カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

ブロクリ2024参加作品を読む:12日目(Wing/手羽崎さん「ギター・シティ・ブルース」)

余談

筆者は焦っていた。自動車というものの運転ができる気が全くしなかったからだった。自分の体の感覚もよくわからず冷蔵庫や廊下にぶつかっているのに車体感覚などと言われてもわからないのである。モダモダと通っている間になんと先に大学を卒業してしまった。最終学歴は自動車学校卒なのか……と思う暇もなく、「AT限定でよかったなあ」というくらい(検定以外何度落ちても定額)牛歩の進みで教習を進めながら思った。

最終的に下宿を引き払って身一つで友人の家に半月居候させてもらってまでどうにか自動車学校を卒業した筆者の心の慰めとしていつもこのコンテンツがあった……。

◆激突!車学伝説◆

それから月日は流れ、大都会鹿児島では必須な自動車を今日も転がして筆者は業務に励んでいた。毎日運転、ことによっては1日200キロメートルも……なんて、あの頃の筆者が聞いたら驚くことだろう。

いや……もしかしたらそんなことよりも「どうしてゴールデンウィークに働いているのか?」という方に驚くかもしれない。求人票には土日祝休み、9時-18時勤務とあったじゃないかと。

新人社員に過ぎない和多志が会社の売上を食いつぶして人罪にならない為に休日に月曜朝七時からの圧倒的成長のための会議志料を作って人財になれるよう顔晴っているというのに過去の自分はなんと愚かなことか……。

おや、互換性の問題で学生時代のノートPCを立ち上げたらブックマークしていたサイトに更新が……。

onesideflat.net

ああ、こんな風に日常の疑問を面白がって掘り下げてツッコむ楽しさをどうして忘れていたのだろう。久々に呼吸ができた気がする。今日はさっさと帰って温泉に入ろう。

そうして温泉に入り、サウナでも汗を流してさっぱりした筆者は、転職を決意するのだった。

……Wing/手羽崎さん(以下てばっさん)に――というかワンサイドフラットウェブというホームページ、ブログ、とにかくテキストサイトに筆者が出会ったのはもはやいつだったか判然としない。なにしろ発足は2001年、筆者が我が家にWindowsMeが来てワンピースのファンサイトでちりめんマヨトーストを布教していた時も、08年、1人暮らしを機にWindowsVistaを搭載したノートPCを手にして創作に励んでいた時も、15年、のちの妻と同棲を始める折りWindows8プリインストールのノートPCで一緒にニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨンを観ていた時も……嘘……わたしのOS地雷を引く確率……高すぎ……⁉(今は11)ともあれ、ワンサイドフラットウェブは共にあった。新しいPCを買ったらワンサイドフラットウェブをブクマに入れる。そこまでが一連の儀式であったとさえ言えるだろう。

少し前にも書いたが筆者がワールドワイドウェブの大海に漕ぎ出したとき、そこにはたくさんの面白いお兄さん・お姉さんがいた。その方々の活動場所はワンサイドフラットウェブと同様にブクマに入れることも多かった。

しかし四半世紀という時間はある人は失踪し、ある人は炎上し、ある人は極端に日本を愛したり日本を嫌ったりするようになることを見送っていく日々でもあった。そんな中でてばっさんは筆者の愛したテキストサイトを去年まさかのサーバー側から裏切られるというハプニングに遭いながらもブレずに守り続けてくださっている、しかもテキストがずっと面白いままでいる、本来なら2兆フォロワーくらいいて然るべきな御仁である。

12月10日。埋まりゆくアドベントカレンダーに、今度は贅沢な悩みで「埋まっちゃったらどうしよう」と思い始めた。というのもこの時点で是非参加して欲しい方が何人かいらしたからである。残業を終えた筆者は加速してハイになった精神に任せて、てばっさんにご寄稿をお願いしてみた。すると……おお……ゴウランガ! タツジン級スピードでご了承いただき、しかも明後日の12日登録でツイートでの宣言も完了だ……。ミヤモト・マサシもかくやというワザマエに実際筆者はお礼のメッセージを送りつつ背筋が伸びていくのを感じた。

というのもてばっさんは既にご自身でひとりアドベントカレンダーという修羅の道を爆走されているところだったからである。

mixi.jp

たまさかmixi2なるものが出現し、「mixi……死んだはずでは!?」みたいな空気になっていたが、初代の方で3年前からひとりアドベントカレンダー(しかもテーマ縛り/今年はマンガ)を計画し、実行しているのがてばっさんである。もはやグレイトを通り越してクレイジー、狂人の真似をすれば実際狂人のコトワザをもってすればかなり近いところにある氏の偉業である。

そしてこれほどのテキストカラテの使い手であればテキストの息抜きをテキストで行うに違いない……テーマ以外のストックが溜まっているのではないかと懸けた望みが見事叶ったのである。

一読者としては更新を逐次見逃さない、というよりは時折拝見してザクザクたまっている面白テキストをまとめて摂取することが多かったのであるが、Twitterでもフォローさせていただくようになったのはこちらの記事がきっかけであった。

onesideflat.net

09年からTwitterは開設されていたのだが(そんな……15年も前からTwitterを……? そんな物好きが実在するんですか……?)(筆者より3カ月早い開設である)、このテキストを読む過程でTwitterをされていることがわかり、フォローさせていただいたのだった。

上記テキストは「子が人生のパーティにジョインする」ということについて筆者が思うことだったり妊娠から出産に至るまでの流れがしっかりと書かれており、結騎さんの下記記事と並んで我が子を迎えるまでの心の準備として大変ありがたいものであった。

www.jigowatt121.com

そんなアイチャンがもう10歳というのだから驚きである。彼女のクロニクルはワンサイドフラットウェブのタグ「育成記」を追うことで小さな命がいかに尊ばれ愛おしまれ育まれてきたかがわかり、とても良い。かつては予習として、今は3歳児くらいまでのアイチャンのメモリーを「わかる~」と頷きながら読んでいく時間は労働という不自然から体が解放されていくのを感じることが出来る貴重な時間だ。読むたび、せっかくブログという記録媒体があったのだからもっと我が子のことを細かく記録しておけばよかったなあと後悔もする。初めて寝返りをした日、ハイハイをした日、歩いた日、パパと呼んでくれた日……その瞬間は一生覚えているだろうなと感じるし、今も思い出せば胸がじんわりなるが、ディテールは日々失われていくからだ。しかし育成記タグの記事を読めば、顔も知らないお嬢さんの何年も前の声や笑顔が聴こえ、見えるようであり、せめてこれからの娘の日々を少しでも残していこうと改めて思った。

ちなみに筆者が我が子をしばしば「娘氏」と呼称するのは完全にてばっさんリスペクトである。

onesideflat.net

てばっさんはまた電源/非電源問わぬゲーマーであり、ご自宅には「ひみつのたからばこ」を複数所持というからご家族そろって「そう」であって、そのゲームへの取り組み方、視点、BGMへの耐性の無さは特筆すべきもので、なぜファミ通で連載を持っていないのか首を傾げざるを得ない無類の面白さがある。コロナ禍においてはカブを売ったり売られたりということもしばしばあった。

特にオープンワールド系は自由度の高さも相まって最高だ。筆者は上記Fallout4のプレイ記録は更新を心待ちにしていたし、様々なタイミングでプレイできていないので残念ながら拝読できていないが、きっとティアキンプレイ日記も大変面白いはずである。

ちなみにちょっと前に古代インターネットに伝わる儀式「相互リンク」を行い、我々は盃を交わしたも同然となった。アニメ不毛の地VSプラモデル王国という相反する属性で戦った結果まさかの前者が勝利しご当地アニメなのにガンダムビルドファイターズが放送されなかったてばっさんの居住エリアを訪れた際には、是非とも仁義を切りたいところである。

本題

余談が、ながくなった。

onesideflat.net

中学三年生のころに我が家にアコースティックギターが来た。弟が急にギターを弾きたくなったからである。弟というのはそういうところがあり、今もいつの間にかフィリピンにいたりタイにいたりする。親父が意外とノリノリで一緒に買いに行ったり、初心者用教本を選んだりした。

弟が案の定Fで挫折する中、休日の親父は酔って赤ら顔になりながら、流暢に井上陽水の「少年時代」を美しく弾き、(よく考えればバキバキのフォーク世代である)筆者に「アルペジオ」というテクニックを伝授した。これは右手をちろちろさせればかなり「それっぽい」感じになり、筆者の心を満足させ、ピカピカの器楽の教科書(選択授業で筆者は書道を選んでいた)のギターの科目のコードをちまちま弾いたりしていた。BUMPの「星のアルペジオ」に触れる前で本当に良かったと思う。後年、弟は器楽の授業において家にギターがあった経験を役立てたらしいが、いつのまにかギターはいとこに譲られていた。

転職して少しした頃、地域の行事で大正琴の団体が演奏を披露された。その主催者とボスが知人であり、妻は慣れぬ土地で筆者以外の繋がりもあった方がいいだろうということで、夫婦して師事することになった。

kimotokanata.hatenablog.com

ブログって外部記録装置としていいね! と思ったのは大正琴で検索したら習って1年の頃の自分の気持ちや演奏音源が出てきたことである。楽しく学んでいたのだがコロナ禍による教室の長期閉鎖、我が家の妊娠・出産・育児が重なり中断の方がキャリアが長くなってしまった。筆者の腕はもちろん、弦など文字通り錆びついてしまっていることだろう。しかしこうして着実に歩んでいる人の記録を見ると、もう少し娘が大きくなるまではと思っていたが再会してみたくなる。

思えば、その頃はまだ実家にあったはずのアコギをけいおん! ムーブメントの時に下宿に持ってきて一人カラオケでかき鳴らしたりしていれば、今頃はキャリア15年くらいのギタリストになっていた訳で、なにごとも今日が一番始めるのに早い日なのである。

記事中ではピアノに対してギターのtab譜がより視認性が高く初心者にもso goodである……ということで全くその通りなのだが(選定する楽譜のセンス良すぎ)、ここで大正琴の楽譜をご覧いただきたい。

音楽研究所様の無料数字譜DLコーナーより拝借しました)

数字である。なので、大正琴の楽譜を数字譜とも言う。この数字は何か。連打の回数ではない。

フォルダを漁って見つけた画像で見にくくて、申し訳ないが、これが大正琴本体である。鍵盤に数字が書いてあることがお分かりいただけるだろう。

そう、大正琴は数字譜に対応した数字の鍵盤(キー)を押せば弦が押さえられるハイテク楽器なのである。大正とはいうものの「令和最新」と名乗っても差し支えないハイテクぶりである。Amazonに出品制限を受けるかもしれない。

すなわち……あらゆる弦楽器の「コードが押さえられない」という入門のネックをぶち壊し、右手のピックの扱いに集中できるという訳だ。実際、音楽の素養が全くない筆者も初日で「さくらさくら」を弾くことが出来たし、あの時の「自分も楽器ができるんだ」という喜びは忘れられない。もちろん、苦難の末コードをマスターして弾きこなすことも素晴らしいが、すぐに楽器からそれらしい音が出る喜びも何物にも代えがたい。そう、音楽とは音を楽しむと書くのだから……(ここでいい感じのBGMが弾けるようになりたい)

しかし相変わらずギター体当たり習熟の様子を培ったセンスとチョイスで面白く読みやすく仕上げるセンスはさすがである。ピピちゃんも添えてバランスもいい。

先述の通りいつかてばっさんのナワバリを襲撃しようと企む筆者であるが、もしかしたら筆者のナワバリに肩に小鳥を乗せたギターを持った渡り鳥がやってくる可能性がないとは言えない。先だって、なんと自動車で九州北部を攻めたことが確認されているからである。車学伝説を愛読していた身としては万感の出来事であった。