カナタガタリ

すごくダメな人がダメなすごい人になることを目指す軌跡

紀本常務かわいそうです>< 半沢直樹「銀翼のイカロス」編最終話含むネタバレ感想

余談

とうとう「半沢直樹」が最終回を迎えた。

今回も予想を裏切り、期待を裏切らない展開を見せてくれた。

以下、原作の簡単なあらすじと、ドラマ版との違いを比較しつつ、速記的な感想を述べていく。

いつも以上に乱筆乱文となるであろうがご容赦願いたい。

本題

原作「銀翼のイカロス」ネタバレあらすじ

巨額の赤字を垂れ流し続ける「帝国航空」。東京中央銀行では業績不振に陥った取引先を担当する「審査部」が長年担当していたが、その歯止めをかけることが出来ず、中野渡頭取(旧S出身)半沢が所属する営業第二部にお鉢が回ってくる。

もちろん今まで担当していた審査部の曾根崎や審査部を含む債権管理担当常務である紀本(いずれも旧T出身者)は面白くない。

旧T出身者、新政権の人気者、専門知識のない白井大臣が立ち上げたタスクフォース、金融庁の嫌われ者・黒崎――それぞれがそれぞれの思惑で半沢を妨害する。

開発投資銀行の民営化に伴って債権放棄拒否を宣言する半沢。

しかし紀本常務が自らのクビをかけることで債権放棄に行内は傾いてしまう。

が、そのこだわりが半沢に帝国航空に関連する旧Tの暗部に思い至る。

旧知の検査部部長代理・富岡の協力を得て、新政権のフィクサーである箕部と旧Tとの黒いつながり、そして隠蔽されていた多くの旧Tの問題貸し出しについて証拠をつかむ半沢。

他方、紀本と同級生であった乃原はその旧Tと箕部との黒い関係を掴んでおり、紀本が使えないとなると頭取を直接脅しにかかる。

中野渡頭取は紀本常務と直接向き合い、牧野副頭取が選んだ自殺という判断は間違いであったこと、彼は一流のバンカーであった。だからこそ、生きて責任を果たし、今この問題について共に語り合いたかったと涙ながらに語る。紀本はついに観念し、旧Tの問題貸し出しについてコンプライアンス室に証言をすることとなる。

その裏側で半沢は再び債権放棄の拒絶を宣言。自らの銀行の恥部である上記の問題貸し出しについて公の場で発言、乃原以下タスクフォースの面目を潰し、白井、箕部の政治生命を絶つ。帝国航空の再建は企業再生支援機構へとバトンタッチされることになった。

全てが終わった後、中野渡頭取は退任を表明。富岡も関連会社へ出向が決まり、二人の尊敬するバンカーを見送った半沢は、その伝説を引き継ぐのが自らの使命だと胸に誓うのだった……。

ドラマ版感想:紀本常務がさすがに気の毒

以前の感想でも触れたし、上記あらすじを読んでいただいても分かるように原作では大和田が銀行を追われた後旧Tの首魁として君臨する紀本。牧野副頭取の棺に寄り添った腹心として「棺の会」という会を結成し、旧Sへの恨みの炎を燃やしている。

ところが、ドラマ版では元秘書の女将や中野渡頭取も旧T在籍者、棺の会メンバーであり、また牧野の忠実な部下という側面を女将に奪われてしまったばかりか、原作では一切触れられていない口止め料を自らの懐にしまい込むという描写まで追加されてしまった(このパターンは「ロスジェネの逆襲」の三笠副頭取と同じである)。これにより地位と金に恋々としがみつく情けない小悪党に成り下がってしまった紀本が同じ「きもと」としては不憫でならない。

極めつけは演者の年が違うから消滅したと思われていた「乃原と幼馴染」設定が小学生をいじめる中学生という形で再現されてしまうとは……。しかも小学生に手痛い反撃を食らってしまうし。な、情けなや……。

登場時は段田さんのスマートさも相まって、原作の「紀本」ポジションを大和田が引き受け、富岡のポジションを兼務しつつ中野渡頭取の後任を任されたりするオリジナル展開が――? と思っていたことが懐かしい。

ただ、最終話直前のカタルシスには大いに貢献してくれた。地下室での半沢アベンジャーズ勢ぞろいは原作にはないシーンだが、大変良かったと思う。

「信頼の砦」中野渡頭取の矜持

今回の「半沢直樹」は予告の使い方がべらぼうにうまかった。大和田が常務に復帰するのかと予感させたり、箕部に半沢が一喝されるのかと思わせたり――ミスリードが絶妙であった。筆者は先の台風で途中までの録画が吹っ飛んでしまったので、それが今確認できないことが残念である。

その真骨頂が最終回直前の予告。「三人まとめて千倍返しだ!」と啖呵を切る半沢。筆者も含め視聴者諸賢は「箕部と、紀本と……あとは誰だ?」と指折り数えたことであろう。乃原か? とも思ったが、一度はメンツをつぶしている。白井も同様である。と思いながら、本編を見ていくとなんとそのセリフが出るまでに紀本が屈服してしまった!

驚く我々をさらに驚かせるのはラスボスと目される箕部に取り入っているように見える大和田と中野渡の姿。さすがに半沢も動揺が隠せず、しかし信念を曲げることもせず、その場にいる箕部、大和田、中野渡に向かって言い放つ。「三人まとめて千倍返しだ!」と。まさかの引きに先週は動揺させられたものである。

が、真相は自らを犠牲にして証拠になり切らない書類を餌に、敵の懐に潜り込むのが目的であった中野渡。大和田はその駒となり本当の証拠探しに奔走していた。お前は小林靖子脚本の主人公かというくらい全てを背負った男、中野渡はその顛末を牧野の墓前で見届け、銀行を半沢に託して去っていく。原作でもそうだったように、この「銀翼のイカロス」編のもう一人の主人公と呼ぶにふさわしいラストシーンだった。

オリキャラ」大和田取締役の奮戦

散々書いてきたが今期のドラマ原作において大和田は一切登場しない。が、香川照之という稀代の俳優の恐ろしさ、今回もトレンドに入るのは大和田発信のものがほとんどであった。筆者としても彼がどう話を転がすのか、というのがドラマを見続ける一つの吸引力となったことは疑いがない。

原作の富岡の役割を補填しつつ、半沢とはトムとジェリー的な「仲良く喧嘩しな」なやり取りを終始続けてくれた。会議のたびに席次が上がっているのがポイントである。

頭取とは出身行が異なり、また平取締役であることからドラマオリジナルの展開として中野渡に後のことを託される、頭取じゃなくとも「大和田常務」に最終話で復帰するのでは、と考えていたが中野渡に殉じて銀行を去ることになった。原作と違い銀行を去ろうとした半沢へ最高の発破を残して。

彼とのやり取りから、本当は半沢の父を死に至らしめてしまったことをずっと気にしていて、そのためにがむしゃらに出世に突っ走ったようにも思えたのは筆者が今期のオリジナルキャラクターである大和田にほだされてしまった結果なのだろうか。

逆に言えばこれで原作とドラマ版の大和田の道は再び重なったわけで、今後の原作に行外の人間として登場することがあるかもしれない。

個人的には「頭取になったら土下座してやるよ!」が振りとなって、

CM明けにジョジョ5部のラストシーンみたいに椅子に座る半沢、目の前で土下座する大和田、みたいに時が飛んでいても良かったのだが。(窓を開けるのは渡真利)

白井大臣、笠松秘書、花。半沢世界の政治の希望。

原作では中身も知らずズケズケ物をいう素人上がり、という鼻持ちならない役割に終始する白井大臣だが、ドラマ版では自らの理念を持ち、花という「有権者」の後押しもあって「誠実」に振舞い、視聴者の留飲を下げてくれた。花も原作では登場しないが、誰も彼もが半沢にメロメロになる中、まさしく「本妻の貫禄」を見せつけてくれたし、テレビの向こうで政治を見ている有権者としての立ち位置が原作にはないものでドラマの厚みを増したように思う。彼女が白井大臣に託した「桔梗」は「麒麟がくる」の主人公、明智光秀とも縁深い花であり、そちらに出演していた内藤部長こと松永久秀吉田鋼太郎さんや、近藤こと足利義昭滝藤賢一さんへのエールでもある……というのは深読みしすぎだろうか。

笠松秘書も男気を見せてくれた。せいぜいセリフ一言二言、あっても「秘書が勝手にやったことです」で罪を着せられてフェードアウト……くらいに思っていたのでまさか大島さん、いや児嶋さんがここまでの活躍をしてくれるとは思わなかった。さすが名作保証人である。ラスト、ゼロからの出発となった白井元大臣と笠松のコンビは半沢世界の政治に希望を持たせてくれるいいシーンだった。

トミさんがいい味が出ているだけにもったいなさも

原作では筆者が一番好きなキャラクターがトミさんこと検査部部長代理・富岡である。さえない窓際行員だが半沢も一目置く優秀なバンカー、その実態は頭取の懐刀であった……というまさにサラリーマン水戸黄門的な設定を背負ったキャラで、原作では頭取とサシで飲むシーンなど実に味わい深いのだが、他のキャラクターに押されてしまった形なのが残念。頭取が去るシーンなどいてほしかった……。半沢は頭取とトミさんを銀行員の「光と影」であり、しかしどちらも彼が心から尊敬するバンカーとして原作では見送っているので、ラストに特に言及がないのはもったいないなあと思う。(誤解は解けたのだろうか)出てくるシーンはまさに筆者が思い描いていた「トミさん」だっただけに、ますますその思いは募るのであった。

黒崎と渡真利の女房役デッドヒート

原作より大幅に直樹…半沢に肩入れし、調査官を追われてしまった黒崎。部下に慕われていたこともわかるラストシーンは半沢の最敬礼も合わせ、忘れがたいシーンであった……としみじみしていたら紀本を追い詰めるために参戦してきたのには喝采であった。最終話でも箕部の資金を抑えるのに大いに活躍。役を外れたということで原作で最終的に帝国航空を引き受けることになる企業再生支援機構に収まるのかな? と思ったが特に言及はなかった。だったら最後に調査官に戻って部下が大はしゃぎしている(間につかまれる)シーンとかがあっても良かった。

こちらも原作以上に危ない橋を渡らせられまくる渡真利。半沢を頭取になるべきだという説得はしかし愛情の欲目で、筆者的には渡真利のようにバランス感覚がすぐれている人間が頭取には適任だと思うのだが……。

二人とも今回もキャラが大いに立っていたので今度スピンオフでもやってほしい。(半沢の最新刊「アルルカンと道化師」はもともと渡真利のスピンオフだったらしいし)

苅田

なんでいたのかよくわからない。近藤が役者さんが大河出演で出られないからバーターだったのだろうか。役者さんは良かっただけにもっとうまい使い方がなかったものかと思う。

見終えて

来週から暫く「半沢ロス」に陥ると思う。筆者がついていけるだろうか。半沢のない1週間のスピードに。

ドラマ「半沢直樹」原作 銀翼のイカロス: 2020年7月スタートドラマ「半沢直樹」原作

この世は舞台、人はみな役者――半沢直樹シリーズ最新作「アルルカンと道化師」ネタバレ感想

余談

細々とネットの片隅で展開しているこのブログだが、最近土日にやたら伸びる。

どうも「半沢直樹」の記事を多く読んでいただいているらしい。

 

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グーグルサーチコンソールでもって調べてみると、「半沢直樹 木本常務」でかなりのアクセスがあるようである。

みんな……!

きもと常務は……「紀本」だょ……! 「紀本 平八」ダョ……!

なかなかドラマで音だけ聞いていたら思い描くことが困難な苗字ではあるが。

ということでまさか、筆名「木本」仮名太が予期せぬSEO効果を生んでしまうとは思わなかった。人生の妙味である。

そんなドラマが大人気放送中の「半沢直樹」原作最新作が実に六年ぶりに上梓された。

前作「銀翼のイカロス」が上梓されたときは筆者は会計事務所勤務。銀行も割かし身近で楽しんで読んでいたものの、国を相手にした後となると次は世界を相手にするしかなくなるのでは……とそのインフレぶりを心配したりもした。「ロスジェネの逆襲」から家族の描写も少なくなり、半沢の超人化も進み、ここから次回作を展開するのはかなり難しいのではないか、と。

実際に長く間があき、続編は潰えたかと思った時にサプライズ的に書き下ろしで現れた「アルルカンと道化師」。それは言わば「半沢直樹・エピソードゼロ」であった。第一作、「俺たちバブル入行組」(ドラマ化前は半沢直樹シリーズは「オレバブシリーズ」と呼称されていたことが今となっては懐かしい)よりも前、大阪西支店時代の半沢直樹の話の幕が上がる。

本題

ということでここからは最新作「アルルカンと道化師」を含む半沢直樹シリーズの致命的なネタバレがあります。

一時間半ほどで一気に読み終えてしまった。月並みな言い方だが、ページを繰る手がもどかしいリーダビリティはさすがである。実際には前作までと同じく電子書籍で購入したので、スワイプがもどかしかった。

今回は「半沢直樹シリーズ」とはいうものの、どちらかと言えば池井戸潤先生の処女作である「果つる底なき」や「シャイロックの子供たち」を彷彿させるようなミステリ仕立てであることがそのもどかしさを加速させる。

そして謎の方に気を取られているうちに、半沢直樹名物の大仕掛けな「倍返し」の方の伏線がキレイに収斂していきあっと驚かされる――。

予想にも期待にも応えながら、しかししっかり読書のカタルシスを味わうことのできるこの感じをこれだけハードルが上がった中でも体験させてくれる池井戸先生には脱帽である。

アルルカンと道化師」を巡る悲喜劇

表題である「アルルカンと道化師」はもはや伝説となったアーティスト・仁科譲がその名を知らしめた一連のコンテンポラリーアート。仁科が突然自殺してしまったことにより、ますますその価値を高めたその作品がこの話のカギを握る。

半沢直樹が所属する大阪西支店の取引先、仙波工藝社にも仁科の「アルルカンと道化師」のリトグラフ(ただしアルルカンのみ)があった。その仙波工藝社に無理やり同行してきた大阪営業本部・伴野は普通に考えて常識的な人間はしないだろう、という買収ごり押しトークをして、社長や半沢を不快にさせる。

この買収案件は半沢の天敵で現業務統括部長・宝田が糸を引いていた。その宝田の同期が大阪営業本部副部長の和泉であり、こいつが懐かしの大阪西支店支店長・浅野匡と大学の先輩後輩の間柄であることから、岸本頭取が力を入れようと考えているM&Aを成功させて自分たちの出世の足掛かりにしよう――という待ってましたの声を上げたくなる「半沢悪役スキーム」である。

仙波社長は無礼な買収をはねのけるが、起死回生の策のはずであった企画展が頓挫。運転資金として二億円が必要となってしまう。経営計画を修正しようともするが、「社会意義」という言葉に甘え、今一つうまくいかない。我が意を得たりとばかりに再び近づく伴野が提示する買収価格は破格の十五億円。その買収相手はIT企業・ジャッカル。社長の田沼は生前からの仁科のパトロンであり、多くの作品を所有。現在自前の美術館さえ建築中という人物だが、仙波は自社の美術批評誌が特定の美術館の系列に入ることを社是である「論説な公平」を曲げることになるのではと葛藤する。同時に半沢は、宝田が獲得した顧客である田沼の意思に沿うために強引な買収を持ち掛けていたのだろうと納得しつつも、その破格の金額で田沼が仙波工藝社を買おうとする理由がわからず疑惑を深める。

仙波の思いを受け、あくまで買収を受け入れず、融資にて仙波工藝社を救おうと奮闘する半沢。だが連続赤字で無担保の会社が融資を受けるのは容易ではない。しかも、縁戚関係にある堂島商店の計画倒産に加担したのではないかというコンプライアンス上の嫌疑までかけられてしまう……(これまた王道の「宝田が手を回した」展開である)

その流れで半沢は仙波工藝社のあるビルがかつて堂島商店があったビルであること、そこに若かりし仁科が在籍していたことを知る。社長の堂島(現在仙波工藝社にある「アルルカン」のリトグラフは彼が購入した)が死の床でそこにある「宝」を仙波に託そうとしていたことも。

仁科はなぜ自殺したのか? 田沼が法外な値段で買収しようとする理由は? 「宝」とは一体何なのか?

それは半沢が堂島社長の遺品を組み合わせることで一気に収斂していく。カフェで見つかった巨額の価値が付いた巨匠の落書き。堂島商店のデザイン室で撮られた写真。その壁に映っているのは――アルルカンとピエロ。

その写真をヒントに倉庫となっている元デザイン室を捜索すると、そこには確かに現在高値がついている仁科の代表的モチーフにそっくりなアルルカンとピエロが壁に残されていた。仁科の作品であれば、価値にして十億は下らないだろう。

ここで筆者はなるほど! と思わず心中膝を打った。

「なるほどなるほど、このことを何らかの理由で知った田沼がそうとは知らせずこの作品を手に入れようとしていたわけか……もしかしたらこの価値をさらに高めるために田沼が仁科を……? ともかくこれで大逆転、倍返しだ!」

と。

しかし、壁に描かれたアルルカンとピエロの下の署名は仁科ではなく、写真で彼の隣に映っていた青年、佐伯のものであった。だが、描かれた時代は仁科がそのモチーフで世を席巻するはるか前……。

既に故人となっていた佐伯の故郷で半沢は「アルルカンとピエロ」のモチーフは佐伯がオリジナルであり、壁に描いたのも彼であることを知る。仁科はパリに修行に行ったものの行き詰まり、藁にも縋る思いで描いた「アルルカンとピエロ」で世に出てしまう。佐伯に謝罪する仁科だが、佐伯は病弱な自分では果たせなかったことを仁科が果たしてくれたことがうれしいと返事をし、そして翌月病死した。

ミステリ的に言えば「被害者が共犯」のパターンであることがこの現代美術の一大スキャンダルが長い間覆い隠されていた秘密であった、ということが出来るだろう。

仁科の死の真実。それはやはり自殺であり、恐らくはこの罪悪感が大きな要因となっていたことを半沢は察する。合わせて、佐伯の実兄が佐伯という画家を世に知ってほしいという願いと弟の仁科を守りたいという遺志を尊重したいという気持ちで揺れ動いていることも。

「宝」は幻となったが、その生きた証に魂を突き動かされた仙波社長は経営計画を練り直し、堂島未亡人の目にもかない、彼女が倒産からも守り通した物件を仙波工藝社の担保とすることを承諾してくれる。

しかしそれでもなお融資部担当調査役の猪口など宝田の息がかかった連中により怒涛の妨害が続く。このまま資金がショートしてしまうのか、買収を受け入れるのか……?

佐伯は歴史の闇に埋もれてしまうのか……?

人情の街・大阪

第一作でのラスボス・小物界の大物、大阪西支店長の浅野匡。それ以前の彼は……もっと小物だった。副支店長の江島も同様である。

人事部畑を歩いてきたエリートである彼にとって伝統ある祭り(という名の営業協力のお願い)はよりも上司に追随するためのゴルフの練習が重要である。

その代わりを押し付けられた半沢。いくら半沢と言えど支店長と融資課長では格が違う。祭りを支える長老方=根幹顧客たちはとうとう東京中央銀行に愛想をつかし、立売堀製鉄会長、本居竹清にならうように融資を引き揚げ、一気に百億近くの融資額が吹き飛んでしまう。

もちろん浅野は「おあしす」(おれじゃない あいつがやった しらない すんだこと)の精神で貫き通し、査問委員会にかけられるものの宝田以下根回しは完了。半沢がスケープゴートになるというデジャヴュなのか未来視なのかわからない現象が起こる。みんな大好き小木曽も登場だ。

が、実は浅野がゴルフ練習をしていたところは本居会長の旧知の場所。地道な活動を通じて社会に恩返しをしたい本居会長と信頼関係を築いていた半沢はその証拠を突きつけ、査問委員会では不問に付される。

一方、浅野も宝田の力でその場を切り抜けるが、それは宝田の思惑通り半沢が挙げてきた稟議を握りつぶし、仙波工藝社が買収されるように仕向けることを意味していることは明らかだった。が、半沢は見事担保を取り付けた稟議を承認するように迫る。宝田との工作をもっと上に暴露することをほのめかして。

結局、その場をしのぐために半沢の稟議は承認され、それによって今度は宝田の憤怒を買い、全店規模での「M&A案件の発表」に担ぎ出されることになる浅野。その対策は完全に半沢に丸投げである。お前……。

かくしてM&Aは失敗しましたと発表し、浅野と半沢は頭取の叱責と参加者の失笑を買うのか。またしても「半沢あるある」である半沢の出向話も持ち上がる。業務統括部長・宝田の力に一回の融資課長は手も足も出ないのか……?

大坂人情喜劇「アルルカンと道化師」

そして「アルルカンと道化師」を巡る悲喜劇と大阪の人情がラストに向けて、幸福なマリアージュを果たすのが池井戸節の真骨頂である。

まず出向話は人事部長・杉田のもとに宝田が仕組んだストーリーとは真逆の半沢がいかに取引先を思う銀行にとって有用な人物であるかを述べた本居会長と仙波社長の書簡が届いたことで粉砕された。小木曽、こんなんでどうやって今まで銀行で生き残ってたんだ?

宝田一派の怨念は全店会議に向かって燃え上がる。華々しいM&A成功案件が語られる中、大阪西支店はトリである。

壇上に上がる半沢。ジャッカルによる仙波工藝社の買収は失敗したことを述べる。ざわつく場内、勢いづく宝田。

そこに提示される買主・本居竹清財団、売主・田沼美術館、譲渡額五百五十億円の巨額のM&A案件。これこそが大阪西支店のM&A事案である。

仙波社長は言っていた。芸術には社会的意義がある。

本居会長は言っていた。社会に貢献したいと。

そう、彼が設立した財団が美術館を所有する、という伏線は劇中にさりげなく張られていたのである。

この美術館は常設展示として「仁科譲と佐伯陽彦展」を開き、佐伯は名前の通りの陽の当たる場所へついに躍り出たのである。

田沼が仙波工藝社を買収したかった理由はそこにある佐伯のサインが入った「アルルカンとピエロ」が世に知られ、自分のコレクションの評価額が暴落するのを防ぐためだった。逆に言えば、そのコレクションごと誰かに譲渡できれば、買収にこだわる理由はなかったのである。

そして宝田はそのことを知ったうえで美術館建築のための資金三百億円を田沼に融資した。価値が下がるかもしれないというリスクを知ったうえで。自分の実績を上げるために。銀行に対する重大な利益背反行為である。

こうして東京のエリートどもの思惑は大阪の人情パワーによって敗北し、宝田は自らが「敵に回すと恐ろしく、味方に回すと頼もしい」と評した査問委員会に無事かけられることになったのだった。

なお浅野支店長は全く反省していませんでした。これが変な成功体験になって後々ああなったんじゃないか、あいつ。

銀翼のイカロス」が牧野の遺書で始まったように、本書は仁科の遺書で幕を閉じる。アルルカン、道化師、ピエロ。似ているようで違う者たち。アルルカンはずる賢さがあり、ピエロは純真さがある。仁科は自分をそのどちらにもなれない愚かな道化師だと評した。

思えばこの作品はアルルカンになれなかった男たちの物語だとも言える。

半沢直樹は長いものに巻かれるアルルカンにはなれなかった。

仙波友之社長も買収に飛びつくアルルカンにはなれなかった。

宝田などこれほど滑稽な道化師はなかなかいないであろう。

しかし彼らはこの世という舞台において彼らにしかできない役を、少なくともこの「アルルカンと道化師」という一幕において見事にやり遂げた。そのことに筆者は万雷の拍手を送りたい。

蛇足

六年ぶりということを感じさせない見事な作品だったと思う。あれだけ人気が出た黒崎や大和田を安易に出さない点も良い。

半沢と言えば旧Tと旧Sの対立だが、現在進行中のドラマと原作とはポジションが違うため、混乱させないように今回はその点は影を潜めていたのかなと思った。「銀行の良心」杉田部長は次回作辺りでしれっと頭取になってたりしないだろうか。

言ってしまえば後付けなので仕方がないのだが、時代の寵児ジャッカルの関わるM&Aなら確実にマスコミも飛びついただろうに「ロスジェネの逆襲」ではそんな感じではなかったのは少し気になった。個人的には「追い詰められたキツネはジャッカルよりも凶暴だ」という名セリフもあることだし、業界同じだしフォックスとなんか関係があると思っていたら全くなかったのは勝手に肩透かしを食らった気分であった。

同様に「俺たちバブル入行組」では5億であんなに大騒ぎしていたのに今回は扱う金額が500億円越えなのもインフレが宿命とはいえ時間軸的にはうーん……と思ったりもした。

銀翼のイカロス」以降も書く予定があるということだが、審査部時代の半沢のエピソードもぜひ読んでみたい。ヤング半沢直樹、楽しみである。

半沢直樹 アルルカンと道化師

ツイステッド・ワンダーランド5章「美貌の圧制者」感想・予想・妄想・考察

本題

 

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 前章の感想のようなものを書きなぐってから100日以上が過ぎた。

その後開催されたイベントも味わい深いものであったけれど、やはりメインストーリーはゲームの華。待ち望んだ5章がいよいよ実装された。

「前編その1」という謙虚に言ってはいるものの、既に怒涛のボリュームとなっている「美貌の圧制者」について、いつもの通り戯言を吐いていきたい。

ということで以下はツイステッド・ワンダーランド(以下ツイステ)について一切の躊躇ないネタバレが繰り広げられます。

 

焦る王妃、恐れる毒林檎、飄然とした狩人

ポムフィオーレ寮。正直、筆者はまだまだ理解できていない寮である。ガチャを引いていても、オクタヴィネル、ポムフィオーレ、イグニハイドあたりは棺が開いた時にすぐどの寮だ! とわからないのである。というか同系色が多すぎる。お前はアイズワンのパーソナルカラーかと言いたくなる。

彼らの理解の入り口に立たせてくれたのは先だってのイベント「ゴースト・マリッジ」であった。ヴィル様の気高さ、エペル君のギャップ、ルーク君の洒脱な中に隠しきれない狩猟本能など、なかなかそれぞれのパーソナルストーリーを進められない(どれだけ錬金術をしても教科書が足りない……)筆者にとってありがたい描写であった。

しかして5章に入ってみると、何やら不穏である。タイトル「美貌の圧制者」を踏まえればそれまでの法則からしてオーバーブロットするのはヴィル様になるのであろうが、(今日配信されたスカラビアCMはすごく良かったけど「熱砂の策謀家」が「どっち」なのか? ということも4章の鍵の一つだと思っていたので、今までのCMの傾向的にわかっていたことであったがオッ普通にばらしちゃうんだなとちょっと思ったりもした)早速「1オバブロポイント」が溜まったようであった。

ヴィル様の鬱憤をためる相手はネージュ君。「雪」を名に持つ彼が何をモチーフとしているかは、その服装を見ても明らかである。白雪姫。ヴィル様が「ウィックド・クィーン」をモチーフとするならば文字通り天敵となる相手だ。

「Mira,Mira(鏡よ鏡)」。彼がそうつぶやいた時、その結果が自分ではないとき、世界は少しずつねじれ始める。(この「Mira」が実はヴィルのユニーク魔法により具現化したものなのでは? と思ったりもするのだがどうだろう)

障害は除かなければならない。その為に必要なのは道具である。「毒林檎」たるエペル君……ネージュ君と同じ「タイプ」と見たヴィル様は同じようにエペル君を指導しようとするが、それこそはエペル君が最も避けたい行為であった。しかしその「圧制」に今のところエペル君はただ、恐れるしかない……。果たしてこの後反逆するのか、打ちひしがれてしまうのか……。

二人に比べれば「ボーテ! 100点!」をトレンドに叩き込んだルーク君はまるで一服の清涼剤……にしては癖が強すぎるが、その「ほめて伸ばす」スタイルには敬意を表したい。しかし我々はすでに、彼が「血が出るなら殺せるな」みたいな思考回路で動いている狩人であることを知ってしまっている。原典の「白雪姫」において、狩人は魔女と化した王妃を裏切った。ルーク君は果たしてどうなるのか。「オーバーブロットしたヴィル君もまた美しい。そしてそれ以上に――戦ってみたい」という理屈でもって、ヴィル様に最後の「ダメ押し」をするのは彼であるような気もするのである。

スカラビア寮長・副寮長の現在地

前回の記事で指摘したところではあるが、やっぱり指定暴力団オクタヴィネルは全国に配信なんてしていなかった。カモは生かさず殺さずが鉄則じゃけえのう……。とはいえ副寮長リコールの嵐が吹き荒れていたが、それをなだめたのは寮長・カリムのあくまで論理的な、「だーいじょぶだって! ジャミルだからな!」ではないジャミルの実績をもとにした説得であった。遠慮深謀を持って鳴るスカラビアを率いるに相応しいその姿勢が見られたのはスカラビア推しの筆者としては嬉しいものであった。

それでジャミルもほだされるのではなく、あくまで野心を燃やすその姿勢もまた筆者の好きな「ジャミル・ヴァイパー」の姿であったので今こそ「熱砂の策謀家・完」の文字を煌めかせたいところであった。しかしスカラビア寮生諸君は結構いい性格してますね。クラッカー食べる?

「前章の寮が味方サイドで活躍する」「カリム君の特技は毒の鑑定」ということで全国8千万人の監督生諸賢は「毒林檎」に関する何かをカリム君が解決する……! と思ったことだろうが(むろん筆者も)なんということでしょう、まさかジャミル君のダンスの方がフィーチャーされるとは……いやいや、まだまだ後編で何かが炸裂すると信じているが……(ネージュ君のリンゴ飲料にヴィル様がなんか仕込んでそれをカリムが見破るとか)

前章でバリバリ寮内合宿をやってた2人が合宿に力いっぱい驚くという渾身のギャグを見せてくれたが、スカラビアはともかくオンボロ寮でダンスレッスンしたら床が抜けないだろうか。そもそも片付いているんだろうか。原典オマージュでお掃除をするリズミックがあったりするのかもしれない。

「鏡」はどこまで物語に関わるのか

鏡の間に配置された鏡自体、「白雪姫」の鏡がモチーフなのは一目瞭然である。そして5章冒頭では再び三木さん(著作権に配慮したぎりぎりの表現)が鏡に現れたことが描写される。加えてヴィル様が呼びかける「Mira」といつにもまして鏡がフィーチャーされている。

また、鏡が見出す「資質」が話題にもなった。それぞれの寮のカラーも。流用だから仕方がないとはいえ完全にオラオラ系なポムフィオーレ寮生たちは、倒すとしかし謎の芝居がかった武士道口調の者達である。そうすると、「キャラを演じている」「二面性がある」のがポムフィオーレ寮生として見出される「資質」なのだろうか。まるで鏡の向こう側の自分のように。

寮巡りも折り返し、話もいよいよ核心に近づきつつある中で鏡の存在がどこまで大きくなるのかを注目していきたい。

気が早い6章予想

「星に願いを」に引き続き、麗しい師弟愛を見せるシュラウド兄弟。コメディタッチな合成音声シーンだが、オルト君のVDCチャレンジにつなげておしまい、にするスタッフとは筆者は思えないのである。

まあなんやかんやあってメインステージで「美貌の圧制者」が大団円を迎えた後……。毎回ある次章予告のシーンで最悪の終息を見せるのではないか、と。

流暢な合成音声で発表を行うイデア氏。無事に終わったと思った時、「今からお前を殺す」と同義語である「この分野には詳しくないのですが」から始まる質問。それはイデア氏のプライド、ひいては現在のオルト君の存在意義すら脅かすビシバシ情け容赦ない質問だった。相手は4年生か、ロイヤルソードアカデミー生か……ともかくしどろもどろ早口涙目敗走するイデア氏は果たしてどうなってしまうのか……で6章に続く、になるのではないかと。

または全国放送でオルト君が見つかってしまい、倫理問題で叩かれるとかだろうか。ともあれシュラウド家は受難を抱えて終わりそうではある。

更に気が早い最終章予想

来年の鬼が笑い死にそうなことを続けてしまえば、まず今回冒頭のバトルの相手がクルーウェル先生だというのには驚かされた。(そういえば今筆者の年齢はクルーウェル先生と独歩君に挟まれている。)勝負がついた時にクーン……みたいな感じになる可愛さはさておき、「ということはモデルがある先生は全員こういうことできちゃうんですね!?」と思った監督生諸賢は多かったことであろう。とすればやがて訪れる最終章は、教師陣相手のボスラッシュ&ラスボスは学園長……ということになっていくのだろうか……。逆に言えばガチャでお迎えできる可能性も広がったわけで、教師陣ピックアップガチャ、楽しみにしています。

 

ということで相変わらずの妄想垂れ流しとなってしまったが、続きを楽しみに待ちたい。ネージュ君がカットかかったらADを蹴り飛ばしたりロケバスでストロングゼロがぶ飲みするタイプでありますように。

 

 

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』カウントダウン ポストカードブック (その他)

半沢・ヒプマイ・ツイステ・とうらぶ・アイドル・同人etc――雑食家庭持ちオタクの一週間

余談

と、いうか、今回は余談のみというか。

書きたい記事はたくさんあるのである。

ざっと列挙してみよう。

・ツイステ記事

・ヒプマイ記事

・アイズワン記事

刀剣乱舞記事

・同人イベント記事

・Nijiproject記事

金田一耕助語辞典記事

半沢直樹記事

・引っ越し記事

台風10号直撃記事

・ダイエット記事

森博嗣先生の「次作以降の予定」並みにあるのである。

それぞれへの情熱も原稿用紙十枚以上は確実にあるのである。

ただこのところの筆者は上記のダイエットに精を出したりしていることもあり、なかなか帰宅してからPCに向かう時間が取れないでいた。

何回か書いたが、ブログというのは自分のペースで好き勝手やれて最高……と思いきや、筆者の場合は今までの余暇が、ブログを始めてから「ブログを書いた日」「ブログを書かなかった日」に明確に分かたれてしまったということがあった。

何をしていても頭の片隅に「ブログ」がある。非常に充実した一日を過ごしたとしても、記事を書かなかったとき、「あ、でも記事書けなかったな……」とちょっとモヤっとして床に就くのである。

ということで本日の筆者の睡眠のために、最近のこまごましたところを雑多に書いていきたい。雑記ブログの真骨頂である。

上記で挙げた要素のネタバレが大いに含まれる内容となるのでご注意されたし。

 

 

 

ツイステッドワンダーランド(ツイステ)

「星に願いを」をクリアした。オルト君がいい子過ぎて……。彼が「ピノキオ」もそのバックグラウンドストーリーにするというのなら、ちょっと気が早いけどイグニハイド寮のストーリーはその発展である「鉄腕アトム」をもとにした感じでイデア君とオルト君で天馬博士とアトムをやるんだろうか。優等生過ぎるオルト君を相手に、「お前はトビオじゃない」は確かにかっちりハマりそうではある。スカラビアでやると思ってた「ラスボスが二人体制」はイグニハイドでやるのだろうか。

今回は「フェアリーガラ」に続きリズミック主体イベントで、前回が忙しさの極みであったので(少年少女には信じられないかもしれないが年を取るとログインボーナスまで受け取ったら力尽きてしまう日というのが出てくるんじゃよ)初めてそのタイプのイベントに参加することになったが、噂には聞いていたが一切画面に触らなくてももらえるイベントアイテムの数は変わらない、というのは優しいを通り越してなんかよくわからない山を登りつめているな……と感じた。ありがたいのだけれども。リズミックの種類でもらえる飾りが違うと今更気づいて虚無になっている。よくわからない優しさと言えば、コンボが切れてしまうのに「Good」はやめてほしい。普通に「Bad」でいいんではなかろうか。あとタイミングばっちりの時も音にいまいち爽快感がないのを何とかしてほしい。

最後の星が降り注ぐ様を思い思いの姿で見ているところはなかなか感慨深かったが、基本的に全員好きだが特にスカラビア推しの筆者としては、ジャミルのいう「いろんなことが些末に思えてくる」が「4章のあれこれ」を含んでいるのかどうかが気になる。星送りの衣装的に涼しそうだし、七夕の季節のイベントだと思うので4章以降のスカラビアではあるのだろうが……。

後はストーリー本編のケイト君の行動とイデア君のパーソナルストーリーで矛盾があるようでそこはちょっと気になってしまった。

イデア君&太鼓で赤城リツコ女史を思い出している方が多くてちょっと安心した。

と、打鍵している間に日が替わってしまったが、ジャミル・ヴァイパー君の誕生日であった。

ツイステにおいて一推しというものが存在するとすれば、それはジャミル君である。最初は声も本職でない方故の味わいがあって……と思っていたがそれも「演技」であったと分かりますます好きになってしまった。「おめかし」のジャミル君は果たしていつのジャミル君なのか、というのが気になってしまう。ホーム画面での会話からすればオクタヴィネルと打ち解けている感じがするので(アズール君への信頼……なし!)いじられ倒した後で吹っ切れているのか、それとも「ご主人様」にこだわりを見せているあたり下剋上を虎視眈々と狙っているその時なのか……。

そう考えると4章の終わり方は二人とも何も解決できていないのでは、と思ったりもしたけれど、「そこからまたどうとでもできる」という点においては上手いこと出来ているな、と思った。

気が早いが来年はどうなるのだろう。復刻なのか、劇中で進級も予定されているから新しくなるのか、そもそもバースデーイベントが一周したらおしまいなのか……。

バースデーイベント自体はリーチ兄弟がどんな風になるのかも気になる。午前午後で分けてきたらどうしよう。

引きこもり界の王者・イデア君を直近で蜜漬けお菓子漬けにした後だったので、初めて「星のかけら」を砕くことになったが後悔はしていない。まさしく星に願いをであった。

 

ヒプノシスマイク(ヒプマイ)

特典CDを聴き、オフィシャルガイドブックを読み、(絶対にこの順番を厳守したほうが良い)「やめてくれないか! 設定の洪水をワッと浴びせかけるのは!」という気分になった。ワンピース並みに進む時は一気に話が進むな……。

邪答院仄仄という不穏しかない(この人のラップは個人的にめっちゃ好き)人物の登場。以前シンジュクドラパ感想において「独歩だけ全然過去から追われていない」と書いたように思うが、まさか一番どぎついのが追いかけてこようとは……。仄仄が独歩にちょっかいを出そうとした結果、一二三が犠牲になり、それが独歩の自虐癖のきっかけになったということなのだろうか。そうなると、勘解由小路無花果の気を引くために碧棺合歓が大変なことになりそうで恐ろしい。

最終的には声がめちゃくちゃ豪華なのにずっとやられ役の帳残星・残閻兄弟と手を組んでスリーマンセルとなり、ラスボスポジションに収まるんじゃなかろうか……と考えている。

今回語られた東方天と勘解由小路の過去はそれぞれ時系列が離れており、まだまだドラパで語られる過去は多そうだな、と感じた。勘解由小路が杖を突いている理由、側近に抜擢された理由は根は同じだと予想しているのだが、明かされるのだろうか。

東方天についても現在の彼女は権力を使役していたつもりがいつしか権力の奴隷に成り果ててしまったパターンに思うので、その「悪堕ち」的なきっかけのエピソードが気になるところである。実は彼女自体もマインドハックを受けているのかもしれない。(天谷奴がかつて言っていた「余計なことしかしていない」はどこまでを指すのだろう?)

そもそもの結党自体、少なからず父親の「汚い金」が流れているような気がするのだが。

本筋とは関係ないが、ディヴィジョンの中にあるであろう学校で二郎が普通に女子からお弁当もらっていたり、一二三がホストやっていたりするのでこの辺がよくわからない。

全てを塗りつぶす中王区と全てを巻き込んでいくディヴィジョンオールスターズの激突の時は近い。

アイズワン

アイズワン初のオンラインコンサート「ONEIRIC THEATER」を妻と視聴した。予定時刻になっても画面が動かず、試しにリロードしてみるとすでに「メリーゴーランド」の後半部分であった。

いや、良かった。ますます痩せているように見えて頼むからご飯をたくさん食べてくれ……と思ったが、そのパフォーマンスはますます素晴らしかった。

特にユニットは圧巻であった。まさしく温故知新、賢者たるアイズワンは歴史からアイドルの極意を学び、更に成長していたのである。他方、これが「権利関係のため再配信・見逃し配信はありません」ということかあ……としょんぼりもしたが、最後にBlu-ray化が示唆されますますうれしかった。

皆さん素晴らしかったのであるが、最近アン・ユジンさんがますます美しくなったように思えてならない。

www.youtube.com

しかしオレンジキャラメルを引っ張ってくるとは。今後もカバーはいろんなところでやってほしい。個人的には、「アモーレ・ファティ」すごく好きだったので余計に。


IZ ONE - "Amor Fati" Cover [Immortal Songs Ep 400]

しかしまあアイズワン諸賢はレトロな感じが(も)大変似合いますな。

生バンド演奏もまた違った曲への味付けで新鮮であった。機会があれば他の曲でもまたやってほしい。

そうして最後、みんなのメッセージは毎度感動させられているので何とかこらえられたが、暗転してVRで満員のアリーナが再現されたときはさすがにジーンとさせられた。

どんな所にも行くことのできる、作り出すことが出来るVR。それを用いて上空や宇宙にまで飛び出したアイズワンが帰り着いた場所、歌いたかった場所が「そこ」であるという事実。前回のコンサートでは難なく実現できたことの困難さ。幾重もの感情が筆者の中で渦巻いた。

もう一度、肉眼で彼女たちを捉えたいものだと思う。

刀剣乱舞(とうらぶ)

完全に福祉くらいの扱いでゆるゆるだった花火の景趣を獲得失敗、ひどく落ち込む筆者である。続いての戦力拡充作戦も経験値が大変美味しいので、ちまちまやってはいるのだが前述したようにPCを触る機会がなかなかなく思うように進まない。kindlefire版を導入しようか考え中である。しかしこのゆるゆるできる感じが「とうらぶ」という感じで実家のような安心感に今日も甘えてしまっている。

半沢直樹

いや~生放送とても良かった。導入の力の入れっぷりに笑ってしまったが。総集編もよかったけどこ…これだよ視聴者が求めているモノは! といった感じで見事であった。惜しむらくは途中で台風10号により筆者宅は停電し、ちょうどこの生放送を見ているときであったので後半がとびとびになり、半沢直樹のバックナンバーを録画しているHDDがお亡くなりになってしまったことだろうか……。

さて本編だが、もしかして大和田取締役がこのドラマで頭取になるのではなかろうか、と筆者は思うようになってきた。というのも紀本常務は秘密を抱えており、それは原作では頭取と敵対する派閥の爆弾であったわけだが、既に以前の記事で指摘したようにこのドラマでは頭取と常務は同派閥なのである。そうなると、かつての敵対する派閥の領袖――大和田を残した意味が出てくるのである。

そうなってくると現女将・元頭取部下の智美さんがどのような役割を果たすのか、ということが気にかかる。恐らくは8話で登場する浅野和之さんが演じるだろう検査部の行員が果たす役割を分担するだろうかと思われるが、どうなるのか……。

紀本常務失脚→「大和田常務」復活からの「恩返し」になるのか、それともストレートに頭取からの禅譲になるのか……。そのためには大和田にももうひと働きしてほしいところであるが。主人公の父親を自殺に追い込んでいるわけだし……。

同人イベント

以前参加させていただいた「レキソウオンライン」にて注文させていただいた諸々の本を読ませていただく大変幸せな時間であった。近いうちに感想をまとめて各作者様にお伝えしてみたい。

pictsquare.net

懲りもせず、来週末のイベントに参加させていただくことになった。

再び歴史エッセイ、今回は「薩摩の廃仏毀釈」について。よろしければお越しください。

おわりに

駆け足になってしまったが、こうなるとなかなか人生楽しんでいるようで何よりである(他人事)

次回は本題をお届けしたい。

オンラインイベントの温度――31歳、同人サークルとして初めてイベントに出展する。

余談

前回、筆者は人生初のサークル出展を予告した。

 

kimotokanata.hatenablog.com

 

果たしてどうであったか、Twitterを追ってみよう。

形から入るタイプなので……。

 

学び:土を買いに行くとパソコンから離れるため、原稿を書くことが出来ない。

学び:カリンバを演奏していると手がふさがるため、原稿を書くことが出来ない。

学び:入浴中はぬれると壊れてしまうため、パソコンを持ち込めず、原稿を書くことが出来ない。

学び:おいしいスイーツに夢中になっているときは原稿を書くことが出来ない。

学び:とりあえず原稿が完成していなくてもお品書きと告知で自分を追い込もう。

学び:パソコンに向かって打鍵すると原稿が出来る(ことがある)。

次回に活かせることばかりで我ながら感心してしまったが、しかし健診で循環器がよう経過観察の指摘を(二年ぶりn回目)受けてしまったので次回はより余裕を持った工程を心掛けたいと思う。

床にはいってもなお遠足前のようなドキドキが筆者を支配し、寝付いたのは二時を過ぎた頃であった。

本題

薩摩隼人のたしなみである日曜早朝の草刈は筆者の執念が通じたのが通常の三倍の人数が集まり、一時間ほどで片が付いた。そのまま帰宅し、体を清め、軽食をとる。心地よい疲れと風呂上がりの爽快さ、小腹が満たされた喜びと朝の丁度良い気温……すべてが筆者を眠りへ誘おうとしていた。

開場まではあと一時間である。ありがたいことに、早朝の飛行機に飛び乗ったり、見慣れぬホームを彷徨ったり、カートをガラゴロ引きずる必要もなく、ボタンをクリックすればこの南の果て、薩摩の地からイベントに参加が可能なのである。素晴らしい。未来である。かがくのしんぽって すげー!

が……罠……!!

クリック一つで(実際にはパスワードも用意してくださっていたが)入場できるということはクリックするその一刹那まで……ダラダラできてしまう……! 本来のイベントであればねぐらから会場まで行動することによって少しずつ「イベントモード」に切り替わる心は……依然……家っ……!!

ステイホームっ……!!

筆者は職業柄コロナ禍にあっても通常通り出勤、無遅刻無欠席一時間程度残業であり、テレワーク勢を大いにうらやんでいたのだが、しかしこの状況で忠勤できる皆々様に畏敬の念を抱かざるを得なかったのだった。今の筆者にとって、会社までの道のりが無ければ「仕事モード」に切り替えることは不可能に近い。

草刈り機の振動でまだ震えの余韻が残る指をほぐしながら、筆者は思案する。時刻は九時。眠気が落ち着いてくると筆者は急に不安になってきた。本当に参加してよかったのだろうか? なんかこう……「いつもの空気」みたいなのがすでに醸成されていて、意図なく変なことをして周りの方を不快にさせないだろうか? 価格設定は適切だろうか? そもそもお金を取れるほどの出来なのだろうか? 「そういうこともある」とわかっているつもりでも、ただただ時間だけが過ぎて悲しい気持ちにならないだろうか?

その不安は、筆者に打鍵させていた。不安を解消するにはただ一つ、不安の素である作品を少しでも煮詰めるしかない。文章を再度見直し、最後に蛇足として「スイカ売り決死隊」のその後について簡単に書き記した。

滑り込みでアップロードが完了したところ、まさに10時であった。このツイートをしながら、筆者は既に自分の中で何かがエンディングを迎えようとしているのを感じた。

大学時代、自由な時間を生かしてコミケに行きたい、ということは幾度となく思ったが、薩摩の長男にとって盆正月に帰省しないということは考えられず、ついぞその野望は叶うことはなかった。

げんしけん」で、「マキとマミ」で、さまざまなイベントレポート漫画で、妻の報告で、筆者も知識としてあった「開幕時の拍手」。

そこに今、筆者は参加しているのである。それは文字列であったけれど、確かに筆者には100スペース分の拍手が聞こえたのである。

筆者は早速自らのスペースで頒布活動へと入った。

 

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ダイマとかいうレベルではない

 パッと見神羅兵が頒布しているような形になり、無骨度が爆上がりしてしまった。

筆者のスペースは一列目と立地が良く、さまざまな様相の人々が通り過ぎていく。筆者はそれぞれの「約束の地」へ向かう諸賢を眺めながら、カリンバをポロポロ奏でていた。カリンバは執筆の妨げにはなるがパソコンの前で手持無沙汰を解消するのには打ってつけであるという学びがあった。

開始十分、一人の方が拙スペースに入られた。

「閲覧中です」

自動メッセージがその上に出る。

カリンバを取り落としそうになりながら、筆者は挨拶しようとする。が、画面をスクローしていて入力ウィンドゥが見切れていることに気付かない。

テンパっているうちに、その方はすごい勢いで垂直に飛び出していった。(今回は人数が多かったこともあるのか、挙動がトリッキーで、話している途中で消えられたり、高速後ろ走りを披露されたり、ずっと「閲覧中です」だったり、抜け殻を残されたりなど、多種多様な事例が見られた。)

見ず知らずの人が、自分の作品を手に取ってくれた。その時筆者は確かに自らが作った冊子をはじめましての方がぺらりとめくるその音、そよぐ風さえも聞こえ、感じられたように思えた。

さほど間を開けずして、また新たな方が訪れ――

「購入しました」

今度は筆者は、お礼を言うことが出来た。打鍵しながら、声も漏れていた。昨日一瞬、「と、ここまで書いてきましたがカリンバが弾きたくなったのでここまでです」でぶん投げて終わらせようかな、と思ってしまった自分を恥じた。日が替わっても黙々と作業を続けた自分をほめた。

 

kimotokanata.hatenablog.com

 以前も書いたが、少なくとも筆者にとって、創作というのは孤独な作業だ。書くこと自体は好きだ。自分の中に流れる気持ちをうまく言語化できた時の快感は代えがたい。他方、この世の中、時間は有限でありながら無限と言ってもいい娯楽が存在している。ただただ、それを享受し続ければよいではないか、仕事で疲弊した脳に鞭打ってなんになるのか、と思ったことも一度や二度ではない。お前が何か作ったところでそれが何か意味があることなのかと。

意味はあるんだ。

あったんだよここに。

筆者が作らなければこの世に存在しなかったものを求め、対価を支払ってくれた方がいる。何の利害関係もない、縁もゆかりもない方が。そしてまたしばらく時間をおいて――

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アバターは伏せさせていただきました

ああ、おれは創作をしていて良かった。このイベントに出て良かった。

オンラインでよかった。リアルイベントであったら、醜態をさらしていたことであろう。

コアタイムが過ぎると流れもだいぶ落ち着いてきて、今度は買い物へと繰り出した。橋のサークルまで移動しても全く疲れない。お目当てが幾つか売り切れており、残念ながら自分の目の確かさを喜んだりもした。主催の方に開催のお礼を伝えることもできた。スペースもオンラインならでは、筆者はデフォルトの飾り気のない形だが、色々な創意工夫が凝らされていて見るだけで楽しい。

クレジット決済であることとイベントの興奮が購入欲にブーストをかける。これが頭の上のほうが開いている感覚……。会場を二周ほどしたところでさすがに三時間睡眠の限界、どっぷり眠りについた……と思ったが、一時間半程度むくりと起きてしまった。よほど興奮しているのである。その間も何冊か購入いただいており、現実の離席中には絶対にありえないオンラインイベントの利点であるな、と感じた。

その後もゆるゆると掲示板などで交流をさせていただき、厚かましくもTwitterをフォローさせていただいたりもして、フィナーレを会場で迎えることが出来た。

時間が来ても退出しない限りは一定時間はいられるようで、祭りの後をぶらぶらと歩いているうちに、既に自分が「次のイベント」を求めていることにも気が付いた。

なるほど、妻がのめりこむわけだ、と納得した。完全にネットミームであるところの「一時的に欲求は満たされます」のあれじゃん……と思った。

ふたを開けてみると、筆者の想定よりずいぶん多く購入いただいていて驚いた。

ありがたいことに最終的には無料配布、メインの頒布物合わせて34冊も巣立っていたことが明らかとなった。また、対面(オンラインではあるが、筆者は上記のような出来事を対面と呼びたい)、メール、掲示板、リプライ、DMなど様々なアプローチで温かい感想を頂いた。本当に創作者冥利に尽きることである。

その日の筆者は久しぶりに、深くゆっくりとした睡眠を味わうことが出来た。

オンラインイベント(ピクトスクエア使用)雑感

アバター、スペース共に拡張性があるのは素晴らしい。デフォルトでも種類が豊富であるのがうれしい。次回は自分もカスタマイズを挑戦してみたい。

・今回は女性向けの作品も多く、筆者としてはそういったものも特に抵抗なく読めるのだが、リアルイベントでは作者様の方が気にされる場合もある。しかし、今回の場合はアバターであるので作者様にとっても抵抗が少なかったのではないか……と信じたい。

・本文中にも述べたがコミュニケーションをとるのに多様なアプローチがあり、離席することのデメリットが売り手買い手共に軽減されているのが良い。

・オンラインならではの挙動は愉快でもあるが、やはり安定するに越したことはない。

・それこそRPGのウィンドウ的な感じで「戦利品リスト」を作れるとありがたい。(実体がないと情けないことにちゃんと買ったかどうかわからなくなってしまうことがあった)

オンラインイベントでありながら、確かに人の温かさ、温度を感じることが出来た「レキソウオンライン」が初めてのサークル参加で本当に良かったと思う。主催様、参加者の皆様お疲れさまでした。ご来訪いただいた皆様誠にありがとうございました。

pictspace.net

会場で頒布させていただいたものに加筆修正を加えたものをお値段据え置きで頒布しております。よろしければご笑覧ください。

(現在ファイル名が文字化けしてしまっておりますが中身は問題なくお読みいただけます)

 

31歳、人生初のサークルカットを作成する。

余談

そりゃあ雨はもううんざりだといったけど加減しろ馬鹿、と言いたくなる猛暑、酷暑が続くうちに31歳になった。親父が自分の年の時にはすでに自分がいたわけで、また一つ親父の後を追うのではなく自分自身の生き方になっていくのだな……とポジティブに考えることにする。

31歳になったので31アイスクリームを食べよう……と思ったら末弟からパンナコッタが届いた。すっかり社会人ムーブを身に着けたことに感激もひとしお、そちらと妻の買ってきてくれたケーキで誕生日のスイーツを満たしてもらった。パンナコッタって、給食のデザート以来に食べた気がしたがのど越しもよくておいしい。生クリーム(パンナ)を煮て(コッタ)作った、故にパンナコッタらしい。イタリア発らしい。全部ふくおか県酪農協さんのHPで今知りました。テラコッタもイタリア語で「焼いた (cotta) 土 (terra)」だと覚えた気がするがまあコッタの懐が深いのであろう。HPからも買えるようである。相変わらず銀の匙してんな、末弟。(こちらで奉職させていただいているわけではない)

f-kenraku.com

職場からもお祝いを頂き、TLでも祝福いただいて大変ありがたい誕生日であった。そういえば、自分で風船を飛ぶところを見られなかったのが心残りである。

本題

コロナ禍の息苦しい日々が続いている。いわゆる「ヒプステ」をtrack1と2続けて観る機会があり、詳しくはまた別記事を設けたいと思うが、演者同士の対峙シーン、客席とのコール&レスポンス、客席降りなどコロナが奪った諸々をまざまざと見せられることにもなり、辛さがあった。(内容自体はどちらも素晴らしいものであった)

我が家においても妻の遠征予定は全て白紙。市内のアニメショップ詣さえも辛抱する毎日である。オタクを殺すにゃ刃物はいらぬ、という言葉を奥歯がすり減るほどの噛み締めるうち、しかし近頃の妻はいくぶん血色がよいような……。

どうも妻は「pictSQUARE(ピクトスクエア、以下ピクスク)」なるものを導入したようなのである。

pictsquare.net

 

懐かしさのあるドットめいた世界で展開されるのは我々が焦がれた「即売会」の風景である。見覚えのある「RPGのお店」にいる店主たちは全員実在の人物。そこに我々は歩いて買いに行くことが出来る。遠征費もかからない、無理な日程の強行軍も必要ない、会場内での熱中症も、もちろん感染の心配もない。

チャットでの対面コミュニケーションだけでなく、席を外していた時は掲示板にメッセージを残すこともできるのである。差し入れだってgifteeを用いて安全かつ確実にお届けが出来てしまう。とはいえ数々の不便を乗り越えながらのリアル会場でのやり取りが至高、イベントそれだけでなく道中も含めて大切な思い出なのだ、というご意見もあろうし尤もだとは思うが、しかし南の果てから東京までの遠征費を「推し」に注ぐことが出来るというのは妻にとって非常に良いことであったのだろう(遠征費分が浮く……実質無料では? というオタク会計に隙はなかった。クレジットカード決済により消費は加速する……!)。

また実際に面と向かって会うと言葉を失ってしまう「神」に対しても、自宅という自らのホームであれば幾分冷静にご挨拶ができるようであるのも利点であろう。

そうなってくると……。

筆者は思ったのである。自分も出てみたいと。

妻が遠征の準備をし、そして無事帰ってくるたびにその様々な苦労に思いを馳せながら、しかし充実した横顔に羨望の念を抱かなかったかと言えば嘘になる。以前一般参加として参加した「広島コミケ」の体験が素晴らしかったこともあり、「即売会」にサークル参加してみたい、という思いは静かに筆者の中で募っていった。

とはいえ妻のジャンルに「売り子」としていくのは妻、買いに来られる方々にとっては謎のプレッシャーになるであろうし、かといっていきなり一人参戦というのも元来がコミュニケーション能力絶無の筆者にとっては難しいところであった。また、移動諸々を考えても現実的ではなかった。土日の、翌日の仕事に間に合うための交通機関は、当然のことながら需要も金額も高いのである。

そこに現れたこの機会は筆者にとってまさしく晴天の霹靂、アジカンで言うところのラッセーラッセーでありバンプオブチキンで言うところのオーイェーイェーアハァンであった。痛みを二等分するのではなく全国各地から等分にイベント参加という花を咲かすことを許されたというこの機を逃すわけにはいくまい。

兄貴も言っていたはずである。「参加したい」と思った時にはスデに……「参加申し込み」は終わっているのだと。

そういうことで筆者は、8/30開催「レキソウオンライン」にサークル参加申し込みをさせていただいた。

pictsquare.net

「レキソウ」はもともと今週末、インテックス大阪で開催された「超SUPER COMIC CITY 2020 -day1-」にて行われたプチオンリーである。そのオンライン版として本イベントを設けられたのだというが、その参加・不参加に関わらず参加可能というなんとも温情深いイベントであり、そのご厚情に筆者は甘えさせていただくことにしたのだ。

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pngで簡単にサークルカットを作成できるのはありがたいですね

サークルカットはペイントで作成した。以前、妻がレイヤがどうの透過がどうのと唸りながらサークルカットを作成していたことを考えれば、作りやすくまた確認しやすいこのシステムは完全初心者の筆者にとっては嬉しい仕様であった。

内容はサークルカットにある通り、筆者にできることなど駄文を書き連ねることしかできないので、幕末薩摩におけるもっとも滑稽味があって好きなエピソード、「スイカ売り決死隊」についてのエッセイ(のようなもの)をつらつらと書きたいと思う。PDFダウンロード方式にするか、コピ本方式にするかまだちょっと結論が出ていない。(なので頒布品はまだ未公開の状態である)価格は高くても300円までにしたいと思っている。その辺りとか、また他に書いたほうがいい題材、テーマなどのご助言などもしあれば、お題箱からいただければ大変ありがたいです。

 

odaibako.net

参加されるサークル一覧を見て、その絢爛さにいまさら気後れしてしまったりもするが、参加することに意義があると強い気持ちで頑張りたい。気後れよりも圧倒的にワクワクの方が大きいからである。

ということで来週は是非、一般参加(今ならサークル参加も!)無料(スマホからもアクセス可能)ですので拙サークル、「ハナハキリシマ」まで、いっど、おじゃったもんせ。

半返しじゃん! ドラマ「半沢直樹」ロスジェネの逆襲編ネタバレ感想

余談

月曜日よ

敵にして恐ろしく味方として儚きものよ

せめて今一記事を書く時間を我に与えたまえ

毎回月曜休みの時は日曜の笑点をゆっくり見ようと思うのに見そびれてしまう。

三連休ではあったが土曜、祝日が免許更新の対象外であるため中日の日曜日に行った結果、盆前の人手とソーシャルディスタンスの確保のためにひどく時間がかかって参った。きちんと整列して検温されながら進んでいくと「最終的に出荷されるのかな?」みたいな気分になる。

先週は検診で体重の増加を指摘されたことを思い出す。なかなか行事で休日をフルに満喫できないが、上手に時間を使っていきたいものである。

本題

ドラマ「半沢直樹」前半、「ロスジェネの逆襲」編が昨日大団円を迎えた。

相変わらずの面白さ、最後には「銀翼のイカロス」の布石もばらまかれ、大島さんも登場し、来週以降もますます楽しみである。

他方、原作からの変更点は前回のドラマ時点で多く見られたものの、特に今回の変更点は個人的にはカタルシスが減ってしまった部分もあった。原作との相違点を比較しながら、筆者の手前勝手なこうして欲しかったという願望を垂れ流しつつ、後半戦「銀翼のイカロス」の展開予想もしてみたい。

 

ということでここからは「半沢直樹」「ロスジェネの逆襲」ドラマ及び原作のネタバレがあります。

「タメ」の部分―三木の冷遇、郷田の苦悩の削減

半沢直樹」というのはサラリーマン水戸黄門である、と思う。理不尽に耐え、終盤において伝家の宝刀、印籠――「倍返し」において大いに留飲を下げる。

逆に言えば、理不尽という助走期間、タメが長いほどより高く「倍返し」というカタルシスは跳ね上がる――と筆者は思うのだが、筆者が原作を読んで感じた三木が銀行へ戻れはしたものの、適性がない場所に配置されたために鬱屈を抱えてしまう場面や、自らの会社の窮状を救うために偽のホワイトナイトを演じた郷田が経営者としての苦悩に一人もだえ苦しむシーンが端的に、あるいはナレーションで済まされてしまったのは些か残念だった。特に三木のシーンは前ドラマの近藤さん並みの画を期待していただけに……。郷田は原作ではその後、玉木をフォックスに迎え再起を図るのだが、それも描写がなかったのは残念だった。

伊佐山の「意地」の削除と平山夫妻の被害者化、巻き込み事故の副頭取

以前も述べたが原作では大和田取締役は既に銀行の人ではなく、「ロスジェネの逆襲」に「大和田」という単語は登場しない。(一応、伊佐山も三笠も旧T(東京第一銀行。半沢達が勤める東京中央銀行は東京第一銀行と産業銀行という二つの銀行が合併した合併行であり、それゆえの行内融和が課題である。旧Tが悪役となることが多い。何故かドラマでは旧Tと旧Sがそっくり入れ替わっている)ということは語られるが原作においてそれは「今回の悪役です」くらいの意味である)

当然伊佐山と大和田の間に弟子であるとかいう言及もなく、最初から三笠副頭取の腹心として語られる。

銀縁眼鏡の似合う知的エリートとして描写される伊佐山はドラマ同様、粉飾に気付けず、三笠副頭取から切り捨てられる。

そうして自らのキャリアの終わりを感じながらも、平山夫妻へ粉飾の事実を問い詰め、既に投入した資金の返済を迫る伊佐山のすべてをかなぐり捨てた姿は文章だけでも浮かび上がる「凄味」があったのだが、ドラマでは平山夫妻への追及は森山への役割となってしまった。

ちなみに原作の電脳雑技集団の資金ショートの原因は本業悪化のため慌てて多方面へ投資したが全部焦げ付いた、というもので(スパイラルの出ていった役員たちが主張していたことをやって失敗した形)、玉置も容赦なく解雇するなど平山夫妻へ同情の余地は一切ない。三笠副頭取が自らの野望のため暗躍していたのは間違いないが、私利私欲に電脳を利用してはおらず、また取締役会議で断罪もされていないので彼はドラマ用カタルシスのための犠牲者といえよう。もちろんあの告発もスカッとはするのだが筆者は最後の最後に被害者面する平山夫妻の方にイラっとしてしまったのと、原作の「静かにおのれの野望が潰えたことを悟る」三笠副頭取の描写が好きだったので少し残念であった。

お膳立てが出来ていたからこそやってほしかった大和田取締役の「倍返し」

受けた恩に必ず報い、受けた仇を必ず返す、報恩と報復に生きるほとんど極道の東京中央銀行(採用条件:表情筋が豊かであること、肺活量が大きいこと)にドラマでは生き残った大和田平取締役。大体会議室にいるがもしかしてお部屋がないのだろうか。

伊佐山に切り捨てられた…と思ったが実は策略のうち…と思いきややっぱり捨てられる……という土下座野郎らしい悲劇をたどった大和田取締役だが、原作では半沢の元直属の部下・内藤寛部長(吉田鋼太郎さんは今季お忙しいのだろうか…はまり役だと思うのだが)が引き受ける「半沢を取締役会に呼ぶ」という大役を果たして見せた。

これにより三笠副頭取と伊佐山は失脚。彼の進言により二人は電脳雑技集団への出向が決まり、(原作では頭取の決定)目の上のたんこぶと手を噛んだ飼い犬を同時に排除することが出来たのだった……。

いや~~~………。

それを映像で見たかったんですよ!!!

ここまで大和田の「倍返し」がお膳立てされているのだからぜひやってほしかった。

(妄想)

半沢が証券の岡社長に呼ばれ、銀行への栄転が明らかになるシーン。

そこで一度画面が切り替わる。

東京中央銀行の頭取室に呼ばれる三笠副頭取と伊佐山。

入室すると、そこに待っているのは大和田。頭取が帝国航空の件で多忙のため、特例で辞令を大和田が交付するのだという。

そして発表される二人の電脳雑技集団への出向。

高笑いしながら、行内で誰よりも電脳のことを知っている二人だからぴったりな辞令だという大和田。

屈辱と怒り、半沢を電脳へ出向させようとした野望が潰えた失望に震える二人。

二人の肩を抱きながら、「やられたらやり返す……倍返しだ!」

そう凄んだのち更に呵呵大笑する大和田であった……。

みたいな。

原作の大和田常務もそうだったが、この辺りの「ケジメ」をしっかり描写してほしかったのである。

好きな改変:三木へのフォロー、日曜池井戸ドラマな「電脳電設」、元役員の処遇

原作において三木が総務に配置されたことを訴えても半沢はけんもほろろだが、ドラマでは伊佐山のその処遇を疑問視し、「三木は事務作業は苦手だが顧客の懐に飛び込むのがうまい」とフォローしている。これは原作にはないもので、出向先においても部下をしっかり評価していることがわかって個人的にはいい追加だなと思った。

また、「電脳電設(ゼネラル電設)」については原作ではゼネラルグループの一つでグループの経営悪化のため身売り、ということになっているが、ドラマでは玉置の父の会社であり、経営悪化を平山夫妻に救ってもらった(そのため粉飾に利用され、特許も抑えられている)という設定になり、ゼネラル電設に訪問するなどもドラマオリジナルのシーンである。社長は胸の会社名が「ゼネラル電設」のままの作業着を着ているなど芸が細かいな~と思う。唐突に中小企業のモノづくりが語られる辺りは「下町ロケット」や「陸王」のセルフオマージュのようで面白かったし、決算書のみで語られるより話に厚みが出た。

また、原作を読んだときスパイラルの元役員が(背信行為を行ったとはいえ)元は瀬名にも原因があるのに完全に悪役として処理をされていたことに違和感があったので、今回の落としどころは良かったのではないかと思う(詫びるシーンはしっかり入れてほしかったが)詫びると言えば、諸田が証券の皆に謝るのもオリジナルである。ただこれは個人的には原作のもはや眼中にないというような扱いも筆者としては好きである。

ドラマ版「銀翼のイカロス」はどうなるのか?

ということで倍返しは取締役会議で起きている! という感じであの場でカタルシスの花火をどんどこと打ち上げたドラマ版は勿論楽しく見させていただいたのだが、筆者としてはそれぞれのタイミングでそれぞれの悪役は裁かれるべきタイミングで裁かれた欲しかったな、とちょっと消化不良な感じである。

銀翼のイカロス」では果たしてどうなるのか。

 

kimotokanata.hatenablog.com

前回筆者は原作の「紀本常務」に今回の手柄でもって「大和田常務」として返り咲いた大和田が取って代わる、と思っていたのだが、普通に紀本平八常務が登場した。今回の冒頭では「大和田常務」の話が出るなど、完全に制作側としてはこのミスリードを誘っていたのではないかと思われる。すっかり掌で踊らされたわけである。これは心地いいやられた! という感覚であった。

しかし気になるのは相関図の記述。紀本平八は「東京第一銀行」即ち旧Tの出身となっている。原作では旧Tの出身なのだ。じゃあいいじゃんと思われるかもしれないが前述したとおり、原作とドラマでは旧Sと旧Tが逆になっており、本来であれば紀本はドラマでは旧Sになっていなければおかしいのである。(ちなみに小説版「花咲舞が黙ってない」には東京第一銀行時代の紀本が登場する)

これは原作未見の諸賢にもドラマを楽しんでほしいので明言は避けるが、原作では紀本は旧T(ややこしいがドラマの場合の旧S)出身であることに重大な意味のあるキャラクターであるので、この変更は重大である。

逆に考えれば、やはり原作での紀本が負う役目を大和田が負う――ドラマオリジナルの要素で紀本が常務の役目を追われ、再び「大和田常務」が誕生するのではないか?

小料理屋の女将の反応も意味深である。もしかしたら女将は紀本の「あの元上司」の娘であったりするのかもしれない。

どうにも大和田はまだまだかき回してくれそうな予感がする。

他方、児嶋一哉さんの役職も決まった。白井国交相の秘書というドラマオリジナルの役である。そんなん予想できるか! ただこちらも相関図を見ると箕部幹事長(幹事長になったのもドラマオリジナル)の秘書を経て白井の秘書となっているということから、極めて重大な役だと思われる。いかにも「秘書がすべてやったことです」ポジションの秘書にさせられそうである。当面のカタルシス提供役になりそうな予感だ。

 

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後半戦も一筋縄ではいかなそうな「半沢直樹」来週以降も楽しみにしていきたい。

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