カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

王天君曰く、ゴミみてぇ……あるいは覇穹 封神演義 十話目までの感想

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↑十話目まで視聴した時の筆者(福岡市博物館蔵)

余談、あるいは結論

カットされぶり他にカッとなって電子書籍版の封神演義全23巻を購入した。やはり非常に面白い。カラーが再現されているのも素晴らしい。が、遺憾ながら「断崖絶壁今何処」やカバー袖コメントは収録されていない。「しまったあ! もう3メートルでいいっす!」や新藤崎竜を拝めないのは残念である。

それを差し引いてもやはり傑作である。社会人になって思う。太公望みたいな上司が欲しい……と。

ということで、是非読者諸賢でもし未読の方がいらしたら是非ご一読ください。実は、原作がkindleで20%オフだったので本記事の結びとしてということでレッツ購入! であったのだが、一昨日でセールが終了してしまっていたのであった。十話まで見てから、などと考えなければよかった。最も定価でもきっとご納得いただけるはずである。

代わりに、という訳ではないが、藤崎竜先生が作画されている漫画版銀河英雄伝説も対象のセールを3/25まで行っているようなので読者諸賢におかれては是非ご活用いただきたい。

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先にクーポンを取得するというひと手間がいるのでご注意されたし。

ちなみに、筆者はkindleセール情報についてはこちらのブログさんを大いに参考にさせていただいている。同世代ということもあって、おっと思う本がシンクロすることが多い。

www.kindlized.com

ともあれ筆者が今回読者諸賢にお伝えしたいのは、漫画版の封神演義、やっぱり素晴らしいですね、の一言であり、以降述べることは本題という名の蛇足であるということを重ねて申し述べる。

本題

早いもので、前回「覇穹 封神演義」の感想を書いてからひと月以上が過ぎた。にもかかわらず、未だに読み継がれているようでありがたい話である。さてその後、ひっくり返す準備をして差し出し続けた掌は基本的に筆者の無念の涙をぬぐうために使われ続け、事ここに至って文豪の台詞を借りてしまえば「あたしゃキレました、プッツンします」といった段階に移行したため、ちょうど前回と同様五話分の感想で区切りもいいため再び感想記事を書かせていただこうと思う。筆者自身としても大変遺憾なことに、批判的な記事になってしまうので、気分を害される恐れがありますので、お気をつけてお読みくださることをお願い申し上げます。

老賢人の幕がギロチンのスピードで降りる

姫昌(変換候補にあった、すごい)――周の文王と諡された、名高い賢君。諡(死後の追贈)であることから分かる通り、生前王位につくことはなかったが、その地盤を固めた。その賢君ぶりを漫画版と今アニメ版で比較してみよう。(太字がアニメで省略された部分)

殷によって追われた姜族を受け入れる→捨て子を拾い、養子にして育てる→酒池肉林を諫める→民の生活を徒歩で視察中、一般人に衝突されるも許す→衝突された相手が処刑されそうになったことを太公望が批判したことを知り、太公望に興味を持つ→太公望に接触、王となることを提案される→武成王と南宮适の諍いを結果的に収める→跡継ぎ・姫発(後の武王)の器を太公望に見極めてもらう→北の脅威(北伯侯の弟は既に死亡した北伯侯が妲己に人質にとられていると考え、殷についていた)を説得し、殷への包囲網をつくる→その死が知れ渡ると、多くの人が自然と喪に服す

アニメの姫昌の描写だけでも賢君であることは伝わるだろう。しかし、漫画版では多くの積み重ねがあり、満を持して見開きでの、

「釣れますか?」

「 大物がかかったようだのう」

集英社藤崎竜先生の封神演義第4巻83Pより引用)

を見た時の気持ちは、アニメでは味わうことが出来なかった。というか、上記の中から採用された数少ないエピソードのほとんども、「釣れますか?」シーンの後に回想として描写されるので、万感迫るも何もあったものではなかったのである。

また、逝去のシーンについても、漫画版ではお疲れ様です……という感じであったが、アニメ版ではあらゆることが投げっぱなしのように見えてしまい、無責任さが先になってしまう。

今回のアニメ版のメインである「仙界大戦」は、劇中でも説明があったように、殷と周との代理戦争という側面を持つ。即ち主人公側のバックボーンである周再度の描写をもう少し掘り下げてしかるべきなのではないか、せめて台詞などだけでも、と考えたが、よくよく考えたら最大の敵・聞仲が殷に忠誠を尽くす理由も走馬燈の様に一瞬描写して終わりであったのである意味釣り合いがとれているともいえる。

しかし筆者の見間違いでなければアニメ版の太公望はナンパにうつつを抜かす以外何もしていない姫発を後継者として認めたことになってしまうのだがそれでいいのだろうか。(象レースはともかく友人が多い、自分の責任を親に転嫁しないなどは描写しようがあったのではないか)こんな姫発に「お前らおかしいよ」と言われても説得力皆無である。

雷震子は泣いていい。(まあ、原作でも典型的な加入前がピークみたいなキャラクターではあるのだけれど……十一話の予告を見るに雲中子は出るようだが、雷震子は今後出るのだろうか)

趙公明の不在、かと思えばちょっといる中途半端さ

 老賢人の幕が恐ろしい速さで降りて後、仙界大戦が開幕した。その間に原作では、スパイが暗躍したり、殷の太子が裏切ったり、私立アンニュイ学園が連載開始したりしたのだが、それらは一切触れられることがなかった。しかし聞仲・妲己と肩を並べる強敵・趙公明とその配下をめぐるエピソードは中盤のハイライトであり、これを切り捨ててしまったことで様々な齟齬が生じてしまった。(確かに趙公明攻略は仙界大戦・殷周易姓革命においては余話であるが……)

・漫画版では十天君に聞仲は一時幽閉される。(その間に趙公明が豪華絢爛なバトルを挑む訳である)団結する太公望(崑崙)サイドとの対比となっていたが、アニメ版では省略されてしまった。趙公明攻略が省略されたことにより聞仲は金鰲島に向かって即十天君を従え、仙界大戦へ突入したことになってしまった。表題に借用した王天君の台詞もなく、完全に聞仲が主導権を握った形になってしまっている。

・鄧蝉玉周りがバッサリカットされているが、何故か化血陣では人形となった姿で出てくる(勝利しても姿が戻ることはない)ファンサービスなのか挑発なのかわからない現象が起こっている。

・黄天化が腹部の傷を受けるエピソードも当然省略されたため、一部ファンは別ルート突入の可能性に歓喜するが、第九話で思い出したように傷があることに言及され、無事封神される。

・当然あの船名の描写もない。

・竜吉公主が仙界大戦に至って突然レオタードで現れる不思議お姉さんと化す。

・唐突に濃すぎる三姉妹が現れ、「お兄様」と書かれた鉢植えを抱えているし、黄家族と行動を共にしているが(しれっと黄天祥はいない)、一切説明がない。(三姉妹は劇中の出来事について丁寧に説明してくれていることがまたシリアスな笑いを生む。説明を受けての武成王の「わけわかんねえ」は全視聴者の魂の叫びであろう)

・四不象が宝具を食べる特性があることもカットされたので次回以降のダニ騒動がどうなることやら。

などなど枚挙にいとまがない。せめてアバンをもう少し有効活用できなかったのだろうか。

本番・仙界大戦

さていよいよ本アニメ版のメインである仙界大戦に突入したわけだが、張天君の手がニンジャスレイヤーアニメめいてスー……っと伸びてきた時点で嫌な予感はしていたが、引き続きよくわからない構成である。結局、楊戩の回想の時系列をアバンを使ったりしていじくった意味もよくわからなかったし、妲己の過去を急に出すのもよくわからないし、王天君と太公望のやり取りに至ってはいい加減にしてくれと言った感じである。こんなに脳が混乱したのはMGS2アーセナルギアに侵入したとき以来であった。化血陣にしてもここまで尺を割かなくてもよいと思うし、ペース配分・構成については疑問符しか湧いてこない。本当に誰のためのアニメ化なのかが分からないのである。

今後について

もしかしたら今違和感を覚える演出全てが伏線である可能性もあるので、引き続き視聴をしたいと思う。掌も万全のコンディションにして置く所存だ。

蛇足・漫画版未読の妻の感想

・悪い膝丸君(王天君のこと)と妲己ちゃんのおねショタ……尊い