が言いそうなところでもあるが……)

影尾殺しのアリバイトリック

これまた漫画ならではという感じで、最初の「死体」と後から発見した死体は銛の刺さっている角度が微妙に違うように思える。即ちこの二つの死体は別物か、あるいはわざわざ刺し直したか――筆者は前者だと考える。

人魂めいた光は誘導するためライトを動かした(医療用ライトと後述する糸を用いたトリック?)もので、それに誘導され参加者たちが改めて死体を発見する部屋には移動などしていなかったのだ。

つまり、伊豆丸は初めに全員でコテージを移動する際に最後尾に陣取り、時間をずらして教えた影尾を殺すと逆走して島民時代の鍵を用いて部屋に入って「死体」を演じ、「人魂」で全員をコテージへ誘導すると、反対側の扉から出て合流し、発見したときに自分もいたとアリバイを作ったのである(コテージへ向かう影をよく見ると、ひとり明らかに遅れている影がある。これまた漫画の妙である)

ええ~また「死体の振りトリック」かあ……という気がしないでもない。

寒野殺しのアリバイトリック

初めが見つけた糸は手術用の溶ける糸だろう。これを用いてボートと水中銃に結び付け、潮目が変わればボートが動くのに合わせて水中銃の引き金が引かれる、そこに人間は介在しないのである。(ただし、手すりに跡がついてしまう)なのでこのトリック自体は誰でもできると思われるが、寒野の部屋があの場所である必要があるので即興で思いついたか、ゴマすりの一環として部屋割りに介入したか……であろうか。

金田一少年の推理(答え合わせ)と雑感

大体合ってました。鬼島に関しては結構アンフェアなんじゃないかと思うのだが……。金田一少年の世界の医療関係者にまともな人がいなさすぎて困る。娘を持つ身としては身が粟立つ思いであった。正直、今回一番新規性を感じたトリックは潮殺害のもので解答編前に既に明かされていたのだが、これを解けと言われたらちょっと無理……というかバカミス感が強まったのではないかと思う。影尾の「死体の振りトリック」はR内でさえ複数既に使用されているので本当はその上をいってほしかったなあと思う。鍵のところとか「隠し持っていた鍵で」とかするっと片付けるのはいいのか。というか結局釣り大会は実力だったってことなのか?

原作の謎解きのヒントは視覚に頼るものが大きいのだが、暗闇の移動シーンや水中眼鏡跡を実写に落とし込むとどういう風になるのか、というのは楽しみである。

過去のドラマのように犯人が変更されている可能性もあるので視聴したらまた推理も交えた感想を書きたい。

金田一少年の事件簿R(12) (週刊少年マガジンコミックス)