カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

煎じ詰めれば千字になるか・書店編

そろそろ腰を据えて長めの記事を書きたいとも思うのだが気付けばこんな時間(23:24)である。久しぶりに仕事を持ち帰らずに済んだが、途中夕食をテイクアウトしたことで結局いつもと同じくらいの帰宅時間になった。店には早く着いたが少しでも密を避けようとやや歩いたところにある書店で時間を潰すことにした。

やはり絵本コーナーにまず足が向いてしまう。手触りは今の電子書籍ではまだ再現することが出来ない。娘の目下のお気に入りは「はじめてのピアノ」である。

筆者のマイベスト絵本は「きんぎょがにげた」であり、今も現役であることに嬉しくなる。知人のお子さんにしばしばプレゼントする「ぜったいにおしちゃダメ?」もいずれ娘に与えてみたい。

そのままメインの通路を歩いていくと芥川賞直木賞受賞作品棚が絢爛豪華に飾り付けられているが、肝心の本はなく、「欠品中」の張り紙がさみしげに鎮座していた。この辺り、柔軟に電子書籍のダウンロードカードとかをもっと実店舗で取り扱ってもいいのになあと思う。

ティックトックで話題の棚というものもあり、時代の趨勢を感じつつも「残像に口紅を」や「もものかんづめ」が取り上げられていて、名著は朽ちないなあとしみじみしたりする。初見のものでは「冬の朝そっと担任を突き落とす」が気になった。一句詠んでいる場合か。

海外文庫コーナーではウィッチャーが大きく展開されていた。小説原作とは聞いていたが実際に見たのは初めてだった。ゲームは間違いなく面白いのだが途中で止まってしまっている。昔は選択肢AとBで得られる報酬や今後の展開が変わったりすると周回してコンプリートしたものだが、今は一周でどうすれば取りこぼしがどれだけ少ないかが気になって結局足が止まってしまうということが多くなり、その割を食ってしまっている。その棚の後ろは精神世界・スピリチュアルのコーナーで、リアル「あなたの知らない世界」である。帯に「なぜ引き寄せの法則はうまくいかなかったのか?」と大書された本があり、前著も未読である筆者は引き寄せの法則はうまくいかないことが詠まずともわかり得した気持ちになった。

エッセイのコーナーでは「東京の生活史」に圧倒された。背表紙の圧。これこそが電子書籍が現在紙書籍にかなわないところであろう。少し読んでみるだけでとてもいい。人生は物語である、ということがひしひしと伝わる。自分の誕生日祝いにでも買いたいと思う。

キートン山田さんもエッセイを出しており、先ほど「もものかんづめ」でも帯にコメントを寄せていたTARAKOさんがまたも帯に登場しており、思わずTARAKO・ビンゴを目指して少女漫画コーナーあたりを散策しそうになる。

が、その前に一つの本が目に留まった。

himuka-publishing.com

「現代語訳 上井覚兼日記2」である。上井覚兼は実はこのブログにも一度登場している戦国島津の名将であり、

kimotokanata.hatenablog.com

その日記は九州戦国時代のリアルに迫る貴重な資料である。2巻では肥前の熊・龍造寺隆信がまさかの討死を遂げた沖田畷の戦いなど、怒涛のうねりの裏側が綴られるというから買わずにはいられない。だって2巻だけあるということは1巻を持っている筆者に買えと言っているとしか思えないではないか。

丁度時計を見ればテイクアウト商品が受け取りの時刻だったのもそういう運命なのであろう。しかし、戦国武将の日記を「エッセイ」として扱う薩摩の書店の豪胆さたるや愛おしい。

(1600字・24分)

煎じ詰めれば千字になるか・豚めし編

二月になった。昨日が月末の仕事と週初めの仕事が同時に襲来するというバグが発生していたため、気が付けばなっていたという印象が強い。

さて二月になるとどうなるか。

www.matsuyafoods.co.jp

豚めしが復活するのである。

「立志編」「接種編」ときて納まりとしては「豚丼編」としたいところなのだが、

しかしやはり、「豚めし」なのである。ちなみに「豚丼」、吉野家すき家で読み方が異なっていたのももはや懐かしい思い出である。

筆者にとってはやはり、広島の貧乏学生時代を支えてくれた「豚めし」と「マックポーク」は感謝してもしきれない存在であり、それは決して何かの代替品などではなく、単独の欠かせない筆者の愛食としてそこにあった。

そして筆者は2012年に広島を去り、同年にその両品ともが市場から姿を消してしまったのだった。

実際のところレトルトや都内では現存していたといううわさも聞くが、少なくともその後筆者が「郷愁の松屋」として鹿児島県外で追い求めた時、そこにはもう豚めしの姿はなかった。筆者ももはや社会人となり、牛めし豚めし、そのわずかな差額でどうにか豚めしなら食える……! という事態には陥らないとしても、やはり一抹の寂しさはぬぐえなかった。

そこに、豚めしの復活である。気が付けば再び、隣町の松屋へ向けて車を走らせていた。月初めは立志のタイミング。半年後の健康診断に向けて再び肉体改造を始めるはずが、胃袋をノスタルジアに浸らせることになってしまうとは人生一寸先は松である。

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特盛を頼めるのなら、特盛を頼まなければ嘘である。それが礼儀、挨拶というものであろう。玉ねぎと甘辛いたれに牛とはまた違ううまみが混然一体となり、すべてをコメが優しく包み込んでいく。

改良を感じながらもしかし、ノスタルジーもしっかり感じさせてくれる、ある種復活テキサスバーガーと対になったような体験をさせてもらった。

kimotokanata.hatenablog.com

しかしこうなると豚への感謝はもはや特盛でも収まりきらない……。

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ということでアプリで30円引きのロースかつ丼で感謝を伝えたのだった。そう、あの頃小銭をかき集め、50円玉がこんなところに! じゃあ今日は牛めしにしよう! とやっていた筆者はもうおらず、クレカで事前決済するようになっていた。豚めしはそんな筆者を笑うだろうか。二杯の味噌汁は今日もただただ温かかった。

(995文字/15分)

 

煎じ詰めれば千字になるか・接種編


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コロナワクチンの三回目接種をした。前回の二回目接種が去年の五月半ばで、最初はそんなでもなかったが約半日後から諸々の症状が出た。

・注射した方の肩・股関節・背中が痛い
・微熱・悪寒
・頭痛悪化

大体全快には三日ぐらいかかったと思う。とはいえそのご加護か何なのか、何とか今日まで感染せずに(あるいは、あまり考えたくないことだが感染しても無症状で済んで)いる。

今回も職域接種ではあるものの個人個人の家に接種券が届き、個別に予約・接種する方式となっていたが、ボスの厚意で勤務時間中に近隣の医療機関でスタッフ持ち回りで接種を受ける方式になった。

筆者の場合は前回同様小児科で接種させてもらった。前回と違って自らも娘がおり、娘のかかりつけの医院との差異を興味深く観察したりした。

先生は蓬髪の大ベテランで、接種は滞りなく痛みもなく済んだ。院内で20分の待機となり、「前回より待機時間が長くなっているな」と思った。二回目は特に副反応が強く出る人が多かったというからその配慮であるのかもしれない。

小さなベッドがある処置室に通される。壁際の色あせたキャラクターの背比べポスターは150㎝までで、果たしてどれだけのちびっこがその背を測ったのだろうと考えると途方もない気持ちになる。

何事もなく20分が過ぎ、3回目の接種証明書をもらった。その間に速報で県内の新型コロナ感染者が最高を更新したことがスマホに通知されていた。

年末の「2月には広島の実家に娘を連れていけるのではないか」という楽観はどこへやら、この南の果てでも増加の一途をたどっている。知り合いの知り合いくらいまで辿れば感染者、濃厚接触者はもうずいぶんといることだろう。

我が家は現在基本的に筆者以外は外に出ることがないので、接種の少し前から妻と娘、筆者とで寝所を分けている。とはいえ日中ワンオペの妻は夜間を回復に充てているので夜泣きなどは引き続き筆者が基本的には対処している。

そう、今回の接種はwith娘だ。例のごとく、明け方から調子が悪くなる筆者と反比例するかのように充電ばっちり遊んで遊んで!を伝説の巨獣のような雄たけびで表現する娘。妻を起こさぬよう動作を最小限かつ最速で寝室に向かい、娘を抱き上げる。接種した側の肩に痛みが走る。次いで首、腰。刺激した関節が律義にその痛みを留め続けているのだ。

一瞬顔をゆがめた筆者を変顔だと思ったのか大ウケの娘の笑顔はしかし、特効薬であった。

(28分/1000字)

正方館の殺人・解決編――あるいは畔田韻斗最大最悪の日

事件編のあらすじ

名探偵・明智ホムとその助手・和都が大雪のため身を寄せた洋館、正方館。

ミステリー愛好家たちが集うその館で開かれたミステリー・ナイトが明け、密室の広間(ホール)で主催の森の他殺死体が発見される。

皆が騒然とする中、明智と和都がその場を取り仕切り、他の愛好家たちに質問やアリバイ確認を行うも全員犯行は不可能と思われた。

折からの大雪で警察の到着も大幅に遅れると思われる中、森の遺体はもともと宿泊していたゲストルームAではなく、元々明智がいたEに安置される。

Aの部屋に手がかりが残っていないか、明智が調べると言い出したためである。

部屋から見つかった森の日記帳には、震える字で「宇宙人」と書かれていた。

その夜、明智が外部からの侵入手段がないか外から検証中に、新たなる惨劇が起こる。

愛好家サークルの紅一点、高手莉愛がやはり全身から血を吹き出す惨たらしい姿で息絶えたのだ。それも、自分の部屋(ゲストルームD)ではなく、森の遺体に折り重なるようにゲストルームEで。Eの鍵は引き続き明智が管理していたが、洋館のスタッフが推定犯行時刻に外を調べていた明智を記憶していた。

つまり、第二の殺人も密室殺人だったのである!

なぜ彼女は自ら鍵を持ち、施錠できる自室Dではなく、Eを訪れ、そして死んだのか?

和都がEで受けた奇妙な圧迫感とは死者の怨念か、それとも宇宙からのメッセージか?

真犯人「白銀の宇宙人」の目的は何なのか?

果たして何者なのか?

その真相を、明智ホムは見抜くことが出来るのだろうか――。

 

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見取り図

※正方館は二階建てであり、殺人事件に関係しないスタッフの居室(和都が泊まった部屋も含む)やキッチンなどは別階にあり、外階段で接続している。

CM(今回のネタ元/いつもすみません)

kakuyomu.jp

解決編

「さて――」

広間に皆を集めた明智が口を開いた。その傍らには助手の和都。そして残り三名となったミステリ愛好家の面々だ。みんな、憔悴しきっている。天気は落ち着き、午後には警察が来るとはいえ、突然仲間を失い、しかもその犯人が今も身近にいるというのだ。当たり前だろう。

「まずは高手さんの事件から真相をお話していきましょう」

そう言いつつ、明智は見取り図を机に広げた。遺体発見時の森と高手だろう棒人間が描きこまれている。

「高手さんの死における大きな謎はひとつ。なぜ彼女はEの部屋で亡くなったか――」

言葉を切り、明智は周囲をぐるりと見まわす。

「答えはシンプルです。彼女はEこそが自室――Dだと思っていたからです」

全員の頭にクエスチョンマークが浮かんでいるのを見て取ったのか、明智は和都を促し、ペンを受け取る。

「いいですか? 彼女は殺害される前、入浴を済ませていた。そしてその時、眼鏡はつけていなかった。気温差で曇ってしまうからです。どうせ自室に戻るまでのこと、と深く気にも留めなかったのでしょう。そんなぼやけた視界の中で、彼女は何をもって自室と認識するか――」

明智は図にペンを走らせる。

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そ…そんな…!「扉」が現れた……!

「――『広間の扉の手前が自室』だったのではないでしょうか? この館はAとDの部屋の扉のみ重なるようになっているんです。まるでもう一つの仕切り扉のように。そしてこれを『白銀の宇宙人』は利用し――その光線銃(どくが)に高手さんは撃ち抜かれてしまった」

彼女の死を悼むかのように明智は一瞬目を伏せた。

「で、でもおかしいじゃないですか」

愛好家の一人、安荘が口をはさむ。

「Eは密室だったんですよ! 高手さんが部屋を勘違いしたとしても、中に入れなかったら意味がないじゃないですか!」

口角泡を飛ばす安荘を片手で制しながら、明智は和都へ目をやる。

「和都くん、君はEの部屋に入った時、妙な圧迫感を覚えたと言っていたね?」

「ええ、なんかこう、ぐっと――」

自分を無視された格好の安荘は憤慨しているが、明智は意に介さずその言葉を引き取る。

「ありがとう。君は確かAの真上の部屋に今は泊めてもらっているんだったかな。実は、私も同じような感覚を覚えたんです。そしてそれは安荘さん、あなたもそうだったんじゃないですか?」

そこで安荘ははっとして、ええまあ、とすこしばつが悪そうにうなずいた。

「そしてもう一人――あなたもだ、縦溝さん」

不意に声をかけられ、生来気の小さいだろう縦溝はあからさまにびくっとしたが、やはり否定はしなかった。

「昨日、痛ましい犯行があった時、私は外で調査をしていました。図面通り、この館の縦横の寸法は完全に同じだった。それはおかしいんですよ」

その言葉を一座は理解することが出来ないようだった。それも織り込み済みだったのか、明智はリアクションを待たずに、広間の端のクローゼットの方に歩みながら少しずつ語調を強めて話し続ける。

「ゲストルームは全て同じ内装です。しかし、玄関から向かって左側の部屋で過ごしていた人たちは右側の部屋に立ち入った時、圧迫感を覚えた――そして図面通り、この館の縦横の寸法は一緒だ」

クローゼットに辿り着いた明智は扉を開け放つ。普段使わないだろう座卓などがこまごま収納されていた。

「そうであるなら! 「答え」はひとつです。右側の部屋は左側の部屋より狭い。そして、その分の余ったスペースは――」

明智の去就を見守っていた一同は息をのんだ。

彼が、クローゼットから消えたのだ。

和都が慌てて走り寄ろうとすると、明智は悪戯っぽい笑顔を浮かべて再び現れた。

「――隠し通路です。狭いが、人一人なら楽に通ることが出来ます。これが第一の殺人にも、第二の殺人の前準備として『もう一つの仕切り扉』を作るためにDの鍵を開けるのにも、第二の殺人で高手さんをEに招き入れ、その後密室にするにも使われた訳です」

埃がついたのか、上着をぱんぱんと払いながら、広間の中央へと明智は再び戻っていく。

「この隠し通路がつながっているのはこの広間とD、E――」

そこで明智は深く息を吸い込み、

「そしてF。畔田韻斗! あなたこそが残忍な殺人鬼、『白銀の宇宙人』だ!」

Fへ泊っていた私へビシッと指を突きつけた。

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シン・見取り図

――え?

―――私?

――――やってないよ?

あまりの事態に頭が回らず、言葉にならない言葉がちびちびと漏れ出る。

安荘や縦溝が信じられないという目で私を見ている。私だってそうだ。だってやってないんだから。毅然として否定しなくては。

「面白いですね、探偵さん。だがミステリーなら三流以下だ」

なんでこんなこと言っちゃうかな~~。あからさまに犯人の悪あがきみたいなセリフはいちゃったよ。あえて探偵が残した隙に縋り付いたらそれが罠でどうあがいてもチェックメイト決められる流れだよこれ。やってないのに。

なんか助手が後ろでごちゃごちゃやってるかと思ったらなんか悲しげなジャジーなBGMをプレーヤーから流し始めたもん。これ真犯人が真相を自白するときのやつじゃん。あれ助手が手動で流してるんだ。

いやいや。やってないんだって。隠し通路とかも今知ったんだって。そもそも二人にもなんも怨みないし。

――というか、「もう一つの仕切り扉」普通にへーって思ったけどあれって明智が自分の扉を明け放ってないと成り立たないのでは? こいつ、結構ずぼらなのか? もしかして、Eの部屋も最初から鍵かけ忘れてて、密室でもなんでもなかったんじゃないか?

そもそ、最近使ったばかりのはずの隠し通路から出てきてなんであいつはあんな埃まみれだったんだ?

隠し通路はあったけど、この連続殺人においては使用されてないんじゃないか?

明智が自分の扉周りのミスを隠蔽するためにたまたま見つけた隠し通路を使ってうまくつじつまを合わせてるんじゃないか?

これだ! これで反論しよ「いけない!」う?

――血?

急速に意識が遠のく。意味が解らない。私は死んでしまうのか。

「『白銀の宇宙人』! 『白銀の宇宙人』! しっかりしろ! 生きて罪を償うんだ!」

探偵の叫び声が聞こえる。エコーがかかったようにぼんやりとしている。

最期の力を振り絞り、私は叫んだ。

「畔田韻斗(ばんだ・いんと)です」

そのクソださ怪人ネームみたいなやつで呼ばないでくれ……。

※ ※ ※ ※ ※

イレギュラ星人・ベイトは浮かない顔で報告書の追記を記していた。

「△☆▲※◎★●○▼※△☆▲※◎★●○▼※△☆▲※◎★●○▼※△☆▲※◎★●○▼※△☆▲※◎★●(訳:森の遺体に人目を盗んで取りすがろうとした高手(恐らくは密かに森と特別な関係にあったことが推察される/その関係性から今後森の遺品等から我々に迫る危険性が喚起された)及びそれら二人を処刑した罪のスケープゴートとして畔田を処刑した。今回の偵察任務の成果と処刑ビームのコストを比するに過剰であるという指摘があるかもしれないが、ザボツヅテはチョを狩るのに手間を惜しまないという言葉を実践した結果である旨ご容赦願いたい)」

煎じ詰めれば千字になるか・立志編

早いもので今月も折り返しに入ろうとしている。今年のブログの目標としてもっと「軽く」あろうと思っていて、もともと自分のスタンスとしては「ここはおれの公開オンライン日記帳」という気持であったのだから、そんな風に気軽に軽率にざくざく文章を書き散らしていこう、という次第なのである。

具体的に言えば、今まで「余談」で使おうかなと思って記事の「本題」のネタができるまでとっておいてそのまま腐っていった時事的なこまごまとしたことをどんどんとここに書き残しておこうと考えている。

帯に短くたすきに長し、Twitterでつぶやこうとすると連ツイになってめんどくさいと自分で思うしフォロワー諸賢にそう思われてしまうかもしれないのでいやだからやんないけどブログでやるのもなあ、みたいなことが、実は結構あったりするのである。

大体、筆者の打鍵速度というのは考え考えやりながらで1500字/時間くらいであって、このあたりをもうちょっと出力する回数を増やすことで底上げしておきたいな、という狙いもある。単純に今、可処分時間が少なく、また突然に愛娘の「ふぇ……」で失われてしまうという状態になるため、アウトプットのスピードを単純に上げることがブログの更新頻度を上げることに不可欠な状態にあるからである。

とはいえただただ書き散らしても仕方があるまい、ということで一つ指針を立てることにした。

ということでようやく標題であるが、そういったことを書くときは大体千字くらいで終わらせる、ということを一つの着地点にしていきたい。帯に短したすきに長し、そもそも太さはどうなっているんだ、という話であって、そういう意味で行けば「応援団長がつけているハチマキ」くらいの長さと太さの記事を書いていこうという訳である。どういうことだ。

人は思考の動物であって試行の動物であって志向の動物である、と筆者は信じる。志を立て、その道へのチャレンジを繰り返していけば、道は開けるはずである。パンケーキがいつしかまともに焼けるようになっていくように。

ひとまずは立志編だけで終わらぬよう頑張っていきたいところである。こういうことを始めると急に日常から何の気付きも得られなくなりそうでちょっと怖かったりもする。

ネタを拾わねばという強迫観念という名のグレーの色眼鏡が世界を面白くなくさせてしまうのではないか、というような。

とりあえず初回はこんなところで。(23分/990文字)

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【冷食捜査官】ベビーフードは電子レンジの夢を見るか?

特別お題「わたしの推し

またまた、駆け込みで企画参加である。

推し、という単語には未だに違和感があって、それは以前他の方がより素晴らしく言語化してくれているが、

exloyks.hatenablog.com

今回「スター」というエクスキューズを与えてくださったのが筆者としては大変有り難かった。

さて、筆者にとってのスター、あるいは推しと考えると、

kimotokanata.hatenablog.com

アイズワンであったり、

kimotokanata.hatenablog.com

娘であったり、

kimotokanata.hatenablog.com

妻であったりするわけであるが、それぞれ一度は既に記事を書いてしまっていた。

どうするか、と思っていた23時ごろ、娘が泣き出し書き出しがさらに遅れたりもしたわけである。

現在、娘はいわゆる離乳食の期間に入り、十倍がゆ、かぼちゃをベビーフードによって与え、娘はモリモリ食べている。

このわずかな量を米を炊いたり、切り分けたり、裏ごししたり……という過程を思うと気が遠くなり、成し遂げている方々には頭が下がる思いであるが、この文明の恩恵に筆者としてはしっかり預からせていただく予定である。

そういえば、と筆者は思い至る。その「恩恵」、食品について扱った大好きな作品があったではないか、と。

そういうことで、筆者の「スター」、辿り着きたくともはるか先に輝く光芒は、とり・みき先生の著作「冷食捜査官」である。

冷食捜査官、ざっくり一ツイートでいうとこういう話である。

近未来と言ってもそう遠くはなく、かつて本物の魚をさばいて握っていた寿司職人は生きている程度の未来。ただし、主人公の冷食捜査官はこうモノローグする。

合成食料をまずいと思ったことはない

生物の死骸の氷漬けを争って食うやつらの気が知れない

――「冷食捜査官(1)」とり・みき先生著より引用

このハードボイルドな述懐の後にさらっとロボットの「三代目東京コミックショー」が出てくるのがたまらない。

作者のとり・みき先生や関連アカウントで一部が紹介されているので引用しておこう。

筆者は一応まだ、創作畑にも片足を突っ込んでいるつもりで自分はいて、そういう時「冷食捜査官」みたいな作品は本当に理想だな、と思う。ハードボイルドとギャグの絶妙なセッション、最後に残る余韻……。

クールな冷食捜査官の心がその話の終わりに少し「解凍」されるような語り口がたまらない。

もともと単発作品として作られたという「冷たい女」は冷凍食品を美味しく食べる謎の女性「コオリ」を撮影したビデオが非合法に流通する……といういわばフード・ポルノというべきものがまかり通っているという世界観が提示されるが、ある意味ASMRってそれに近い側面があるよな……など現代に通じる預言めいた部分はさすがの一言である。なんと30年以上前の作品だというから恐れ入る。

残念ながら現在流通在庫はなく、中古本もプレミア価格となっている。是非電子書籍化を望みたいが、このままプレミア化が続き、「冷食捜査官」を高額で地下取引する好事家を取り締まる「『冷食捜査官』捜査官」が登場するのも面白いかもしれない。

コロナ禍の妊娠・出産・育児マラソンで買ってよかったもの2021

今週のお題「買ってよかった2021」

今年も翌年になってから書くことになる体たらくにはあきれてしまうが、そういったところも受け入れてくれるはてなブログが好きである。

とか言っているうちに一週間たってしまった。はてなブログのお題も変わってしまった。はてなブログのバカ! スマホアプリで「星をつけてくれたこの方は誰だろう?」ってクリックしたら当該自分記事に戻る仕様やめろ! 

ともあれ、本来書きたいときにかけるというのが自分のブログの利点だったはずである。

kimotokanata.hatenablog.com

昨年、父になった。コロナ禍の妊娠・出産・育児に駆け抜けた一年だった。

必然、そういったものにまつわるものの購入がほとんどだった。

一つの記録として、また年末年始の連休のカウンターとして新たな波が見える中、不安を抱えている同じ境遇にある人々のささやかなお役立ちになればという思いで、いつもとちょっと毛色が違う「買ってよかった」記事を書いていきたい。

妻の妊娠時期の関係上、2020年末も含むことはご容赦いただきたい。

以下、ざっくり「妊娠期、出産・新生児期、現在(乳児期)」と分類しているが、わが家庭の感覚的なものであり、医学的な分類ではないことにご留意ください。

妊娠期

「背中も支える抱き枕」ベルメゾンネット

www.bellemaison.jp

妊娠が発覚した段階でまず真っ先に購入をお勧めしたいのが抱き枕である。我が家ではこちらと授乳クッションに使えるものと二つ購入したが、妊娠時点ではこちらの抱き枕が大いに活躍した。説明にあるように、背中まで支えてくれるのがよくある抱き枕との違いで、その分値段も高くなるが後からこちらを買い足した妻は「初めからこれがあれば……」と悔恨していた。

出産後は、娘が寝返りを会得するまではその周りにぐるっと張り巡らしてその横で親は仮眠をとるなど、万が一自分の寝相で娘をつぶさないための障壁としても活躍してくれた。

見た目通り結構場所をとるので場合によってはパートナーの就寝スペースに留意が必要である。妊婦にとって睡眠は超重要であるがまとまって得ることが難易度が高いのでパートナーはその確保に全力を注ぐことが家庭安寧のカギである。

「クッションプレイマット」TAOTAO

www.amazon.co.jp

我が家はフローリングである。産前産後は母体は常に不安定で、ふっと横になりたい時がある。それは寝室がそばかどうかということを考慮しない。

このマットは4CMの厚みがあり、平時は産前ヨガやフィットボクシング時のトレーニングマットに使用しても今まで使っていたヨガマットとは雲泥の差でこちらが防音性、クッション性に優れていたし、妻がふとふらついた時に寝転がるのにもよかった。

また、産後新生児期は妻は寝室ベッドでゆっくりしてもらい、娘と筆者はこのマットで寝る、ということにも役に立った。正直筆者が独身時代に使っていたシングル布団よりも寝心地が良い。

現在の乳児期は娘の遊び場として主に活躍している。表面はPU防水レザーであるからよだれやミルクなどもさっと拭き取れるのでメンテナンス性にも優れている。

このように妊娠初期から現在まで幅広く活躍しているのでこのマットでなくとも、(西松屋には厚み3CMがあったと思う)厚めのマットを早めに確保するのはおすすめである。

コープ共済「たすけあい」女性コース」コープ生活協同組合

coopkyosai.coop

妊娠してからでも加入できるコープ共済は生命保険と比べて掛け金が安く済み、女性コースは妊娠性糖尿病による入院や帝王切開なども対応しており、掛け金は年末調整、確定申告で生命保険料控除の対象にもなる。

筆者は育休を取得したため、育休給付期間までの無収入期間に迅速に給付金を振り込んで頂いたのは大変助かった。書類もわかりやすかったし、窓口の方の対応も真摯であった。

このことから生まれた娘も早速コープこども共済に加入したが、この際も「奥さんと補償かぶってる部分があるから外しますね、月々の金額少し下げますね」と黙っていれば差額をふんだくれたのにわざわざ連絡してくれ、ますます好印象である。

前掲した記事に書いたとおり、妻も元々帝王切開の予定はなかった。コロナ禍は特に妊婦さんにはストレスがかかりやすく、通常時には予測できないトラブルも多いと聞く。転ばぬ先の杖としてぜひ加入をお勧めしたい。

いやらしい話だが大事なお金の話としては、仮に一年間加入したとして掛け金は女性Lコースの場合2,000円×12=24,000円であり、緊急帝王切開で九日間入院した場合は8,000円×9+4万円=13万2千円の給付金を受けられるので即元が取れる。世の中にお金で買えないものはたくさんあるが、この安心が月々2千円で買えるのは安いと筆者は断言できる。

つらい話だが、流産手術も対象になる(これはコープ共済だけの話ではないが、基本的に健康保険適用手術であることが給付の要件であるので人工中絶は対象にならない…はずである。そのつらさに寄り添う仕組みができることを切に願う)。

特に妊娠初期は、妊娠検査薬の精度が上がったこともあり、不安定な状態の胎児、胎嚢も多い。明日がどうなるかはまさに神のみぞ知ることであり、そこに両親の愛の深さはありこそすれ、罪などあろうはずはない。そんな時少しでも前を向く助けにきっと、給付金はなってくれるはずである。

事程左様に妊娠初期というのは何があるかわからないので重ねて加入をお勧めしたい。

「Fire TV Stick」Amazon

コロナ禍であろうとなかろうと、妊婦さんの外出というのは難しい。体力的にもしんどいし、風疹などコロナウィルス以外のリスクも多い。

もともとインドア派の妻にとってまさに救世主であった。

夫婦で昨年春ごろ、「アンナチュラル」や「コウノドリ」を一気見したのがつい最近のことのようである。

TVerでは地域ごとのテレビが見れたりもするので、帰省できない妻は地元広島のローカル番組を見て気持ちを和らげているようでもあった。

いよいよお腹が大きくなり、ベッドでの時間が長くなったときはTVから外し、ゲーム用のモニタにつなげてベッドサイドに置いたりもした。そういった取り回しができるのも美点である。

いわゆるパパママ教室、赤ちゃん教室もコロナ禍で吹っ飛んでしまったので産婦人科医の先生や助産師さん、先輩ママさんなどが投稿している妊娠・出産アドバイスYouTubeで見たりして勉強したりもした。夫婦でできるマタニティヨガなどはコミュニケーションにも役立った。

Amazonミュージックで胎教にいいクラシックを流してみるというあわよくば狙いをしてみたりなども……。

出産後は娘と同じ月齢のお子さんたちの動画を見たり、逆に丸一年先輩の動画を見たりして共感したり、今後娘の前に立ち現われそうな問題の予習をしたりしている。

娘はTVerでみられる「しなぷしゅ」やYouTubeで見られるTWICEのMVがお気に入りのようである。

大変便利でもはやない生活が考えられないほどであるのだが、YouTube動画はエビデンスのないものも多く、また検索して動画を探す、関連動画がつながっていくというアルゴリズム上、一度陰謀論やデマのものに足を踏み入れてしまうとどんどんディープなものに引きずられていき、知らず知らずのうちに「目覚めた」人になってしまうので十分な注意、配慮のもと視聴が必要である。

育児関連についてもあくまでわが子はオンリーワンのわが子であるという当たり前のことをしっかり胸に止めていることが肝要であろう。

YouTubeであの人がこう言っていた!」

ではなく、かかりつけ医にこまめな相談が一番である。

子どもの子守代わりにYouTube…というのも、サムネを偽装してグロ動画につなげたりする平成の遺物みたいな悪意が転がっているので同じ動画を見せるのであればプライムビデオ他のキッズカテゴリのしっかりとしたプロのコンテンツを見せた方が良いだろう。

「長袖ワンピースパジャマ」ベルメゾン

www.bellemaison.jp

胎児の成長に従って幾らか部屋着、パジャマを買い足した妻が絶賛していたのがこちら。(妻は春夏用ユーザー)着心地の良さ、コスパ、耐久性、生地の柔軟性でお腹が大きくなっても苦しくない、ボタンが下までついているのでお腹だけ出せる、前開きで回診に対応がしやすい、ポケットの収納力が侮れない、寝るときに足と足の間でボタンを留められて裾がうっとうしくない、とマタニティウェアに求めているものがすべてそろっていたという。妊娠中は体型が変化し、通常期にしなかった些細なことがストレスになりがちであるという。それらの大部分が解決されたということで夫としてもお勧めしたい。

出産・新生児期

「ほほえみらくらくキューブ」明治

神。

もしノーベル子育て賞があれば真っ先に受賞すると思われる。産後約10日、妻子が我が家に帰って(やって)きた。その喜びもつかの間、幕を開けたのは娘と筆者との真剣勝負(セメント・マッチ)である。育休申請は9月から。しかし妻はまさしく満身創痍、本来であればあと3か月はゆっくり療養していてほしいところであるが昨今の入院事情はそれを許さない。土日、帰宅~出勤までの育児は筆者がメインとなることとなった。

幸い、娘は規則正しくきっかり3時間でミルクを欲しがり、イレギュラーはほとんどなかった。とはいえ深夜3時にこまごまスプーンでミルクを量っていたら、絶対に途中で今何杯目かうとうとして忘れていてしまっただろうな……。とゾッとする。

ましてや、産後のからだを引きずって面倒を見なくてはいけないお母さんがたたるや。

このキューブはそんな人々へもたらされた福音である。やはり割高にはなるが、その便利さ、それによって解決するもろもろ(時間、粉をこぼしたり入れ間違い、収納場所、ゴミ捨て)を考えると決して高いとは筆者は思わない。

気を付けなくてはならないのはこの「ほほえみ」、ミルクの中ではかなり甘い方らしく、これに慣れてしまうと他のミルクに移行しにくい……ということがあるらしい。

「常温で飲める液体ミルク」アイクレオ

神2。

1か月検診、お宮参り、日々の買い出し……最低限の外出はどうしてもやってくる。待ち時間が読めなかったりもする。ミルクの時間がやってきたりもする。そういうときの強い味方である。やはりいい値段がする。しかも、「ほほえみ」とは対照的にミルクの中では一番ワイルドな味をしているらしい。が、空腹は最大の調味料なのか娘はどんどん飲んだ。昨今各地で地震が頻発する中、災害用備蓄としてもお勧めである。

紙パック用の哺乳乳首をセットで買うことを強く推奨する。

追記:現在は森永Eミルクを使っているが、ネットで検索して「どうして最初からつけておいてくれないの…?」というものを見つけたので付記しておく。いずれ使用レポートも書きたい。

 

 

「電子レンジ消毒器」西松屋

item.rakuten.co.jp

こちらも筆者と妻を睡眠不足から救ってくれた。手軽さは地球と親を救う。電子レンジ消毒に懐疑的な方もいるようだが少なくともうちの娘は今日も元気です。気になるようなら薬液と併用してもよいかも。

「スポンジベッドくま」西松屋

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動画で子育てを予習していた時、最もドキドキしていたのが沐浴だった。特に新生児を裏っ返して浴槽のふちに預けつつ背中を洗う……という動作には思わず声に出して「いやいやいや無理無理無理」と言ってしまったものである。

実際のところ、我が家にやってきた娘は通常より安心感のあるサイズで動画で見ていたお子さん型より抱っこもしやすい親孝行ものであったが、当然首は座っておらず、例えるならめちゃくちゃかわいくて危なっかしいうなぎだとかなまこのごときであった。

事前に買ってあったビニールタイプの沐浴風呂で2週間ほどチャレンジしたものの、かなり苦戦した。これが夏だったからよかったものの、冬であればもしかしたら娘は風邪をひいてしまっていたかもしれない。

そんな時妻が見つけてくれたのがこちらである。風呂の洗い場にこれを敷き、全身をくまなく洗ってあげた時の楽さ、今までの苦労はなんだったのだ感は忘れがたい。ぜひ購入をお勧めしたい。

現在(乳児期)

「てのひらふとん」ベルメゾン

www.bellemaison.jp

あれ…? うちのこって背中スイッチない……?

と思ったのもつかの間、生後1か月のアップデートで無事実装されてしまった。明らかな改悪であるが済んだことを嘆いても仕方がない。投入したのがこちらのてのひらふとんであり、窮地を何度も救ってもらった戦友である。デビュー戦で娘の吐き戻しで即退場しつつも丸洗いできたのもありがたかった。

ただ、2つくらい持っておくともっと安心なのかなとは思う。

「こどもちゃれんじbaby」ベネッセコーポレーション

www2.shimajiro.co.jp

我が家では3か月ごろに特別号を申し込んだ。プレイマット、付属するたくさんのおもちゃ、絵本など恐ろしく充実しており、今後優良顧客になりうる赤子へのベネッセの「本気」を垣間見せられた。娘は大変気に入っており、クリスマスにオーボールを与えるまではおもちゃの類はこれだけで全く問題はなかった。

特別号単体で考えると2千円は恐ろしいコストパフォーマンス(たまひよかなんかの得点でもっと安くなっていた気もする)で、変にあれもこれもと手を出すよりよほど経済的であると思う。来月はいよいよ6か月を迎え、最初の定期号がくるので夫婦ともども楽しみにしている。

まだまだあると思うが、ひとまずこんなところで。主だしたらまた加筆したい。

考えながら、今までの5か月を振り返り、早くも懐かしい気持ちになった。

「買ってよかった」ではなく、「これ無料で使えていいんですか」もたくさんお世話になったので、今月中に紹介したいと思う。

出産、育児をひかえているみなさん、子どもは本当にかわいいです。その真理はコロナ禍にあってもいささかもかわりません。どうぞご自愛ください。何か参考になりましたら幸いです。