カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

煎じ詰めれば千字になるか・書店編

そろそろ腰を据えて長めの記事を書きたいとも思うのだが気付けばこんな時間(23:24)である。久しぶりに仕事を持ち帰らずに済んだが、途中夕食をテイクアウトしたことで結局いつもと同じくらいの帰宅時間になった。店には早く着いたが少しでも密を避けようとやや歩いたところにある書店で時間を潰すことにした。

やはり絵本コーナーにまず足が向いてしまう。手触りは今の電子書籍ではまだ再現することが出来ない。娘の目下のお気に入りは「はじめてのピアノ」である。

筆者のマイベスト絵本は「きんぎょがにげた」であり、今も現役であることに嬉しくなる。知人のお子さんにしばしばプレゼントする「ぜったいにおしちゃダメ?」もいずれ娘に与えてみたい。

そのままメインの通路を歩いていくと芥川賞直木賞受賞作品棚が絢爛豪華に飾り付けられているが、肝心の本はなく、「欠品中」の張り紙がさみしげに鎮座していた。この辺り、柔軟に電子書籍のダウンロードカードとかをもっと実店舗で取り扱ってもいいのになあと思う。

ティックトックで話題の棚というものもあり、時代の趨勢を感じつつも「残像に口紅を」や「もものかんづめ」が取り上げられていて、名著は朽ちないなあとしみじみしたりする。初見のものでは「冬の朝そっと担任を突き落とす」が気になった。一句詠んでいる場合か。

海外文庫コーナーではウィッチャーが大きく展開されていた。小説原作とは聞いていたが実際に見たのは初めてだった。ゲームは間違いなく面白いのだが途中で止まってしまっている。昔は選択肢AとBで得られる報酬や今後の展開が変わったりすると周回してコンプリートしたものだが、今は一周でどうすれば取りこぼしがどれだけ少ないかが気になって結局足が止まってしまうということが多くなり、その割を食ってしまっている。その棚の後ろは精神世界・スピリチュアルのコーナーで、リアル「あなたの知らない世界」である。帯に「なぜ引き寄せの法則はうまくいかなかったのか?」と大書された本があり、前著も未読である筆者は引き寄せの法則はうまくいかないことが詠まずともわかり得した気持ちになった。

エッセイのコーナーでは「東京の生活史」に圧倒された。背表紙の圧。これこそが電子書籍が現在紙書籍にかなわないところであろう。少し読んでみるだけでとてもいい。人生は物語である、ということがひしひしと伝わる。自分の誕生日祝いにでも買いたいと思う。

キートン山田さんもエッセイを出しており、先ほど「もものかんづめ」でも帯にコメントを寄せていたTARAKOさんがまたも帯に登場しており、思わずTARAKO・ビンゴを目指して少女漫画コーナーあたりを散策しそうになる。

が、その前に一つの本が目に留まった。

himuka-publishing.com

「現代語訳 上井覚兼日記2」である。上井覚兼は実はこのブログにも一度登場している戦国島津の名将であり、

kimotokanata.hatenablog.com

その日記は九州戦国時代のリアルに迫る貴重な資料である。2巻では肥前の熊・龍造寺隆信がまさかの討死を遂げた沖田畷の戦いなど、怒涛のうねりの裏側が綴られるというから買わずにはいられない。だって2巻だけあるということは1巻を持っている筆者に買えと言っているとしか思えないではないか。

丁度時計を見ればテイクアウト商品が受け取りの時刻だったのもそういう運命なのであろう。しかし、戦国武将の日記を「エッセイ」として扱う薩摩の書店の豪胆さたるや愛おしい。

(1600字・24分)