カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

落第阿房列車その二 あるいは梅田をぐるぐる巡る冒険

余談

さて、明日になったので続きである。読者諸賢と我々の間には時差があるようである。もしくは、叙述トリックの可能性がある。手記が出てきた叙述トリックを疑えという新本格コトワザもあるほどだから(ない)いわんやブログをや。

はい。すみません。また日が空きましたが続きを書きます。

本題

旅が、つづく。新大阪駅についた我々はその情報量の多さに呆然半ば朦朧としていたが、ともあれ古の格言「腹が減っては戦は出来ぬ」を金科玉条として、まずは腹ごしらえに取り掛かった。空腹――それは判断力の低下を招く非常に危険な状態である。

さすがというかなんというか妻の生魚レーダーはがんこ寿司さんを捉えた。店内はちょうど最初のラッシュが落ち着いたころ、といった感じで、入りやすさを醤油のように醸し出していた。板前さんと目が合った。優しいほほえみ。こうなるともう負けである。入店し、店員さんに手際よく荷物を預かってもらい、おすすめ商品の講釈を受けた。ネタも大きく昼時であるからか新鮮かつバラエティ豊かなネタが常に回っており、殆ど注文することなく回ってくるものだけで二人ともお腹いっぱいになった。白身魚が特に美味しかった。あまりに夢中で食べてしまい写真を撮るのを忘れてしまうほどであった。途中、企業戦士といった風体の方が慣れた様子でカウンターに座り、ほぼノータイムでビールを飲みだしたのを見て、その歴戦ぶりに慄いたりした。値段も「いい感じの寿司を食べましたねえ」という感じで、鹿児島で言うところの「めっけもん」的ポジションを彷彿とさせた。(比喩が分かりにくい)

さて出だしは好調、次は大阪駅へ向かわねばならない。というわけで乗り換えの切符を……アブナイ! 新幹線の乗車券は「大阪市内」が有効であり、即ち大阪駅の切符は買い足す必要がないのであった。無事快速に乗り、大阪へ向かう。女性専用車両があると、都市圏に来たのだなあと感じる。

大阪駅では荷物を預けるロッカーがすべて埋まっており出鼻をくじかれる。が、佐川急便さんの預かりサービスを利用して事なきを得る。いよいよ梅田ロフトへを目指すことになる。我々はまだようやくあるきだしたばかりだからな……このどこまでも深い梅田ンジョンをよ……。

 

地上世界に出た我々を待ち受けていたのは突然のクールポコ(ヨドバシ前で何かのプロモーションをしていたらしい)、まっすぐ行くと行き止まりで歩道橋を使わないといけないという交通事情、滑走するあのカート、島津必勝戦法釣り野伏を受けたような店舗群、どこからか鳴り響く救急車のサイレン……大阪の洗礼を全身に受けた我々は、梅田歩道橋で三分の休養を必要とした。


f:id:kimotokanata:20180311003312j:image


f:id:kimotokanata:20180311003341j:image
f:id:kimotokanata:20180311003402j:image

人波に押されながらいつしか我々はその名も高き梅田ンジョンに足を踏み入れていた。視界の先に目的地は見えている。しかし、その前には文字通りの関門が、改札口が幾重にも取り巻いている。それをうまく避けつつ向こう岸にわたらねばならない……しかしどうやって? 我々は綺麗にワックスがけされた床に無数のしゃれこうべを幻視するのだった。結論から言えば我々はどうにか右手の法則を駆使することで地上への生還を果たした(途中、通れないかに見えた個所が実は掃除用のカートがたまたま道をふさいでいただけで実は通れる、ということがあったりし、「あ、これどこかでイベントフラグが動いたな」などとひとりごちたりした)が、途中空いている大型コインロッカーを見つけて悔しい思いもしたりした。しかし妻の

「ここに荷物置いたとして、取りに戻れる? 佐川さんに預けてよかったんだよ」

という言葉に救われた。うん、無理。ここ戻るの。

何度目かの地上では最寄りにゆうちょから出金できるATMがあり、読者諸賢はご存知の通り妻は鹿児島で出金を出来ず仕舞いであったので勇んで入っていった。中心街のATMは混んでおり、三ツイートほどしていると妻が浮かぬ顔で戻ってきた。カードがエラーが出たという。このATMは何社か共通のものであるので、ゆうちょ専用ATMを探そう、ということになった。近隣のファミリーマートに設置されているようであった。ちなみに鹿児島のファミリーマートには鹿児島銀行のATMが設置されており、筆者をはじめ鹿児島の務め人の多くはその為昼休みにファミリーマートに立ち寄り、出金し、ついでにファミチキを買ってしまうという悪魔のルーティンに縛られている。

ファミリーマートから妻がカードがエラーを続けて吐いたような顔をして出てきたので聞いてみるとやはりそうであるとのことであった。そうなると郵便局を攻めようとなり、最寄りの土曜日でも空いている郵便局へ向かうことにした。ビルの谷間から目的地である梅田ロフトの看板が「おや、よろしいのですか?」と言いたげに覗いていた。郵便局に向かうと反対方向になってしまうのである。悔しいが仕方がない。

が、これは筆者の完全なる勇み足であった。目指す郵便局は郵便業務しか扱っていなかったのである。「夫、もういいよ帰ろう」アウトレイジめいたことを妻が言い出したがしかし妻が出金できないと筆者の乏しい路銀で凌がねばならないのである。途方に暮れていたがとりあえず最寄りのウメダスゴイタカイビルこと梅田スカイビル地下にも郵便局があるということで、今度はそちらへ行ってみることにした。職員さんに案内されるままエレベーターに乗るとそこは最上階であった。いや確認しなかった我々も悪いのだが。折角なので我々を翻弄した梅田周辺を見下ろし手中にした気分になっていくらか留飲を下げ、特に郵便局に不満をぶつけ、(当たり屋めいた状態で梅田及び郵便局諸賢にとってはとんだ迷惑である)地下へ向かった。

f:id:kimotokanata:20180311002532j:image
f:id:kimotokanata:20180311003210j:image
f:id:kimotokanata:20180311003152j:image

レトロめいた地下街はなかなか我々好みであったが、郵便局はその門を閉ざしていた。一方妻はその口を開いた。

「しょうがない……信金のカード試してみよう……(この間二分)ごめん、使えたわ」

妻! 多分だけどそれ、最初のATMでもいけたんじゃないかな!

ともあれ我々は出金成功し、妻の表情に平和が戻ってきていた。世の中にお金で買えないものはたくさんあるがお金で買えるものも沢山あり、具体的に言えばこれから梅田ロフトで妻が狩猟せんとする限定グッズもお金で買えるのであって、そのことを思い浮かべ安堵するのは致し方ないことであろう。再び同じ道を戻り、梅田ロフトへ向かう。期せずして色々な角度からの梅田ロフトの看板を見ることになり、梅田ロフトがターンテーブルに載っているかのような錯覚に陥る。


f:id:kimotokanata:20180311003046j:image

活撃 刀剣乱舞の世界展」はまずロフトのレジでチケットを買って、しかるべきのち会場に向かう、という仕組みとなっていた。購入時にチケットホルダーがもらえ、妻は薬研藤四郎、筆者は三日月宗近であり、三日月宗近は妻の推し四天王にランクインしていたのでは屋速交換した。内容については筆者の語彙ではうまく説明できないが、やはり肉筆のエネルギーと、あれだけ滑らかに動いているものが一枚一枚の絵から成り立っているのだということに改めて驚かされる思いをした。また、劇中の執務室再現シーンでは写真撮影OKであったのでバシャバシャと撮影した。妻と推しのスチルのツーショットを撮っているとなんだか虚無であったがその後自分も撮ってもらったので良しとする。(陸奥守吉行が好きである)


f:id:kimotokanata:20180311003026j:image


f:id:kimotokanata:20180311003113j:image

眼福の展示を抜けるとそこは限定ショップであった。こういったグッズではパターンではあるが中身が分からないリアルガチャめいた缶バッジやアクリルキーホルダーがあり、会計は会場を出たロフトのレジでしか行えない。会場は再入場不可であるから、中身の当てが外れた場合、再びチケットを購入し入場することになるのである。ロフト…恐ろしい子

筆者は無難にクリアファイル、缶バッジ、アクリルキーホルダーをそれぞれ二種類ずつ購入した。ふと妻に目をやると、先ほど出金したお金を全て蒸発されるかのごときお大尽ぶりであった。妻の稼いだ御賃金であるので好きにすればいいのだが、物理的な重量が気にかかるところでもあった。

会計中、筆者は横で会計をしている二人組に目が止まった。妻と同じくらいの女性二人組で、筆者が同僚であれば彼女らがはまっていると聞けば話を合わせるために刀剣乱舞を開始するであろう、というような可愛らしい女性であった。そのうちのお一人は薬研藤四郎グッズをやはりお大尽購入されており、チケットホルダーは鶴丸国永であった。

常日頃のコミュニケーション不全具合はどこへやら、気が付けば筆者はその方にお声がけし、自分とその方のチケットホルダーを交換していただいていた。ご丁寧に何度もお礼を言っていただいた。(お連れ様まで頭を下げられていた)収まるべき場所にものが収まっていることほど清々しいものはない。これによりもう一人、恩恵を受ける者がいる。読者諸賢はご存知の通り、鶴丸国永に思い入れ深い妻である。こちらも大変喜んでくれ、一方間違えば事案発生となっていたところをお声がけしてよかった、と思う。


f:id:kimotokanata:20180311002922j:image


f:id:kimotokanata:20180311002948j:image

因みに階段にファンキーなアートがあったり、一階でも興味深い展示があったりしたが、日は傾き始めており、夜の梅田ンジョンはより攻略難易度が上がりそうだ、ということで我々は阪急梅田駅から烏丸駅を目指そうとした――が、この梅田でのぐるぐる道中により予定がずれ込み、三日目に予定していた阪神百貨店を今日のうちに行っておくことにした。

義理の祖父は広島生まれ、広島育ちであり、戦後の混乱を生き抜き、立派な教育者として広島に尽くした人である。そんな祖父が愛してやまない球団、それは勿論、阪神タイガースである。(義理の祖母はお手本のようなカープファンである)世の中の複雑さを感じるが、そんな祖父は三月が誕生月であるので、阪神グッズをプレゼントしよう、というのは妻は前から考えていたようである。

案内表示から明らかに毛色が違うグッズ会場に向かう。ちなみにエレベーターホールではバース氏が出迎えてくれる。


f:id:kimotokanata:20180311002844j:image

f:id:kimotokanata:20180311002810j:image

妻「お祖父ちゃん助っ人外人が来るたびにバースの再来って言う」

無事誕生日プレゼントを購入し、途中気になっていたkiki工房さんに立ち寄る。このウサギ、何とも言えない顔つきではないか……流石にサイズの大きい陶器は今後も旅が続くのでためらわれ、代わりに釉薬が面白い四角い動物とブローチ、カメラのペンダントを購入した。ちなみにこの動物、何がモチーフか読者諸賢はお分かりだろうか。次回更新で発表したい。


f:id:kimotokanata:20180311002622j:image


f:id:kimotokanata:20180311002649j:image

ということで阪急梅田駅に……ここで筆者を読者諸賢は押しとどめたい衝動に駆られたであろう、そう、大阪駅に荷物を預けたままなのである。危なかった。無事回収し、烏丸駅へと向かった。さらば、梅田。妻は明日また行くけど。

因みに流浪の記録がこちらである。一万八千歩歩きました。


f:id:kimotokanata:20180311002712j:image

烏丸駅から宿泊先へのルートを阪急電車内で調べていると「22番出口で出る」と少なくとも22の出口があることを示唆し我々を不安へ陥れた。到着すると幸いにも22番出口はすぐ近くであったが、

妻「この波線で省略された部分がすごく長いのかもしれない」


f:id:kimotokanata:20180311002748j:image

 

とまさかの身内からの一言で筆者はますます不安になるのであった(実際はそこまででもなかった)

地上に出て、グーグルマップを起動し、当たり前だが碁盤の目であることに感動したりした。


f:id:kimotokanata:20180311002208j:image

宿泊先「ゲストハウス太鼓屋」さんは非常に雰囲気があるところであった。油断していると四千六百字を超えてしまったので、こちらについては次回の記事で詳述する。


f:id:kimotokanata:20180311002126j:image

そちらに荷物を置き、我々は途中で目をつけていた火鍋屋さんへ向かった。店内に入ると上品な紳士が現れ、こちらでお待ちくださいと通される。


f:id:kimotokanata:20180311001904j:image

いやいやこれジャッキーチェンが乗り込んで派手なアクションをするタイプの本格的な中華料理屋さんでは? とうろたえる我々。ドレスコードとかあるタイプのやつじゃないの?

そこから先の記憶はあまりない。ゆずサワーが濃かったからかもしれない。

まず前菜がとてもうまく、


f:id:kimotokanata:20180311001938j:image

点心がうまく、


f:id:kimotokanata:20180311002001j:image

勿論火鍋は殊更にうまく特にラム肉が絶品で、


f:id:kimotokanata:20180311002022j:image

デザートの杏仁豆腐も最高だったことは覚えている。


f:id:kimotokanata:20180311002047j:image
忘れていればよかった。ああ、あのラム肉がまた食べたい。

値段もあの立地あの味ならこのくらいでは安い、と思うほどであった。何故空いていたのか謎で仕方がなく、早速京都の狐に化かされたのかと思ったくらいである。

夫婦そろって浮かれ気分で逗留先へ戻り、1/1、2/2に続き3/3にブログを更新しなくてはという謎の使命感で尻切れトンボのブログ記事を作成し、妻の寝息をBGMに驚くほどスムーズに眠りについてしまった。以下次記事を待たれたし。