カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

揃った1ダース+α――ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 4th LIVE@オオサカ《Welcome to our Hood》Day1:Playgroundライブビューイング感想

余談

ダメもとで申し込んだライブビューイングが当たったので参戦してきた。

どころか、明日のBATTLEgroundも一般分があったと聞いて衝撃だった。

明日は明日で福岡に用があり、それもまた2度とないイベントであったので断腸の思いで本日に全力を注ぐことにしたが。

ライブビューイングも会場16時半だと前日まで勘違いしていたので、到着してから大分時間の余裕があった。

物販のおこぼれをちょっと期待していたのでなかったのは残念。

待ち時間でそばのゲームコーナーでひっぱりフィギュアの夢野幻太郎先生をお迎えしたりした。

妻は「ジュクの女」を意識してシックな格好とつよそうなメイクにしており、コンタクトまで装備していた。本気である。

筆者もせっかくなので礼服に革靴、観音坂独歩君と似た柄のシャツと持っている中では割と麻天狼ぽいだろう色のネクタイを装備していくことにした。というか普通にサラリマンである。眼鏡が入間銃兎巡査部長と同じ黒縁なのでハンパなコスプレとみなされハマの女たちに囲んで棒で殴られるおそれがあり、コンタクトで行くことにした。

こうして配偶者とのデートより3倍気合が入っている妻と、単に疲れたサラリマンである筆者とのライブビューイング参戦が始まった。

妻は直前にリングライトを注文、本日午前中にぎりぎりで届いていたが我々は初参戦であるためライブビューイングの「作法」がわからず、直前までつけるのを逡巡していたが、隣の方が両指にがっつり装備されているのを見て安心して(妻は3個)装備した。

スクリーンに大阪の様子が映りだされ、祭りが始まった。

本題

素晴らしかった。正直なところ、感情がぐちゃぐちゃであり、まだ整理しきれていないというのが本音であるが、そう言ったところまで含めてライブ感として記しておきたい。

ということで以下ネタバレしかありませんのでご注意ください。そういえば、はてなの新規約のネタバレについても思うことがあるのだが、それはまたいずれ。

 

結論から言うと、2.5次元沼にとうとう夫婦して2.5次元沼に入ってしまうしかないのでは……というくらいのインパクトを受けた。

演じるキャラクターと最終的にシンクロするというか現時点でシンクロしつつあり、特に駒田さんは完全に入間銃兎巡査部長だった。赤手袋って3次元に存在するんだな。

それまでも幾度となくアルバム特典のライブを家で見て来たが、やはり大画面では迫力が違う。そして皆さん、大画面でも破綻しないしないくらい顔がいい。単純にイケメンとかそういうのではなく、いや、イケメンなのだが、「デキる」男たちという感じで格好いい。サツマ・ディビジョンのライビュは大人しいのか……? とはじめ思ったが、入場の際送られる歓声はすさまじく、我々も遠慮なく雄叫ぶことができた。

各曲感想

HoodStar

さっそくの全員曲でテンションが上がる。全員参加の恩恵を早速感じる。全員にまんべんなく声援が上がっており、人気の確かさを思い知らされる。後半は切り替えが忙しいだろうにカメラさんも頑張っておられた。やっぱり伊弉冉一二三のパートはライブ映えするなあ、と思う。

Alternative Rap Battle

まさか2曲目にくるとは! 観客の嬉しい悲鳴が地鳴りのように響いた。生「まちゅねえ」で尊いハマの女の人命がいくつ失われたことだろうか。妻も「ギョアー!」みたいなよくわからない声を出していた。皆コールをスッとできているのがすごい。

ヨコハマ・ディビジョン(Whats my name?~ベイサイドスモーキングブルース~G anthem of Y-CITY~シノギ(Dead Pools)

「リ・オー!」の声が揃う快感、シガーキスと再現度、仲間を得た碧棺左馬刻様の笑顔と注意対象のアロハからスカジャンへの変遷、「シマ」への執着と威厳。まさしく浜風にも錆びぬスキルが燦然とぎらついていた。

イケブクロ・ディビジョン(おはようイケブクロ~センセンフコク~New star~俺が一郎~BB’s City~Nausa de Zuiqu)

こちらも川柳の後のケンカや絶対言わない一言などライブらしいアレンジがあって嬉しい。センセンフコクはいかにもライブ向けのノリノリになれる曲。その後のNewstarはまさしく好対照でしっとり聞かせてくれる。からのガンガン煽ってくる兄貴!最高!

聞き逃していた2曲をライブでやってくれたのもめちゃくちゃに嬉しかった。動きが着くとよりコミカルになって面白い。

ゲスト1.口ロロ

イケブクロ・ディビジョンに楽曲提供をしている口ロロさんがゲスト。ああ懐かしい。筆者がかつてロキノン男子だった時、聞いていたなあ。今も第一線というのだから恐れ入る。あの時は「ヒップホップの初期衝動」をこんな感じで聞くとは思っていなかった。やっぱり名曲。

シブヤ・ディビジョン(3$EVEN~シナリオライアー~drops~stella)

やっぱり有栖川帝統君の曲はノっていて楽しい。今回、個人曲はShortversionなのだがそのせいで夢野幻太郎先生がより怒涛の人生になってしまったのはちょっと面白かった。全体的に飴村乱数君の運動量がエグい。Stellaのとき顔が死んでいるのは突然幻太郎先生の謎小説劇に巻き込まれたからではなく老いを止めた科学者の演技だというのはわかっていても表情の振れ幅に改めてドキッとさせられた。妻は今度は斉藤壮馬さんに忙しい。というかStellaで普通に泣いていた。

シンジュク・ディビジョン(シャンパンゴールド~チグリジア~迷宮壁~Wrap&rap〜3分バイブスクッキング〜パピヨン

\プリンセス!/\プリンセス!/\最高~~!!/めちゃめちゃに楽しい。からのチグリジアは高低差がすごい。個人的には2番の方の歌詞が好きなのでちょっと残念。立て続けの迷宮壁。速水さんの歌声は本当にヒプノシスマイクを使っているんじゃないかっていうくらい刺さる。からのバイブスクッキングは本当にもう観客をどこへ連れていきたいんだよという緩急。(楽しい)パピヨンではわちゃわちゃしている3人がひたすらに可愛い。3次元の成人男性にこんな感情を抱く日が来るなんて……。

ゲスト2.GADORO

別項にて後述する。

T.D.D.LEGEND

これもこのタイミングで見られるとは思っていなかったのでうれしい。お色直しの為にGADOROさんは話を引っ張っていたのかもしれない。本当に若返って見えるので不思議だ。個人的には神宮寺寂雷先生のパートの時に碧棺左馬刻様が完全にヤンキーの座り方で煽っているのが好きである。

Division Battle Anthem~Division Rap Battle

重ねて12人+ゲスト見られることのありがたさを感じる。最後ということでちぎれんばかりに腕を振る。声を出す。ずっとこの時が続けばいいのにと思った。

総じて、「口からCD音源出てんのかい!」とコールしたくなるほどクォリティの高い歌声とパフォーマンスばかりで、30曲近い歌を聴いたとは思えないほど圧縮された濃密な時間を過ごさせてもらった。

ラッパー・GADOROの一つのゴールを見た。

筆者が「フリースタイルダンジョン」の熱心なヘッズであることは前に述べた。

その中でも強敵として印象に残っているのが今回ゲストで登場したGADOROさんである。多くが都会―東京、神奈川、大阪、名古屋、福岡―から参戦する中、宮崎県児湯郡から参戦したGADOROさん。挑戦VTRはたいていが町中の雑踏や室内なのにGADOROさんは森の中。

ダークな色彩のファッションとダークな、しかし確かなテクニックでGADOROさんはフリースタイルダンジョンを勝ち進んだ。そこに立ちはだかったのは「隠れモンスター」Mr.Qさん。「Shinjyuku style~笑わすな~」を作詞した山田マンさんが属する「ラッパ我リヤ」のクルーでレジェンドであり、前回ライブにも出演している。その威厳に呑まれたのか、フルセットで惜しくも敗北してしまう。

リベンジでも順調に勝ち進むが、大阪の生んだMCバトルの、フリースタイルの最高到達点で現ラスボスであるR-指定さんとの対戦で惜しくも敗れる。

しかしその後も年末特番に呼ばれるなど、番組に確実な爪痕を残した。

そして最強のMCを決める「KOK」を連覇。HIPHOP史に名を残したと言ってもいい。

そんな彼が、迷宮壁を提供した時も驚いたが、今回ゲスト出演することも驚かされた。

彼のイメージは「孤高のMC」だったからだ。

そんな彼が今回、派手派手な格好でゲスト出演し、金時計を巻き、言ってしまえばアウェーの場(とはいえヒプマイのライブの観客諸賢のノリの良さはどのゲストも絶賛しているが)でオーディエンスを盛り上げようとし、あまつさえ、言葉を紡ぐ。

ああ、今筆者はGADOROというラッパーの一つの節目を、一種のゴールを見ているのだな、と思った。いつしか目頭が熱くなっていた。GADOROさん自身も、目を潤ませているようだ。

地方出身者の悲哀。かつて鹿児島の長渕剛も言っていた。「死にたいくらいに憧れた東京のバカヤロー」と。都会への憧れと憎悪が田舎者には表裏一体で存在する。口ロロが都会に寄り添うHIPHOPだとしたら、GADOROさんは都会に牙を剥け続けたHIPHOPである。

だが、それが「あった」になろうとしている、と感じた。何かもっと大きいものを掴んで、彼が次のステージに進もうとしているように。

だから彼は大観衆の前で思わず口を開いたのだろう。自分が死んではいないが生きていなかったことを語ったのだろう。イヤホンから自分の音源を流させてみせると宣戦布告したのだろう。自分が友達が少ないことを、夜景が残業で出来ていることを、相対化して、冗談めかして言うことができたのだろう。

誰かの背中を押したかったのだろう。あの時、HIPHOPは自分にそうしてくれたように。

そうして、循環するようだが、口を開かせたのは間違いなく目の前の大観衆である。大阪城ホール参戦者のゲストへの歓迎姿勢である。

かつて「フリースタイルダンジョン」でCHICO CARLITOさんは言った。「HIPHOPはルールを変える為の音楽」だと。GADOROさんはそれを体現している。

だから、大観衆に彼なりのエールを送ったのだろう。

その後、最後の最後で彼が「宮崎」をレペゼンして完全即興の九州南部訛りでのフリースタイルにとうとう筆者は泣いてしまった。彼は「地元」と「都会」の折り合いをこうしてつけたのだ。地元のやぼったさの象徴である訛りが、フロウとしてトラックに乗る格好良さはどうだ。これこそが都会育ちのMCが真似できない地方MCの強さだ。そこには間違いなく宮崎への愛がある。都会への赦しがある。

なんて格好いいんだ。

同じ田舎者の呪縛を少し緩めてくれたことの感謝とともに、彼の今後の活躍を祈りたい。

もっとGADOROさんが気になる方は「WAR WAR WAR」の作曲者であるYuto.comさん作曲の「真っ黒い太陽」がおすすめです。


GADORO/真っ黒い太陽 feat.輪入道 (Prod by Yuto.com™)【Official MV】

中央区の発表――オオサカ・ディビジョン誕生

朗々としたいい声で「どついたれ本舗」って言われるとシリアスな笑いの空間になるな……と思った。「DTH」とかで良かったんじゃないかと思うが、この名前でなければトレンド入りはしなかったような気もするあたりいい名前なのかもしれない。

しかしこの名前誰がつけたんだろう……内閣のテコ入れらしいから閣僚会議で決まってたらどうしよう……「では全会一致で大阪に設置するチームは『どついたれ本舗』で」とかやっていたら面白すぎる。

正直新ディビジョンの発表もオオサカにできるというのも予想の範囲内ではあったのだが、2日目だと思っていたので驚いた。

明日は何があるのだろう。バトルシーズンの発表? 更なる新ディビジョン?

発表の前後のリアクションもそれぞれの個性が出ていて面白かった。

既に完成されたコミュニティに新しく参入するというのはなかなか難しいし、筆者も正直なところ今はまだ不思議な気持ちでいるが、(いやとかではない)今までの素晴らしい全員曲とかは何とかリミックスとかする形でまだ使ってほしいな……と思う。

 

観終えて

やはり終了後はヘッズたちはその衝撃の咀嚼に時間がかかっているようであったが、ライブ自体は非常に満足のいくものであった。筆者も次回は光る何かを装備して参戦したい。

たのC~~!!

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